アカバネーゼのささやき

夫の裏切り!妻の仕返し!夫婦とは?自立に目覚めた私が起業するまで!

いきなり拉致

2006年05月31日 | Weblog
毎日寒い日が続いていたガ、私だけが毎日ホットな気分で通勤していた

デパートも何にもない駅だったが、私には魅惑の街だった

いつもNさんの物件の情報が行き交い、まるで同じ物件にいるかのように仕事が楽しかった

クリスマスが近づき、街はステキなイルミネーションがあふれていたが、私には駅前の銀行の安っぽいクリスマスツリーの写真でさえ心躍る風景だった


クリスマスイブの前日、もう冬休みに入ってしまったた子供をどうしようか…?と悩んでいたら、仲良しのお友達が一緒にクリスマスパーティをしましょう!と声をかけてくれた


別にやましい事なんてないわ!

だって、今日はモデルルームのクローズのお手伝いだもの!!



・・といいつつ、何を着て出勤しようか…と悩んでしまった、、


あまり嬉しそうなワンピースだと、仕事に行くのに変だ…
いつものスーツとコートでは、あまりにも芸がない

思い切って、ビーズのたくさん付いたピンクのモヘアのセーターに、白のスカートを合わせてみた

だって、一年に一回のクリスマスだから。。。

べつに…他に、理由なんてないわ!


朝から販売センターの大掃除と書類の整理、年明けのイベントのご案内の準備・・・、みんななんだか今日はソワソワしている!
・・と思うのは、私だけかしら?


「今日は、もうその辺で終わりにしましょう。みなさん!今年1年、おつかれさまでした!」

最後に、みんなでお客様用のコーヒーで乾杯をし、今年の仕事納めは終了した


…本当に、私にとってすごい飛躍の年だった
あの廃人のような日々から、今の私を誰が想像できただろう…?


占いを信じて準備した日々、期待にあふれた面接の日、合格が決まった日、初めての勤務、・・・そして仕事と出逢い…めまぐるしい1年を思い出した


着替えが終わると、誰かがランチに行こうと誘ってくれたが、みんなも忙しいらしく年の瀬ランチは中止になった


・・・どうしよう?

このまま帰るのは早すぎる…

でも・・・


駅に着いたとき、おもいきってメールしてみた

「こちらはもう終わりました。そちらはどうですか?もしもまだ忙しいようなら、また今度ゆっくりお話しましょう。メリークリスマス!」


「○○スーパーの前で待っていてください」


??冬休みに入ってしまったら、しばらく逢えなくなってしまうから、少しだけ顔がみたいな…

それだけだよ

一瞬顔を見たら、もう帰るから…


「赤羽っち~」

彼が走ってきた

手にはすごい書類の山と、飲みかけのペットボトルとコートを持っている


振り返ると、彼はいきなり私の手を取り、そのままタクシーに手をあげた


私は、何がなんだかわからないままタクシーのシートに乗せられた


「すみません、横浜までお願いします」

「は?横浜??ここからタクシーで?」

彼はまだ息を切らせている


「もう、仕事は終わったの?」

彼はまっすぐ前を向いたまま首を振っている


「だって、こうしなきゃこのまま家に帰っちゃうじゃない。」



車が首都高に乗ってからも、彼は手をにぎったまま、ずっと前を向いている

きっと、仕事が途中なのだろう、、、携帯電話の呼び出しの振動音が響いている


でも何も言わない…

何も言えない…


胸がずっとドキドキしている

そっと彼の顔を見てみた


ずっと目をつむっていたが、急にこっちを見た

「今日だけ一緒にいて?」

すがるような目だった


私は、まだ冷たい彼の手をそっとにぎり返した


タクシーはどんどん西に向かって走っている

料金はもう6000円を越えていた

二人とも無言だった・・


でも、なんだか彼と一緒にいると安心できた

タクシーのラジオからクリスマスソングが流れていた




・・・つづく



出逢ってしまった二人

2006年05月30日 | Weblog
「・・・ふ~ん、なるほど…。本当にこんな出会いがあるのね~

占い師の夫人は、年季の入った本と、ノートに書き写した漢字を並べながら頷いている

「まず、ご主人とあなたの事をお話しましょうね」

「はい・・・」

「ご主人とあなたはすごく縁が深いの。ご主人は、あなたの監視役のような人。それはあなたを大切に思っているから、あなたが危なっかしくて心配だから必死で守っている人ね。」

「はい。辛口ですが、一番私の性格をよくわかっている人だと思います。たぶん両親よりも私を知っているかも…」

「ご主人は、本当は妻が家にいて欲しい人。でも、あなたは家にいられない人でしょう?外で魅力が発揮される人だから、今までよく我慢したわね。・・・以前、夫婦にとってしんどい時期があったんじゃないかしら?このご主人は優しいし、おしゃれだし、マメだからモテると思いますよ。」

