コロナ騒動:感染者の涙から陽性反応! だから、ゴーグル着用?
2020/02/29 の報道である。
「あくまで喉から」 と
断言していた日本の
“専門家” がいたものだ。
今日のこのニュースによると、中国の研究チームが、新型コロナウィルスを感染者の “涙” や “目ヤニ” から検出したとのことだ。
しかし、“新型コロナウィルス” が “ウィルス性の風邪の一種” であるならば、感染者の目からの検体で陽性反応が出るというのは十分に予想できることではないか。
なぜならば、風邪やインフルエンザのウィルスがしばしば結膜炎を惹き起こすことはよく知られているからだ。中でも “アデノウィルス” による結膜炎は代表的なものである。
“アデノウイルス” という非常によくあるウイルスが、
喉 に感染すると “喉風邪”、
鼻 に感染すると “鼻風邪”、
目 に感染すると “はやり目” なのである。
そのための検査キットも存在する。
専用の抽出液と検体(涙、目ヤニ、喉の粘膜、鼻腔の粘膜等)とを専用の容器内で攪拌し、その試料溶液を右の赤い凹みに滴下する。5分ほど経過すると、陽性か陰性かの結果が出るというしくみである。たいていの病原菌の検査キットの原理はこんなもので、1つ千円~2千円ほどのものだ。
ニュース動画の続きを見よう。
いちばん最後のシーンの字幕では、ゴーグル着用についての言及がある。
この字幕を見て、ほとんどのひとは納得するかもしれない。しかし、何かヘンな理屈ではなかろうか?
赤の部分は問題ない。つまり、感染者の目や涙にはウィルスがいるということだろう。目や涙にウィルスがいるからこそ、陽性反応が出るのだ。
しかし、黄色の部分の 「目から感染する」 と言っているその 「目」 とは、いったい “誰” の 「目」 のことだ?
“感染者である 患者の目” か? それとも “治療に従事する 医師の目” か?
いちばん最初の2行をあらためて読んでみる。
さて、この文は、
「感染者の涙 からウィルスの陽性反応が確認されたということは、つまり、目 から感染する可能性があるということです。」
というふうに読めるのだが、いかがであろうか。
こう読むとしたら、ここでの 「目から感染」 の 「目」 は、“感染源” としての 「患者の目」 のことになろう。
しかし、ゴーグルをつけるのは医師の方だ。医師がゴーグルをつけるのは自分の目からウィルスが侵入することを防ぐためである。つまり 自分の目を感染経路として遮断するためである。
さて、医師がゴーグルをつけだしたのは 「感染者の涙から陽性反応!」というニュースからではない。医師のゴーグル着用はずいぶん昔からだ。その理由は、感染者の涙にウィルスがいるからではないだろう。
最初は手術における患者の血液などの体液の飛散対策が主な理由だった。
新型コロナウィルス発生後は、患者のくしゃみや咳でウィルスが爆発的に空気中に放出され、それが医師の目の粘膜から侵入する危険があるからだ。
もちろん、すでに空気中に浮遊するウィルスが眼球に付着するのを避ける意味もあるだろう。なので、密閉性のあるゴーグルになっている。
ここで、一般的な “感染というメカニズム” について、以下のように整理したい。
ウィルスは “寄生体” である。宿主にとりついて増殖するが、他の宿主にも拡がって繁栄したいので、元の宿主からさらに周りの別の宿主たちにどんどん渡航しようとする。
そのための移動手段として、唾液、痰、糞便、尿、血液、といった水分を含む流動体に乗り込む。これらを “感染媒体” と呼ぶことができるだろう。ビラとかポスターといった “情報媒体” が情報を伝えて広めるのと同じように、“感染媒体” はウィルスが世界に拡散するための乗り物として機能する。
難民となったウィルスを乗せた船が出港する港が “感染源” ということになる。つまり、 “感染源” とは、“ウィルスが外に流れ出す出発点” である。口、鼻、目、肛門、尿道、傷口 といった、粘膜とか皮膚の開口部からウィルスは晴れて外の世界に出て新天地を求め、大挙して海外に繰り出す。
