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細菌による新抗生物質の合成

2014-09-25 08:30:36 | ラジカル

 

Peptidyl-carrier Proteins

SBKB [doi:10.3942/psi_sgkb/fm_2014_10]

図1 PDBID: 4NEOの構造。

細菌は、常に自然資源を活用し、競合他者との戦いは珍しい分子を構築するための新しい方法を発見する、創造的な化学者である。これらの分子の多くは、短いタンパク質のように見えるが、それらは従来のタンパク質と同じように構築されていない。DNA内の情報を使用する代わりに各分子が終了するまで、それぞれが一度に一つのピースを加えること、酵素の専用の組立ラインを使用して構築する。 おなじみの抗生物質は、バンコマイシンおよびブレオマイシンのように、この方法で作られている。この方法の利点の一つは、外来の分子のあらゆる種類の代わりに20の天然アミノ酸に限定されできるということである。例えば、反対のキラリティーをもつアミノ酸を使用することができる、または完全に異なる側鎖を有するアミノ酸をも含む。この多様性は、他の細胞の自然な防御に非常に特化した機能や耐性を有する分子を作成するために細菌を可能にする。不利な点は、当然のことながら、細胞は多くの合成のステップを実行するために専用の酵素の数十を構築し、プロセスに多くのリソースを投資しなければならないことである。 
 これらの分子組立ラインは
、タンパク質の三種類で構成されている。一つは、典型的には、ATPに結合することによって、ビルディングブロックを見つけ、それを活性化する酵素である。もう一つの酵素は、成長するペプチドにビルディングブロックを取り付け、合成反応を実行する。各モジュールにおける第3のタンパク質は、プロセス中にペプチドを保持するキャリアタンパク質である。最近、MCSGとNatPro(PDBID:4neo)でのPSIの研究者の共同研究で決定し、ここで示したキャリアタンパク質は、ブレオマイシン、断片にDNAを破壊する強力な抗生物質の合成に関与している。この小さなキャリアタンパク質は、それが構築されているように(特別な補欠分子族を介して結合している)ブレオマイシンを保持するためのハンドルとして機能し、末端セリンのアミノ酸を持っている。
細菌は、これらのモジュール式組立ラインを構築するには、2つの異なるアプローチを取る。 I型のシステムでは、酵素および担体の多くは、一つの長いタンパク質鎖に接続され、成長している分子は、モジュールからモジュール渡される。ここで(PDBエントリー2vsq)に示す構造は、サーファクチンAの構築のための最終的なモジュールは、構造が終了キャリア活性化酵素、合成酵素、および1つ以上の酵素を含む示す工程である。タイプIIのシステムは、独立した酵素が、すべての建設のプロセスの間に一緒に働く担体と、生合成をより身近なアプローチを取る。上に示したBlmI構造は、タイプIIペプチド担体の第1の構成である。
これらのキャリアタンパク質へのトリックは、容易に次の合成工程中の酵素に転送することができるように、活性化され、アクセス可能な状態で成長しているペプチドを保持することである。これを行うために、彼らはロング補欠分子族を使用する。これはキャリア上のセリンに接続され、末尾の硫黄原子を有する長い柔軟な鎖を有している。ビルディングブロックは、転送を容易にし、不安定な結合を介してそこに取り付けられている。 (その他、PDBID:2lki、2ll8と2lml)。


いま、ユビキノン(CoQ10)が熱い!

2014-09-11 13:54:58 | ラジカル

。図1 複合体Ⅲの結晶構造(PDNID: 1BCC)をCHEM3Dで描画。蛋白部分は(cartoon白色)に統一し、Ligandは通常の元素色を用いた、形はSpace Fillingで描いた。中央部にUQの一部が見える。

UQは複合体Ⅲ蛋白質内部に配位され、タンパク質内部における電子伝達にも機能している。もっとも有名な例としては紅色光合成細菌の光合成反応中心蛋白質における電子移動経路の一端として2つのユビキノンQAとQB間のプロトン移動とカップリングした電子移動反応QA→QBがあげられる。この反応は、植物の酸素発生を行う蛋白質光化学系II (photosystem II あるいはPSII)のプラストキノンQA→QBとの反応と実質的に同じであるため、近年の光化学系IIのX線構造解析結果によりその立体構造が次第に明らかにされつつあることと相まって、植物をはじめとする光合成系の酸素発生機構を解明する上で重要な反応である。

他の興味深い例として、呼吸鎖複合体III内のプロトンキノンサイクル機構(スカラー反応)に関与していることが挙げられる。キノンサイクル機構には一電子還元を受けた中間型が重要な役割を果たしており、可動性リスケ鉄硫黄タンパク質と共同的な興味深いシステムが提案されている。

呼吸鎖複合体III(シトクロムbc1複合体)においては、複合体Iや複合体IVとは異なる機構でプロトンが膜外に輸送される(図1)。複合体I、IVにおいてはプロトンポンプ機構と言う、輸送を受けるプロトンが膜内から膜外に輸送されるのみである。しかしながら複合体IIIにおいては『プロトンキノンサイクル機構』という独自の輸送機構を用いている。

プロトンキノンサイクル機構とは、膜内部においてプロトンが消費され、その還元力を使用して膜外側でのプロトンの放出が見られる現象である(この反応をスカラー反応と言う)。実際輸送を受けるプロトンは膜内から放出されるわけではなく、見かけ上そのように見えるだけなのでプロトンポンプ機構とはことなる機構であることが理解できる。その素反応の詳細は、以下の反応ステップからなる。

1複合体IIIのシトクロムbに存在する、膜外側に存在するユビキノール酸化部位 (QP部位あるいはQO)にてユビキノールが酸化される。

2ユビキノールから2電子が抜き取られ、同時に膜外側へプロトンが2分子放出される。 その2電子は異なる方向にそれぞれ伝達される。その内約は以下の通りである。

1. 1個目の電子は、可動性リスケ鉄硫黄タンパク質を経て、シトクロムc1、シトクロムcの順番に電子伝達される。

2. 2個目の電子は、シトクロムbに存在する2つのヘム(ヘムbL, bH)を経て膜内側に存在するユビキノン還元部位(QN部位あるいはQI部位)に電子伝達される。

QN部位に電子が二電子伝達されることにより、ユビキノンは二電子還元を受けてユビキノールとなり、再びプロトンキノンサイクル機構に組み込まれる。

以上が、プロトンキノンサイクル機構の反応であるが、この中でも特に優れた機構なのが可動性リスケ鉄硫黄タンパク質の関与する、電子伝達の方向性を変化させる過程である。以上が、プロトンキノンサイクル機構の主格を担うスイッチング反応である。極めて複雑な反応であるが、まとめると、。

UQの生合成

UQは生物内での合成が可能であり、ビタミンのように経口摂取する必要は無い。そのため、ビタミンQの呼称は最近使用されなくなってきている。UQのベンゾキノン部位はアミノ酸のチロシンから合成される。またイソプレン側鎖はアセチルCoAからメバロン酸経路、テルペンを経て合成される。ただ、合成能力は年齢とともに衰えていき、20代がピークといわれている

医薬品としての効能

UQは日本では1970年代から医療用医薬品として軽度及び中等度のうっ血性心不全症状などに用いられてきた。また、複数の製薬メーカーが、一般用医薬品(OTC医薬品)・医薬部外品として、一般消費者向けの商品を発売している。安全性は比較的高く、米国ではコエンザイムQ10の名称でサプリメントとして広く用いられており、医師の処方箋なしに消費者が直接店頭などで購入できる。日本でも2001年に医薬品の範囲に関する基準(いわゆる「食薬区分」)が改正され、さらに2004年化粧品基準が改正されて、健康食品や化粧品への利用に道が開かれた。その結果、抗老化作用を訴求したユビキノン(コエンザイムQ10)含有の健康食品や化粧品がブームとなり、原材料の品薄で入手しにくいほどの人気を博していた時期があった。しかしながら、そのような薬効を臨床的に検討したデータはまだ乏しく、詳細な効果についてはまだ詳しくわかっていない。摂取量については、どの程度までなら摂取しても安全なのか、などといった推奨量や上限量はまだよくわかっておらず、今後の研究が待たれる。また「多量に摂取した場合に軽度の胃腸症状(悪心、下痢、上腹部痛)」があらわれるという報告もある。