「はい、女性関係はありました。」

「でも、それはあなたにも原因があるのよ。」

「え?私ですか?」

「あなたが無意識にご主人にコンプレックスを持たせたのだと思うな」

「なんだかわかるような気がします」

「ご主人への感謝を忘れてはいけませんよ。今のあなたを支えてくれているのはご主人なんだから。」

「はい、、、つい忘れていました。。」

「さて、彼は・・・?んん、ずばりあなたに愛情を注ぐ人。出逢った事で、お互いに自信を持ったんじゃないかしら?…いや、助け合うために出逢った人かな?」

「歳の差があるし、これは本気の気持ちなんですか?」

「彼の気持ちは本気。すごく誠実。嘘のつけない人だから。彼からいっぱい愛情をもらって、その愛情を家族に注げばうまくいく関係かな?」

「家族に?」

「家族をきちんと治めることができない人は、不倫はしちゃだめ。彼の出現は、いつも頑張っているあなたへのご褒美かな…」

少し間をおいて・・・


「う~ん、必ず彼がバランスを失うときが来るから、その時はあなたがきちんと彼に決断させてあげなければならないことがあると思う。」

「え?バランスを失う?」

「これを乗り越えたら、また、関係が変わるわよ。」

「このままでいいんですか?」


「だって、もう二人は出逢ってしまったんだから」


・・・帰り道、私は占い師を尋ねる前よりも不安な気持ちになっていた

これから、私たちに何が起こるのだろう?

私はどうすればいいのだろう?



それから、間もない寒い夕方、仕事を終えてロッカールームで着替えていると

「おつかれさま~、今日、美味しいシュークリームを買ってきました。帰りにこちらの販売センターを通って帰ってください」

と、彼からメッセージがあった

お腹がペコペコだった私は、シュークリームと聞いて、すぐに着替えて彼の販売センターへ急いだ

寒くて寒くて凍えそうだったが、なんだかウキウキだった

シュークリームが目的だったが、本当は彼に逢いたかった

販売センターの近くから

「今、近くにいます!」

とメールした


「今、終礼やってるから、寒くないところで少し待ってて下さい。」

私はマフラーをグルグル巻きにして、なるべく風の来ない近くのパーキングの影で壁にもたれて待っていた

10分ほど待っていると、すごい勢いで彼が走って来た

スーツの上着も着ずに。ワイシャツ姿だ!


「ごめんごめん!待たせて~寒かったでしょう?」

「いえ、その格好じゃNさんの方が寒いでしょう?」

「あ、上着わすれちゃったよ。そういえば寒いな!!」

・・と言ったとたん、彼は私の手を包み込んで


「ごめん、ごめん、こんなに冷たくなって・・・」

と謝った


私は、包まれた手の方にめまいがしそうになり、身体中が熱くなってしまった

「あの…もう、大丈夫ですから…

「あ、ごめん。これシュークリームがすごく美味しいお店のなんだ。家族で食べてください。」

「あ、ありがとう」

「あの~クリスマスは仕事ですか?」

「たぶんクローズの片付けです。」

「じゃあ、午後、あけておいてもらえますか?」

「え、あ、はぁ…」

「じゃ、お客さん、待たせてるから。気をつけて帰ってね」

「ありがとう」

彼は寒空をふりかえり、


「その白のコート、めちゃくちゃかわいいよじゃぁ・・」

と足早に消えていった


・・・

なんか、顔が熱くてマフラーを解いてしまった

たぶん、今、東京都内で熱いと感じているのは、私一人だろう…




・・・つづく




再び占い師へ…

2006年05月29日 | Weblog
ある日、結婚を8ヶ月先に控えたカップルが、仲良くマンションを見に来られた

カップルが到着される5分前にNさんからファックスが来た

「こちらの物件を検討されていますが、なかなか決心がつかないようなので、そちらのファミリータイプを見てもらって、もう一度、こちらに案内してあげて下さい。よろしくお願いします N 」

上司が、「この方たちが来られたら…、じゃあ赤羽さんご案内してあげて下さい」とご指名された

幸せそうなカップルは、何を見ても感激ばかり!

「ステキ!こんなのいいわね」

「なかなか便利だねぇ」

最初は、あちらの物件のディンクス仕様をとても褒めていた私だが、いつもの癖で、ついついこちらの物件をしっかりご説明してしまった

なんだか、急に今までと雲行きが変わり

「ねぇ、こっちの方がいいわよね」

「うん、駅からも便利だし、あっちよりも落ち着くよね」

・・・

あっという間に、こちらの物件にお申し込みが…

しまった!!

