EUは、EVの普及を脱炭素化の観点のみならず、技術覇権や産業保護、安全保障といった様々な戦略目標の手段としても捉えているため、EUではEVの普及が「自己目的化」しつつある。
そして、EVの普及を巡ってEUで様々な摩擦が生じ始めたと、土田 陽介・三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員。
EUの中で自国の産業保護を図る国が出てきたのだ。その代表的な存在が、フランスだと、土田氏。
フランスはEVのカーユーザーに対して給付される購入補助金の額を、生産から流通、登録に至るまでに生じる温室効果ガスの排出量に応じて決めるように制度を変更した。
新たな仕組みに基づけば、温室効果ガスの排出量が少なければ少ないEVほどユーザーは多額の補助金を得る。つまりフランスで生産されたEVを購入するほうが、カーユーザーは手厚い補助金を得ることができるわけだ。
これは実質的に、中国製の廉価なEVの排除と、フランス製EVの優遇を目的とした産業保護策である。
それにイタリアも、こうしたフランス発の露骨な産業保護のトレンドに合流しようとしていると、土田氏。
ロイター通信が10月2日付で報じたところによれば、イタリアはフランスの制度変更を参考に、カーユーザーへの補助金の在り方を変更することを検討しているようだ。当然、念頭にあるのは、廉価な中国製EVの排除とイタリア製EVの優遇。
イタリアのジョルジャ・メローニ政権は今年7月、欧米自動車大手スランティスとの間で、一昨年、昨年と70万台レベルにまで落ち込んだイタリア国内での完成車生産台数を100万台レベルにまで引き上げることで合意。
スランティスの傘下にはフィアットなど、イタリアを代表する複数の完成車メーカーが入っている。メローニ政権は国内での完成車生産を後押しすべく、国産EVの優遇を図ろうとしていと、土田氏。
イタリアの自動車産業が業況を回復させれば、雇用の維持にもつながり、経済界にも労働界にも顔が立つ。そのため、メローニ政権にとって、国産EV優遇策は実に魅力的なオプションなのだ。
露骨な産業保護策だが、フランスだけがこれをすることが許されてイタリアに許されないわけがないというところだろうと。
そもそもEUは、各国政府が域内でバッテリーを生産する企業に補助金を給付し、いわゆるギガファクトリーの設立を後押しするなど、EU域内でのEVの生産を重視する姿勢を鮮明にしていた。
EUは汎ヨーロッパ的な産業保護を画策していたわけだが、フランスとイタリアの措置は、それを自国中心に組み替えたものといえると、土田氏。
EVの普及の最大のネックは、車両価格の高さにある。廉価な中国製EVとの間で価格競争が生じることで、高価なEU製EVの価格も低下するため、それがユーザーの利益となる。
しかし産業保護策を採用すれば、そうした競争が生じないため、価格は高止まりする。それを補助金で引き下げたところで、補助金の財源は税金であるため、結局は納税者であるユーザーの負担が増すと、土田氏。
フランスやイタリアと同様、EUも廉価な中国製EVを敵視する。EUは中国がEVの不当廉売を仕掛けていると主張するが、中国のまだ安い人件費や充実した供給網を考えれば、中国製EVの車両単価が低いことは当然だろう。
結局、EUやフランス、イタリアは、域内の産業保護のための方便として、中国による不当廉売を主張している印象が強いとも。
フランスやイタリアは国内に多くの完成車メーカーを抱えているが、そうした完成車メーカーが内外の市場で劣勢にあることが、両国を自国のEV産業の保護に駆り立てた最大の理由。
EUによる域内EV産業保護の姿勢が、各国の自国EV産業保護の姿勢につながり、域内のEV市場の分断を促していると、土田氏。
市場統合を推進する立場のEUが、域内のEV市場を保護しようとした結果、EV市場の分断を招きつつある。
自らの保護主義を正当化しつつ、各国の保護主義を抑制できるのか。EUはかなり重い課題に直面していると、土田氏。
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どうする 日本のEV戦略 : 読売新聞
# 冒頭の画像は、23年 4月の上海モーターショーでの、中国BYDの発表会
この花の名前は、シラヤマギク
