6 Le printemps est venu to.大谷

『大谷　あたし就職決まった。』

リサから弾むような声で報告の電話が入ったんは
東京へ行くかもと聞いた日から5日後やった。

『やったなっ。おめでとう』

なんていいながらもほんまは『行くな。』なんて思ってた。
自分でも勝手やと思うけど彼女と離れるん寂しい奴はおらんはず…。

『でな…あたし3月の26日の夕方に出発するねん。』
『26日ってあと2週間後？』

『うん。』
『そっかその日は予定開けて見送りに行くわ』

見送りされたら泣くかもしれんなんてリサはかいらしい事ゆう。
あほか　そんなんゆわれたらこのまま何処へも行かしたくなくなるやんけ。

『あんな…大谷。25日大谷の誕生日やろ？』

3月25日。あ゛ーそんなんあった(笑)
ばたばたしとって　自分の誕生日忘れてた
（彼女だけやなく自分のんも忘れるって…）

『おぅ。』
『その時　大谷ん家へ泊りに行ってええかな？』

泊り？
ってなんやこの展開

最期の夜に…思い出に…

頭の中に浮かんだひとつの…エロそうな事を手で追い払う。
家に来たいって事は　家族もおるんやしそんな展開は絶対にない。

ないと思いつつも…

ちびっと期待してまうのは　オトコとして当然の事…

『えっ？おかんとかねえちゃんとかおるけど…』
『おるほうがええよ暫く帰って来れんねんもん。大谷家の人々に最期…』

最期ってなんや　なんの冗談や。って大きな声を出す。

『ちょ　耳痛いって　なにすんのぉ…』

『リサの　どあほっ』
『どあほってなんなんよ。（ぶぅー）』

『最期なんてゆうなって…。いつ帰ってきたらええねんから…。』

最期。（おわり）

終ってしまう事…もうナシになってしまう事
そんな単語吐き出されたら　正直不安になってしまう。

『…ん。ごめん　あたし…』
『わかったらええねん。ほなおかんにゆうとくわ　おかん絶対喜ぶでっ♪』

おかんに都合聞いてまた連絡すると電話を切ろうとした時

『大谷　ありがとう背中押してくれて　このチャンス逃さんとがんばるから
　　　お互い頑張ろなっ…おやすみ。…だいすきやで(ちゅっ)デヘヘ♪』

言いたい事だけゆうてリサは電話を切った。
心の中にある不安をオレは心の奥底に沈めた。