ま、いいか!

私は、FAXに『おつかれさまです。ご紹介いただきました○○様、ご納得の上、こちらの方でお申し込みをいただきましたので、ごちそうさまでした!  赤羽』

すぐにメールが来た

「それはないよ!!何でよりによって赤羽っちの接客なの?・・・参りました~。もうすっかり一人前だね。おめでとう」

「どうも!恐縮しております!」

「じゃあ、お詫びにクリスマスに、食事に付き合ってもらえませんか」

「・・・少しお返事を待ってください」


帰りの電車の中、私の頭の中は混乱していた

『逢いたい、でも逢ってはいけない。。。このままでは気持ちを止められない・・どうすればいいの?今なら戻れる。もう連絡を取ってはだめ・・・』

悪魔がささやく

『今日の物件は偶然・・・きっと二人の間には縁があるのよ!仕事を横取りしたお詫びの食事くらいいよね、仕事のお付き合いだもの…』

誰にも言えない…


翌日、仕事はお休みだった

私は、とても悩んでいたが、実はもう前日の夜から頭の中で、今日の予定は決まっていた


あの占い師に会いたい・・・


私は、待ってるお客さんの3番目に並んで、順番を待った

・・・なんと言おう??

実は、彼女が今の私の道のきっかけを作ってくれたのに…、なのに私は、合格してからの忙しさに任せて、一度もご報告に行っていなかった

…それなのに、いきな不謹慎な悩みなんて…

「お次の方、どうぞ、お待たせしました~」

なつかしい明るい声が聞こえる

あの怪しいのれんをくぐり

「こんにちはぁ…」と小さな声でご挨拶をした

「あら!!見違えた!お久しぶりね。どう?元気で頑張ってるの?その顔じゃ、きっと活躍しているのでしょう?どうぞ、お座りください」

覚えていてくれたんだ!!

「あ、、あの、おかげさまで、あの時のお話通り△△不動産会社に合格いただきました。」

「おめでとう。顔つきが違うもの!ステキになったわね。なんだか若返って生き生きしてるわね、それで、今日はどうしましたか?」

「あの、とても言いにくいのですが、、、私、恋をしたみたいなんです。。。」

きっと、バカな女だと思われただろうな・・軽蔑されたかな?

「あら、そうだったの。だからそんなに可愛らしくなったのね。女はいつになっても恋をしていなきゃだわね。鑑定してみるから、ここに生年月日を書いてくださいな~」

私は、丁寧な字でNさんの名前を書いた

生年月日を書くとき、とても悩んだ。。

私の生年月日と比べると恥ずかしくて仕方なかった

運命の言葉はなんと言われるのだろう…?



・・・つづく


秘密のあっかんべー

2006年05月27日 | Weblog
新しい物件のオープンの準備は始まり、駅を挟んで私の物件と、Nさんの物件はお互い競合物件として、同時にオープンした


もちろん、母体は一緒だから、お客さんを紹介することもあるが、やはりライバル…負けられないわ!!


ある朝、上司が「今日は、時間があるので、あちらの物件のモデルルームを見学させてもらいましょうか?あちらのアピールポイントも、払拭部分も知っておいた方が、トークに活かせるので…」

いきなりの訪問


ゾロゾロと尋ねて行くと、もう連絡済みだったらしく、販売センターのエントランスに入ると向こうのスタッフがスリッパを並べて、準備をしてくれていた


モデルルームに入ると、久しぶりのNさんが

「皆さん、おつかれさまで~す。こっちはディンクス対象の間取りが結構あるんで、ディンクスのカップルが来たら、どうかこちらにご紹介下さい。お願いしま~す。では、仕様から説明します。こちらのキッチンは…・・・・」


ふ~ん、これが毎晩寝ないで考えたプランニングなんだ~
なかなかしっかり仕やってるじゃない!

何か、また彼がおかしなジョークを言ったらしい
みんながいっせいに笑って盛り上がっている


「では、次は3LDKのファミリータイプを説明します。皆さん2階に上がってください」


ゾロゾロとみんなに続き、階段を上がっていると、メールが。。。

仕事中に誰?

彼だ!


「絶対にスカート短いよ!!気になる


ゲッ!いちいちうるさいなぁ~ったく~

おかしくて笑いそうになったが、階段を上がりながら、仕方なく制服のスカートを一折下ろした


彼は、そんなメールを送っていながら、すました顔でまた、

「…ですので、容積率の加減で上層階はこのように・・・。では、次は仕様をご説明します。こちらへ起こし下さい」

と説明を続けている


「だいたい以上です。何かご質問ありますか?」


「え~っと、このサッシュは高さは何センチですか?」
「それからお風呂のシャワーは…・?」

退屈な質問が続く・・・他物件の仕様を覚えてどうすんのサ!


