管弦楽だと新鮮に聞こえますよね、エリーゼのために。
リラは仕事をくびになりました。
この頃、やけに目がかすんだり、体に痛みを感じたりしていました。
毎晩、毎晩、遅くまで針を動かしても、もらえるお給料はほんの僅かです。
仕事について5年。辛いことはあっても、こんなに針すら重く感じたことはありませんでした。
仕事が終わると、長い長い階段を重い足を引きずって登ります。
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※パリの人口が急増したので、建物が上へ上へと伸びていった時代だそうです。
貧しい女中やお針子は、夏は暑く、冬寒い屋根裏にしか住めなかったという話です。
屋根裏の寒々とした部屋に、泥のように疲れた体を横たえていると、生きていることの意味を
見失ってしまいそうになります。あの日以来、それは続いています。
アンジョルラスがこの世を去ったあの日以来・・・
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他のお針子たちは、みな学生や弁護士見習いの恋人を持っていて、リラにも紹介しようとしました。
可憐なリラに目をつけて、口説いてくる男もいました。
でも、リラは頑ななまでに、誘いを断っていました。
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身分違いの恋人は、やがてお針子を捨てて故郷に帰ります。
子供ができて、やめていった娘がいました。
恋人との安逸な生活になれて、娼婦になった娘もいました。
器量の良かった娘は、端役の女優になり、その後、老人の愛人になったと聞きます。
うまいこと恋人を次々変えて楽しくやっていった娘もいましたが、いつまで続くのか、
年を取り容姿が衰えるのを、何より怖れていました。
結局のところ、恋人の学生と晴れて結ばれた幸せな娘は、ひとりもいません。
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★若く一人暮らしで貧しい娘は、よほど強い意志や信仰でも無い限り、甘い誘惑に負けてしまう・・・
それは当然のことでした。
学生たちは、仕送りで実家にいる時よりはつましい生活をしていても、娘たちとは身分が違います。
ナポレオンの時代が終わり、軍人より法律関係や医学を目指す若者が増え、大学生の数が一気に増えた
19世紀。そうはいっても、1930年~1940年に法科や医科の大学に登録したものは年3000人程度。
約100万人に膨れ上がっていたパリの人口からすると、やはり超エリート。
中には途中で方針転換して、ジャーナリストを目指したり、詩人や音楽家や、アンジョルラス達のように
政治活動にのめり込んだり、色々な学生がいました。
そんなバラバラな彼らに共通していたのが、グリゼットへの幻想。
ルイ14世治下のフランスで絹や木綿布の生産が軌道に乗ると、上流階級への商品に仕立てる素材を
取り分けた後の品質の悪い絹や木綿が出てきた。 これを薄い布地に織りあげて庶民用に売りだしたところ
庶民の女性に大変な人気を呼んだ。 こうした布地はたいてい灰色がかった色をしていたのでグリゼットと
呼ばれたが、こうした身分の低い女性をややあざけって呼ぶときに「グリゼット娘ども」といういい方が
されることがあった。 服飾の歴史から引用しています。
最貧困層(エポニーヌような)は除いて、貧しい家の娘は、年頃になると家を出て、女中や女工、お針子に
なるのが普通だった。パリの空の下で一人暮らしをするうら若い娘と、親元を離れて初めて都会で暮らす青年。
普通は近づくこともできない身分の青年たちと甘いひとときを過ごすグリゼット。
学生が関われる女性の種類は、修道院で暮らす女子学生と未婚の箱入り娘以外。
グリゼット、既婚女性(人によりけりだが)、娼婦などはOK。
不思議なことだが、自分の結婚にあいふさわしい相手とだけは、交際できなかった。
リラがアンジョルラスを追って家を出る時に、アンジョルラスの母に言われたことがよみがえります。
「お前がいくら思っても、あの子と結ばれることにはならないよ。」
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アンジョルラスの母が、最終的に彼女をパリに出してくれたのは、アンジョルラスがリラを顧みることが
