遊爺雑記帳

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バノン氏解任のプラス効果とマイナス効果

2017-08-23 23:58:58 | 米国 全般
 米・トランプ政権の大統領首席戦略官、スティーブ・バノン氏が8月18日、解任されました。一時、大統領室での側近による協議の場面の画像で席が遠ざけられ、疎外されているとの報道があり、その後また復縁(?)したかの様子も見られていましたが、対北朝鮮戦略での発言が、トランプ大統領の強硬発言や、ティラーソン国務長官とマティス国防長官が連盟で米紙に公表した、硬軟両面作戦に反するものであったことがきっかけになったのですね。
 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が、バノン氏解任によるトランプ政権にとっての功罪を整理しておられます。
 

吉と出るか凶と出るか?バノン氏をまさかの解任 トランプ政権に与えるプラス効果とマイナス効果 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2017.8.23(水) 古森 義久

 米国トランプ政権の大統領首席戦略官、スティーブ・バノン氏が8月18日、解任された。トランプ大統領がニュージャージー州で「ワーキングバケーション(働きながらの休暇)」を過ごし、ワシントンを離れている間にバノン氏はホワイトハウスを去った。トランプ政権発足以来、人事面での最大級の出来事
だったと言ってよい。
 昨年の大統領選ではトランプ氏の選対本部長を務め、政権発足後も基本政策の立案に関わったとされるバノン氏の離脱は、今後トランプ政権にどのような影響を与えるのだろうか。
プラス面とマイナス面を整理
してみよう。

■【プラス効果 その1】政権内部の混乱や対立を解消
 バノン氏がトランプ政権を離れることによる第1のプラス面は、
政権内部の混乱や対立の解消に寄与
することだ。

 バノン氏は保守派の論客である。とくにオバマ前大統領に体現されたリベラル派の政策や思想を論破する雄弁をふるってきた。だが、その自由な言動は、ときに政権内部の混乱を浮かび上がらせた。
 つい最近も
バノン氏は、トランプ政権の北朝鮮対策に関連して「軍事手段はありえない」と述べた。この発言は、トランプ大統領の北朝鮮への「炎と怒り」という言葉からはかけ離れていた。政権内の他の幹部たちの「軍事的選択を含めてあらゆるオブションが机上にある」という発言とも矛盾
していた。
<中略>

 
バノン氏がホワイトハウスを離れれば、政権内は新任のジョン・ケリー大統領首席補佐官の軍人らしい規律保持が徹底され、結束が強まる
とみられる。

■【プラス効果 その2】政権のイメージが好転
 第2のプラス面は、
トランプ政権全体のイメージが好転
することである。

 
バノン氏は、リベラル派を激しく叩く超保守派の論客として知られてきた。リベラル派にとってバノン氏は「米国で最も危険な政治仕掛け人」
としても恐れられた。
 また、バノン氏には
「白人至上主義者」「人種差別主義者」というレッテル
がつきまとった。バノン氏は白人至上主義や人種差別を非難し、ネオナチなどの白人至上主義者たちを「愚かなピエロ」と断じてネガティブなイメージの払拭に務めたが、自分自身への非難を消すことはできなかった。
 この負のイメージは、バノン氏を通じてトランプ政権全体に広がっていた。実際にその種の言動を見せたことがなくても、トランプ大統領が「白人至上主義者」「黒人差別」と糾弾されたのは、バノン氏がもたらしたイメージのせいだと言えよう。バノン氏の退場により、そうした負のイメージが弱まることは政権にとってプラスとなる。

■【プラス効果 その3】共和党の穏健派が味方に
 第3のプラス効果は、
バノン氏の解任により、議会共和党の多数の穏健派がトランプ政権に協調的になること
である。

 トランプ政権は主要政策の1つ「オバマケア(オバマ政権が打ち立てた医療保険改革制度)の撤回・破棄」案を下院で可決させながら、上院では僅差で否決された。上院で多数派を占める共和党議員のなかの3人ほどの穏健派議員が反対したからだ。
 トランプ政権は与党の共和党全議員たちを完全には掌握しきっていない。
共和党内部でも保守主義色の薄い中道派、穏健派と評される議員たちがトランプ政権の抵抗勢力となっている

 この共和党内勢力がトランプ政権との間に距離を置くようになったのは、バノン氏の主張を受け入れられなかったからである。バノン氏は保守派のなかでも特に保守主義色の強い「経済ナショナリズム」を主唱してきた。なによりも
「米国人労働者の利益を最優先する」という経済面での「アメリカ第一主義」だった。これに難色を示す共和党穏健派が上下両院で少なくなかった
。だが、強硬派のバノン氏が去れば、共和党内の穏健派勢力が政権寄りに戻ってくる可能性がある。

