2017年11月17日 / 12:07 / 18時間前更新
*コラム:世界の富巡るパラドックス、資産格差の是正あるか
今回流出した内容に対しては、「富裕層とその他大勢には別のルールが適用されている」という反応が一般的のようだ。
さて、クレディ・スイスの予測は、グローバルな格差の縮小を示しているのだろうか。予測に示された主張を見てみよう。
クレディ・スイスの予測によれば、世界の富は2017年の280兆ドル(約3京1500兆円)から、2022年には341兆ドルへと2割以上膨らむという。
その一方で、保有純資産が1万ドル以下の成人比率は、現在の70.1%から66.4%へ急減すると予想されている。これは、かなりな減少であり、世界の最貧困層全体において、保有資産レベルが上昇しつつあることの明確な証拠である。
こうした変化のかなりの部分は、保有純資産1万ドルから10万ドルの「中間層」が世界規模で増大し、成人全体に占める比率が現在の21.3%から24.4%に拡大することによるものだ。
これは、クレディ・スイスの報告書における4つの資産層区分のなかでも最大の増加である。世界で約2億3000万人が、今後5年間で「中間層」のカテゴリーに昇格する。その5人に2人は中国人だ。
2000年には、世界資産全体に占める新興市場国の保有割合は11%だったが、今年はほぼ2倍の19%、2022年にはさらに22%への上昇が見込まれている。新興市場国における資産生成率は今後5年間で年6.5%と、先進諸国の2倍のペースになると予想されている。
つまり、世界の最貧国は豊かになりつつあるのだ。
<上位1%が世界資産の半分保有>
だがそうした状況の一方で、富裕層はさらに速いペースでその資産を増やしている。
クレディ・スイスの認識では、資産格差はここ数年「拡大傾向」にあるという。理由の一端は、金融資産の比率が拡大していることだ。
同行では、資産測定について3つの構成部分を設けている。株式や債券などの金融資産、不動産などの非金融資産、そして債務だ。もちろん、近年で最も大きく変化したのは、膨れあがった金融資産だ。
これは富裕層、特に超富裕層にとって恩恵となった。資産額ランキングの上位1%は、2008年の世界金融危機の最中では、金融資産全体の42.5%を保有していたが、現在はその比率が50%を超えている。
また、あらゆる種類の資産全体で見ると、上位1%の保有比率は、2008年には43%だったが、今年半ばまでには50%に増大した。
大切なことだから繰り返しておこう。世界全体の最富裕者層上位1%は、現在、世界総資産の半分を保有している。そして、その比率が低下する兆候は見られないのだ。
「2000年以降の資産ピラミッドのなかで、富裕層と超富裕層の個人セグメントほど大きく変化した部分は他にない」とクレディ・スイスの報告書は述べている。
「ミリオネアの数は170%増加した。純資産5000万ドル以上の超富裕層の数は5倍に膨らみ、各資産層の中でもずば抜けて速いペースで増大している」
今後5年間で、純資産100万ドル以上を保有するミリオネアは、現在の3600万人から4400万人へと20%以上増大すると予想されている。
超富裕層の数はさらに速いペースで伸びようとしており、5年間で4万5000人増加し19万3000人に達する、3割成長が見込まれている。
新興市場国における富裕層・超富裕層は、今後5年間で「大幅に」増加すると予想されている。
クレディスイスでは、純資産100万ドル以上のミリオネアの増加率が、中国では40%以上、インドとラテンアメリカでは50%以上、アフリカでは70%以上になると予想している。
つまり結局のところ「トリクルダウン」と呼ぶのはあまりふさわしくないのだ。「上げ潮はすべての船を持ち上げる」と言うべきなのだろう。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
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