無いと判断したからではないかと、リラは思います。
息子に限り、まさか、リラを弄んで捨てることなどしないだろう。
アンジョルラスの母は、リラのことを思ってくれていないわけでは、ありませんでした。
それに、リラ自身も彼に顧みられると思ったわけではありません。
ただただ、そばにいたかっただけです。
アンジョルラスの母が冷たいとかじゃなく、この時代には、持参金もない身分の低い娘と、ブルジョワの息子が
結婚することは、まず無かった。貧しい青年がブルジョワの娘と結婚することもほとんど無いけれど、たまには
あった。男のほうは、出世することが可能だったから。
軍人、商人、芸術家、そこで名や財を為せば、身分の高い娘と結婚することもできた。
世俗をあきらめれば、僧侶で出世することもできた。
※ナポレオン時代が終わったので、軍人はトレンドから外れてはいたけれど。
あまり豊かでない家の秀才が、お金をかき集めて、大学に行くこともあった。
しかし、ツテのない身は、やはり出世は困難を極めた。
女性が社交界で力を持っていたので、美男で気がきくタイプなら思いもかけない出世もできた。
アンジョルラスがもし世俗的な欲を持った青年だったら、美貌と才智で社交界のマダムに取り入り
サロンの人気者になり、稀代のダンディーと呼ばれ、ファッションアイコンになって・・・
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そんなアンジョルラスは嫌ですけど。
貧しい女が財を為すのは、裏の社交界で高級娼婦になるくらいしか方法が無い。
あるいは、女優(しかし、それもパトロンがいたりするし)
というか、女優になるのは、むしろ金持ちのパトロンを探すためだし。
シンデレラストーリーなんていう事は、まだ無かった時代。
身分の低い娘たちは、お手軽に性を体験させてくれる有難い存在。
修道院で大切に守られるブルジョワの娘たちと対極の存在だった。(修道院は女子の全寮制の学校のようなもの)
だが、その大切に育てられた令嬢たちも、必ずしも自分の思う理想の恋人と結婚できるわけではない。
自由に恋ができるのは、むしろ既婚者のほう。
トロミエス(ファンティーヌの恋人)は、もしかしたらファンティーヌのことを美しい思い出として、
胸にしまっていたかもしれない。
青春の美しい過ち、過ぎ去りし日の思い出・・・みたいに、綺麗に昇華させてたりして。
『椿姫』『ラ・ボエーム』も、ヒロインがさっさと死ぬから美しい面影が愛されてるわけで。
実際の彼女たちが、どういう人生をたどるかなどは、意に介さない癖に。
アンジョルラスに逢いたい。もう一度抱かれたい。
耳元でささやいて欲しい。
力強く、守って欲しい。でも、それは、もはや適わぬこと。
故郷に帰ろうか・・・
そこには、自分を拾ってくれた優しかった養父母の召使夫婦もいます。
字の書けないふたりは、代書屋に頼んで手紙をくれました。
リラは、ふたりのことを思うと、生きて行かなくてはと思います。
アンジョルラスの両親も、暖かく迎えてくれるでしょう。
皆、心配して、心の傷を癒すべく優しい結婚相手を探そうとするでしょう。
それを思うと、リラは気が狂いそうになるのです。
リラは幸せになりたくありません。いえ、なれません。
アンジョルラスは、もういないのだから。
他の誰かを愛する日が来るなど、考えたくもありません。
時が解決する・・・人はそう言います。
けれど、時が経てば経つほど、二度と会えないと思い知らされ苦しみはつのります。
あの時、砦で、彼と共に死にたかった。
生きていても、私は幸せになれない・・・
アンジョルラスがバカロレア(大学入学の資格試験)に受かって故郷をたつ少し前のことです。
リラは、アンジョルラスを待ち伏せして、彼をトネリコの木の下に連れて行きました。
良いことの後には、魔が狙うと言います。
昔からの言い伝えで、木を触ると魔よけになると聞きました。だから、木を触って欲しかったのです。
けれど、アンジョルラスは決して触ろうとしません。
彼はリラの手を引いて、彼女が捨てられていたリラの木(ややこしいなぁ)の元に連れて行きました。
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「この木なら触るよ。」というと、アンジョルラスは木を抱きました。
そして、幹に口づけをしました。
