バグボ大統領は、並々ならぬ演説の名手だ。決して流麗な名文を持って語りかけるのではない。むしろ、かなり朴訥な調子。しかしながら、その言葉の訴え、論理展開には、いつもながら引き込まれてしまう。常に、なるほどと納得させる何かがある。
11月18日、鉱業とエネルギーの国際シンポジウムの開会式である。バグボ大統領は、真打で登壇し、何千人と座った出席者を前に演説する。もちろん、原稿などは全く見ないで、聴衆を見つめて語りかける。
「みなさん、コートジボワールはカカオの国と思っているだろう。違う。前世紀の初めの頃、コートジボワールの輸出品は、専ら木材だった。まず、コーヒーが導入された。そのうち、ゴールドコースト(注:今のガーナ)から、カカオが来た。森を切り開いて、カカオが植えられた。カカオが主要産品になったのは、1970年代になってからなのだ。」
そういえばバグボ大統領は、かつて大学で歴史の先生だった。まるで授業で教えているようだ。
「カカオを輸出して出来た資金を、開発に投じた。アヤメ湖ダム、コス湖ダムを建設して、電源を確保した。この開発はうまくいった。ダムのお陰で、村々が電化された。今や、電気を近隣国に輸出するまでになっている。資源を輸出して、国の開発資金を自らつくって、それで貧困撲滅の闘いに臨む。これが、わが国の姿である。」
ここで一息ついて、大学の先生の講義から、政治家の演説に変わる。
「その国の資金を横取りする、盗人がいる。開発に向けての努力を損ない、貧困との戦いの足を引っ張る、盗人がいる。そうした盗人は、必ずや見つけ出され、裁判に掛けられるであろう。」
汚職とか公的資金の不正流用とか、そういう言葉は使わないで、盗人。わかりやすい。この会議には、鉱山開発やエネルギー分野の専門家、政府関係者が詰め掛けている。この学術的・実務的な雰囲気の中では、似つかわしくない言い回しだ。しかし、大統領の演説は、今夜の番組で全国に流れるはず。庶民には、盗人、わかりやすい。
「戦争(注:南北分裂の政治危機のこと)の間は、そういう連中が沢山いても、政府として何も出来なかった。しかし、戦争は終わった。南北は統一され、政府は統一された。数ヶ月先には、大統領選挙だ。今こそ、わが国の経済に巣食って、甘い汁を吸っている連中を追い出そう。そして、改めて貧困に立ち向かおう。」
希望を持たせる。その連中とは、具体的に誰かとは言わない。未来に希望を持つことが大事なのだ。
「人々は、われわれをおだてる。アフリカは成長の大陸だ。アフリカは資源がいっぱいだ。鉄、銅、ボーキサイト、金、石油、ガス、ウラニウム、ダイヤモンド。アフリカ人は、資源の上に座っている。アフリカ人は、金持ちだ。」
一息おく。そして声を荒げる。
「大嘘だ。僕らは貧しい。僕らは飢えている。」
会場が笑いに包まれる。資源開発の金持ちたちが集まっている会議だけに、複雑な笑いだが、みんな大統領のリズムに乗せられている。
「アフリカ人は、資源の上に座っている、だと。」
また声を荒げる。
「全く、そのとおりだ。ただ座っているだけだ。」
また爆笑。
「その資源を、開発しなければならない。輸出できる資材に加工しなければならない。座っているだけでは駄目だ。働かなければならない。」
正論である。
「アフリカの悲惨を嘆く人たちは、外国からの援助が必要だ、という。成長には、国民の幸せには、外国の助けが必要だ。それは違う、自分たちで出来る。国が持っている潜在的な力を、つまり鉱業資源とエネルギーを、自分たちの力で開発すればいいのだ。」
国際社会の日頃の鬱憤も、大統領は代弁してくれているようだ。
「アラブ諸国を見よ。みなさんは、あの国々は石油の上に浮かんでいるから、運がいいという。そうではない。私はアラブ諸国に代表団を送り、この国々の実態を調査している。石油資源を元手に、大変な開発計画を進めている。カタールを見よ。大変な教育の国になっている。あの国は、大学を誘致し、テニス大会を誘致している。そして、世界中の建築家が、ドバイ詣でだ。この国(ア首連)は、もう石油なしでもやっていけるほど、インフラを整備した。彼らは石油資源をもとに、開発基金を設立し、この基金から次に投資して、たゆみなく努力している。」
だから提案したい。と大統領は言う。
「われわれも、独自に開発基金を設立しよう。石油や鉱物資源からの収益の一部を積み立てて、地域のインフラ投資に活用できるようにしよう。私はこの考えを、12月15日の西アフリカ首脳会議で提案するつもりだ。」
聞く人の誰も、どこかに何かピンと来るものがある。一国の大統領らしからぬ、子供っぽい表現や表情に、思わず笑いを浮かべてしまう。問題提起があって、それを検討して、解決がある。演説を聞き終わった後、何か得をした気分になって席を立つことが出来る。ちょうど団十郎の勧進帳を見終えて、歌舞伎座を出るような気分である。