“くしゃみと咳” は膨大な難民ウィルスを乗せた “超特急便” である。ウィルスは “宿主の鼻腔や気道を刺激すること” によって、自分たちが乗った宿主の体液を爆発的かつ大量に、より広範囲に放出させるのだ。
感染者が “くしゃみや咳” をしているのは、まさにウィルスによって操作されて、ウィルスの遠方への拡散のために 音速のロケット(唾液の飛沫、痰)を放射状に発射しているということだ。
こうして押し寄せる難民ウィルスの船団を、自分の口や鼻に上陸させないために武漢の医師たちは
口と鼻 という粘膜の港には マスク をつけ、
目 という粘膜の港には ゴーグル をつけるのである。
いずれにしても、“入り口の遮断” であり、“感染経路の遮断” であり、“侵入阻止” のためである。
さて、感染者の “口や鼻” はウィルス難民の船団が出港する港、つまり “感染源” だ。ウィルス難民を乗せたジャンボジェットの群れが飛び立つ飛行場と言ってもいい。
しかし、感染者の “目” はどうだろうか?目はくしゃみをするだろうか?目は咳をするだろうか? 目と目でキスができるだろうか?
そもそも感染者の目は、ウィルスを乗せた涙や目ヤニが飛び立つ飛行場だろうか?感染者が目から涙の飛沫を発射させるのを想像できるだろうか?常識的に考えても、科学的に考えても非常にありそうにないことではなかろうか?ウィルスがどんなに人間を操作しても、今のところ涙を発射させるところまではいっていないようだ。
せいぜい感染者が自分の目をこすったりして、その手に付着したウィルスが、運が良ければ防御の薄い港(口、もしくは目)に運ばれることがあるくらいだろう。
つまり、目の涙に潜んでいるウィルスが新天地への移住を夢見ていても、“陸伝い” の間接的な “接触感染” という方法しかないのであって、唾液や痰のロケットに乗って 大空を渡る “飛沫感染” や “空気感染” ではないのだ。
さて、こう考えると、医師にとって「目から感染する可能性」 というのは、もともと飛沫感染、空気感染、エアロゾル感染のどれについても言えるのだ。だからこそ、今回の「涙から陽性反応」 以前から、武漢では “ゴーグル着用” はずっと常識なのだ。
そうであるならば、「涙から陽性反応」、だから 「ゴーグル着用が必要」 というのはまったく馬鹿げている。「より一層必要」 と言っても馬鹿げている。低次元の論理的混乱である。
今回、目からウィルスを含んだ飛沫が空中をくしゃみのように飛んでくることが実証されたというのなら、コロナウィルス性の結膜炎の患者に対しては特に 「ゴーグル着用が一層必要」 と言うのはそれなりにスジが通っているかもしれない。
そうでなければ、今回の発見(涙からの陽性反応)がなくても “ゴーグル着用” はもともと必要であるし、今回の発見があったからといって、その必要性がさらに増す、ということには全然ならないのだ。
「涙から陽性反応」 だから、「ゴーグル着用が必要」 というのは、単に “感染のメカニズム” がわかっていない人間の科学的無知と表面的な連想から出てきた結論である。このニュースのこの結論部分はほとんどフェイクニュースだ。何か気の利いた結論を付け足したい、という俗な動機によるものだ。
大事な点は、この馬鹿げた結論に納得する人間も同類の俗物になってしまうということだ。ゾンビ化するといってもいい。
つまり、間違った結論という有害なウィルス(ミーム)を疑うことなく受け入れる人間は、そのウィルスに感染するのと同じで、自らも馬鹿げた結論の感染者になるのだ。そして、周りの人間にもその話をしてゾンビのように感染を次々と拡大しかねないのだ。
このコロナパンデミックは、グローバルでリアルタイムに進行しているという意味で、人類史上ほとんど前例がない大規模な危機である。
こういうときこそ、あらゆる情報を疑ってかかる必要があるだろう。