かつてア(略

ああああああああああああああああ!

ある平行世界での可能性①『どうしても、お前を諦められなかったんだ』 その5(終)

2007-09-25 20:47:30 | 涼宮ハルヒの二次創作
「…稲葉が、何か切なそうだね……。成崎と付き合えちゃうんだから、いっそのこと、デートの約束でも取り付ければ良かったのに……」
「あいつは…、涼宮に少しは未練を残しているような気がするぜ…。でも稲葉なら、この失恋とかを乗り越えて何とかやってくれるって、信じてるからさ。個人的には、稲葉と成崎は結構お似合いって感じがするな」
「そうよね…」

…あたしがそう言って、静かに降り積もる雪としばしの沈黙が流れたあと、成崎が稲葉に『一緒に帰ろう』と誘っていた。もちろん彼は承諾してたし、意外なことに手を繋いで歩いていった。『稲葉はそれでいいのよ』とホッと胸を撫で下ろした。…でも、今度会ったら、『実は告白したの?』って質問してあげようかしら。昨日電話したときは「告白する人はいない」と言ったけど、真っ赤な嘘よね?まさか自然な形で手を繋いで帰っていくなんて、怪しいわよ…まったく。
そして恋人同士になったあたしとぐっちゃんも、雪が降る中、手を握りあって学舎を後にしていく。…いろいろ騒動を起こした三年間の終わりは、静かに終わらせたかったのも山々だけど、クラスメイトの前でぐっちゃんに告白させたのは…間違いじゃなかったのかもね。でもぐっちゃんも言ってたとおり、この手の告白は諸刃の剣だよね。在校生のみんなが真似てしまって、この学校の伝説になるのは止めてほしいな…と思ったり。



・学校の帰り
「俺、本当に嬉しいぜ……。こうやって手を繋いで歩いたことないから。ナンパばっかりしてた頃も、一回くらいはこういうシチュエーションで歩きたい…と思ったけどさ」
「だからぐっちゃんもあたしを見失わずに、デートするときじゃなくても、遠慮せずに手を繋ぎなさいよ?毎日でも、数時間毎でも、あたしが急用にかからなかったらいつでもそうしてあげるから…ね?」
「そりゃ嬉しいけど……俺としちゃちょっと恥ずかしいぜ?流石に『バカップル』とは呼ばれたくないし、俺だってハルヒと一緒でも一人気ままに歩きたいときだってあるさ。…その点は理解してくれよな……頼む//」
「……ごめん。ちょっと強引すぎたかな?でも、あたしはあんたと手を繋いで歩くことで、恋人同士だなぁって実感できるし、…何より、心がウキウキしちゃうからね。…ぐっちゃんだって『初めて好きになった人と結ばれたい』って思ってるでしょ?」
「当たりめぇだろ!そう言われて本当に嬉しくてたまんないからさ。…そうだ、ハルヒの頭に雪が積もってるけどさ…、大丈夫か?」

そう言ってぐっちゃんは、あたしの頭に積もっている雪を優しく取り除いてくれた。ぐっちゃんの頭の方にも積もっていたから、ちょっと頭をはたく感じで取り除いてやる。…ぐっちゃんがちょっと怒った感じになっているけど、あたしは無視して会話を続ける。

「…バレンタインデーにくれたチョコ、本当においしかったわよ。感想を言える時間が無くてこんな形で言っちゃうのもあれだけど…」
「ありがとうな…。バレンタインにチョコをあげるのは、別に男から女にあげてもいいっていうのは分かってたから、ハルヒにぜひ味わって欲しいなと思って…作ったんだけどさ……。ハルヒが作ったのもおいしかったぜ?甘すぎず、苦すぎず…ホント、料理を作るのも神がかってるよな……。俺にもその才能の一つか二つくらい、欲しかったって思うしさ……」
「…ふふっ、ぐっちゃんとあたしの子供ができたら、きっと叶えてくれる…かもね?…これからも色々と越えなきゃならないことはあると思うけど、ぐっちゃんと一緒なら、きっと乗り越えられると思うし、ダメだったとしても、一歩一歩、一緒に歩んでいけばその内どうにかなると思うわよ…。だから谷口君、キスさせて下さい!…ってね!」
「あのさ…//キスはいいけど、子供って、まだ早いんじゃ……//」
「二十歳になったら学生結婚して、就職して二年後くらいには…身体を重ね合って子供を作って、幸せな家庭を作りたいのよ?あたしの人生設計はそれなりにできてるの。…だから、強引だけど付き合ってちょうだいね?ぐっちゃん!(思いつきで言ってやったって言えないけどね…///)」
「か、構わないぜ……。でも、俺も恥ずかしいし、家の前で言うんだったら良かったんじゃ…ないかなって……」
「ご、ごめん……//あ、あたし、結構大胆なことを言って自爆してるよね……」
「別に、俺としては気にしてないけどさ。あのさ…、大学でも、頑張ろうな?そして……幸せになろうぜ、ハルヒ!」
「うん……。じゃあ、ぐっちゃんの耳たぶをいっただっきまーす♪」
「ちょ、うおっ!?」

ぐっちゃんがあたふたしてる隙に、あたしは強引に右手でぐっちゃんを引き寄せて頬にキスをし、すぐさま耳たぶに優しく甘噛みしてやった。ぐっちゃんは顔を真っ赤にして怒ろうとしてるようだけど、あたしの笑顔にやられたのかデレデレしている。なんか男なのに可愛いく思えるのよ!

