米国の軍事力が持つ、圧倒的な優位だ。通常戦力でも攻撃に制約がなければ、北朝鮮の体制崩壊も実現できる。
だが、現実的にはそのような攻撃はできない。韓国と中国が反対するからだ。韓国は大規模攻撃を許容しない。戦時体制シフトによる負担や経済的不利益だけではない。
北朝鮮に住んでいるのも同じ民族であり、いわば親類縁者だからだ。民間被害を伴う大規模攻撃も認めまい。
金正恩体制を倒すための飢餓作戦となれば、韓国軍を差し向けてでも妨害し、空爆の危険を冒してでも食料を運ぶと思われる。
中国も反対する。北朝鮮の金正恩体制には冷ややかであっても、自国の影響圏であり、現体制が倒れることには耐えがたい。
米国の大規模攻撃による民間被害には許せない旨を伝え、さらには義勇軍を送り、大規模援助によってその存続を支えることも示唆するだろう。
結果として米国は反対を押し切ってまでも攻撃はできない。北朝鮮だけはなく、中国と韓国も敵にしてしまうからだ。
現実にできるのは小規模な攻撃だけ。大義名分が立ち、かつ、中韓が肯定できなくとも看過できる範囲の攻撃である。具体的には核・弾道弾の生産施設、あるいは軍用航空機と軍艦といった、純粋な軍事目標に限定した攻撃になる。
そして米国国民の溜飲は下がり、トランプ大統領の支持率が上がるかもしれない。それでも北朝鮮情勢は改善しまい。逆に悪影響を生む。
なぜなら北朝鮮の指導部に、「侵略を撃退した」など自国民向けの成果を与え、同時に「米国は北朝鮮を全面攻撃できない」確信を与えてしまうからだ。
北朝鮮の従来路線は見直されるどころか強化される。核兵器や弾道弾の優先順位は上がり、それらの整備はむしろ加速されるに違いない。
東洋経済新聞社からの引用記事
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます