高校が同じだったますだくんのことを
クラスがいっしょにならなかったこともあって
在学中はほとんど知らなかった。
それが横浜に住んでいたとき、展覧会のはがきを貰って初めて
ああこんなひとがあの高校にいたんだと知った。
ますだくんは京都在住で
三島手という技法を駆使する陶芸家だ。
鎌倉の展示会場で初めて会った。
3年間同じクラスになったことがなかったので
お互いの顔に見覚えがなかった。
彼は長い髪をひとつに束ね
ひげを蓄えた芸術家の風貌だったが
話してみれば、徐々に
同じ場所で青春を送ったものの公約数を見つけ出すことができる。
あの子のことこの子のこと。
わたしの仲良し
ブーチンと同じ地区からかよっていたので
共通の友人の話で垣根がとれた。
それから話は彼の生い立ちにおよび
彼のおとうさんが公務員で
小さいときは京都の博物館のなかの宿舎に住んでいたのだと聞いた。
朝学校に行くときは「考えるひと」と守衛さんに送られていくのだとか。
それはなんだかうらやましかった。
それから話は互いの今に及び
彼自身の結婚も紆余曲折があったらしいことや
陶芸家の経済のたいへんさなども聞いた。
三島手という技法は土鍋などに使われている
小さな印を押していくものだ。
その印を自分で創り、フリーハンドで器に押していく。
茶碗を持っている。
写真がそれだ。
地がグレーのものが多いのだが
これはかわいいピンクなのが気に入っている。
フルネーム「増田繁臣」で検索すると
いろんな場所で展示会をしているのがわかる。
ネットでも買えるようだ。
(http://www.to-an.com/osusume.html)
陶芸家と職人の境界線をよく言われるのだというが
フリーハンドでぴたっと納まるその技術と
その美しさをいっしょに味わっている。
展示会が東京の画廊でひらかれたとき
会場でばったり
まゆみさんにあった。
ふたりは同じクラスだったそうで
東京在住のまゆみさんはよく展示会に顔を見せているそうだ。
ちいさな同窓会でいろんなひとの消息を聞いた。
そのときのますだくんはひげはそのままだったが
おつむはスキンヘッドになっていた。
とてもあたまのかたちの美しいひとだなと思っていた。