2009年11月に、UQの抗酸化作用がマウスの老人性難聴の予防に効果があることを、東京大学が実験で明らかにした。それによると、人間にとっては1日20ミリグラムにあたる量のUQを生後4ヶ月から与えられ続けてきたマウスは、人間の50歳に相当する生後15ヶ月の時点で、同じ月齢のマウスが45デシベル以上の音しか聞き取れないのに対し、12デシベルの小さい音を聞き取れるようになった。これは動物実験のレベルであり、実臨床では証明されていない。2013年7月16日に、小児性線維筋痛症発生の原因がUQの欠乏にあることが、東京工科大学応用生物学部山本順寛教授らと、横浜市立大学医学部小児科との研究チームにより発見されたと報じられた。

 


ユビキノンと複合体3

2014-09-07 15:11:17 | ラジカル

ユビキノン(略号:UQ)とはミトコンドリア内膜や原核生物の細胞膜に存在する電子伝達体の1つであり、電子伝達系において呼吸鎖複合IとIIIの電子の仲介を果たしている。ベンゾキノン(単にキノンでも良い)の誘導体で、比較的長いイソプレン側鎖を持つので、その疎水性がゆえに膜中に保持される。酸化還元電位 (Eo') は+0.10V。ウシ心筋ミトコンドリア電子伝達系の構成成分として1957年に発見された。還元型のUQは『ユビキノー』と呼称していることが多い。別名、補酵素Q、コエンザイムQ10(キューテン)、ビタミンQ、CoQ10、ユビデカレノン等、多種多様な名前が付いている。UQの酸化還元に関わるベンゾキノン誘導体部位はパラ型に酸素原子が結合しており、C2にはメチル基、C5,C6にはメトキシ基が結合している。C3にはイソプレン側鎖が結合しており、生体膜中に保持されるように長い炭素鎖を形成している。化学構造を以下に示す」。

Ubiquinone構造式

イソプレン側鎖の数(n=)は高等動物では10、下等動物では6~9であり、イソプレン側鎖が長くなればなるほど黄橙色を呈するようになる。なおn=10のユビキノンは『UQ10』と、イソプレン側鎖の数字を筆記する。UQは二電子還元を受け(ユビキノールとなる)、一電子還元を受けて中間型(ユビセミキノン)も形成する。中間型はプロトンキノンサイクル機構でその意義があるとされている。UQの酸化還元様式は下図の様になる。

 Ubiquinoneredox.PNG

酸化型のUQは275nmの波長の電磁波を吸収する。したがって、UQに電子伝達を行う酵素群の活性測定はこの波長に類する吸収帯を使用する。UQはミトコンドリア内膜や原核生物の細胞膜から単離され、膜内の電子伝達に関与することが古くから知られている。特に電子伝達系、呼吸鎖複合体I(NADH脱水素酵素)から呼吸鎖複合体III(シトクロムbc1複合体)への電子伝達に寄与している。

 呼吸鎖複合体Iにおける反応

NADH + ユビキノン(UQox) → NAD+ + ユビキノール (UQred)

 呼吸鎖複合体IIIにおける反応

ユビキノール + シトクロムc (Cytox, Fe3+) →UQox+ Cytred(Fe2+)

 

 


呼吸鎖複合体Iの電子トンネル移動の理論

2014-06-21 12:48:50 | ラジカル

呼吸鎖複合体I親水部における電子トンネル移動

http://www.thayashi.com/research/et_complexI-j.html

より抜粋)

