~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

*『それでも夜は明ける』* ※ネタバレ有

2014-03-22 12:14:57 | 映画【アメリカ】


  『それでも夜は明ける』:公式サイト

手紙

自由証明書で認められた自由黒人であるバイオリニストのソロモン・ノーサップが興行主に裏切られて南部の農園に売られ、
12年間に渡る壮絶な奴隷生活を綴った伝記をスティーヴ・マックイーン監督が映画化。
第86回アカデミー賞の作品賞(ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、スティーヴ・マックイーン、
アンソニー・カタガス、アーノン・ミルチャン、ジェレミー・クレイナー、ビル・ポーラド)、
脚色賞(ジョン・リドリー)、助演女優賞(ルピタ・ニョンゴ)受賞など、
数多くの映画賞を受賞した作品。

黒人というだけで拉致されて白人家の奴隷として綿花積みの仕事を強要される。
アジアの某国が日本人を次々拉致した事件がよぎったりもした。
当時のアメリカの事はよくわからないが、北部と南部では全く別の社会だったのかしら?

主人公ソロモン役のキウェテル・イジョフォーはポロポロ流す涙の演技が秀逸。
家族と再会する場面で赤ちゃんを抱いて立っていた男性は
てっきり、妻の再婚相手だと思ってしまった。。。
実は娘のだんなさんだったのね~。

パッツィー役のルピタ・ニョンゴは華奢なので20歳前後に見えたけど、実年齢は30代でビックリ。
パッツィーは弱々しすぎるんだけど、傷ましい場面も含め、
全身全霊で演じきっていて素晴らしかった。
オスカーは納得。

 ルピタ・ニョンゴ - Wikipedia

エップスはパッツィーを鞭打ちに出来ず、最初はソロモンにさせたのは
エップスはパッツィーを鞭打ちにしたくなかったからなんだろうね。
多分、エップスは誰よりも多く綿花を積む健気なパッツィーを愛していたんだと思う。
支配する形でしか関われない不器用なせつなさみたいなのも感じたな。

ソロモンはバス〔ブラッド・ピット〕と出逢えなかったら、
ずっと奴隷のままで生還出来なかったと思う。
奴隷制度の社会でも“それは間違っている”、”いつの日にか黒人を奴隷として扱っている白人にも制裁が下る。”
というのは白人も黒人も気づいている。
だけど、それを口にすることは許されない空気で白人は奴隷制度を都合良く利用している。
その反面、白人は白人で黒人を奴隷として雇う社会で生きなければならない
大地の中での閉塞感もヒシヒシと伝わってくるかのようだった。
そんな中でバスは“奴隷制度はおかしい”と意義を唱える。
だからと言って、正義感に溢れ熱く強い人ではない。
ソロモンの手紙を仲介するのは躊躇するけど、
「(自分から)手紙は書くよ。」と告げるところは発想の転換が効く、
普通に穏やかな人なんだなと思った。

その後、ソロモンとバスは再会したのだろうか?
案外、その言葉を告げた時が二人が顔を合わせた最後だったのかもしれないね。
(バスは風来坊な自由人ぽいから。)

バス役のブラッド・ピットが主題を全て語っているようなモノだったし、
絵に描いたような善人役だったので彼の配役はあまり評判良くないみたいだけど、
私は『悪の法則』のように惨殺される無駄にアクの強い役よりかは
今回のように普通の役のほうが好感もてるし、素直にカッコ良いと思ったよ。
サラサラ髪で柔和な面差しは『リバー・ランズ・スルー・イット』を彷彿させる爽やかさで懐かしかったな。

一度、白人に裏切られたらまた別の白人を容易く信じられないと思うので
あっさり彼を信じたのは映画としては説得力に欠けるけど、
それだけ必死だったというコトなのかな?

黒人の血をひく大統領が誕生している今のアメリカ。
今ではもう奴隷生活を送っている人はいないだろうなと思っていたんだけど、
アカデミー賞作品賞受賞時の監督のスピーチによると
今でも2100万人の黒人が奴隷生活を強いられているそうですね。
銃社会と共に抱えるアメリカの社会問題・・・。
それを生々しく提起したのが受賞につながったのでしょうね。


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