「どこかの国の神話では、トネリコから男ができたそうだから。リラのほうがいいよ。」
白い歯を見せて笑ったかと思うと、リラの顔を覗き込みました。
けれど、すぐに、いつもと全く違うアンジョルラスに驚いたリラを見て、真顔に返りました。
「ここに帰るのは、いつになることだろう。帰るころには、リラには恋人ができてるだろうね。」
リラは、その言葉を聞いて涙があふれ出てきました。
今、リラは不思議な気持ちで、その時のことを思い出しています。
あんなアンジョルラスを見たのは初めてでした。あれはどんな意味だったんだろう。
リラのほうが良い・・・って・・・
リラは、今、仕事もありません。
少しばかりの蓄えもすぐに消えるでしょう。
でも、不思議と不安も悲しさも感じません。
マリウスは、困った時には訪ねて来るように言いました。
でも、リラはもう彼らの屋敷には行きません。
彼らには何ひとつ罪はありません。とても親切で愛に溢れています。
でも、だからこそ・・・憎む理由などないからこそ、心の底に、澱のように
小さな憎しみが溜まって行くのです。
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浮かれてるもんねぇ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyob_uru.gif)
今のリラを見たら、アンジョルラスは何て言うでしょう。
今のリラを見たら・・・
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyob_en.gif)
リラは、このごろ、自分が怖いのです。
何か、魔に憑かれてしまったのかもしれません。
アンジョルラスに会いたい・・・もう一度抱かれたい・・・
もう一度、あの手で優しく体中、愛撫して欲しい
熱い唇で、息を止めて欲しい。
そして・・・・・・彼の・・・
■Once Upon a Time in the West
自分の裸身をさぐるのは自分の手です。でも、やがて眠りがやってきます。
すると、その手は、アンジョルラスの手に替わるのです。
リラは、今宵も、その時を待ちます。
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リ・・リラが凄いことになってる(と、いつもより熱心に見守っているアンジョルラス)
リラの最後を真面目に書こうと思ったんだけど、
やはり、私には無理だったわ。
というわけで、またよろしくお願いします。
最後じゃなくていいよ、何でもいいから。
8月にこちらのサイトを見つけ、毎日のようにお邪魔しているのに、読み逃げしてばかりでごめんなさい。
一言お礼を言いたかったのでお邪魔しました。
内容が多岐に渡り充実していて、すごく楽しいです。
アーロンのインタビューとかも訳して頂いて助かります。
私、からっきし英語がダメなんで・・・
今日は土曜に昼下がりに、大好きな「バラ色の人生」とか映画「めぐり逢い」のテーマ曲(この映画大好きなんです)を聴きながらの、リラとアンジョルラスの話は最高にロマンチックで素敵でした
続き楽しみにしています
別にこの路線で続けてもらっても構わないと思うけど・・・(妄想なんで)
憧れの女優さんの名前をお借りしましたが、さっそく英語のレベルを暴露してしまいました。
素直に「オードリー」にすれば良かった
なんか、こういう創作物って、結構出すの恥ずかしくて・・・
コメントをいただけると、正直ほっとしますw
めぐり合いのテーマと、一番下のエンニオ・モリコーネの映画は見てないどころか、youtubeで初めて曲を知りました。
本当に綺麗な曲ですね。映画見てみようかな。
有名な映画ですよね。レンタルにあるかな。
オードリーさんも、よかったら参加してください。
お好きな曲、アーロンに歌ってもらいたいとか、自分が歌いたいとか、あと、アーロンにこんな役をやって欲しいとか、色々好きに書いてくださいませんか?
オードリーのサブリナとか、ティファニーとか、リメイクして
アーロン出てくれないかな。
ティファニーの男性なんて、アーロンに似合いそう。
でも、オードリーをやれる人、思いつかない・・・
また、いつでも書き込んで下さいね。お待ちしてます。
凄いことになってる…と、アンジョルラスのセリフを借りてみましたw
リラ…か、かわいそう。いきなり仕事くびになってるし!
