バカ政がゆく

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『 学生服の袖口から覗いた黄色 』

2013-06-13 07:52:56 | Weblog
終業式を間じかの授業も終わり殆んどの生徒が帰った頃、帰ろうとしていたら、同じクラスの男子生徒が青ざめた顔で
「一緒にトイレに行ってくれないか」言うんだ。
母子家庭の妹との三人家族で真面目な奴が、逃げようの無い喧嘩を売られてしまった。

話はこうだった。

廊下で数人の悪たれグループとすれ違った時に、いわれの無い因縁をつけられ
「帰りに便所に来い!」って言われ、相手はもっと人数が増えているだろうし、何時も団体行動し弱いと感じたら呼び出し暴力沙汰に及ぶのがパターンなのは分っている。
そんな奴にチョイスされた運の悪さを呪い、逃げ帰る事もお袋一人で育ててくれた息子としちゃトイレに行くしかないよな。

そいつの気持ちが良く分る。
断る理由もないし、ある程度の覚悟を決めて「あぁ~いいぞ」

トイレに行くと廊下で因縁をつけてきたと、聞かされていた人数より増えて待っていた。

一人が前に出て
「俺と勝負ダっ」と始まった。
同時に即形勢断然有利になったら次々と手を出そうとし、二人で必死で動き回りその気迫に呑まれたのか買っちゃった。

これ以後、連中と廊下で会っても、お互いスーッと通り抜けて一件落着だったハズ。


終業式間近くなったある夜、炭鉱住宅地の中に鉱員家族専用の無料大衆浴場に、家と風呂の途中にあった同級生を誘って風呂に入っていた。
時間は午後7時ころだったな。
体を洗っていると、グリープの中の使い走り的小柄な同級生が服を着たまま入ってきて、「チョッと呼んでいるんだ。来てくれって」と言うとソソクサと出て行った。
体も半分しか洗っていないが、体に付いている石鹸をお湯で流し風呂の玄関から外に出ると、先ほど呼びに来た者が手招きして「こっち」と風呂場の暗い裏に呼んでいる。

この時、強がりでもなく本当に恐怖心を感じなかった。
自信なんて無いし、兄弟にもまれて育ったからなのかな?

あの連中がいた。
中央にらしき大人が一人立っていて直ぐ分った。
“〇〇の〇〇”という二つ名のヤーさん(ヤクザ)が、

「俺のかわいがっているコイツらが世話になったってなぁ~! どう落とし前つけてくれるンだぁ!」
「・・・・・・・・・・・・(無言)」

一緒に風呂に入っていた友達は、体半分をオレの体に隠すようにし俯いてたっている。

「こいつに詫びを入れろ!」
「・・・・・・・・・・・」

「何とか言ってみろってんだぁ」
「・・・・・・・・・・」

何を言われても、相手の顔から目だけは逸らさずに
「・・・・・・・・・」

段々とイラつきだしてきて、匕首(あいくち)を出し

「うぅんコラァ~」とか
「指落とすぞぉ」などと脅し文句を並べながら腹のあたりをチョンチョンさせ
「お前に殴られて口の中が切れてんぞォ! 飯喰えネェってよ、どうしてくれるんだぁ」
今度はボタンを弾きだした。


思いは
“なんで謝らなきゃなんねぇんだ”
“こいつらの言い分を呑んだら、明日からこの街、この地域に住めない”
この二つだったよ、踏ん張る柱は。


根負けしたのか
「しぶといやつだ」の棄て台詞と
「日を改めてもう一回やれぇ、こいつらには俺が付いているから忘れるな」
引き揚げていっちゃったが、後日決着を決定して。

事の発端でもあったクラスメートはこの話に無関係扱い、狙いは一人って訳。

何日か後に、隣の学校の仲良し番長君とこの事で相談したら、
「心配するなって、俺行くから」
ほかの学校の番長君の家にも連れて行ってくれ応援要請してくれたが話しが中学生には大きすぎた。

成り行きに任せるしか方法が無い、教師に相談したらどうだったのかと、今になって興味が湧いてきている。


日時は修業式を抜け出して人目に付かない浜って事にと決めたようだった。

室内体育館に全校生徒が整列しながら終業式を待っている時に、生活指導部の教師がステージに上がって生徒を見回すと、主な悪たれどもの顔が見えないのでピンときたらしい。
『何かをたくらんでいるナ』と。

それで、事前に全員キャッチされ、保健室に呼ばれた。
ここからが教師に対して更に拒否反応が増幅していっちゃう。


因縁をつけられたクラスメートと二人パイプ椅子に座り両手の平を膝に載せていた。
その姿勢になると、制服の袖が少し上がって下に着ているセーターの袖が前に座っている教師に見えた。
その色が『黄色』
すると「制服の袖をまくってみろ」

それからは、
「黄色なんてな派手な色を着て」とか、黄色・きいろ・黄色い色でグジュグジュウ。

9人兄弟(姉妹)で家には学校に通う5人とお袋の6人、親父は事業に失敗して雲隠れ、生活をお袋が野原を耕し人糞で野菜を育て、借金をし、つけ買いで育てていた。
やっと蕎麦屋の職人さんになりたての外に出ていた5人兄弟の中の一人が
「寒くなってきているのに着るセーターねぇ? これやるから着ろ」ってくれたのが黄色いセーターだった。

学校で制服を脱ぐ訳じゃなし、そうだったとしても黄色のどこが駄目なのか?!
この時ほど教師を『・・・・・・』と、以後ずーっと思い続けている。

〇〇の〇〇の話は出ない、匕首の事も出ないンだ。
相手方グループ全員からも聞き取り調査をしたはずなのだから、聞いて知っている。
鉄則のグループじゃないのだし、聞かれなくとも「何かいう事ないのか?」って言うだけである事ない事言っちゃうでしょうって
なんでそこだけ豆腐を切ったようにストンと無いんだ?

生活指導の教師たちに聞きたかったよな「あんたが中2か3でヤクザに匕首突きつけられたら平常心で登校できる?」
そこをケアーしないで黄色いセーターはないのではと今もあれ以来時々思い起こす。



保健室を出て、『オレ、黄色いセーターで呼ばれたぁ?』って錯覚したよ。

トイレの個室ドアを壊した事にも触れてこなかった。



あの時の俺たち二人が喧嘩強かったわけではない。
相手グループが威嚇して2~3発殴って、棄て台詞を吐き残して終わる何時ものパターン以外を予想していなかったのと、
俺たちは考えが違っていた。
友達は母子家庭で母親一人で3人の子どもを育て、その苦労を見て育っていた長男坊、理不尽な事で喧嘩を売られ呼び出され黙って殴られるわけにはいかないんだ。
俺も、無抵抗で殴られたり、侘びを入れたらお袋が踏ん張って食べさせてくれているのにそれは出来ない。
学校の廊下を歩けなくなってしまう。

「うちのクラスの〇〇は喧嘩強いだろう?」って聞いてきた教師、体の大きさじゃないんですよ。

『窮鼠猫を噛む』








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