『ヤング・ジェネレーション』
早いものでマカーニー家を去る日がやってきた。一緒にヴィサカパトナムに行ったタッブーが、私の西瓜好きを教えたのか、前の日のデザートは西瓜で、勧められるままにバクバク食べてしまった。10日間なんてあっという間。ところがスシールが深刻な顔で言う。
「とーこ姉さん、チケット取れなかったんだ」
「またまた…。きのう取れたって言ってたじゃない」
「キャンセルしちゃった。ほら…」
と、スシールの差し出す乗車券にはCancelledのスタンプが押してある。
「え~!?」
「だから、今日もここに泊まるしかないね」
あわててよく見ると、日付が今日じゃない。本当はきのう出発する予定で、プネー以降の電車もそれに合わせて予約していたのだが、きのうの予約が取れなかったので、全て予約を取り直したのだ。
「もう、おどかして!ベーラン(チャパティーを伸ばす麺棒)でぶつわよ!」
と、笑いながらスシールの耳を引っぱる。
スシールは家長ブラトさんの唯一の息子で、次期家長候補だ。彼の世代の従兄弟達は、家業の車のパーツ屋と継ぐ気はなく、それぞれコンピュータ・エンジニアになったり、コンピュータ関係の学校に行っているが、スシールは跡継ぎとして働き始めた。
「ごめんごめん。プネーでもムンバイでも、みんなプラットホームに迎えにくるように連絡してあるからね。じゃ、とーこ姉さんが乗る電車の車両、シートナンバー、到着駅と到着ホームを言ってみて。プネーとムンバイの連絡先は?番号はちゃんと合っているね?」
おお、なんという念の入れ方!こんなしっかりものの弟がいたら、どんなに便利で心強いだろう。駅までスシールと、お嫁さんのジャルバーラーが見送ってくれた。
ジャルバーラーは1年ちょっと前にグジャラート州のアーナンドから嫁いできた。ジャルバーラーの家はジョイント・ファミリーではなく、日本のような核家族だ。アーナンドではグジャラーティー語が公用語なので、ヒンディーが苦手。マカーニー家ではグジャラーティーで通用するが、ドゥルグのあたりでは、ヒンディー語とチャッティースガリー語という土地のことばが使われているので、しょっちゅう家族に「ヒンディー語で話すように」と言われていた。マカーニー家の人たちが言うには、「ジャルバラーはとーこよりヒンディー語を話さない」のだそうだ。
でも私にとっては、『本場のグジャラーティー語が習える』格好の先生だったので、ジャルバラーにくっついて、グジャラーティー文字の綴り方や挨拶などを教えてもらっていた。ジャルバラーは料理もうまいので、台所でもなんだかんだと教えてもらった。
核家族育ちのせいもあって、ジョイント・ファミリーの中でも、ちょっと浮いた存在だったジャルバラーは、
「とーこ姉さん、好きよ!」としょっちゅう抱きついてきた。
「Ilove youは日本語でどういうの?」と聞かれ、
「女同士ならスキだけど、異性に言うならアイシテイマスかな」
と、何度も教えたのに、最後まで「アイスクリーム」と言っていた(^^;)。
プネー行きの電車は、間際に、予定していたプラットホームではなく、別のホームから出発されることになった。スシールは、私の重いスーツケースを細い身体で引きずって、あわてて階段を上り下りしてくれる。
「とーこ姉さん、これがインドなの。こんなことがしょっちゅうあるから、駅の放送に気を付けてね」
とジャルバーラーは言うが、今の放送はヒンディー語だけだったなぁ。聞き取れるだろうか。
早いものでマカーニー家を去る日がやってきた。一緒にヴィサカパトナムに行ったタッブーが、私の西瓜好きを教えたのか、前の日のデザートは西瓜で、勧められるままにバクバク食べてしまった。10日間なんてあっという間。ところがスシールが深刻な顔で言う。
「とーこ姉さん、チケット取れなかったんだ」
「またまた…。きのう取れたって言ってたじゃない」
「キャンセルしちゃった。ほら…」
と、スシールの差し出す乗車券にはCancelledのスタンプが押してある。
「え~!?」
「だから、今日もここに泊まるしかないね」
あわててよく見ると、日付が今日じゃない。本当はきのう出発する予定で、プネー以降の電車もそれに合わせて予約していたのだが、きのうの予約が取れなかったので、全て予約を取り直したのだ。
「もう、おどかして!ベーラン(チャパティーを伸ばす麺棒)でぶつわよ!」
と、笑いながらスシールの耳を引っぱる。
スシールは家長ブラトさんの唯一の息子で、次期家長候補だ。彼の世代の従兄弟達は、家業の車のパーツ屋と継ぐ気はなく、それぞれコンピュータ・エンジニアになったり、コンピュータ関係の学校に行っているが、スシールは跡継ぎとして働き始めた。
「ごめんごめん。プネーでもムンバイでも、みんなプラットホームに迎えにくるように連絡してあるからね。じゃ、とーこ姉さんが乗る電車の車両、シートナンバー、到着駅と到着ホームを言ってみて。プネーとムンバイの連絡先は?番号はちゃんと合っているね?」
おお、なんという念の入れ方!こんなしっかりものの弟がいたら、どんなに便利で心強いだろう。駅までスシールと、お嫁さんのジャルバーラーが見送ってくれた。
ジャルバーラーは1年ちょっと前にグジャラート州のアーナンドから嫁いできた。ジャルバーラーの家はジョイント・ファミリーではなく、日本のような核家族だ。アーナンドではグジャラーティー語が公用語なので、ヒンディーが苦手。マカーニー家ではグジャラーティーで通用するが、ドゥルグのあたりでは、ヒンディー語とチャッティースガリー語という土地のことばが使われているので、しょっちゅう家族に「ヒンディー語で話すように」と言われていた。マカーニー家の人たちが言うには、「ジャルバラーはとーこよりヒンディー語を話さない」のだそうだ。
でも私にとっては、『本場のグジャラーティー語が習える』格好の先生だったので、ジャルバラーにくっついて、グジャラーティー文字の綴り方や挨拶などを教えてもらっていた。ジャルバラーは料理もうまいので、台所でもなんだかんだと教えてもらった。
核家族育ちのせいもあって、ジョイント・ファミリーの中でも、ちょっと浮いた存在だったジャルバラーは、
「とーこ姉さん、好きよ!」としょっちゅう抱きついてきた。
「Ilove youは日本語でどういうの?」と聞かれ、
「女同士ならスキだけど、異性に言うならアイシテイマスかな」
と、何度も教えたのに、最後まで「アイスクリーム」と言っていた(^^;)。
プネー行きの電車は、間際に、予定していたプラットホームではなく、別のホームから出発されることになった。スシールは、私の重いスーツケースを細い身体で引きずって、あわてて階段を上り下りしてくれる。
「とーこ姉さん、これがインドなの。こんなことがしょっちゅうあるから、駅の放送に気を付けてね」
とジャルバーラーは言うが、今の放送はヒンディー語だけだったなぁ。聞き取れるだろうか。
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