「わかりましたか~?赤羽さん?」

彼が、すました顔で私に呼びかけた


「はい、参考になりました。ありがとうございました」

私が答えた


その後、全員で

「ありがとうごいました~」と挨拶をして階段を下りていたら


「ブラウスのボタンを上まで留めた方がいいです」

とメールが来た


いちいちうるさいなぁ、、、誰が41歳のオババの胸元を見て喜ぶのサ!!


私は、一番上のボタンまで閉じて、首が絞まりそうになりながらニコッと振り向いた


とても、満足げに彼は微笑み、他の女性社員と周辺環境について話している


あまりに親しげに話していたので、ちょっとイジケて、全員で礼をするときは、また、ブラウスのボタンを3つ外して、挨拶をしておいた


彼の目が、『オイオイ…』と少しにらんでいる!

私はメールに


「あっかんべー」


と入れて、自分たちの販売センターへと戻っていった



顔は41歳だったが、気持ちは女子大生気分の一日だった


誰も知らない私たちだけの秘密だった



・・・つづく

ヤバイくらい好き

2006年05月26日 | Weblog
電車に乗りながら、ずっと迷っていた・・

今日、宅建の不合格の事を言えなかったから・・・

でも、きっと心配しているだろうな…

もう、忘れてくれてたらいいな…


やっぱり…勇気を出して…ちゃんと伝えよう


「今日は、少しだけだったけど話ができて楽しかったです 言えなかったのですが…、実は宅建不合格でした。いろいろとお世話になったのに、デキの悪い部下ですみません!」


「今日はおつかれさまでした~。宅建の事は知ってたよ。発表の日、朝一番に不動産の新聞で調べてたよ。だって僕の育てた大切な新人さんだからね。でも本当によく頑張ったね~」

「頑張っても合格しなくちゃ…何も使えないよね

「実のところホッとした!僕よりも偉くならないで欲しいよ」

「いえ、まだ若い新卒ですから!!

「新卒は言いすぎでしょ!今日は、かなりお姉さんだったよ!

「その話はもういいってば!とりあえず、期待に添えなかったお詫びのメールです」

「じゃあお詫びに写真を送ってくれませんか?」

「は?老けてるんでしょ!?お断りします

「真剣に頼んでるんだ。オープン準備で忙しくって毎晩、ずっと睡眠3時間なんだ。写真があったら頑張れるから

「え?今日は、まだ帰りじゃないの?」

また仕事中だよ。今日は、赤羽っちに逢いたかったから本社に行っただけだよ」


なんか、かわいそうになってきた…
あとで、笑われてもいいや!

この間のピアノの発表会の時、子供が写メールで写してくれた私の写真、ちょっとおしゃれしてるし、これ送っちゃえ!


『美しさは罪』・・・と言葉を添えて、え~い送信!!


すぐに返事が来た


「ヤバイよ」



「え?やっぱり変だった?・・・ごめん」


「ちがう、超かわいい。もう壁紙に設定したっ!!これでずっと毎日逢えるよ

「でも何がヤバイの?」




「ヤバイくらい好きって事」


・・・


「もうすぐ、駅に着くので、・・お仕事頑張って下さい」

「写真ありがとう



それっきり、またしばらくメールはできなかった



「ヤバイくらい好き」・・・そんな台詞、言われた事ありますか?



ヤバイのは、そんな事を言われたこっちの気持ちの方かもしれない、、、




・・・つづく



老けてる彼女

2006年05月25日 | Weblog
会議が終わり、全員起立して「おつかれさまでした~」と挨拶した

私は、礼をしたままの姿勢で、今日の自分の服装と靴を眺めていた

『マズい…油断してた…、イケてないよ~』

まさか、今日会うなんて…、予想もしていなかったので、かなり手抜きをしていた…

オバハンぽいグレーのスーツを着た私は、携帯を持ったまま悩んでしまった…


友達が「まだ帰らないの~?」と言ったが、とりあえず断った

トイレに行き、スカートを一つ折って、オババスカートを短くしてみたが、もっと古臭い格好になってしまった…

今日はちょっと服装に厳しい女性の上司が一緒だったので、地味~にして来たのだ…


ちょっと髪を片方だけ上げてみたが、ムダだった

ハンカチを首に巻いたら、もっと変になる事もわかっていたが、一応やってみた…

予想通り変だった…


解決できないまま、とうとう彼からメールが来てしまった…

「今、どこですか~?1階のエレベーターホールでSさん達、見かけたよ~。もう終わりましたか~?」

え~ん!どうしよう?

