Zaalvoetbal b.m.minami

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風待ち 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2005-01-26 | §コラム§
「雨が好きなあなたには悪いけど、
晴れた空の下でわりとうまくやれてるよ。」



――心象風景

オランダSRAEで活躍するコウホク人プレーヤー、A・タッケーイとの
インタビューの為、一路アムステルダムへ向かった。

日出ずる国コウホク出身の彼は、誤解を恐れずにいうと、
ドラマチックな「運」を持っていると思う。
もちろん彼の能力は疑いようもないし、彼自身、成長のために
人一倍努力をしていることもよく知られている。
b.m.minami時代は、毎日50g単位で体重をチェックして体調管理に努めていたし、
プレーヤーとしては決して恵まれてはいない体格だが、
それをスピードやテクニックで補う為、あらゆる事に全力で取り組んでいた。

私のいうドラマチックな「運」というのは、単なる「ラッキー」ではなく、
とても大きくて逆らいようがない、人生の「流れ」のようなものである。
例えば、彼は'04シーズン前半、b.m.minamiでは選手として数多くの
チャンスをものにしてきたけれど、シーズン後半からは体力的な問題を抱え、
ベンチを暖める日々が続いた。海外に移籍してもなかなか出番が回ってこなかったりと、
やはり良いことばかりではなかった。
しかし、注目すべき点は彼はそこで努力をやめなかった事。
そして人生の「運」や「流れ」としっかり向き合ってきた事にある。

空港へ向かう途中、当時オランダ移籍を決めた彼との最後のインタビューを思い出した。
「ただの夢だよ。」と彼は言った。
「夢は過去からくるものなんだ。未来からくるものじゃない。それは君を束縛したりしない。
君が夢を束縛しているんだ。わかるかい?」


「たまに連絡をとる友達は昔の話ばかり。
あの頃見てたものは、あれもこれも遠すぎてね。」



――Let me in

3試合出場で1ゴール1アシスト。(出場機会なし4回。)'05シーズン、タッケーイのこれまでの成績だ。
彼は今、どのような「流れ」にいるのだろうか。
インタビューはアムステルダム近郊のカフェで行われた。

―こちらでの生活はどうだい?
「快適だよ。フットサルというスポーツを行う上で、ここはパーフェクトだね。」
―でも今シーズンの成績自体は...。
「決して良い状況ではないよ。ただ、やるべき事は見えているんだ。」
―プレーに対してチームからは?
「特に何も言われていないよ。こういう状況だからこそ、ここに居れるのは助かるよね。」
―というのは?
「調子が悪ければ、調子を良くする事だけを考えていればいいんだ。
周りから余計な干渉が一切ないから、やりやすいよ。」
―復活は近そうだね。
「やれるか、やれないかは自分次第。でも、何かやれそうな気はしているよ。
ここは良い風が吹くんだ。」

フットサルはそもそも、ボールをゴールへ入れて得点となる競技である。
もちろん、試合中は皆、一つのボールを追いかける。厳粛かつ、明確なルールだ。
これは、侵しようのない事実でさえある。
さて、ここオランダは自己責任の国だ。
とくにSRAEでは練習時間も自由。練習内容も自由。
選手個人に外部が介入してくることはほぼ皆無であるといえる。

過度なチーム戦術、組織の軋轢、メディアへの対応。
コウホクでは最重な課題であったこれらはしかし、彼らの目には、
ズボンをはいたままパンツを脱ごうとしているようにしか見えないであろう。
なぜならフットサルとは、たった一つのボールをゴールへ入れさえすれば良いのだから。

「毎日、自分がゴールを決めている瞬間ばかりイメージしているんだ。
まるで何かに取り付かれているのかと思うくらい。」

彼は今、まるで詩人が句読点を整理するように、しっかりと、それでいてとても優雅に、
明確な一本道を歩いている。
このままではコウホク代表からも落選するのでは、との危惧も一部にはある。
・・・心配は要らない。
仮説には仮説なりの道を好きに歩ませておけばいいのだ。

―ところで今のこの状況で、まず何から始める事にしたんだい?
「髪を少し短くしたんだ。」

そうつぶやく彼の瞳は、運河にゆらめく木漏れ日の感じがした。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei