遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

シャープ 液晶の斜陽でEMS世界最大手の台湾・鴻海が筆頭株主に

2012-03-28 23:55:40 | my notice
 かつての日本の製造業の花形であった半導体産業の最後の砦の国策会社エルピーダが会社更生法申請に陥りましたが、やはりつい最近まで隆盛を誇っていた液晶の雄シャープも、その液晶の赤字が業績を圧迫し、「第10世代」と呼ばれる大型ガラス基板を世界で唯一採用する最新鋭工場の堺工場の稼働確保を計るため、EMS世界最大手の台湾・鴻海グループを引き受け手とする第三者割当増資と、堺工場を運営するシャープ子会社の株式の約46%を鴻海側に譲渡し、共同運営に移すことにしたのだそうですね。
 その結果、鴻海グループの出資比率は9.9%となり、日本生命を上回って事実上の筆頭株主となるのだそうです。各紙が取り上げていますが、読売の記事が遊爺の危惧と一致し目を引かれました。
 
シャープ液晶立て直し 台湾大手と資本・業務提携 異例の対応堺工場テコ入れ (3/28 読売朝刊)

 シャープが電子機器受託製造最大手の台湾・鴻海精密工業と資本・業務提携するのは、主力の堺工場を安定稼働させて液晶事業の立て直しを図る狙いがある。国内大手電機メーカーが筆頭株主に海外電機メーカーを迎えるという異例の対応で、難局打開を目指す。ただ、最新鋭工場の共同運営には、技術流出の懸念もくすぶる。シャープの決断は、日本の電機メーカーが大きな岐路にさしかかっている厳しい現状を浮き彫りにしている。(山本照明)

 27日に東京都内で開いた記者会見で、奥田隆司・次期社長は「世界競争は一層厳しさを増しているが、両社の規模効果を生かした安定調達でコスト競争力のある商品を展開できる」と提携の意義を強調した。
 シャープは2012年3月期連結決算の税引き後利益が
過去最悪の2900億円の赤字に陥る見通しだが、最大の原因は売上高の7割を占める液晶関連事業の不振だ。特に、4000億円以上を投じて建設した主力の堺工場(堺市)は、液晶テレビの販売低迷で液晶パネルの在庫が積み上がり、稼働率は半分程度にとどまっている。このため堺工場の稼働率の引き上げは喫緊の経営課題となっていた。
 堺工場を巡っては、運営する事業子会社のシャープディスプレイプロダクトへの出資比率を、ソニーが7%から最大34%まで高める予定だった。ところが、テレビ事業の不振に苦しむのはソニーも同じで、追加出資の交渉は難航し、協議は今も続いている。
 シャープは2月、堺工場の一部の生産ラインを、需要が見込めるスマートフォンやタブレット型端末向けの中小型パネル用への転換を検討すると表明した。ただ、「非常時の対応」(シャープ幹部)で、抜本的な解決は期待薄だ。
 こうした中、今回の提携に鴻海が堺工場のパネルを最大50%引き取ることが盛り込まれたことで、堺工場の稼働率アップという懸案のメドがつき、シャープにとって「減損リスクはなくなった」(奥田次期社長)という意味は大きい。
 ただ、鴻海はシャープの液晶パネルを活用して、主に米中のテレビ各社からの受託製造を強化するとみられ、シャープが得意とする60型以上の大画面テレビの分野で、
手ごわい競争相手を生み出すことにつながりかねない。そもそも、テレビの需要低迷が続けば、鴻海が想定通りパネルを引き受けるのか、不安も残る。
 シャープは携帯電話など他の分野でも鴻海と共同で開発や部材調達を目指す方針だが、コスト競争力が高まる一方で、技術流出につながる恐れもある。シャープの思惑通りの成果が上がるかどうかは未知数だ。


  台湾ホンハイが筆頭株主に、シャープ100年目の遅すぎた決断:日経ビジネスオンライン

 EMSと、ファブレスは、1990年代に勃興し、2000年代に入りもてはやされた懐かしい言葉ですが、までも健在だってのですね。
 シャープが売り物にした「液晶パネルから完成品のテレビまで」という事業モデルが頓挫したことになり、半導体とともに液晶も、かつて主役だった日本の製造業が、韓国や台湾の製造業と主従が逆転したことを意味しますね。
 
 記事に書かれている、堺工場を運営するシャープディスプレイプロダクトへのソニーの出資比率を7%から最大34%まで引き上げる交渉は、持ち分比率の低下や保有株売却の方向で合意したそうです。
 ソニー、シャープとの液晶協業で追加出資行わず  :日本経済新聞

