パキスタン大使館のタナバナ展を見た後、目黒区美術館まで足を伸ばしました。「熊田千佳慕展~花、虫、スローライフの輝き~」が6月24日から始まったばかりです。
熊田千佳慕は、今年95歳の、虫と植物の細密画を得意とする画家です。千佳慕ちゃんの描いた本、「みつばちマーヤの冒険」や「ファーブル昆虫記の虫たち」などは何冊か持っていますが、ケント紙に描いてある原画で見ると、印刷では見えなかったものが見えて、すごいな~と興奮してきます。40代(1950年代)の作品、「ふしぎの国のアリス」の絵より、80歳を過ぎてからの作品の方が細かくてさらにきれい。虫も花も小動物も上手なのに、人間を描くのはあまり上手じゃないような気がします。「ふしぎの国のアリス」のアリスや「オズの国の魔法使い」のドロシーより、みつばちマーヤ(=蜂)の方が可愛い…。
昆虫は触角や鱗粉まではっきり描いてあるので、ちょっと恐いくらいですが、「森のレストラン」とか「糞の掃除屋」とつけられたタイトルを見ていると、こちらも人間の視点から虫の視点に変わり、グロテスクとは思えなくなります。
NIPPON日本工房やカネボウで働いていたときの商業デザインの作品も展示されています。同僚の土門拳の写真とのコラボ作品もありました。
別の展示室で、「山名文夫と熊田精華展~絵と言葉のセンチメンタル~」を同時開催していました。
山名文夫(やまなあやお)から、熊田精華へ宛てた手紙を中心に、山名文夫や熊田精華の絵や、同時代に活躍した友人の詩や手紙などが展示されています。熊田精華は千佳慕ちゃんのお兄さんで詩人、山名文夫は、千佳慕ちゃんの師匠すじに当たるそうです。
山名文夫も熊田精華も知らなかったのですが、山名文夫の絵を見れば、資生堂の花椿の人!とすぐわかります。山名文夫は字(書)も、詩もうまいのですが、やはりさらさらっと描いたように見える線書きの絵が一番好きです。
熊田精華の詩は読んだことがありませんが、千佳慕ちゃんの詩情はお兄さんの影響も大きいのかも。小さい頃、よく精華に本を読んでもらっていたのだそうです。ラビンドラナート・タゴールと、お兄さん(ジョティリンドラナート)のような関係だったのでしょうか。
それにしても、社内に、広告やパッケージを担当する意匠部を1910年代から持っていた資生堂はさすがです。資生堂の高価な化粧品には縁のない私も、販促冊子「花椿」は愛読していたし、資生堂のデザインは好きです。
千佳慕ちゃんめあてで行った目黒区美術館でしたが、山名文夫の絵が見られてよかった。一粒で二度おいしい。
「熊田千佳慕展」「山名文夫と熊田精華展」、ともに9月3日(日)まで。
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