「そちらの打ち合わせは終わったのですか?」

「だって、突然、無理にみんなを本社に集めてしまって、話し合う事がなくって苦労したよ~」

「本当にわざわざ打ち合わせを作ったの?」

「だってそうでもしないと、赤羽っちに逢えないじゃない」

「す…すみません」…なぜか謝ってしまった


「ここまで勢いで来ちゃったけど、今の時間はこの辺りは知り合いばっかりで、みんなには飲みに誘われるし、デートする…って雰囲気じゃないね~」

で・デート??

「ごめんなさい。私今日、早く帰れるって、子供に言ってしまって…」

「じゃあ、駅まで話をしながら帰ろうよ。1階で待ってるね」


エレベーターで1階に降りたが、彼の姿はどこにも見当たらない

本当に、周辺は社員の知り合いばかりで、頭を下げてばかりだ…


すると、電話が鳴った

「はい、今、1階のエントランスの…」
「見えてるよ~。振り向かないで~。真っ直ぐ歩いて、左側あるいて…」
「あ、はい」
「右、右…」
「え?どこ?」
「道路の反対側…」

キョロキョロ見回すと、反対側を電話をしながら、彼が歩いている。

彼はすました顔で、小さく手を振った

思わず、私はしっかりとお辞儀をしてしまった

「元気でしたか~?」
「はい、なんとか。Nさんは元気でしたか?」
「もう限界だよ~。でも今日、赤羽っちに逢えたから、かなり元気になれたよ」
「…久しぶりですね」
「なんか安心したよ~」
「何が?」
「え?赤羽っちが、今日はちょっと老けてて!」
「ひど~い…なんて言ったの~?」
「今日の格好だったら、あまりモテそうじゃないから、なんか嬉しいよ
「それって、何て答えたらいいのよ
「だっていつも心配だからサ」
「ホント!無理してオババンになるのに苦労したわ~
「いやぁ…今日は、本当に安心したよ~」
「何度も安心しないでよ、なんかすごい落ち込むよ~」
「次はどこの物件に入るの?」
「地下鉄の○○駅の近く」
「え?同じ駅だっ!じゃあ競合物件だっ!ライバルだね~」
「そうなんですか?」
「本当は赤羽っちが次がどこに入るか、聞いて知ってたけどね!」

駅に近づいた

「今日は逢えて嬉しかった」
「あ、私も…」
「いつも、そーゆー格好で仕事して欲しいな」
「ったく~、もうわかりましたって!」
「その格好でもカワイイなんて、かなりいい線いってます」
「もういいってば!…じゃあ、また」

そのまま、まっすぐ私は改札に消えた

新鮮な気持ちだった!

でも、この服はもう是対に着ない!!


「備えあれば憂いなし」


…つづく


シンデレラを探して

2006年05月24日 | Weblog
シンデレラは、車の中にいっぱい砂を残して、馬車を降りて行った

王子様はシンデレラを探し来てくれるのかな?・・と待っていたが、その後、忙しいのか全く連絡はなかった

魔法の解けたシンデレラも、また日々の忙しい毎日に戻り、新物件のための勉強会と試験に追われていた


あの日は幻だったのかな…?

ま、これでよかったんだ・・・



ある日、仕事を終えて帰ってくると、ポストの中に封筒が入っていた

『あ!忘れてた・・・宅建の合否の通知だっ!!』

なんか、試験の直後は毎日ずっとドキドキしていたが、なんか2ヶ月も経つともうほとんどあきらめの境地で、本気で忘れていた!


いつものダイレクトメールを開けるように、食事の準備をしながらビリビリと封筒を開けた

「・・やった~合格だ!」






…というのは大ウソで、世の中そんなにうまくいったら、「調子に乗るな!」と袋たたきに合いそうなので、うまくバランスがとれてるもんだ!!


今年の試験の問題にわかりづらい表現があった…という事で、ある法令の問題で3か4を選択した人はどちらも正解とする・・・とお詫びの文書があったので、かなり、心臓が高鳴った・・・が、残念ながらそれを入れても34点、、、

合格点ボーダーは35点だった


ま、不合格は何点で落ちても不合格・・・


同じ頃、同期の友達からメールがあり

「結果来た~?もちろんダメだったよ~。29点だから、もうさっぱりあきらめもついてたけどね~。Mちゃんは合格らしいよ。忙しいのに頭いいよね~」

と書いてあった

『私なんて34点で惜しかったでしょう??』

とわざわざ言うのも寒い人間だと思い、

「もちろん不合格よ~、試験のことなんてすっかり忘れてたわよ~」

と返した



・・実は、ちょっと。。。いえ、実は、かなりガッカリしていた

だって、もう二度とあの勉強をしたくなかったから…

もう、知識は頭に入ったから、もうこれ以上勉強したくないよ~お・・・


かき揚げのてんぷらを揚げながら、子供に

「ママ、この間の試験、落ちちゃった~。あんなに勉強したのにダメだねぇ…」

と言い、なるべく一人で落ち込まないように明るく振舞っていた



・・なのに、こんな日に限って、主人が早く帰ってきた

今日は、かなりテンションが低いので、今、主人に何かキツ~イ一言を言われたら、何も言い返せないし、這い上がれそうにない。。

明るい顔で「てんぷら、ちょうど揚げたてでよかったね~」

と美味しく食べていると、子供が

「ママ、試験落ちたんだって~」

ひぇ~

「え?何の試験?」

「た・宅建」

「あぁ、今頃発表なの?そんなに簡単に合格したら、みんな苦労しないだろう?」

「うん、、言い訳してもしかたないけど、1点足りなかったんだ~」

「ふ~ん、それは仕方ないね、残念だったね」

・・・ああよかった~、奈落の底に落とされないで…


なんだか、私は自分と戦ってきたのか、主人に文句を言われないように頑張ってきたのか、よくわからなくなってきた


今まで必死にムキになって頑張ってきたのは、主人に「すごいね」って評価してもらいたかったのかもしれない…

・・・というより、主人を見返したかったから??

とにかく、彼は私の人生における、いろんな起爆剤であることは確からしい



Nさんに、メールをしようかと思ったが、わざわざ不合格を知らせるのも、なんだかみっともない

「尊敬します!」…なんて言われたのに、コレじゃカッコ悪いじゃんね


翌日、新物件のために、午前中は現地周辺調査をし、午後は会議と打ち合わせが本社ビルであったため、なんとなくダルイ身体で会議室に座っていた

携帯をマナーモードにしなくては…とバッグから出したら、メールが来ていた

「お久しぶりです。元気ですか?僕は、かなり参ってます 今までの残物件の処理と新物件の打ち合わせで、8夜連続で夜中にタクシーで帰宅してます…。赤羽っちは、今はどこの物件ですか??」

会議の前に大急ぎで

「今度は○区の受託物件で、今から本社で打ち合わせです」


それから、眠い目をこすりながら、新物件の建物説明と物件概要の勉強が続き、眠さで何度も意識を失いそうになりながらメモを取っていると…メール着信の振動が…

『なんだろう?早くメール読みたいな~』

と思ったら、すっかり目が覚めてきた!


17時になり、会議が終了した

周りを気にしながら、そっと携帯を開けた


「赤羽っちに逢いたくて、今日は午後から無理やり本社で打ち合わせすることに決めました~! 打ち合わせは何時までですか?終わったら知らせて下さい。」


やっと王子様がシンデレラを探しに来てくれた!!




…つづく






恋におちた??

2006年05月23日 | Weblog
メールを読んでから、私はすっかり固まってしまい、あまり美しくないトイレに10分はいたかな…?

気分を取り直して…、元気一杯に

「おまたせ~!」

と、戻っていった


彼はいつもの笑顔のままで、車のドアを開けてくれた

私は今度はヨッコイショを言わないように、歯を食いしばってシートによじ登り、フゥ…っとため息をついた

何か言いたげに、じっ~っとこっちを見ている視線を感じたので、

「ウンコじゃないからねっ!」

と、答えると

「ははははは!いやあれだけ食べてたから無理もないっ!」

とメールの事には触れずに、すごく楽しそうな顔で笑った


時計は4時を少し過ぎていて、

「もう海は気が済みましたか~?そろそろ帰りま~す」

と彼が言った


私は、なんとなく彼の優しい配慮に気づき、小さく「アリガト」と言った

車は来た道を戻り、彼が小さな頃から野球少年だった話や、大学時代に留学していた話、初めて完売させた物件の話…いろんな話が、私には新鮮だった

私は、調子に乗り自分の夫や子供の自慢話までベラベラと話してしまったが、

「すごいねぇ。いいねぇ。うらやましいなぁ…」

と始終笑顔で聞いてくれた


約束通り、5時半には家の近くまで帰って来た

「ありがとう。すごく楽しかったです」

車のドアに手をかけた時、彼が言った

「あのね、もっと自分に自信持って下さい。赤羽っちは、実はすごく仕事ができるし、すっごい魅力的なのに…、できるくせに、時々自信なさげに、人に仕事させるのが上手いんだよねぇ…」