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そして、EVの普及を巡ってEUで様々な摩擦が生じ始めたと、土田 陽介・三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員。
中国製EV排除のために国産EVの優遇策を打ち出すフランス、EUのEV市場は分断か 域内EV産業保護というEUの姿勢が各国の産業保護政策を促している皮肉 | JBpress (ジェイビープレス) 2023.10.12(木) 土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員
・フランスはEV購入者に対する補助金を、生産から流通、登録に至るまでに生じる温室効果ガスの排出量に応じて決めるように制度を変更した。
・フランスで生産する自動車ほど補助金が多くなる仕組みで、中国製の廉価なEVの排除と、フランス製EVの優遇を目的とした産業保護策である。
・イタリアも同様の優遇策を導入しようとしており、市場統合を目指しているEUのEV市場が分断しかねない。
脱炭素化に野心を燃やす欧州連合(EU)は、電気自動車(EV)の普及をその重要な戦術手段に位置付けている。同時にEUは、EVの普及を脱炭素化の観点のみならず、技術覇権や産業保護、安全保障といった様々な戦略目標の手段としても捉えているため、EUではEVの普及が「自己目的化」しつつある。
そして、EVの普及を巡ってEUで様々な摩擦が生じ始めた。
EUは域内市場でのEVの普及に関して、域内製EVの普及を重視しており、対外的には保護主義の立場を鮮明にする。一方で、EUは域内市場においては、平等な条件の下での競争を重視する。
ところが、そのEUの中で自国の産業保護を図る国が出てきたのだ。その代表的な存在が、フランスだ。
これまでフランスでは、どのEVを購入する場合でも、カーユーザーに対して一律の補助金を給付してきた。しかし10月10日より、フランスはEVのカーユーザーに対して給付される購入補助金の額を、生産から流通、登録に至るまでに生じる温室効果ガスの排出量に応じて決めるように制度を変更した。
新たな仕組みに基づけば、温室効果ガスの排出量が少なければ少ないEVほどユーザーは多額の補助金を得る。つまりフランスで生産されたEVを購入するほうが、カーユーザーは手厚い補助金を得ることができるわけだ。
これは実質的に、中国製の廉価なEVの排除と、フランス製EVの優遇を目的とした産業保護策である。
この制度の見直しは、フランス自動車工業会(PFA)から発案された。フランス政府に対して、業界団体が自国の自動車産業の保護を公然と働きかけたことになる。
産業に対する国家介入を是とするフランスの伝統的な経済観があるとはいえ、ここまで露骨に官民が一体化して産業保護を図ろうとする姿勢には驚きを禁じ得ない。
それにイタリアも、こうしたフランス発の露骨な産業保護のトレンドに合流しようとしている。
経済界にも労働界にも顔が立つオプション
ロイター通信が10月2日付で報じたところによれば、イタリアはフランスの制度変更を参考に、カーユーザーへの補助金の在り方を変更することを検討しているようだ。当然、念頭にあるのは、廉価な中国製EVの排除とイタリア製EVの優遇である。
イタリアのジョルジャ・メローニ政権は今年7月、欧米自動車大手スランティスとの間で、一昨年、昨年と70万台レベルにまで落ち込んだイタリア国内での完成車生産台数を100万台レベルにまで引き上げることで合意に達した(図表)。
スランティスの傘下にはフィアットなど、イタリアを代表する複数の完成車メーカーが入っている。メローニ政権は国内での完成車生産を後押しすべく、国産EVの優遇を図ろうとしているわけだ。
メローニ政権は極右の立場から大衆迎合に努めているが、同時に経済界との関係を重視している。カーユーザーへの補助金でイタリア製EVの需要を刺激すれば、完成車メーカーにとっても増産のインセンティブになると見込んでいるはずだ。
それに、イタリアの自動車産業が業況を回復させれば、雇用の維持にもつながり、経済界にも労働界にも顔が立つ。そのため、メローニ政権にとって、国産EV優遇策は実に魅力的なオプションなのだ。
