「そうだね、八っつあん。毎日暑いよな」
「でもなんですね、ご隠居はいつも涼しそうで・・よがすね~~」
「いや、そんなことはないよ。ただ水はよく飲むようにしているから、あまり汗はかかないんだ。
それに隠居の身だから八っつあんみたいに外で働くこともないしね」
「なるほどね。まあご隠居の歳であまり炎天下に出歩かない方がいいすよね」
「外に出るときはなるべく家の日陰を伝って歩くしなー」
「なんかヤモリみたいすね。そういや長屋の大家もこの前の大風の時に、ヤモリみたいに雨戸に張り付いていましたね」
「それは雨戸が飛ばされないように支えていたんだろ。見ていたんなら若い者たちで手伝ってあげればよかったじゃないかい」
「いや、みんなで見ていてね、あの雨戸が飛んできたら隠しておいて後で薪に使うか、と話していたんですよ」
「なんだい::それは。金べえさんも苦労するね」
「へえ」