遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国包囲網 中国が嫌がるのは中露分断

2013-04-29 23:53:09 | ロシア全般
 安倍総理がロシアを訪問しています。平和条約締結に向けた交渉の再開が打ち出されるとの速報が飛び交っています。
 ガス田の枯渇に伴う極東や北極圏での新規開発と、欧州諸国のエネルギー安全保障の観点に立つ脱ロシア依存での販売減に伴う日本他のアジア市場への新規販路開拓を迫られているなかでのシェールガスの登場での市場の軟化という追い打ち。こうしたロシアの台所の苦しさを十分踏まえた交渉が肝心との提言を遊爺は唱えてきていますが、ここへきてプロの評論家の先生による同様の指摘も増え始めてきました。
 安倍首相は、こうした背景はご承知のことと思いますので、逸ったり焦ることなく、また過去の冷や水を浴びせられた実績を想いだし騙されることなく、しっかり交渉してきていただけることを願ってやみません。この時間だと両首脳の会談は既に終わっていますが、クレムリン内のプーチン大統領の住居に招かれるかが、プーチン大統領との緊密度の尺度になると「TBS・ひるおび」で言っていましたが、どうだったのでしょう?
 

中露分断の戦略外交を (4/29 産経 【視線】ワシントン支局長・佐々木類)

 
米ワシントン市内のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で24日、オバマ政権に隠然たる影響力を持つブレジンスキー元大統領補佐官が講演し、中国とロシアについて語った。久々に表舞台に登場した同氏の研ぎ澄まされた地政学、国際政治への分析は健在で、自由や民主主義というわが国や欧米諸国と異なる価値観を持つ異質の大国に囲まれた北東アジアの安全保障環境をどう捉えているのか耳を澄ました。
 結論は、財政難で衰弱しながらも依然として
超大国たる米国と軍事的にも経済的にも台頭著しい中国はともに、北東アジアの平和と安定に冷静に対応していくべきだという、至極当然で退屈なものだった。しかし、個々の分析は興味深く、中国は2011年1月に胡錦濤前国家主席が訪米してオバマ大統領と合意した包括的協力関係から、安保環境が劇的に変化したと指摘。東シナ海や南シナ海で中国が傍若無人に振る舞い緊張が高まっていることについて、「自らの軍事、経済面での国際的な影響力を誇示して、鼻っ柱の強い行動をとっていることがすべての原因だ」と切り捨てた。また、オバマ大統領は同年11月、欧州や中東から外交・安保の比重を東アジアに移すピボット(軸足旋回)と呼ばれる新外交戦略を表明し、これが中国側から「中国を標的にした」と過剰な反発を招き、現在の緊張の高まりにつながっている
とも語った。
 ブレジンスキー氏が最近、中国共産党機関紙「人民日報」のインタビューを受けた際、共産党が見る米世界戦略について「究極的には中露両国を分断、制圧することだ。オバマ氏のピボット演説はそれを示唆したものだ」と指摘したのに、紙面では触れられなかったというエピソードも出席者の耳目を集めた。共産党の見立ては公式見解として人民日報に掲載されたものだ。痛いところを他人に蒸し返されるのを嫌ったのだろう。このエピソードは、
中国が中露両国の分断を最も恐れている
ことを如実に物語っているようだ。
 ブレジンスキー氏の話を聞いて思い出すのは、
3月22日の中露首脳会談で、中国の習近平国家主席と握手するプーチン露大統領の写真だ。AP通信の写真は、一瞬、気の進まない表情をみせた大統領を見逃さなかった。両首脳は表向き、戦略的関係強化などで一致したが、浮き彫りになったのはロシアの根深い対中警戒感だ。同時に、日米同盟が中露関係にクサビを打ち込む環境が静かに醸成されつつあるという、北東アジアを取り巻く国際情勢の微妙だが、構造的な変化
もうかがえた。

 新体制発足直後の習氏は、日米同盟への牽制(けんせい)を狙って最初の訪問国にロシアを選んだ。だが、米外交専門誌、ザ・ディプロマットは「戦略的に重要で目新しいものは何もなかった」とし、
習氏の訪露は失敗だったと結論付けた。米紙ニューヨーク・タイムズは「プーチン政権は極東ロシアが中国の人口圧力と経済力で圧倒されることを懸念している」と分析。CSISは最近、日米露3カ国のシンクタンク合同で報告書をまとめ、北東アジアの情勢について「軍事力の増強と自己主張の強い中国の行動が、北東アジアに深刻な影響を引き起こした
」と指摘した。

 台湾との漁業協定締結で尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる中台両岸関係にクサビを打ち込むことに成功した安倍晋三首相は、大型連休期間中に訪露している。北方領土問題を抱えた日露関係を2国間の「線」で考えることは重要だが、
中露という“敵チーム”の不和を誘う「面」による戦略外交も必要だ。首相がプーチン氏を相手にどのような役者ぶりを発揮するのか。日米の専門家たちが注視している。(ささき るい)


 領土交渉再開へ日ロ共同声明 外務・防衛相協議を創設  :日本経済新聞

 中国は日米同盟の分断、日米韓の連携の分断により台湾、尖閣、南シナ海、チベット、ウイグルといった核心的利益の確保を達成するために世界各国を訪問し、札束をちらつかせて中国支持をとりつけて回っています。
 韓国、ロシアに対しては、対日領土問題での共闘を呼びかけ、韓国を従わせることには易々と成功していますが、ロシアは色よい返事はしていませんでした。
 そこで、習近平が就任最初の訪問先としてロシアを訪問し、冒頭に書いたロシアの台所の窮状を突いて、価格交渉でとん挫していた天然ガスの購入や、戦闘機、潜水艦の購入を持ち出し、領土問題での対日共闘を再度持ち出していました。
 ロシアもたまらず、態度を軟化はしてみせていましたが、上記産経の記事の様に、警戒は依然として解いてはいなく、一筋縄でころぶロシアではありません。

 上記産経の記事では、米・シンクタンクの米中関係についての結論が「超大国たる米国と軍事的にも経済的にも台頭著しい中国はともに、北東アジアの平和と安定に冷静に対応していくべきだという、当然で退屈なもの」と評価しています。
 遊爺は、文の一部を観ただけで専門家に異論をはさむのは僭越ではありますが、当然で退屈とは受け止められません。
 つまり、クリントン長官時代から政策転換の兆が観られるケリー長官の政策と同じ=中国包囲網による中国の反発に恐れ、融和策を打ち出しているものと理解します。中国が最近持ち出している、戦勝国の米中関係と敗戦国の日本と言う対立の歴史の復活の主張による日米分断作戦が影響していないとも言い切れないとも感じます。
 つまり、財政難で衰弱した米国も、中国市場や札束攻勢の魅力に魅かれ、中国包囲網のアジア重視政策から転換を計ろうとしている。

 中国が、中露の分断を最も恐れていると言う情報は、逆に当然の話です。ただし、これまでの歴史の中で、中露両国の対立は繰り返されていて、その都度立場が弱い方(殆ど中国)が日本に擦り寄って相手を牽制する形を繰り返してきました。
 近年では、中露の立場は逆転し、中国の圧力をロシアが警戒する勢力関係になっていますから、前述した資源の開発・購入の援助期待に併せて、対中抑止力としての日本接近をロシアが選択せざるを得ない情勢になっていますね。

 中露の分断を、日本が独自に積極的に進める必要はなく、国益に沿って、日露関係を修復していくことが自然にロシアの対中牽制に、ひいては日本の対中牽制に繋がっていきます。
 中国の覇権拡大を、脅威に感じている国々との連携強化。中国の好戦的海洋権益侵略への世界世論の結集といった外交が重要で、安倍政権は優先的に推進しています。
 かつてベトナムから誘いがありながら反応せず不思議がられていた日本も、尖閣の近況に至ったことと、政権交代があったことで、連携を深めていますが、巡視船の供与にまで発展させるのだそうですね。
 
領有権問題 越が対中共闘強化 日本、巡視船供与前向き(産経新聞) - goo ニュース

 フイリピンにも新造船10隻の供与を決めていましたが、ベトナムにも新造船10隻を計画するとのことです。
 
政府、14年にもフィリピンに巡視船供与 中国をけん制 :日本経済新聞

 米国が中国包囲網を解く政策転換をするのか、今後も注目が必要ですが、当事者である日本は、現実に侵略の艦船や軍機の増量に直面し危機は着実にエスカレートしていますから、対抗戦略の構築と実行が迫られています。
 軍事力の備えの増強はもとより、近隣諸国との連携強化による、対中抑止力の構築を進める安倍政権の政策には、今後の発展を期待しています。

 米国への反発を強めるプーチン・ロシアと日本の接近は、中国接近への政策転換の兆候のあるケリー長官にはどのように影響をおよぼすのでしょう?





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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交




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