■[マイナス効果 その1] 政権の不安定性が浮き彫りに
 では、バノン氏の解任によるトランプ政権へのマイナス効果はなんだろう。
 第1のマイナス効果は、
バノン氏の解任がトランプ政権の不安定性を改めて浮き彫りにしたこと
だ。
 トランプ政権では、国家安全保障担当の大統領補佐官、マイケル・フリン氏の辞任を皮切りに、ラインス・プリーバス首席補佐官、ショーン・スパイサー大統領報道官、アンソニー・スカラムチ広報部長らが相次いで辞任した。そして今度は、政策面でトランプ政権全体に深くかかわってきた首席戦略官のバノン氏までが辞任したのだ。
政権内部の人事や人材の不安定さは、今や誰の目にも明らか
だと言えよう。

■[マイナス効果 その2] トランプ政権の中核が壊される
 第2のマイナス効果は、「
トランプ政権がトランプ政権ではなくなる
」のではないかという懸念を生む危険性である。
 
バノン氏はなんといってもトランプ政権の政策立案を支える人物だった。大黒柱だったとも言える。2月下旬、バノン氏は首都ワシントン近郊で開かれた保守系政治組織の「政治活動会議」の全米大会に発言者として登場し、トランプ大統領が進める政治の理念を「トランプ主義(イズム)」として解説した。「米国人労働者の利益を最優先する」「中国などの不当な貿易慣行を否定する」というスローガンに象徴される「経済ナショナリズム」の主張だった。ここにきて、バノン氏の解任に伴い同氏の政策を全面否定することは、トランプ政権の中核部分までを壊す危険がある


■[マイナス効果 その3] バノン氏が外から攻撃してくる
 第3のマイナス面は、
バノン氏が今後、外からトランプ政権を攻撃する可能性
である。
 バノン氏は8月18日にホワイトハウスを離れて以来、トランプ大統領への批判や敵対的な言葉は述べていない。
明言したのは、「今後はトランプ大統領のそばにいるグローバリストたちを批判していく」という意向だった。つまり、自国の利益を最優先するナショナリズム的な政策とは対極にある国際協調、多国間的アプローチへの強い反発
である。

 この点をもう少し押し進めると、バノン氏の鋭い言葉の攻撃がトランプ大統領の娘イバンカ氏やその夫のジャレッド・クシュナー氏にまで及ぶ可能性がある。バノン氏は政権内部で大統領のこの娘夫妻を「ジャバンカ」と揶揄気味に呼んで批判していた。もしも今後、トランプ大統領が娘夫妻の提言に沿って、これまでの「米国優先主義」を捨て、「グローバリム」的方向へ政策を進めるとなると、バノン氏の糾弾はトランプ大統領にも照準が絞られ攻撃の矢が放たれる可能性も浮上してくる。

 以上、バノン首席戦略官の解任にからむトランプ政権への3つのプラスと3つのマイナスを提示して、検証してみた。実際にはそれぞれの要因が複雑にからみ合って、作用し合っていくことはいうまでもない。


 政権内部の混乱や対立の解消、トランプ政権全体のイメージが好転(=低空飛行の支持率の向上。白人至上の人種差別の件では、大きなダメージであえいでいる)、議会共和党の多数の穏健派がトランプ政権に協調的になることの3つのプラスと、大統領選以来の政権スタート時の側近が次々辞任し、ペンス副大統領と娘婿のクシュナー氏を除いてすべていなくなったトランプ政権の不安定性を改めて浮き彫りにしたこと、大統領選の参謀としても政権スタート時の政策立案でも政策立案を支える大黒柱であったバノン氏の解任が、同氏の政策を否定することで、「トランプ政権がトランプ政権ではなくなる」懸念、バノン氏が今後、外からトランプ政権を攻撃する可能性といった3つのマイナスがあるというのですね。

 ただ、古森氏は、プラスとマイナスを解りやすく整理していただいていますが、実際にはそれぞれの要因が複雑にからみ合って、作用し合っていくとの指摘にとどめて、足し算と引き算の結果には言及しておられません。

 バノン氏の辞任は、日本にとって朗報であると言い切るのは、産経新聞東京特派員の湯浅博氏。
 
【湯浅博の世界読解】バノン氏の辞任は日本にとって朗報である 残るはトランプ氏の「覚醒」 - 産経ニュース

 なによりも、米国の国益に無縁の関与は一切やらず、「アメリカ第一主義」というエゴイズムを牽引して、一時はトランプ大統領を操る黒幕のようであったバノン氏の辞任は、中国、ロシア、北朝鮮の強権的な核保有国に向き合う日本にとり、米国の影響力低下は安全保障にかかわってくる。まして、トランプ政権が多国間協議から撤退すれば、中国が新たな「秩序の管理者」として台頭し、勢力圏の拡大を図るだろう懸念が払しょくされるとの見方。
 バノン氏らの提言を受けてTPPからの離脱を表明し、東アジア諸国の信頼を損ねてしまったとも。
 政権発足時から中枢にいた高官は、ペンス副大統領を除いてすべていなくなった。残るはトランプ大統領その人が、覚醒することと結んでおられます。

 人種差別問題で大ピンチのトランプ大統領。さしものトランプ氏も、覚醒せざるを得ない状況ですが如何。



 # 冒頭の画像は、スティーブン・バノン氏




  この花の名前は、ハブソウ


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