昭和は遠くなりにけり この国を愛し、この国を憂う がんばれ日本

昭和21年生まれの頑固者が世相・趣味・想いを語る。日本の素晴らしさをもっと知り、この国に誇りを持って欲しい。

親日国トルコ7 日本人をトルコが救出2

2016-05-09 02:01:00 | 親日国
トルコ機による日本人の救出はエルトゥールル遭難に対する百年後の恩返し・・・・・・今までの経緯でそう感じた方もおられるでしょう。
これから経緯を語るのに最初に次の事を述べるのは”手品の種明かし”をするようで気が引ける。
が・・・・・ハッキリ言っておこう。
この救出実現にトルコが動くきっかけを作ったのは、政府でも官僚でもなかった!これを実現させたのは”一民間人”であった。
伊藤忠商事のトルコ・イスタンブル事務所長・森永堯(たかし)さん、その人である。
森永さんに大きな敬意を払いながら、それでは物語を語りましょう。


伊藤忠商事のトルコ・イスタンブル事務所長・森永堯(たかし)さんの電話が鳴った。日本の本社からだった。相手はいきなりまくしたてた。

イラクのサダム・フセイン大統領が、「1985年3月19日20時以降、イラン領空を通過する航空機は民間機といえども安全を保障しない」と警告を発した。

イランにいる在留外国人は一斉に出国しようとしている。在留邦人も脱出しようとしているが、乗せてくれる飛行機がない。
ついては在留邦人救出のために、トルコ航空を飛ばしてもらうよう、トルコ政府にお願いできないか?
 彼らは危険にさらされているのだ! 頼む! 助けてやってくれ!

1980(昭和55)年に始まったイランとイラクの戦争は、5年経ってますます激しさを加えていた。1985(昭和60)年にはイラク空軍機はテヘランの民間居住域を空爆するまでになっていた。日本人学校の先生宅の2軒隣に爆弾が落ちて5人の死者が出ていた。
さらにイラクのフセイン大統領は、イラン領空を「戦争空域」と宣言し、民間航空機もすべて撃ち落とすという、歴史的にも類を見ない声明を出したのである。

当時、テヘランにいた野村豊・駐イラン大使は当時の状況をこう語っている。
在留邦人の生命財産の保護は国の主権として大使館の一番重要な仕事のひとつで、私の脳裏を一刻も離れることのない問題でした。外国は自国民が外国でクー デターや災害等に巻き込まれると救援機や運搬機で自国民を救出する慣例がありますが、日本は55年体制論争が続いており、当時、救援機や政府の専用機を所持していませんでした。
「55年体制論争」とは、社会党の「自衛隊を海外に出す事は、侵略戦争につながる」という主張によって、海外在留邦人救出のための手段が必要だと言う声も、押しつぶされていた状況を指している。

17日にフセインが出した「イラン戦争区域宣言」を受け、私はただちに日本へ救援機派遣要請を出しましたが、本省から、救援機派遣にはイランとイラク両国の安全保障の確約を現地で取得するよう指示がありました。民間航空機の乗務員の安全確保が優先されたからですが、そのような確約は不可能でした。

自衛隊救援機も出せず、政府専用機もないので、民間航空会社に要請するしかないわけだが、その乗務員の安全確保が保証されない以上、日本からの救援機は出せない、というのである。
空爆の恐怖に曝されている現地在留邦人は、日本政府から見捨てられた形になっていた。

当時は、JALもANAもテヘランには乗り入れてなかった。危険を感じていた在留日本人の中には、欧州各国の航空会社に発券を申し込んでいたが、どの航空会社も「自国民と外交官を優先しなければならない」と拒否した。

ソ連のアエロフロートなら乗せてもらえるというので、オープン・チケット(搭乗日未定の航空券)を事前に入手していた日本人も多かった。当然、搭乗できると思っていたので、空港のアエロフロートのチェックイン・カウンターでチケットを提示して、搭乗手続きを行おうとした。

ところが、アエロフロートは「ソ連人かワルシャワパック加盟国(ソ連陣営の共産国)が優先」と言って取り合わない。

どこの航空会社も「自国民優先主義」が国際常識で、日本人を乗せてくれる会社はなかった。特に、家族連れの日本人駐在員は、奥さんや子供たちを脱出させる便が見つからないことから、絶望感と焦燥感でパニック状態に陥ってしまった。

こうした窮状が伊藤忠のテヘラン事務所から、東京本社に伝えられた。東京本社から、「頼む! 助けてやってくれ!」という悲鳴のような緊急電話が入ったのは、こういう状況だった。

これを依頼された森永さんの想いはどういうものだったのだろう?
私はこの事情の中で各国の航空会社の「自国民優先」という方針は止むを得ないものと思っている。ただ、アエロフロートはオープン・チケットを持っていたのにひどいな~との印象は残る。
さて、森永さんの行動は次回に続く・・・・・
コメント
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