「こんな雪の中で大はしゃぎするなよ…ハルヒ…。でも、一瞬だけ感じちまった……。何やってくれてるんだよてめー!ってな」
「えへへっ♪…だけど、ぐっちゃんも結構可愛くて、ちょっと情けない感じだったよ?」
「ば、ばか……」
「…ところで、ぐっちゃん」
「何だよハルヒ……」
「…谷口君の唇に、キスさせて下さい!//////」
「う、うん…いいぜ//」
「…けど、終わったら帰るわよ。風邪引いちゃ元も子もないし、あたしも暖まりたいしね」
「俺もだ……。ブレザーは少し濡れてるし、風邪引いたりしたらこんな幸せも元も子もないしな」
「じゃあ決まりね!…ぐっちゃん、目を瞑ってちょうだい」

…あたしは、ぐっちゃんの目が瞑ったことを確認して、目を瞑る。何の許可も得てないけど、ぐっちゃんの頬に両手を添えて、そのまま優しくキスをした。
雪がちょっと強くなっても、お構いなしにお互いの体温を確かめつつ、最初のキスよりちょっと長く交わしあった。
…本当に不思議だよね。中学時代にあれだけあたしに失礼なことを言っていた男の子がすごく真面目になって(ちょっとキザになってたりするけど)謝った上で、あたしに告白するなんてさ……。べ、別にあたしはぐっちゃんの事は嫌いじゃなかったし、…むしろ、好きなのよ?////キョンも稲葉君も彼女が出来てたみたいだし、ぐっちゃんも彼女が出来るのはきっと既定路線だったと思うわよ?うん。さて…

「ぐっちゃん!さっさと帰るわよ!」
「…ありがとな、ハルヒ。最後に…ちょっと情けなくて馬鹿な俺だけど…よろしく」
「…あたしも、これからも一緒に頑張らないとね!…よろしくね!ぐっちゃん!」



…こうして、あたしとぐっちゃんにとって、いや、北高としても記録に残るような一日は幕を閉じた。…ううん、家に帰るまでが学校だからまだ続いてたか。この後、あたし達五組の生徒達どころか、この年の北高の卒業生全員が全員進学・就職を決めたということで、地方紙でも話題になったけど、それはまた別の話。それと、ぐっちゃんもあたしを送った帰り道に突然現れた元吹奏楽部の豊原に告白されかけて、気分が悪くなった上に風邪を引いてしまって、合格発表の日まで寝込んでしまったのは…まぁ、どうでもいいけどね。



大学に行っても、あたし達はすごくうまく行ってる。一部からは「五週間は言い過ぎだが五ヶ月で別れるんじゃないか」と言われたけど、あたしもぐっちゃんも、互いに手を繋いでキャンパスに行ったり、週二くらいのペースでデートしたり、時にはSOS団の活動をしたりして絆を深めてる。周囲からは案の定『バカップル』とか言われちゃってるけど、勉強はしっかりやってるし、マナーだってきちんと守ってるから、そんなに気にしてないわ。

「あのね、ぐっちゃん…今度のデート、どこに行く?」
「俺は神戸市立王子動物園がいいな。パンダを見たいし、インドホシガメがのんびり歩いている様子とか見てみたいぜ」
「じゃああたしもそこでいいかな。あたしはオウムに『SOS団は今日も活動中』って言わせたいなと思うのよ!あたしながら結構いいと思うけど、どうなのよ?」
「いいんじゃない?でもオウムに言葉を覚えさせるのは結構難しいらしいけどな」
「…そうかな……やってみないと分からないかもね?」
「無茶しやがって。突然だけど…ハルヒ、愛してるぜ……」
「あたしもぐっちゃんの事、愛してるんだからね……」



これからもあたし達二人が、いつまでもいつまでも、幸せでいられますように……。

「ずっとあたしのそばにいてよね…、ぐっちゃん!」
「ずっとついていく…じゃなくて、ついて来いよ、ハルヒ!」

あたしはぐっちゃんと顔を合わせると、頬にキスしあい、それから唇に軽く触れるだけのキスをした。
9月まで続いた夏休みと異常とも言える残暑が終わり、ようやく秋の便りが来た後学期のはじめの日は、青空が広がっていた。いつものように手を繋ぎながらキャンパスへと向かうあたし達を、その青空の中にぽつんと浮かんでいた雲は優しく見守っているようだった。



Fin.
その4へもどる   その5(終)   あとがきへ


最新の画像もっと見る