同じサークルで同期生だからという理由だけで誘われて
参加することになったコンパ、そこにカノジョは居た。
あまり気乗りがしなかった僕はわざと少し遅刻した。
聞いていた居酒屋の暖簾をくぐってキョロキョロしていたら
奥の席から「遅いよ~!」と声が掛かって
セッティングされていた空席に有無を言わさず座らせてしまった。
テーブルの一番端の僕の真向かい、そこにカノジョは居たんだ。
なんだかイマイチ雰囲気に乗り切れない風で
遅れてきた僕と同じように少し落ち着かない様子。
着ているものも周りの友人達みたいに流行のものじゃなくて
白いロングのワンピースで、カノジョに似合ってはいたけど
女の子っぽくてあんまり僕の好みじゃなかった。
「はじめまして」と挨拶をしたらカノジョは僕のグラスに
ビールをなみなみ注いだから少しこぼれてしまった。
お酒の勢いを借りて少しずつ話をしていたらカノジョも
ちょっと落ち着いてきたようだった。
好きな映画や俳優が一緒だった(ちなみにゲイリーオールドマン)
あたりから緊張もほぐれていい感じだったんだ。
終電が近くなってコンパもお開きになる頃には僕たちはケータイの
番号を交換していた。
「今度よかったら映画見に行かない?」
カノジョは「そうね」とかるく返事をして「じゃ、電話してちょうだい」
と答えてくれた。
カノジョはいつもワンピースやロングスカートの女の子っぽい服装で
映画に2回、買物に2回、デートというほどでもないけど僕の休日に
つきあってくれた。
「今度の休みにはドライブでも行かない?」
当然「いいよ」って言ってくれると思っていたら
カノジョは少し思案顔。
クルマに弱くてすぐに酔ってしまうらしい。
それでもカノジョは「いいよ」って言ってくれた。
ドライブに繰り出す僕のクルマは免許を取ったときに親父が
近所の親戚からタダでもらってきたオンボロだ。
一応昔はスポーツカーの部類だったからホイールはちょっと「イイ」
らしいし、エンジンだって年式の割には「イイ」んだそうだ。
でもクーラーもパワーウィンドウもつかないそのクルマは
僕にとっちゃただのオンボロだった。
そのうえメンテナンスがイマイチだったらしくて天気が悪いと
すぐにグズってエンジンのかかりが悪くなるんだ。
自動車部のやつらが言うには「キャブ」だか「プラグ」だかが
悪いそうだが、心得のない僕にはどうしようもない。
ただ、ほぼ毎日乗っていたから始動のコツは見つけ出していた。
約束の日、約束の場所でカノジョを待っていた。
あいにくその日は雨模様…
ほどなく傘をさしたロングスカートのカノジョがやってきて
クルマの中から手を振るとこっちに気づいたみたいだ。
助手席に乗り込んだカノジョに話かけながらエンジンを始動しようとしたが
セルが回るばかりでかからない。
ホントは少しばかりのコツですぐかかるのだけど、少しおおげさに
エンジンがかからないオンボロさ加減を演出しただけなのだけど。
やっとかかった(風の)エンジンにホッとした振りをして
「こいつさ~、助手席に女の子を乗っけると不機嫌になるんだよね~」
と言ってみた。
どこかの映画でみたセリフを少しカッコつけて言っただけなのに
カノジョは一瞬悲しそうな表情になったんだ。
クーラーのない車内の湿度はかなりのもんで僕はゲンナリだったけど
カノジョはなんだかそれ以上に元気がなかった。
「酔った?」って訊ねたら「だいじょうぶ」ってカノジョ。
半日くらいドライブした後で次にあう約束をして別れたのだけれど
それから一月くらいお互いに忙しくて会う機会がなかった。
もう梅雨明けしそうなその日、不意に講義が休講になったから
カノジョに電話してみた。
「ひさしぶり!どう?今からドライブでも行かない?」
だって、夏の日差しが明るくて少し風が吹いていてすごく
ドライブ日和だったから。
カノジョは少し考えて「じゃ、ちょっと待っててね」といいながら
待ち合わせの場所を約束した。
前回と同じ約束の場所で、前回のドライブのときの元気のないカノジョを
思いだしてドライブはまずかったかな?と考えていた。
「おまたせ!」
窓枠に肘をかけていた僕に声をかけてきたそのヒトを
一瞬誰だか判らなかった。
だって今まで見たことのないボーイッシュな格好だったから。
助手席に乗り込むカノジョに「その格好どうしたの?」と訊ねたら
カノジョは少し戸惑って
「この車、女の子が乗ると不機嫌になるって言うから」だって。
不意に大笑いする僕にカノジョはポカンとしていた。
なんだか何かが始まる気がしていた。
「さ、ドライブ行こうか!」