11月18日、鉱業とエネルギーの国際シンポジウムの開会式である。バグボ大統領は、真打で登壇し、何千人と座った出席者を前に演説する。もちろん、原稿などは全く見ないで、聴衆を見つめて語りかける。
「みなさん、コートジボワールはカカオの国と思っているだろう。違う。前世紀の初めの頃、コートジボワールの輸出品は、専ら木材だった。まず、コーヒーが導入された。そのうち、ゴールドコースト(注:今のガーナ)から、カカオが来た。森を切り開いて、カカオが植えられた。カカオが主要産品になったのは、1970年代になってからなのだ。」
そういえばバグボ大統領は、かつて大学で歴史の先生だった。まるで授業で教えているようだ。
「カカオを輸出して出来た資金を、開発に投じた。アヤメ湖ダム、コス湖ダムを建設して、電源を確保した。この開発はうまくいった。ダムのお陰で、村々が電化された。今や、電気を近隣国に輸出するまでになっている。資源を輸出して、国の開発資金を自らつくって、それで貧困撲滅の闘いに臨む。これが、わが国の姿である。」
ここで一息ついて、大学の先生の講義から、政治家の演説に変わる。
「その国の資金を横取りする、盗人がいる。開発に向けての努力を損ない、貧困との戦いの足を引っ張る、盗人がいる。そうした盗人は、必ずや見つけ出され、裁判に掛けられるであろう。」
汚職とか公的資金の不正流用とか、そういう言葉は使わないで、盗人。わかりやすい。この会議には、鉱山開発やエネルギー分野の専門家、政府関係者が詰め掛けている。この学術的・実務的な雰囲気の中では、似つかわしくない言い回しだ。しかし、大統領の演説は、今夜の番組で全国に流れるはず。庶民には、盗人、わかりやすい。
「戦争(注:南北分裂の政治危機のこと)の間は、そういう連中が沢山いても、政府として何も出来なかった。しかし、戦争は終わった。南北は統一され、政府は統一された。数ヶ月先には、大統領選挙だ。今こそ、わが国の経済に巣食って、甘い汁を吸っている連中を追い出そう。そして、改めて貧困に立ち向かおう。」
希望を持たせる。その連中とは、具体的に誰かとは言わない。未来に希望を持つことが大事なのだ。
「人々は、われわれをおだてる。アフリカは成長の大陸だ。アフリカは資源がいっぱいだ。鉄、銅、ボーキサイト、金、石油、ガス、ウラニウム、ダイヤモンド。アフリカ人は、資源の上に座っている。アフリカ人は、金持ちだ。」
一息おく。そして声を荒げる。
「大嘘だ。僕らは貧しい。僕らは飢えている。」
会場が笑いに包まれる。資源開発の金持ちたちが集まっている会議だけに、複雑な笑いだが、みんな大統領のリズムに乗せられている。
「アフリカ人は、資源の上に座っている、だと。」
また声を荒げる。
「全く、そのとおりだ。ただ座っているだけだ。」
また爆笑。
「その資源を、開発しなければならない。輸出できる資材に加工しなければならない。座っているだけでは駄目だ。働かなければならない。」
正論である。
「アフリカの悲惨を嘆く人たちは、外国からの援助が必要だ、という。成長には、国民の幸せには、外国の助けが必要だ。それは違う、自分たちで出来る。国が持っている潜在的な力を、つまり鉱業資源とエネルギーを、自分たちの力で開発すればいいのだ。」
国際社会の日頃の鬱憤も、大統領は代弁してくれているようだ。
「アラブ諸国を見よ。みなさんは、あの国々は石油の上に浮かんでいるから、運がいいという。そうではない。私はアラブ諸国に代表団を送り、この国々の実態を調査している。石油資源を元手に、大変な開発計画を進めている。カタールを見よ。大変な教育の国になっている。あの国は、大学を誘致し、テニス大会を誘致している。そして、世界中の建築家が、ドバイ詣でだ。この国(ア首連)は、もう石油なしでもやっていけるほど、インフラを整備した。彼らは石油資源をもとに、開発基金を設立し、この基金から次に投資して、たゆみなく努力している。」
だから提案したい。と大統領は言う。
「われわれも、独自に開発基金を設立しよう。石油や鉱物資源からの収益の一部を積み立てて、地域のインフラ投資に活用できるようにしよう。私はこの考えを、12月15日の西アフリカ首脳会議で提案するつもりだ。」
聞く人の誰も、どこかに何かピンと来るものがある。一国の大統領らしからぬ、子供っぽい表現や表情に、思わず笑いを浮かべてしまう。問題提起があって、それを検討して、解決がある。演説を聞き終わった後、何か得をした気分になって席を立つことが出来る。ちょうど団十郎の勧進帳を見終えて、歌舞伎座を出るような気分である。
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