セルロースの効率的な化学改質方法として TEMPO酸化が注目されている。触媒量の TEMPO,NaBr と主酸化剤として NaClO を用いる水系媒体の反応により,水溶性多糖の 1 級水酸基をほぼ全てカルボキシル基へ位置選択的に酸化した。再生セルロースに TEMPO 触媒酸化反応を適用した場合には,セルロースの 1 級水酸基が全て酸化され,均一な化学構造を有する水溶性のセロウロン酸(β-[1→4]- ポリグルクロン酸)が定量的に得られた。本研究では,綿布の温和な化学改質法として,TEMPO 触媒酸化条件の詳細な検討を行い,反応条件と TEMPO 酸化綿布のカルボキシル基量および重合度 の 関 係 を 検 討 し た 。 また、NaBr は NaClO 共存下で NaBrO を生成し,酸化型 TEMPO 分子(オキソアンモニウム塩)を効率的に生成する触媒機能を有すると報告されている。しかし,その触媒機能だけではなく,疎水基を有する酸化型 TEMPO 分子を効率的にセルロース繊維表面の 1 級水酸基に結合させ,カルボキシル基の生成を促進させる塩析効果の役割も期待される。そこで塩析作用によって染料分子を効率的にセルロース繊維表面へ吸着させる効果がある Na2SO4 を NaBr の代わりに用いた。得られた TEMPO 酸化綿布については,基本物性,加熱による白色度低下挙動,消臭性,皮膚刺激性等を評価した。また従来法である TEMPO/NaBr/NaClO 系と TEMPO/Na2SO4/NaClO 系における助触媒である塩の役割の差異について,電子スピン共鳴法(ESR)を用い,反応液中のラジカル濃度変化を測定することにより酸化反応機構を検討した 。 試 験 に お い て は TEMPO 誘 導 体 で あ る 4- ア セ ト ア ミ ド TEMPO (4-AcNH-TEMPO),4-ヒドロキシ TEMPO(4-HO-TEMPO)の反応性についても比較したまた、衣料用綿布に TEMPO 触媒酸化を適用した際に,処理綿布中に TEMPO 成分が残留している場合には,皮膚に対する安全性の面で課題となる。そこで,TEMPO 触媒酸化後の綿布中の TEMPO 含有量についても ESR を用いて検討した。弱アルカリ領域での NaClO/NaBr/TEMPO システムの実験綿繊維構造物(以下綿布)は糸番手 40/1(DPv=2200)のニット構造物とし、予め綿布に含まれる不純物を除去した試料を使用した。また導入するカルボキシル基量を 0.35mmol/g の軽微な化学改質とした。従来行われている NaClO/NaBr/TEMPO システムでは、カルボキシル基の導入は確認できたものの、綿布としての強度が大きく低下した。強度低下の原因としてアルカリ条件下でのセルロースのβ脱離反応により大きく重合度が低下したものと考えられる。中性領域での NaClO2/ NaClO /TEMPO システムの実験主酸化剤として NaClO2を用いる NaClO2/ NaClO /TEMPO システムによりセルロースの低分子化を抑えた TEMPO 触媒反応について検討した。従来法のアルカリ条件に比べ、綿布の強度はアルカリ条件より抑えられているが、目標のカルボキシル基導入条件では繊維の脆化が大きく強度低下は抑えられなかった。弱アルカリ領域での短時間 NaClO/NaBr/TEMPO システムの実験従来法である NaClO/NaBr/TEMPO システムにおいて反応初期の段階ではアルデヒド基とカルボキシル基の両方が生成する。そこで、より多くのアルデヒド基とカルボキシル基生成させた段階で TEMPO 触媒反応を終了し、生成しているアルデヒド基を NaClO2 により酸化することにより繊維構造物の強度低下を抑える検討を行った。その結果、繊維構造物の強度は大きく向上し衣料材料として用いても問題のない事が確認された。さらに、添加する NaBr についても最適量があることが確認された。しかし、TEMPO 酸化後のサンプルでは加熱後の白色度低下があり、その原因がセルロース C6 位以外の C2 位あるいは C3 位の酸化によるケトンであることが分かった。弱アルカリ領域での NaClO/ Na2SO4/TEMPO システムの実験黄変原因であるケトンの生成について、NaClO/NaBr/TEMPO システム実験における NaBr の役割を検討した。そこで NaBr の役割が NaClO との反応から NaBrO の生成し、酸化型 TEMPO 分子の生成以外に塩析作用による 1 級水酸基への吸着と考え、新たな NaClO/ Na2SO4/TEMPO システムで実験を行った。 