ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Dierks Bentley ダークス・ベントリー Feel That Fire

2009-02-22 | Dierks Bentley ダークス・ベントリー レビューまとめ

 昨年のカントリー・ゴールド2008年のヘッドライナーとして来日してくれたダークス・ベントリーの待望のニュー・アルバム。そのカントリー・ゴールドでも披露してくれたリード・シングル"Feel That Fire"がカントリー・チャートの1位を獲得、その勢いでアルバムも初登場でカントリー1位、そしてポップでも3位と、既に快調な出だしを見せています。前作「Long Trip Alone」がCMAアワードとグラミーで共にアルバム賞にノミネートされる好作で、彼のベースとなるトラディショナルなホンキ・トンク・カントリーとお気に入りのブルーグラスのアコースティック・サウンドをロック世代ならではのセンスでブレンドした、一つの極みのような作品でした。対して今作は"Feel That Fire"で予感されたとおり、アグレッシブでロッキッシュなギター・サウンドがフィーチャーされた曲が幾つか収録され、確かにカントリー・ゴールドのインタビューでダークス自身が語ったいたとおりの、”Fun!”な作品になっています。



 その変化は、オープニング"Life on the Run"での”アグレッシブさの典型”と言いたくなるハードなギター・リックで強く印象付けられます。骨太なノリを身の上としてきたダークスなので難なくこなして見せますが、これまでの彼のサウンドからするとクロスオーバーをターゲットにしているのは明らかだな・・・とニヤリ。そして続く"Sideways"でいよいよバンジョーの硬質なサウンドが切れ込んできて一気にスパーク!前曲と同系統のクロスオーバー・サウンドなのだけれど、そのバンジョーの響きと、弾みまくる”Fun!”なリズムセクションで、これは見事なロッキン・カントリーです。コーラスでのダークスの声は、いつもより少しあか抜けした感じ。アルバムのツカミにはこういうパーティ・ソング(歌詞もその手のハッピーなもの)は必須。と思ったら、しっかりセカンド・シングルとしてリリースされました。そして、"Feel That Fire"。これもダウンホームなギター・リックが曲のカラーを決定付けるナンバーですが、やはり隠し味的に利いているバンジョーなしでは成し得なかった、カントリー・ミュージックならではのサウンドです。どっしりとしたミディアムのリズムとの絡みが病みつきになるナイスなナンバー。この冒頭3曲ほどの強い印象ではないものの、"You Hold Me Together""Better Believer"あたりも、キャッチーなバックのフレーズに導かれたダークス流ポップ・チューン。ただし、彼らしいのサウンドや肌触りはキッチリ保たれていて楽しめます。異色なのが、テックスメックスの雰囲気をしのばせたミディアム"I Can't Forget Her"。ロマンティックな色香を感じるナンバーで、ダークスの声も艶やかに聴こえます。

 なるほど"Sideways"、"Feel That Fire"あたりは、ダークスがさらに飛躍する為には必要な作品だし、この手のFun!なレパートリーを彼は持っておくべきだと思います。ただその分、「Long Trip Alone」で表現されていたナイーブで時にスピリチュアルな部分も感じられたイメージが薄れているのが少し残念なのかな。それでも、アメリカーナ系のシンガーソングライターPatty Griffinをデュエット・ゲストに招いたミディアム"Beautiful World"ではそのスピリチュアルでロンサムな雰囲気を保っているし、ロドニー・クロウェルのペンによる荘厳なスロー"Pray"など、数は少ないもののこれまでのファンが期待するプリミティブな作品をしっかり入れてくれてる処がさすがダークスと言うべき。ラストをブルーグラス・ソング"Last Call"で締めくくっているところも彼が決して原点を忘れてなどいない事が伝わってきます。



 ダークスは昨年、シカゴでのLollapaloozaロック・フェスティバル(共演はレディオヘッド、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、カニエ・ウェストら)に唯一カントリー・アクトとして出演したり、イギリス、アイルランド、ノルウェイ(ダイアナ・ロスが共演)、そしてフランスなどにツアーに出たり、さらには今年に入ってからもニュー・ヨークのアップル・ストアで開催された iTunes' Live From Sohoに招かれたりと、その活動を従来のカントリー・フィールドから、より外へと広げる動きをしていました。カントリー・ゴールドへの出演もその一環だったのでしょう。こうなると、カントリー・オンリーで楽しんでいるオーディエンスの比率は減ってくる(日本は除く)し、会場も大きなアリーナでプレイする機会が増えてくる(彼の人気からすると当然)。そういった中でダークスは、これらの新しいオーディエンスにもっと楽しんでもらうレパートリーの必要性(広い会場で、大音量で盛り立てる・・・)を感じて、この「Feel That Fire」を製作したのでしょう。ジャケットやブックレットの写真もヘアスタイルを若干小奇麗に整えてたりして・・・つまり、カントリー・ミュージックに馴染みのなかった方々にとっては、ダークス・ワールドへの適切な入り口になるアルバムなのだと思います。これが気に入ったら、「Long Trip Alone」や「Greatest Hits」へと聴き進めていける。そんな方々が増える事を期待したいですね。



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