9V-SJF通信

航空関係を中心としたコラムです。

さようなら、CX2053/2052

2004-10-17 13:47:10 | 航空旅行
今月14日をもってキャセイパシフィック航空(以下、CXと記す)の大阪発着便であるCX2053/2052が運休となりました(CX2053:10/14発、CX2052:10/15着)。

私はこのニュースを「AirTariff国際航空運賃」のアジア系航空会社について議論されている掲示版で知りました。初めてこのニュースを知ったとき、このニュースが信じられず、「えっ、マジ???」と思いながらCXのWEBサイトにあるフライトスケジュール検索をかけてみました。すると、14日以降はCX2053/2052が見つからず、これでこのニュースは本当だったんだなと悟りました。

CX2053/2052は数年前、シンガポールや台北線と同時に開設されたCXのアジア近距離深夜便です。今となっては古い資料ですが、手元にある2002.10.27-2003.3.29版のシステムタイムテーブルによると、これらの便のフライトスケジュールは以下の通りでした(時刻は現地時間の24時間表記。右から便名、区間、就航曜日、出発時間、到着時間の順で書かれています)。

香港(HKG)-関空(KIX)
CX2052 HKG-KIX 火水木金 3:15 7:30
CX2053 KIX-HKG 月火水木 22:40 0:35(翌日)

香港(HKG)-台北(TPE)
CX2042 HKG-TPE 火水木金 3:25 4:55
CX2043 TPE-HKG 月火水木 22:30 1:15(翌日)

香港(HKG)-シンガポール(SIN)
CX2073 HKG-SIN 火水木金 3:00 6:40
CX2074 SIN-HKG 月火水木 22:05 1:50(翌日)

私はCX2053/2052に搭乗したことはありませんが、シンガポール線であるCX2073/2074に搭乗したことがあります。システムタイムテーブルには「CX DHL flights」(本記事ではCX20xxシリーズ、と呼ばせて戴きます)という注が付いていましたが、その名の通り、(DHLの)貨物輸送が主体のようです。私が搭乗したときは最近では主流になったボーディングゲートからの搭乗ではなく、沖止めで、搭乗口からバスに乗って香港の空港敷地内を駆けめぐり、貨物エリアにひっそりたたずむトリプルセブンへ乗ったことを覚えています。

私が乗ったときは300人以上の定員を持つB777の座席はガラガラで、この便に乗っていた乗客は十数人しかいないような印象を受けました。あまりの空席の多さに、最初びっくりしました。私が乗ったのは8月ですが、「深夜便って、こんなにも需要が少ないのかな」と感じました。ですが、CX日本支社が独自に発行しているタイムテーブルにある注で「CX2053/2052は座席数やサービスに制限がある」旨が書かれていました。同じCX20xxシリーズであるCX2073/2074についても同様のことが言えそうですし、乗客数がこんなにも少ないのは、こんな背景があるということでしょう。

私がCX20xxシリーズの就航を知ったのはCXのプレスリリースでしたが、そのときの率直な感想は「偉いっ!」でした。もともとの出発点はDHLの貨物便ですが、CXはこれに旅客を乗せることによって他社にない価値を提供したからです。

殊に日本では深夜に出発して目的地に朝到着する、というフライト形態、いわゆる「夜這い便」は非常に限られたものであります。例えば、欧州線では韓国と中国を除くアジアでは夜出発するフライトはスタンダード・ナンバーですが、成田を発着するエールフランスの「スターウィング」以外に存在しないですし、アジアについてはタイ国際航空が関空発のバンコク便を持っている、という話を聞いたことがあるくらいです(今は、どうなんでしょうか)。成田の場合、発着に利用できる時刻に制限があるために夜這い便の実現は難しい部分があります。夜這い便は疲れる、という声もありますが、時間を有効に使う、地方から空港に向かうのに時間がかかる、空港等での宿泊費を節約したい、などさまざまな動機で夜這い便に対する需要も少なからずあり、重宝すると感じておられる方もいるでしょう。

私にとってCX20xxシリーズは非常に重宝するフライトだったな、と感じます。私が個人で海外旅行を計画するときは日没前にホテルに到着できるようなスケジュールを考えます。私の最寄りの国際空港は成田です。例えばシンガポールについては日本発のノンストップ便だと、成田発着で最も早くSINに着くのはシンガポール航空のSQ995(9:25発15:25着)ですが、家が遠いので成田に1泊しないとこの便には乗れないのです。到着時刻は理想的ですが。次にJALのJL711(11:20発)、SQ997(11:20発)と続きますが、日没までにホテルに着きたい、という観点ではこれらの便は微妙な気がします。これに対し、CX2073/2074を使ったケースでは、成田夕方発、香港朝発のフライトと組み合わせることになりますが、復路HKGで夜を明かさなければならない、という点はあるものの、私としては概ね満足できるプランが組めました。これは東南アジア方面に限らず、その他の地域行きでも十分可能です。

日本発着他社の夜這い便が数少ない中、フライトスケジュールに柔軟性を与え、乗客の選択肢を増やしたという意味で、CX20xxシリーズは大きな貢献を果たしたと私は思います。他社にない価値を先駆けて提供した、という意味でプロフダクト・リーダーシップの一例ではないかと感じました。

そんなCX20xxシリーズですが、TPE、SIN線が相次いで引退となり(気がついたら、なくなっていました)、最後に残ったKIX線であるCX2053/2052がこのような結果になったのは非常に残念です。CX20xxシリーズの引退の要因の1つとして「AirTariff国際航空運賃」掲示版では
・貨物需要減少
・AIr Hong Kong(香港の貨物便航空会社)がA300-600Fを導入したこと
(つまり、貨物専用便になること)
などがあげられています。

最後にひとこと言いたいです。
さようなら。そして素晴らしいプロダクトを提供してくれて、ありがとう。

3 コメント

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本当ですね!さみしい (frifritom)
2004-10-18 13:18:20
CXの深夜便がなくなるなんて。。1回だけ乗ったことがあります

思いで深い便です

確かに機内食もなく、飲み物だけで、夜行バスに乗ってる感じだった。



この時間なら、会社が終わってからいけるし、

急に香港に行くときにも重宝しそうだったので、

乗ったのは一回きりだったけど、自分にとってはすごく貴重な便だったのに。
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Unknown (JohnClark)
2004-10-24 10:09:19
9v-sjf さん、コメント、トラバありがとうございました。それと、ブログのオープン、おめでとうございます。



CXの10月からのタイムテーブル・プログラムによると、CX2052(777)は、10月12日

CX2053(330)は、10月15日に

ディスコンになってましたね。



日本からの香港便が、減るのは、「香港好き」としては、かなり、残念なニュースですね。



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コメントありがとうございました (frifritom)
2004-10-24 22:42:07
自分のところに返事を書くべきか、こちらに書くべきか、いまいちブログの使い方が良く分かってないんですが、こちらに書いておきます。(たぶん正解は、どちらでもいいんでしょう。。)

とりあえず、私はなんとか台風トカゲの被害はあいませんでした。。



この便は、自分の結婚登録手続きに出かけるときに乗った便で、忘れられない便でした。さらにそのときは台風のせいで何時間も空港で待たされて、関空を出たのは深夜1時すぎでした。今となっては、すべて思い出です。。



航空会社占いおもしろかったです
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