マティス国防長官とティラーソン国務長官は連携して、アメリカが対イスラム国戦争で有志連合を組んでいるイラクの扱いについて、大統領令の渡航禁止リストから外させる動きをした。
また、オバマ前政権とイラン政府が結んだ核合意の見直しは選挙中のトランプ大統領の主張だったが、両長官ともに実際に行うことは賢明だとは考えておらず、見直しの選択肢は採られていない。
またトランプ大統領は選挙戦で、北大西洋条約機構(NATO)との同盟関係に批判的だったが、シリア攻撃後にティラーソン国務長官がロシアでプーチン大統領と会談をしている
4月12日、トランプ大統領はホワイトハウスでNATO(北大西洋条約機構)のストルテンベルグ事務総長と会談して共同で記者会見に臨み、「NATOを時代遅れ」と言った自分の過去の発言を撤回して、NATOの重要性に改めて言及した。
シリア攻撃を契機に、それまでの「ロシアとの連携によるイスラム国対策」という外交の主要方針を大きく変えることになったのである。
そもそも外交安全保障分野で、このように客観的に非現実的な政策をトランプ政権が打ち出してきたのはなぜなのか、という疑問が残る。これは、バノン首席戦略官のイニシアティブと考えると符合があう。
アメリカ保守思想研究の会田弘継・青山学院大学教授によれば、バノン首席戦略官には、西欧は過激派組織「イスラム国」のイデオロギー拡大路線との戦いで、実態を理解しないまま敗北しつつあるという認識があり
この戦いに勝つためには、ロシアなどライバル国と、これまでの摩擦には目をつぶって連携して対処する必要があるとの考えがある。
会田教授はこれを「文明衝突観」とでも呼ぶべきと指摘しているが、このあたりに、これまでの政策の優先順位の理由がある。
しかし、現実派のマクマスター補佐官やマティス国防長官は、シリア空爆をきっかけに、トランプ政権の外交安全保障政策を、バノン主導の「革命政権的」なものから、共和党保守派の現実的な方向に動かしている。
現代ビジネス からの引用記事
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