そして、ちょっとイヤミな上司の真似をして

「罪なオンナだねぇ~」

と言った


あんまりにも、物まねが似ていたので、私も負けずに、

「はいっ!…わかりましたっ!頑張りますっ」

と受付の女の子の真似をして答えた


最後に

「ヤバいな~!次の物件では僕が部下になってるかもしれないなぁ…。じゃあ頑張りすぎずに頑張って。次は宅建合格祝いをしましょう」

「…いえ、まだ合格してないんで…」

「またまた~その顔にみんな騙されちゃうんだから~」

大きく手を振って、彼は帰って行った


私は急いで家に帰ったが、まだ誰も帰っていなかった

誰もいなくて、なんだかホッとした

あんまり「オンナ」な顔で子供を迎えたくなかった


その日は、まるで誰かに言い訳をするかのように、一生懸命に掃除機をかけてきれいにし、たくさん晩ご飯のおかずを作った


寝るまで携帯には気づかなかったが、そこには

「今日、言えなかったけど、社員の△△と、あんまり仲良くしないで下さい

と短いメールが入っていた

私はクスっと笑いながら、昼間トイレで読んだメールをもう一度読み返し、そっと携帯を閉じた


私もいつかの主人のように、携帯にロックをかけなきゃいけないようになるのかな…


頭の中は彼の笑顔でいっぱいだった



…つづく



海辺の告白…

2006年05月21日 | Weblog
美味しいお寿司を食べて、しばらく海岸を散歩した

ブーツのかかとが砂に埋まって、うまく歩けないが、なんとなく距離をあけて、意識をして歩いた


「なんだか楽しくってまるで、学生時代に戻ったみたい」

「ふ~ん、きっと赤羽っち、学生時代、遊んでたんだろうな~」

「いえ、そんなことないです!親がうるさかったし、ディスコに行くのも大変だったんだから…」

「ディスコ?…ってなんか、響きが不良っぽい感じですよねぇ」


・・・私がオールディズとか、ロックンロールとかいう響きが、ちょっと古臭い不良っぽいイメージがあるのと、似た感じかなぁ…


また、時代を感じる発言しちゃったかなぁ…


Nさんが、突然

「こんどディズニーランド、一緒に行きたいですね~、いかがですか?」

「は?」


子供の友達にでも会ったらどーするのよ!!
それは、マズイでしょ!
仕事仲間でも、それはちょっと・・・
話をごまかし、

「ディズニーランドって、できた時、わざわざ遠くから友達と泊まりで来たのに、すごーい並んで2つしか乗れなかったんだよ~」

と、いうとNさんは

「僕が初めてディズニーに来た時は、お母さんに手をつながれて来たよ」


ひゃ~また、墓穴掘っちゃったよ~

話がかみ合わないよ~


「全然、時代が違うんだね、なんか年齢を感じて落ち込むよ~」

と言ったら

「なんか新鮮で楽しいですよ!私服だと全然歳の差なんてわからないですよ」

・・・そ、それはちょっと言いすぎだろっ!
やっぱ全然違うでしょ、、、


「前から言おうと思ってたんですけど、制服のスーツのタイトスカート、少し赤羽っちの短くないですか~?」

「えぇ?そうですか?」

「接客中ね、お客さんと話しながら、よく机の下で靴脱いで、靴コロコロやってたでしょ?いつも、赤羽っちが頑張ってるかな~って、気になって見てたんだけど、こっちの事務所の扉を開けると、足元が見えるんだよね。足を組みかえるたびに、誰か他の人が、見たらいやだな~って思ってた」


「・・・それ、かなり悪趣味!」

「だって、他の人に見られたくないじゃないですか~」

「・・これからは足元、気をつけます。」

「変なオジジの時、接客が長いと、気に入られたのかな~って、すぐに気になって、よくスリッパ並べに行ったりして妨害してた」

「え?そんなの知らなかった!!」

「いつも、見てたよ~」

「私、よくドジするから、間違えた説明しちゃうし…ご心配かけてすみません。出来の悪い部下で…」

「うん、輪ゴムで髪しばったまま、接客しちゃうしさ!」


ゲッ!そんなにジロジロ見られていたのか!!マズイなぁ…

しばらく歩いて、私はお手洗いに行った


ちょうどメールが来たので、お化粧を直しながら携帯を開いた

え?Nさんから・・・


「あなたが好きです。」


私は、お手洗いから出られなくなってしまった

だって、目の前の鏡に映る私の顔は、やっぱり学生でも、20代でもなく、まぎれもなく40代の女性だったから。。。


・・・私なんて答えたらいいの?


…つづく


これは不倫ですか?