Complexi

図1 呼吸鎖複合体I親水部における電子トンネル移動

呼吸鎖複合体I(NADHデヒドロゲナーゼ (ユビキノン))の電子トンネル移動経路がはじめて原子レベルで明らかにされた。さらに、生体中での複合体Iの高い電子移動効率にタンパク質サブユニット間の内部水が大きく寄与していることが明らかにされた。呼吸鎖複合体Iは,電子伝達系で主要な役割を果たし,老化現象やパーキンソン,アルツハイマー病の原因としても知られている. 呼吸鎖複合体Iは,7つの鉄/硫黄クラスターに沿った90Åにわたる電子移動から得られる自由エネルギーを用いて,ATP合成に必要なミトコンドリア内膜間のプロトン濃度勾配を発生させる.今回,タンパク質中での長距離電子トンネル移動について,Tunneling Current理論に基づき,電子トンネル経路,電子トンネル行列要素,電子移動速度の計算プログラムが作成された。プログラムはGaussian量子化学計算パッケージと連携することで,任意の量子化学計算レベルで実行可能となった。開発された手法を用いて,原子レベルでの電子トンネル移動経路とトンネル移動に寄与するタンパク質残基を初めて特定された.タンパク質シーケンスアラインメントの結果,それら残基は異なる生物種間でよく保存されていることが確認された.また,タンパク質中の内部水が電子トンネル移動速度を劇的に(102~103)上昇させ,生体中での複合体Iの機能に必須の役割を果たしていることがわかった.

1、Tomoyuki Hayashi, and Alexei Stuchebrukhov, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,  107, 19157 (2010).


ユビセミキノンの機能(2) Complex 3中のUQ

2014-04-05 14:23:24 | ラジカル

 

800pxcomplex_iii_reaction_svg

 
図1 複合体IIIの模式図

 

複合体IIIはシトクロム b を起源に Fe-S タンパク質およびシトクロム c が付加されてできたとされている。ユビセミキノンは、呼吸鎖複合体(シトクロムbc1複合体)III内のプロトンキノンサイクル機構(スカラー反応)に関与している。

複合体IIIはユビキノールからシトクロム cに電子伝達を行い、「ユビキノール:シトクロムc 酸化還元酵素」とも呼ばれる。好気呼吸を行う真核生物はすべてミトコンドリア内膜に複合体 III を所持している。現在、ウシシトクロム bc1 複合体の立体構造が明らかになっている。複合体 III の構成は:

1)シトクロム b(ユビキノールの酸化を行う)

2)リスケ鉄硫黄タンパク質

3)シトクロム c1(シトクロム c に電子伝達を行う)

電子伝達は以下の手順で行われる。

4)ユビキノール → リスケ Fe-S タンパク質 → シトクロム cFe2+

ただし、シトクロム b でのスカラー反応により、以下の電子伝達も行われる。

5)ユビキノール → ヘム bL → ヘム bH → リスケ Fe-S タンパク質 → シトクロム cFe2+

複合体IIIにおいては、複合体Iや複合体IVとは異なる機構でプロトンが膜外に輸送される。複合体I、IVにおいてはプロトンポンプ機構と言う、輸送を受けるプロトンが膜内から膜外に輸送されるのみである。しかしながら複合体IIIにおいては『プロトンキノンサイクル機構』という独自の輸送機構を用いている。プロトンキノンサイクル機構とは、膜内部においてプロトンが消費され、その還元力を使用して膜外側でのプロトンの放出が見られる現象である(この反応をスカラー反応と言う)。実際輸送を受けるプロトンは膜内から放出されるわけではなく、見かけ上そのように見えるだけなのでプロトンポンプ機構とはことなる機構であることが理解できる。その素反応の詳細は、以下の反応ステップからなる。

1)複合体IIIのシトクロムbの膜外側に存在するユビキノール酸化部位 (QP部位あるいはQO)でユビキノールが酸化される。

 2)具体的には、ユビキノールから2電子が抜き取られ、同時に膜外側へプロトンが2分子放出される3)その2電子は異なる方向にそれぞれ伝達される。その内約は以下の通りである。1個目の電子は、可動性リスケ鉄硫黄タンパク質を経て、シトクロムc1、シトクロムcの順番に電子伝達される。 2個目の電子は、シトクロムbに存在する2つのヘム(ヘムbL, bH)を経て膜内側に存在するユビキノン還元部位(QN部位あるいはQI部位)に電子伝達される。つぎに、QN部位に電子が二電子伝達されることにより、ユビキノンは二電子還元を受けてユビキノールとなり、再びプロトンキノンサイクル機構に組み込まれる。

以上が、プロトンキノンサイクル機構の反応であるが、この中でも特に優れた機構は可動性リスケ鉄硫黄タンパク質の関与する、電子伝達の方向性を変化させる過程である。