アンジョルラスのお母さん、怖いw …いや、言ってることは別にいいんですけどね。言い方が、ちょっと、こわ~いww
リラ、なんだか、マリウスと再会した頃よりも心がぼろぼろになっててかわいそう。“再会編”、いちおう表向きだけでも明るく(?)終らせてみたんだけどw (…まあ、実は明るくないですけどね。)
やっぱり、マリウスたちのこと、憎んでしまった?うらやましいだけでは止まらなかったか…。でも、うらやましいは憎しみになってしまいがちですね。。。
…う~ん、リラが、あんまり、そこまで強く“もう一度抱かれたい”と思っているつもりはなかったのですが(笑)。
アンジョルラスのことを長~い長~い間大好きだったけど、一緒に夜を過ごしたのがサヨナラのほんの少し前、たった一晩だったし、そもそも気持ちが通じ合ったのもその時で。朝まで一緒にいたのは、流れ?というか、勢い?だったし。
“抱きしめてほしい”くらいは、とっても思った気がするけど。…でも、思ったのかなぁ。う~んう~ん。。。
リラ、心がこわれてきた感じ??
なんか、突然、私には手に負えなくなった感じ(笑々)。
でも、この路線で続けてもらっても…と書いてくださっている方もいらっしゃるし、yuriさま、このまま続けてみては??
※リラが捨てられていたリラの木…ホント、ややこしくてゴメンなさいねw
今、ちょっと落ち込み中w
ごめんね、リラとアンジョルラスのイメージを少し壊しちゃったかも。
リラの木にも、アンジョルラスはあんなことしないだろうし、
リラはリラで、私が書くと、妙に下半身が暴走する女になるしw
ていうか、書いてるうちに、毎回、こうなるのはなぜだ?
・・・本当、リラ、ごめんね。
あと、アンジョルラスのお母さんは、冷静にリラを諭してるつもりだったけど、文字で読むと、怖い韓流のおばさんみたい。難しい~
>なんか、突然、私には手に負えなくなった感じ(笑々)。
えーーー、そんなぁ~~
yuri様のことを嫌いになっても、リラを嫌わないで下さいw
これで、書く気なくしたとかいわないで。
これの続きは私が書くから、Lilasさんは、これは無視して
また何か書いて下さいね。
ごめんなさいね、私のコメントで落ち込ませちゃったね。
…ちょっとね、ショックだったのです。ごめんなさい。
でも、やっぱり、こちらはyuriさまのブログなわけですから、妄想も、yuriさまがお好きなように想像の(妄想の)翼をぱたぱたとはためかせてくださいw
でも、できれば、あんまりリラをいじめないであげてくださいね♪…もう、既につらい思いをたっぷりしてますからw
怖いことを考えて落ち込んでたw
>でも、やっぱり、こちらはyuriさまのブログなわけですから
私、ここを自分のブログと思ってないんですよ。
自分で考えてることって、自分にわかるじゃないですか?
私は他の人の考えてるアーロンが見たいんですよ。
で、ネットで検索しても、わりと節度のあるブログばかりで、ダダモレで好き~っていうの少ないんだよね。
Lilasさんが、コメント下さって、ほっとしました。
後編もちょっとイヤかもしれないけど、許して下さいw
ショックって、やはり、リラがとんでもないからかな。
あれはリラの皮をかぶったyuriだもんね。
なんか、どうしてだか、やめようとしてもそうなる。
私、その手の妄想シーン書くの、これで7回目くらい?
というか、毎回かな。
アンジョルラスにもあやまらなくては。
アーロン本人も、アンジョルラスも、とても清らかな感じだし、そこが好きなんだけど、文を書き始めると、そうなる。
不思議だ・・・
なんだか、本当にごめんなさいね。
…私、謝っていることが多い気がする。…つまり、謝らなくてはならないようなことを、しでかしていることが多いということですね。
うわ~…、ほんとに申し訳ないです。。。う~ん、妄想ばかりのくせに…。
アンジョルラスはね。私は、別にどこで(こちらだけでなく、どんなサイトでも)どんな表現されててもいいような気がしているんです。
(…あ、やっぱり違うかw あまりにあまりな表現だと、ちょっとは哀しみ(?)を感じるかも。)
でも、リラはね。いちおう愛着(…というのかな。)があるし、なんといっても、“あ・の・アンジョルラス”に愛された子ですからww
できれば、ずっと、可愛い、いい子でいてほしい♪
勝手を言って、本当にごめんなさい。こんなこと言われると、妄想しにくくなっちゃうかな。
とかなんとか言っておいてなんですが、どうぞ自由に妄想してくださいね♪
次回は、そこまでむごくないようにします。
もう少し先になりそうですけど。