2006年05月20日 | Weblog
郵便局の前に走っていくと、パジェロがハザードを点滅させて止まっている

そぉっ~と窓から中を覗いたら、Nさんがペコリと頭を下げた

いきなり私は仕事モードの部下にもどってしまい、

「おはようございます。おつかれさまで~す」

と頭を下げた

Nさんが、ドアを開けてくれたので、爽やかに座席の隣に座ろうと思ったが…、
あーゆー大きな車に乗るのは初めてなので、どこをつかめばいいのかわからず、シートにしがみつくように登り、つい

「よっこいしょっ!」

「ははははははは!!ヨッコイショってなんか懐かしいなぁ、なんかカワイイなぁ」

・・・しまった!無意識とはいえ、せっかく若作りをしているのに、いきなりオババ言葉を言ってしまった!


黙って下を向いていると、「はい、どうぞ!」

と冷たジャスミンティのペットボトルを差し出した

緊張と走ってきた疲れで、のどがカラカラだったので、蓋を取りゴクリゴクリと飲んでしまった

やっと落ち着いて

「ありがとう。」といった

「僕はいつもこれ飲むんだ、大好きなんだ」

「実は、私もジャスミンティが好きなんです」

「・・知ってるよ?いつも朝、コンビニでジャスミンティ買ってたでしょ?だから、きっと好きなんだろうな~って見てたんだ」

「え?、全然気がつきませんでした。」

「いつも、仕事にマジ真剣だったもんね~」

「あ、あの物件、完売したんですかぁ?」

「ん、今日は仕事の話はしないから!」


車は、どんどん走っている

「今日は、どこに行くんですか?」

「ごめん、昨日、同期で飲みに行ってて、今朝、寝坊しちゃったから。あんまり遠くに行けないね。何時に送ればいいですか?」

・・・少し考えて

「ごめんね、今日は子供が普通に帰ってくるから、6時くらいかな?」

「OK、わかったよ!」

本当は、今日は子供は習い事の日で、もう少し遅くまで遊んでいられたが、なんとなく落ち着かず、「早く帰ったほうがいい・・・」とやたら気持ちが急いでいた


「お子さん、この間、販売センターに来たよね。ご主人が車で迎えに来てたでしょ?仲良し一家なんですね。うらやましいな~。」


・・まさか、暴力を振るわれた翌日、家出をしそこなった…とは言えない・・

「あ、あの時は、荷物があったから・・・」


・・・そのとき、FMラジオから懐かしいクイーンのボヘミアン・ラブソディがかかった
思わず口ずさむ・・・

「これ知ってる?クイーンの名曲よ!いくら若くても知ってるでしょ!」

「う~ん、CMかなんかで聴いたことあるよ」

ラジオから…

『1975年のヒットソングでした…』

「あ!僕が生まれた年だよ!」

・・・ガ~ン

私、かなり鬼畜な事、やってるのかもしれない。。。


高速道路を永遠と走り、丘を抜けると突然、正面に海が見えてきた

「えーーー?…なんか、すごい感動!」

「絶対にコレを見せたかったんで!」


この風景を他の誰かも知っているのか…なんて、かなり勘違いなヤキモチまで出てきたが、41歳の私のために、ここまで運転してくれた彼に心から感謝した


「お寿司は好きですか?」彼が尋ねた

「うん、大好き!」

「イタリアンと悩んだんですけど、きっとイタリアンはもっと、美味しいお店を知ってるかと思って…、ここのお寿司は最高ですから!」

「行きます?」

「行く行く!!」

カウンターに座ってから、正直に

「実はいつも、子供を連れて回転すしばかりなの…」

と、言うと

「今日は、赤羽っちが中心ですから、好きなだけ食べてください!回らなくて申し訳ないですけど!」

と言ってくれた


私のためのお寿司!

サビ抜きじゃない、私のために握ってくれるお寿司!!
すごく、久しぶり!!嬉しい~

「私ね、いくらを食べ過ぎて嫌いになったことあるんだ!」

「あのね、この間ね…、あのね昔ね、…あのね、・・・」

ずっと、笑って聞いてくれるのが、なんだか嬉しくてどんどん話をしてしまう

そのたびにいちいち私を笑わせてくれる

シワが深くなるよ・・・


突然彼が尋ねた

「ご主人とはいつ知り合ったんですか?もう、長いんですか?」

「うん、7年間付き合って、それから結婚したから、もう姉弟みたいなもんかな?」

「うらやましいな、仲がよくって。」

「・・・」

「Nさんは彼女はいないんですか?」

「んん、この仕事をしてると、時間が合わなくてなかなか長続きしないんだよね。」

「週末は特に忙しいからねぇ」

「今まで、仕事にすごく自信がなかったんだけど、赤羽っちがきてから、すごく頑張ったんだ。なんか、いつも一生懸命だったから、僕も頑張ろうって。だって赤羽っちに尊敬されたいじゃん」


・・・尊敬されたい

男の人はみんな認められたくて、頑張っているのかもしれない

Nさんも…、そして主人も・・・


…つづく