遊爺雑記帳

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翻弄される北方領土共同開発

2017-08-26 23:58:58 | ロシア全般
 昨年12月、プーチン大統領が来日した時の日露首脳会談では、北方領土問題の進展が日本国内で盛り上がりましたが、直前にプーチン大統領が冷や水をぶっかけ、なんとか「特別な制度」の下での共同経済活動を目指すことで合意したのでした。押したり引いたりで自国の有利な着地点で決着させる、プーチン流の得意の手管で安倍首相や対露外交に取り組んだ世耕経済産業大臣兼ロシア経済分野協力担当大臣や外務省は翻弄されっぱなしです。
 その「特別な制度」の下での共同経済活動が、またまたゆさぶられ、「特別な制度」の約束なのに、メドベージェフ首相が、北方領土への経済特区の設置を認める文書に署名し、ロシアの管轄で中国や韓国などと天秤にかけて進められることとなったのだそうです。
 先週の次官級協議で、観光や養殖など実施事業の内容を調整したばかりにも関わらず、一方的独走ですが、ガルシカ極東発展相は「日本との協議の結果が出るまで、住民の生活向上を止めるわけにはいかない」として、特区の設置を正当化しているのだとか。

 
政府、ロシアの北方領土経済特区に懸念を伝達 「共同経済活動に悪影響」 - 産経ニュース
 
北方領土「特区」 看過できない露の揺さぶり (8/25 読売 社説)

 
日露両政府が検討する北方領土での共同経済活動の趣旨と相いれない、一方的な措置である。到底看過できない。

 ロシアのメドベージェフ首相が、北方領土への経済特区の設置を認める文書に署名した。色丹島の斜古丹(マロクリリスク)地区が対象で、水産加工工場を建設する構想だ。
 国内外から約74億ルーブル(約135億円)の投資と、700人以上の雇用を見込む。進出企業には税制面などで優遇するという。
 
問題なのは、特区がロシア国内法の適用を前提とすること
だ。
 共同経済活動において、日本側は、徴税権や警察権などに関して日本の法的立場を損なわない「特別な制度」の創設を求めている。ロシアの特区が、この主張と齟齬そごがあるのは明らかである。
 
昨年12月の日露首脳会談では、「特別な制度」の下での共同経済活動を目指すことで合意
した。日露両政府は先週の次官級協議で、観光や養殖など実施事業の内容を調整したばかりだ。
 ガルシカ極東発展相は「日本との協議の結果が出るまで、住民の生活向上を止めるわけにはいかない」として、特区の設置を正当化している。
近年築いてきた日露の信頼関係を壊しかねない

 安倍首相は、来月上旬にウラジオストクでプーチン露大統領と会談する予定だ。日本側の懸念をしっかりと伝え、特区の是正を求めなければならない。

 ロシアが日本だけでなく、中国や韓国などからの投資に関心を示しているのは気がかりだ。
 既に色丹島の港湾工事には、韓国企業が参加しているという。特区にも外国資本を導入し、地域振興を図る思惑が透けて見える。
 
日本と中韓を天秤てんびんにかけることで、共同経済活動などの交渉で日本の譲歩を引き出すため、揺さぶりをかける狙いもあろう。こうした手法はロシアの常套じょうとう手段
だ。
 日本政府は、冷静に対応することが重要である。

 特区事業や領土問題などに関する露政府の最終決定権は、あくまでプーチン氏にある。
 来年春に大統領選を控え、当面、領土問題で政治決断は期待できまい。他方、
ロシア経済は米欧の制裁などで低迷が続き、日露の経済関係強化への期待は大きい

 プーチン氏も、共同経済活動の交渉が頓挫すれば、日本から本格的な経済協力を得られにくくなることを十分に認識していよう。
 日本は、ロシア側に様々なレベルで働きかけを強めるべきだ。


 外務省の幹部からは、特区指定がこの問題を突破する糸口になる可能性があるとして「特区になってロシアが北方領土での徴税権を放棄すれば、必ずしも悪いものではない」との声があるのだそうですが、呑気な自己都合で手前勝手な解釈です。
 世界中を翻弄させるプーチン大統領相手に、外務省幹部がこんな気楽な発言をするのですから、翻弄されて当然ですね。
 遠くは、終戦時に平和条約のつてを頼って終戦の調停を頼もうとした外務省。前線からはヤルタ会談の情報がありながら、幹部の希望的観測でその情報を無視し、満州や千島列島に攻め込まれ奪取されました。
 サハリン1, 2の国際共同開発では、いずれも完成間近になってロシアから難癖を押し付けられ、トンビにアブラゲで、出資比率見直しでまんまと成果を横取りされましたし、尖閣近海での中国漁船による巡視船への衝突事件の民主党政権(当時)の国内法を軽視した軟弱処理を観て、メドベージェフ大統領(当時)の国後島上陸の予測も自己中心の発想で読みちがいました。
 外務省ロシア組は、過去の煮え湯を飲まされた経験の学習なく、手前勝手な都合の良い解釈で、失政の繰り返しばかりです。
 いままた、同じ過ちを繰り返しています。
 なので、安倍首相は、世耕大臣他、谷内国家安全保障局長等、外務省ルートとは別のチャネルを設定したのでしょうが、ベースの外務省官僚が動かねば、空回りするのは当然です。

 記事でも指摘されていますが、台所が火の車で、日本他の援助が必要に迫られているのはロシアです。中韓他と天秤にかけて来るのはロシアも国益を考えれば当然のことです。ビジネスの世界ではごく普通の事。そこで翻弄されるか、冷静に対処できるかが、企業では営業の、国では外務省の腕の見せ所。自分の都合の良い解釈ではなく、敵を知り、己を知った上での戦略、戦術が望まれます。
 繰り返しますが、台所が火の車で苦しく、援助(資金&技術)を急いで必要としているのはロシアです。極東地域への中国からの人口流入による実効支配の懸念をもっているのはロシアです。極寒の極東や北極圏で資源開発やインフラ建設の技術支援が欲しいのはロシアです。

 岸田前大臣は、相変わらずの通り一遍の口先抗議だけでした。
 河野新外相と安倍首相との新コンビでの、新たな対露外交に期待しています。



 # 冒頭の画像は、G20ハンブルク・サミットの際に18回目の首脳会談をした安倍首相とプーチン大統領 (2017.7.7)



  クコの実


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写真素材のピクスタ


Fotolia


ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交







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