露骨な産業保護策だが、フランスだけがこれをすることが許されてイタリアに許されないわけがないというところだろう。
EUの産業保護がもたらす弊害
そもそもEUは、各国政府が域内でバッテリーを生産する企業に補助金を給付し、いわゆるギガファクトリーの設立を後押しするなど、EU域内でのEVの生産を重視する姿勢を鮮明にしていた。
その意味で、EUは汎ヨーロッパ的な産業保護を画策していたわけだが、フランスとイタリアの措置は、それを自国中心に組み替えたものといえる。
こうした産業保護策の最大の問題は、価格の低下が進まないことだろう。自由貿易の最大の利点は、国際競争にさらされることで、価格の低下が進むことにある。
EVの普及の最大のネックは、車両価格の高さにある。廉価な中国製EVとの間で価格競争が生じることで、高価なEU製EVの価格も低下するため、それがユーザーの利益となる。
しかし産業保護策を採用すれば、そうした競争が生じないため、価格は高止まりする。それを補助金で引き下げたところで、補助金の財源は税金であるため、結局は納税者であるユーザーの負担が増す。
EUは車載用バッテリーの大量生産や技術革新を促してEVの車両価格を低下させる構想を抱いているが、これは楽観が過ぎる。
フランスやイタリアと同様、EUも廉価な中国製EVを敵視する。EUは中国がEVの不当廉売を仕掛けていると主張するが、中国のまだ安い人件費や充実した供給網を考えれば、中国製EVの車両単価が低いことは当然だろう。
結局、EUやフランス、イタリアは、域内の産業保護のための方便として、中国による不当廉売を主張している印象が強い。
域内市場の分断を促したEUの産業政策
フランスやイタリアは国内に多くの完成車メーカーを抱えているが、そうした完成車メーカーが内外の市場で劣勢にあることが、両国を自国のEV産業の保護に駆り立てた最大の理由と考えられる。
今のところドイツはこうした動きから距離を置いているが、同国まで自国製EVの優遇に踏み切れば、EU各国のEV市場の閉鎖性は一段と高まる。
問題は、そもそもこうした流れを作り出した元凶がEUだということだ。結局のところ、EUによる域内EV産業保護の姿勢が、各国の自国EV産業保護の姿勢につながり、域内のEV市場の分断を促している。
市場統合を推進する立場のEUが、域内のEV市場を保護しようとした結果、EV市場の分断を招きつつあるという皮肉である
EUは今後、フランスとイタリアに対して、自国EV市場の保護スタンスを弱めるように訴えかけていくことになるだろう。とはいえ出方を間違えると、両国の有権者の間でEUに対する不信感が強まる恐れがある。
自らの保護主義を正当化しつつ、各国の保護主義を抑制できるのか。EUはかなり重い課題に直面していることになる。
・フランスはEV購入者に対する補助金を、生産から流通、登録に至るまでに生じる温室効果ガスの排出量に応じて決めるように制度を変更した。
・フランスで生産する自動車ほど補助金が多くなる仕組みで、中国製の廉価なEVの排除と、フランス製EVの優遇を目的とした産業保護策である。
・イタリアも同様の優遇策を導入しようとしており、市場統合を目指しているEUのEV市場が分断しかねない。
脱炭素化に野心を燃やす欧州連合(EU)は、電気自動車(EV)の普及をその重要な戦術手段に位置付けている。同時にEUは、EVの普及を脱炭素化の観点のみならず、技術覇権や産業保護、安全保障といった様々な戦略目標の手段としても捉えているため、EUではEVの普及が「自己目的化」しつつある。
そして、EVの普及を巡ってEUで様々な摩擦が生じ始めた。
EUは域内市場でのEVの普及に関して、域内製EVの普及を重視しており、対外的には保護主義の立場を鮮明にする。一方で、EUは域内市場においては、平等な条件の下での競争を重視する。
ところが、そのEUの中で自国の産業保護を図る国が出てきたのだ。その代表的な存在が、フランスだ。
これまでフランスでは、どのEVを購入する場合でも、カーユーザーに対して一律の補助金を給付してきた。しかし10月10日より、フランスはEVのカーユーザーに対して給付される購入補助金の額を、生産から流通、登録に至るまでに生じる温室効果ガスの排出量に応じて決めるように制度を変更した。