 技術で先行した日本企業が、販売競争で敗れ去るパターンが続出しています。自動車も、ハイブリッドからEVの時代へ変遷すれば、部品点数が減り新規参入の技術の壁は低くなり、同様の現象が起きると言われていますね。
 家電業界では、節電や新興国の中流層の台頭で、黒物から白物へと需要の盛り上がりが移っていて日本メーカーの健闘が期待されているとの明るい話題もありますが、価格で先行するサムスンなどとどこまで戦えるかは未明です。
 国際競争で苦戦する日本の製造業。6重苦が、7, 8重苦に増えている日本。

 高齢化社会での介護やサービス業の雇用拡大で雇用確保と言われますが、国内での循環に留まるもので、経済成長=海外から稼いでくることには繋がりにくいものとも言われ、製造業の健闘が望まれます。
 製造業の健闘=雇用と経済成長の足枷の軽減が望まれます。

 鴻海の企業目標は「サムソン打倒」なのだそうです。
 
宮崎正弘の国際ニュース・早読み(鴻海に飲み込まれるかシャープ) [宮崎正弘の国際ニュース・早読み] - メルマ!

<前略>
 日本のお家芸、ものづくりの代表選手としての電子産業がかくも一途な衰退を見せた背景には韓国、台湾、中国の躍進がある。
しかし根源にさかのぼれば「ヤングレポート」以来の米国の戦略である。当時、米国は半導体、集積回路で日本から首位をうばえ、そのために韓国に梃子入れせよ、と提唱し、米国は官民挙げて韓国の産業を育成してきた。
 台湾の鴻海精密工業が瞬く間に、この世界でのし上がってきた背景にはアジアにおける電子産業の勃興と、受託生産(EMS)である。しかも鴻海の企業目標は「サムソン打倒」と勇ましい。

 ▼鴻海精密工業の目標は「サムソンをやっつけろ」
 電子部品から液晶パネルまで、なにからなにまでを大手メーカーの製品を受託した。アップルの「i pad」もアイフォーンも鴻海が生産している上、中国の子会社「冨士康科学技術集団」(Foxconn)は、じつに百万人の従業員を要する大企業に成長して、鴻海グループ総帥の郭台銘は、いまや台湾財界の顔というより世界ビジネス界の顔である。
 郭台銘はもともと中国山西省がルーツの外省人。だからやることは荒っぽい。
 台湾企業という印象で、この企業集団を解釈すると間違える。
 げんに2010年に富士康の深セン工場では連続12件もの従業員飛び降り自殺が発生し、世界のジャーナリズムが注目した。過酷な就労条件、劣悪な福祉環境などと批判された。10名が死亡し、二名が重傷を負い、管理の杜撰さが問われた。
 しかし富士康はくじけず、その後も中国国内で工場を増設し、増産に次ぐ増産。大陸内だけで54万人ともいわれる従業員をかかえ、或るエコノミストは「毎年二万人が辞め、二万人以上を雇い、殆ど毎日、同社人事部はハローワークのごとき人混み」と言う。
 この鴻海のいきなりの大躍進は北京の奇美実業いじめという政治に直結する。
親日家、台湾独立運動のつよきスポンサーで李登輝の支援者でもあった許文龍が率いた奇美グループが、数年前に液晶パネルの生産に進出して中国に工場を開いた。
はじめはにたにたと揉み手をして下手で接近してきた中国は、奇美中国工場での生産が軌道に乗るや、イチャモンをつけて工場長を逮捕し、許文龍に「台湾独立運動は誤りだった」と新聞に広告をせよ」と命令を出した。
 北京はまた台湾独立運動を封じ込めるために2005年3月に「反国家分裂法」なる法律をいきなり制定し、大陸へ進出した台湾企業6万社、駐在台湾人100万人を管轄下においた。


 # 冒頭の画像は、台湾・鴻海精密工業との資本業務提携を発表するシャープの奥田隆司次期社長




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2 コメント

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「サムソン打倒」 (佐藤)
2012-03-29 08:11:26
この記事は興味もって拝見しました。
深く現場の情報として参考になりますね。


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Re: 「サムソン打倒」 (遊爺)
2012-03-30 00:05:57
佐藤様 お読みいただいた上に、コメントもいただき、ありがとうございます。

 紹介情報がお役にたてて幸甚です。
 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」のメールマガジンは、独自の切り口と、マスメディアでは観られないニュースソースで、私も参考にさせていただいています。ほぼ毎日着ますので、読むのも大変ですが。 (^^;

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