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音楽大好き男の徒然なる日記

音楽家に愛される芸森スタジオがSOS コロナ禍で存続危機(北海道新聞2020年7月19日付記事)

2020-07-19 | 音楽
北海道新聞 2020年7月16日付記事
「音楽家に愛される芸森スタジオがSOS コロナ禍で存続危機」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/441181?rct=n_major

著名ミュージシャンたちに愛されるレコーディングスタジオが、札幌にある。
支笏湖から連なる深い森に抱かれた「芸森スタジオ&CloudLodge(クラウドロッジ)」。
良質な音響機器をそろえ、宿泊もできる。

その芸森スタジオが、新型コロナウイルス感染拡大で経営危機に直面している。
営業を続けるための資金をクラウドファンディング(CF)で募っており、ミュージシャンたちも協力を呼び掛ける。
 文/門馬 羊次(報道センター・デジタルチーム)


札幌中心部から車で30分余り。
札幌芸術の森美術館で知られる札幌市南区芸術の森地区に着く。

芸森スタジオは5千平方メートルの敷地があり、
広い庭を備えた延べ約1900平方メートルの4階建ての建築が、ミュージシャンたちを出迎える。

「自然に囲まれた、この環境が何よりのぜいたくなんですよ。 集中して音楽と向き合えるから」。
芸森スタジオの運営会社「SAVE(セーヴ)」(札幌)の副社長、高瀬清志さん(71)がほほ笑む。

芸森スタジオは1993年、東京の大手レコード会社が16億円を投じて建てた。
施設を監修したのは、ビートルズの育ての親として知られる
音楽プロデューサーのジョージ・マーティン氏(1926―2016年)。

高瀬さんによると、レコード会社がスタジオ建設を構想し、マーティン氏に相談した。
全国で候補地を探し、夏も湿度が低く、音がクリアに響くことや、
豊かな自然に囲まれていながら都市部に近い芸術の森地区の環境が、目に留まったという。

建物は、レコーディングをするスタジオ棟と、
リゾートホテルのような客室10室や暖炉付きの食堂がある宿泊棟に分かれている。
スタジオは200平方メートルを超える規模。
録音のためのブース四つと、録音機材を設置したコントロールルームがある。

「これを見てください」。
高瀬さんがコントロールルームの巨大なミキサー(調整卓)に視線を向けた。

英国メーカーSSL(Solid State Logic)の1979年製。
両手を広げた以上の幅があり、録音の音質などをコントロールするチャンネルが64ある。


「マーティンさんが、カリブ海の島にあったスタジオで使っていた機材なんです」。
高瀬さんが教えてくれた。
ローリングストーンズやスティングも、この調整卓で録音したという。
繊細な調整ができる上、現代のデジタル技術によるクリアな音源とは異なる、ぬくもりある音が、ミュージシャンを引きつける。

4つの録音ブースのうち、最大のセンターブースの天井高は7メートル。
「雑音が適度に抜けてくれる高さ」と高瀬さん。
壁の一部には、芸術の森付近で採石される札幌軟石が使われている。
札幌軟石は粒子が粗く、たくさんの空気の粒を内包していることから、音の吸収と反響の絶妙なバランスが保たれるという。

業界では「音が良いスタジオ」として知られる。
坂本龍一さん、竹内まりやさん、奥田民生さんらビッグネームがスタジオを使ってきた。
若者を中心に人気を集めるロックバンド「UVERworld(ウーバーワールド)」は楽曲制作のため、
10年近く通い続けているという。


芸森スタジオは開業から現在までの27年間、紆余(うよ)曲折を重ねてきた。

建設したレコード会社が経営難に陥り、2000年ごろ、芸森スタジオを手放した。
その後、所有者は転々。
休眠状態となったが、2008年、札幌の音楽イベント会社「ウエス」と、
歌手の松山千春さん(十勝管内足寄町出身)の個人事務所が共同で購入し、運営会社のセーヴが立ち上がった。

責任者として招かれたのが、道内のFMラジオ局で長年、音楽番組などを手掛けてきた高瀬さん。
「国内有数のスタジオを廃虚にしてはいけないと思った」と振り返る。

ただデジタル技術の発達で、パソコンと専用ソフトがあれば楽曲制作ができる時代。
録音スタジオの営業だけで経営を成り立たせるのは難しく、
広い食堂や美しい庭などを生かして、企業研修や、結婚式の披露宴会場としても活用しながら
“音楽の聖地”を守り続けてきた。

そこにコロナ禍が襲いかかった。

3月中旬から利用予約のキャンセルが相次ぎ、4月から5月にかけての収入はゼロ。
このままだと老朽化が進む建物の維持・管理費や、高瀬さんらスタッフ4人の人件費などは到底賄えない。

そこで企画したのがCF(クラウドファンディング)だった。
6月17日に専用サイトで寄付を募り始めると、芸森スタジオの存続を望むミュージシャンたちが声を上げた。

坂本龍一さんはツイッターで、芸森のCFを紹介。
シンガー・ソングライターのスガシカオさんもツイッターで、高瀬さんらスタッフへの敬意と共にCFサイトを紹介し
「北海道の皆様、どうかご一読を!」と投稿した。

CFサイト (https://camp-fire.jp/projects/view/297138?list=search_result_projects_populer)

寄付はスタートから11日間で、とりあえずの目標とした500万円を突破。
7月15日までに630人以上から計710万円以上が集まった。

高瀬さんは
「たくさんの支援が寄せられ、本当にありがたい。
CFを通して、札幌から多くの音楽が生まれていることを広く知ってもらえることにも価値を感じる。
頑張っていかないとね」。
スタジオを守り抜く決意を新たにしている。

利用予約は7月以降、徐々に入り始めたが、依然として需要の回復は見通せない。
寄付は25日まで募っている。

芸森スタジオ&Cloud Lodgeクラウドファンディング



芸森スタジオ& Cloud Lodge /About Geimori Studio & Cloud Lodge


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ちなみに、「東京の大手レコード会社」とは、1984年に東芝EMI/EXPRESSレーベルより独立した
ファンハウス Fun House です。
設立時・最盛期のおもなアーチスト(敬称略)は、
・オフコース(鈴木康博氏脱退後)&小田和正
・チューリップ(第2期)
・稲垣潤一
・岡村孝子
・杉田二郎
・小林明子
・辛島美登里 でした。
時代は激しく変わるし、レコード会社の運営って、やはり難しいものですね……
でも、アイドル&アニソンばかりを推す現状はやはりおかしい、と自分は思います。


でも、欧州並みの寒冷で湿度の低めの北海道の環境が、
必ず海外に評価される音楽を生む可能性を持っています。


ブログご覧の皆様のご協力を、よろしくお願いいたします。

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