僕はキーを捻り、今度は一発でエンジンを始動させた。
参加することになったコンパ、そこにカノジョは居た。
あまり気乗りがしなかった僕はわざと少し遅刻した。
聞いていた居酒屋の暖簾をくぐってキョロキョロしていたら
奥の席から「遅いよ~!」と声が掛かって
セッティングされていた空席に有無を言わさず座らせてしまった。
テーブルの一番端の僕の真向かい、そこにカノジョは居たんだ。
なんだかイマイチ雰囲気に乗り切れない風で
遅れてきた僕と同じように少し落ち着かない様子。
着ているものも周りの友人達みたいに流行のものじゃなくて
白いロングのワンピースで、カノジョに似合ってはいたけど
女の子っぽくてあんまり僕の好みじゃなかった。
「はじめまして」と挨拶をしたらカノジョは僕のグラスに
ビールをなみなみ注いだから少しこぼれてしまった。
お酒の勢いを借りて少しずつ話をしていたらカノジョも
ちょっと落ち着いてきたようだった。
好きな映画や俳優が一緒だった(ちなみにゲイリーオールドマン)
あたりから緊張もほぐれていい感じだったんだ。
終電が近くなってコンパもお開きになる頃には僕たちはケータイの
番号を交換していた。
「今度よかったら映画見に行かない?」
カノジョは「そうね」とかるく返事をして「じゃ、電話してちょうだい」
と答えてくれた。
カノジョはいつもワンピースやロングスカートの女の子っぽい服装で
映画に2回、買物に2回、デートというほどでもないけど僕の休日に
つきあってくれた。
「今度の休みにはドライブでも行かない?」
当然「いいよ」って言ってくれると思っていたら
カノジョは少し思案顔。
クルマに弱くてすぐに酔ってしまうらしい。
それでもカノジョは「いいよ」って言ってくれた。
ドライブに繰り出す僕のクルマは免許を取ったときに親父が
近所の親戚からタダでもらってきたオンボロだ。
一応昔はスポーツカーの部類だったからホイールはちょっと「イイ」
らしいし、エンジンだって年式の割には「イイ」んだそうだ。
でもクーラーもパワーウィンドウもつかないそのクルマは
僕にとっちゃただのオンボロだった。
そのうえメンテナンスがイマイチだったらしくて天気が悪いと
すぐにグズってエンジンのかかりが悪くなるんだ。
自動車部のやつらが言うには「キャブ」だか「プラグ」だかが
悪いそうだが、心得のない僕にはどうしようもない。
ただ、ほぼ毎日乗っていたから始動のコツは見つけ出していた。
約束の日、約束の場所でカノジョを待っていた。
あいにくその日は雨模様…
ほどなく傘をさしたロングスカートのカノジョがやってきて
クルマの中から手を振るとこっちに気づいたみたいだ。
助手席に乗り込んだカノジョに話かけながらエンジンを始動しようとしたが
セルが回るばかりでかからない。
ホントは少しばかりのコツですぐかかるのだけど、少しおおげさに
エンジンがかからないオンボロさ加減を演出しただけなのだけど。
やっとかかった(風の)エンジンにホッとした振りをして
「こいつさ~、助手席に女の子を乗っけると不機嫌になるんだよね~」
と言ってみた。
どこかの映画でみたセリフを少しカッコつけて言っただけなのに
カノジョは一瞬悲しそうな表情になったんだ。
クーラーのない車内の湿度はかなりのもんで僕はゲンナリだったけど
カノジョはなんだかそれ以上に元気がなかった。
「酔った?」って訊ねたら「だいじょうぶ」ってカノジョ。
半日くらいドライブした後で次にあう約束をして別れたのだけれど
それから一月くらいお互いに忙しくて会う機会がなかった。
もう梅雨明けしそうなその日、不意に講義が休講になったから
カノジョに電話してみた。
「ひさしぶり!どう?今からドライブでも行かない?」
だって、夏の日差しが明るくて少し風が吹いていてすごく
ドライブ日和だったから。
カノジョは少し考えて「じゃ、ちょっと待っててね」といいながら
待ち合わせの場所を約束した。
前回と同じ約束の場所で、前回のドライブのときの元気のないカノジョを
思いだしてドライブはまずかったかな?と考えていた。
「おまたせ!」
窓枠に肘をかけていた僕に声をかけてきたそのヒトを
一瞬誰だか判らなかった。
だって今まで見たことのないボーイッシュな格好だったから。
助手席に乗り込むカノジョに「その格好どうしたの?」と訊ねたら
カノジョは少し戸惑って
「この車、女の子が乗ると不機嫌になるって言うから」だって。
不意に大笑いする僕にカノジョはポカンとしていた。
なんだか何かが始まる気がしていた。
「さ、ドライブ行こうか!」
僕はキーを捻り、今度は一発でエンジンを始動させた。