新たな仕組みに基づけば、温室効果ガスの排出量が少なければ少ないEVほどユーザーは多額の補助金を得る。つまりフランスで生産されたEVを購入するほうが、カーユーザーは手厚い補助金を得ることができるわけだ。
これは実質的に、中国製の廉価なEVの排除と、フランス製EVの優遇を目的とした産業保護策である。
この制度の見直しは、フランス自動車工業会(PFA)から発案された。フランス政府に対して、業界団体が自国の自動車産業の保護を公然と働きかけたことになる。
産業に対する国家介入を是とするフランスの伝統的な経済観があるとはいえ、ここまで露骨に官民が一体化して産業保護を図ろうとする姿勢には驚きを禁じ得ない。
それにイタリアも、こうしたフランス発の露骨な産業保護のトレンドに合流しようとしている。
経済界にも労働界にも顔が立つオプション
ロイター通信が10月2日付で報じたところによれば、イタリアはフランスの制度変更を参考に、カーユーザーへの補助金の在り方を変更することを検討しているようだ。当然、念頭にあるのは、廉価な中国製EVの排除とイタリア製EVの優遇である。
イタリアのジョルジャ・メローニ政権は今年7月、欧米自動車大手スランティスとの間で、一昨年、昨年と70万台レベルにまで落ち込んだイタリア国内での完成車生産台数を100万台レベルにまで引き上げることで合意に達した(図表)。
スランティスの傘下にはフィアットなど、イタリアを代表する複数の完成車メーカーが入っている。メローニ政権は国内での完成車生産を後押しすべく、国産EVの優遇を図ろうとしているわけだ。
メローニ政権は極右の立場から大衆迎合に努めているが、同時に経済界との関係を重視している。カーユーザーへの補助金でイタリア製EVの需要を刺激すれば、完成車メーカーにとっても増産のインセンティブになると見込んでいるはずだ。
それに、イタリアの自動車産業が業況を回復させれば、雇用の維持にもつながり、経済界にも労働界にも顔が立つ。そのため、メローニ政権にとって、国産EV優遇策は実に魅力的なオプションなのだ。
露骨な産業保護策だが、フランスだけがこれをすることが許されてイタリアに許されないわけがないというところだろう。
EUの産業保護がもたらす弊害
そもそもEUは、各国政府が域内でバッテリーを生産する企業に補助金を給付し、いわゆるギガファクトリーの設立を後押しするなど、EU域内でのEVの生産を重視する姿勢を鮮明にしていた。
その意味で、EUは汎ヨーロッパ的な産業保護を画策していたわけだが、フランスとイタリアの措置は、それを自国中心に組み替えたものといえる。
こうした産業保護策の最大の問題は、価格の低下が進まないことだろう。自由貿易の最大の利点は、国際競争にさらされることで、価格の低下が進むことにある。
EVの普及の最大のネックは、車両価格の高さにある。廉価な中国製EVとの間で価格競争が生じることで、高価なEU製EVの価格も低下するため、それがユーザーの利益となる。
しかし産業保護策を採用すれば、そうした競争が生じないため、価格は高止まりする。それを補助金で引き下げたところで、補助金の財源は税金であるため、結局は納税者であるユーザーの負担が増す。
EUは車載用バッテリーの大量生産や技術革新を促してEVの車両価格を低下させる構想を抱いているが、これは楽観が過ぎる。
フランスやイタリアと同様、EUも廉価な中国製EVを敵視する。EUは中国がEVの不当廉売を仕掛けていると主張するが、中国のまだ安い人件費や充実した供給網を考えれば、中国製EVの車両単価が低いことは当然だろう。
結局、EUやフランス、イタリアは、域内の産業保護のための方便として、中国による不当廉売を主張している印象が強い。
域内市場の分断を促したEUの産業政策
フランスやイタリアは国内に多くの完成車メーカーを抱えているが、そうした完成車メーカーが内外の市場で劣勢にあることが、両国を自国のEV産業の保護に駆り立てた最大の理由と考えられる。
今のところドイツはこうした動きから距離を置いているが、同国まで自国製EVの優遇に踏み切れば、EU各国のEV市場の閉鎖性は一段と高まる。
