Augustrait





[提供:Oricon]
 三大監督が女の秘める三つの裏面を描く衝撃の官能映画.紀美は隅田川に停泊する小船をねぐらに,銀座のキャバレーで勤め,儲けは投資するしたたかな女性.キャバレーで彼女と出会った客の田畑と春元は,どちらが先に紀美を陥落させるか賭けをする.田畑は紀美を誘い,スマートなスポーツカーでドライブ,パチンコ屋でデートして彼女を落とそうとし,やがて紀美も田畑に熱い思いをささやくようになる….

 吉村公三郎,市川崑,増村保造が描く女性の「処世術」に「情」.原作は村松梢風.ここでの女経とは,女性の経済力を典籍(経)のごとく扱う乗数効果が狙われている.当時の大映が誇った三女優を主演に起用しているが,妖艶な色香は市川の第二話.

 隅田川のダルマ船に愛想を尽かし,銀座のキャバレーに勤める手練手管の女性投資家(「耳を噛みたがる女」).美貌を武器に住宅ブローカーの顔をもつ女性から,ターゲットにされた流行作家(「物を高く売りつける女」).嫁ぎ先の財産狙いと白い眼で見られる宿屋の女主人の空虚な心と,新たな喜び(「恋を忘れていた女」).

 雨月物語「蛇性の淫」を彷彿とさせる女の妖しさが前半には全開,だが後半は家の売買手数料を阿漕に徴収する守銭奴.これを軽妙に演じ分けた山本富士子の貫録には恐れ入る.怪談調とメロドラマ調の接続は唐突だが,緩急の落差が面白い.

 叩き上げで老舗旅館,茶屋を切り盛りする実業家となった元芸者を取り巻く連中のさもしさ――中村鴈治郎が出色――.不遇な女性の健闘に緊張の糸.この観点は,第三話で光る.第一話には,男を手玉に取る女性に秘められた「献身」と耳のフェティシズム以外に,特筆することはない.

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角川エンタテインメント

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原題: 女経
監督: 吉村公三郎,市川崑,増村保造

脚本:八住利雄
原作:村松梢風
企画:米田治 塚口一雄 藤井浩明
製作:永田雅一
撮影:宮川一夫 村井博 小林節雄
美術:柴田篤二 渡辺竹三郎 山口煕
音楽:芥川也寸志
録音:須田武雄 三枝康徐 橋本国雄
照明:米山勇 田熊源太郎 柴田恒吉
出演:京マチ子 中村鴈治郎 叶順子 星ひかる 村田扶実子
  • 101分/日本/1960年
    (C) 1960 大映