NaBr に比べ反応効率は悪いものの、カルボキシル基の導入が確認された。 NaBr に比べ白色度低下は抑えられたが、セルロース C2 位あるいは C3 位の酸 化 に よ る ケ ト ン は 生 成 し て い た 。 繊 維 断 面 の SEM-EDX か ら NaClO/NaBr/TEMPO に比べわずかに NaClO/ Na2SO4/TEMPO の方が繊維の内部にカルボキシル基が分布していた。繊維構造物の物性も衣料材料として用いても問題ないレベルであり、機能性の面では高い消臭性能が確認された。図 1.NaClO/NaBr/TEMPO 繊維断面 SEM 図 2.NaClO/NaBr/TEMPO 繊維断面 Pb 分布図 3.NaClO/Na2SO4 /TEMPO 繊維断面 SEM 図 4.NaClO/Na2SO4 /TEMPO 繊維断面 Pb 分布電子スピン共鳴法によるラジカル解析 TEMPO/NaBr/NaClO 系では,従来提案されていた反応機構である「系内での NaBrO の生成と,それによる酸化型 TEMPO の効率的な生成によるセルロースの C6 位のカルボキシル基への変換」を支持する結果が得られた。また,綿布存在下での TEMPO/NaBr/NaClO 酸化では,反応直後には TEMPO が消失し,セルロースの C6 位の酸化の進行とともに液中ラジカル濃度が増加し,反応時間の終点に近い約 15 分後には反応前と同等のラジカル濃度となった。これらの結果から,反応液中のラジカル濃度の経時変化を測定することで, TEMPO 触媒酸化反応の進行をモニターできることが明らかになった。一方,綿布の新たな酸化反応系である NaClO/Na2SO4/TEMPO 系では,反応液中のラジカルが消失することがなかったことから,綿布の酸化-カルボキシル基の効率的な導入が従来系とは異なった反応機構で進むことが示唆された。また, 4-AcNH-TEMPO は TEMPO と類似した酸化効果,酸化機構で説明できるが, 4-HO-TEMPO は酸化効果が著しく低いことを ESR 分析でも確認できた。さらに,TEMPO 酸化処理綿布中の残留 TEMPO 量は ESR では検出限界以下であった。
2016-05-20 14:43
融合という言葉には基本的に、別々のものが融け合って1つになるという意味があり、例えばポップスと漢詩の融合、わさびとチーズの融合、車とAIの融合などの事例がある。これらの事例からわかるのは、融合には1つに融け合うことによって新しい何かが生まれるという意味が含まれていることだ。
記事は日本人は自然と融合していると指摘、その一例として刺身と寿司(すし)を取り上げている。刺身と寿司について、料理人の仕事は大自然が持つ最高レベルの美味しさを「失わないようにすることだ」と説明。つまりできるだけ人の手を加えず、自然そのものの美味を味わう刺身と寿司に、日本人と自然の融合の一面を見出したようだ。
日本人と自然の融合が生み出したのは、日本が世界に誇る食文化だ。記事はこの点について「日本旅行で最も人をわくわくさせるのは美食を味わうこと」と説明しており、新鮮な魚介類の持ち味を生かした日本料理が中国人旅行客にとって日本の大きな魅力の1つになっているという見方を示した。
続いて記事は日本の寺院の庭園を紹介している。記者は日本留学の経験があるようで、実際に京都の大小の寺院を訪れた経験を紹介し、「中国の庭園と雰囲気は異なるが、心を安らかにする点で日本のほうが優れている」と日本の庭園を称賛。さらに「何時間も眺めていることができる」と感想を紹介した。
世界各地には様々な庭園がある。フランスのヴェルサイユ宮殿庭園、オーストリアのベルヴェデーレ宮殿庭園、イギリスのウィスリーガーデン、イランのフィン庭園など数え上げればきりがない。しかし龍安寺石庭などの枯山水の庭園は自然そのものを楽しむのではなく自然の中に宿る魅力を芸術的に表現したものだ。記事は日本人と自然との融合が生み出した「心の安らかさの表現」に引き付けられたようだ。
さらに記事は1973に公開された映画「日本沈没」に登場する人物が、避難せずに沈没する日本と運命をともにする選択をしたことに言及。この博士の選択は「自然と融合しようとする日本人の考え方を代表している」と指摘。この指摘は本当に自然と共に死んでもよいということではなく、日本人が抱く自然に対する深い愛や崇敬に言及したものだと言える。こうした崇敬の念が「日本人はアジアの国々のなかで最も自然と融合している民族の1つである」という評価につながっているのだろう。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:(C)Chan Jui-Chi/123RF.COM)