9V-SJF通信

航空関係を中心としたコラムです。

SQ20/19デビューから1年

2005-01-31 17:01:08 | 航空旅行
久しぶりの記事投稿です。
9V-SJF通信の新記事投稿を楽しみにしておられた方がいらっしゃいましたら、大変申し訳ありませんでした。このところ、自分のブログすらもチェックすることができなかった9V-SJFですが、久しぶりに自分のブログを見たところ、新しくトラックバックしてくださったありがたい方もいらっしゃいました。この場を借りて深く御礼申し上げます。

私が記事を書き出すにはまとまった時間が必要(1度やりだすととことん凝ってしまうのが私の性格なのです)だけに、他の皆様のブログやWEBサイトのように、そう頻繁に更新できません。ですが、気ままに、焦らずお話したいネタが出ましたら随時出していきたいと思いますので、首を長くしてお待ちくださいませ。

ところで、本題に移ります。
このところ羽田の第2ターミナル運用開始、A380の公開と飛行機ファンには興味深いニュースが流れております(これらのネタはもし機会がございましたらお話したいと思います)が、昨年の2月3日はシンガポール航空(SQ)がエアバスA340-500(以下、A345と記す)によるシンガポール-ロスアンゼルスへのノンストップフライトの運航を始めた日であります。日本では場所が場所だけに、あまりおおっぴろげには報道されませんでしたが、新聞では小さく記事が出ていたのを覚えています。

一般誌では大きく取り上げられることのなかったこのフライトですが、飛行機ファンやマイラーと呼ばれる方々の間ではあの時は「世界最長の商用ノンストップフライト」と称され、かなり話題になりました。ネットで調べてみると、ご当地のシンガポールの新聞でも話題になっていました。

SQ20(シンガポール-ロス)及びSQ19(ロス-シンガポール)が登場する以前、東南アジア-北米大陸間はノンストップ便を飛ばしたくても、航空機の航続性能の関係で飛ばせなかった、という実情があります。そのために、東南アジアから北米へ向かうフライトは、ヨーロッパや日本、台北などといった都市を経由していくものが主流でした。ところが、航続距離15800kmを誇るA345の出現により、この状況は変わろうとしています(更に、ボーイングも777の長距離便対応を進めている、との話も聞きます)。

当時、「A345LeaderShip」と称されたこの飛行機(今はこの名称は使っていないですが)はシンガポール-ロスを約16時間、ロス-シンガポールを約18時間で結びました。SQがA345に対し、LeaderShipと名づけたのは「今後も自社のプロダクトの改善を続けていく」という決意の表れだったというようですが、東南アジア-北米間に世界で初めてノンストップ便を運航した、世界最長のノンストップ便を就航するキャリアになったという点で、誇りに思うようなところがあったのかと思います。
(A345自体はSQ20/19以前に2003年の12月、エミレーツ(EK)がドバイ-シドニー線に運航させていて、これが世界初のA345就航となる。)

あれから間もなく1年。SQ20/19に続くキャリアは続々と出てきています。
まず、同年の6月、SQ自身がA345による北米ノンストップ便をニューヨークまで延長させました(ちなみに、EKもニューヨーク線を開設)。
そして翌7月、キャセイ航空(CX)が香港-ニューヨークのノンストップ便運航を始め(この機材はA340-600)、エアカナダ(AC)は8月にトロント-香港のノンストップ便就航を始めました。そして、今年5月、タイ国際航空(TG)がバンコク-ニューヨーク線のノンストップ便就航を始めます。
従来からの経由便は健在ですが、今までは「そんなの、ありえないだろう」というような超長距離ノンストップ便がどんどん出てくる時代になりました。これは私が一人で思ったことかもしれませんが、ほんの少し前まではまさか、このような超長距離ノンストップ便がぞろぞろ出てくるとは思いもしませんでした。

今から十数年前(でしたっけ?)、日本-ヨーロッパ線は全てシベリア経由になりました。これもA345同様、航空機の航続距離の進歩(更にこの場合は旧ソ連が領空を開放し、通行料を取ることで収益を得よう、という政策に変更したこともあります)が寄与していますが、かつての日本-ヨーロッパ線は、現在のシベリアルートの他、アジア各都市を中継する南回り、アンカレッジ、北極上空を通る北回りと呼ばれるルートがありました。ところが、現在では南回りはIATAの運賃制度分類に名残として残る程度(実情はアジア各都市での★乗り継ぎ★便となる。近年は殆どがアジア各都市からヨーロッパへはノンストップ便となる)、北回りはアンカレッジ経由便の廃止に伴い、完全になくなってしまいました。かつて、アンカレッジは経由便の乗客が利用するためにそば屋があったらしいですが、すっかり寂れてしまった、と聞いたことがあります。

(かつて、ヨーロッパへ行くために使われた北極上空が、今ではここで話題にしているアジアから北米へのノンストップ便が飛行経路に使っている、というのは面白い話です。)

SQの北米ノンストップ便はエコノミークラスについて「Executive Economy Class」という特別なクラスを設け、他の経由便との差別化をはかっています。しかし、世界中のノンストップ便化がどんどん進み、かつての日本-ヨーロッパ線がたどったように、世界の航空路図は大きく変わるかもしれないです。SQ20/19は「LeaderShip」の名前通り、そんな時代到来の魁になった、といえると感じています。数年後、数十年後、振り返ってみたときに、「そういえば、LeaderShipという飛行機に、SQ20、SQ19というフライトがあって、シンガポールとロスをノンストップで結んだね。今までの流れはあれからなのかな」と感じることがあるかもしれません。

あれから1年。これから、世界の航空地図はどう変わっていくのでしょうか。