問題は、そもそもこうした流れを作り出した元凶がEUだということだ。結局のところ、EUによる域内EV産業保護の姿勢が、各国の自国EV産業保護の姿勢につながり、域内のEV市場の分断を促している。
市場統合を推進する立場のEUが、域内のEV市場を保護しようとした結果、EV市場の分断を招きつつあるという皮肉である
EUは今後、フランスとイタリアに対して、自国EV市場の保護スタンスを弱めるように訴えかけていくことになるだろう。とはいえ出方を間違えると、両国の有権者の間でEUに対する不信感が強まる恐れがある。
自らの保護主義を正当化しつつ、各国の保護主義を抑制できるのか。EUはかなり重い課題に直面していることになる。
EUの中で自国の産業保護を図る国が出てきたのだ。その代表的な存在が、フランスだと、土田氏。
フランスはEVのカーユーザーに対して給付される購入補助金の額を、生産から流通、登録に至るまでに生じる温室効果ガスの排出量に応じて決めるように制度を変更した。
新たな仕組みに基づけば、温室効果ガスの排出量が少なければ少ないEVほどユーザーは多額の補助金を得る。つまりフランスで生産されたEVを購入するほうが、カーユーザーは手厚い補助金を得ることができるわけだ。
これは実質的に、中国製の廉価なEVの排除と、フランス製EVの優遇を目的とした産業保護策である。
それにイタリアも、こうしたフランス発の露骨な産業保護のトレンドに合流しようとしていると、土田氏。
ロイター通信が10月2日付で報じたところによれば、イタリアはフランスの制度変更を参考に、カーユーザーへの補助金の在り方を変更することを検討しているようだ。当然、念頭にあるのは、廉価な中国製EVの排除とイタリア製EVの優遇。
イタリアのジョルジャ・メローニ政権は今年7月、欧米自動車大手スランティスとの間で、一昨年、昨年と70万台レベルにまで落ち込んだイタリア国内での完成車生産台数を100万台レベルにまで引き上げることで合意。
スランティスの傘下にはフィアットなど、イタリアを代表する複数の完成車メーカーが入っている。メローニ政権は国内での完成車生産を後押しすべく、国産EVの優遇を図ろうとしていと、土田氏。
イタリアの自動車産業が業況を回復させれば、雇用の維持にもつながり、経済界にも労働界にも顔が立つ。そのため、メローニ政権にとって、国産EV優遇策は実に魅力的なオプションなのだ。
露骨な産業保護策だが、フランスだけがこれをすることが許されてイタリアに許されないわけがないというところだろうと。
そもそもEUは、各国政府が域内でバッテリーを生産する企業に補助金を給付し、いわゆるギガファクトリーの設立を後押しするなど、EU域内でのEVの生産を重視する姿勢を鮮明にしていた。
EUは汎ヨーロッパ的な産業保護を画策していたわけだが、フランスとイタリアの措置は、それを自国中心に組み替えたものといえると、土田氏。
EVの普及の最大のネックは、車両価格の高さにある。廉価な中国製EVとの間で価格競争が生じることで、高価なEU製EVの価格も低下するため、それがユーザーの利益となる。
しかし産業保護策を採用すれば、そうした競争が生じないため、価格は高止まりする。それを補助金で引き下げたところで、補助金の財源は税金であるため、結局は納税者であるユーザーの負担が増すと、土田氏。
フランスやイタリアと同様、EUも廉価な中国製EVを敵視する。EUは中国がEVの不当廉売を仕掛けていると主張するが、中国のまだ安い人件費や充実した供給網を考えれば、中国製EVの車両単価が低いことは当然だろう。
結局、EUやフランス、イタリアは、域内の産業保護のための方便として、中国による不当廉売を主張している印象が強いとも。
フランスやイタリアは国内に多くの完成車メーカーを抱えているが、そうした完成車メーカーが内外の市場で劣勢にあることが、両国を自国のEV産業の保護に駆り立てた最大の理由。
EUによる域内EV産業保護の姿勢が、各国の自国EV産業保護の姿勢につながり、域内のEV市場の分断を促していると、土田氏。
市場統合を推進する立場のEUが、域内のEV市場を保護しようとした結果、EV市場の分断を招きつつある。
自らの保護主義を正当化しつつ、各国の保護主義を抑制できるのか。EUはかなり重い課題に直面していると、土田氏。
今やEV化の後進国に陥った日本。どうする?
どうする 日本のEV戦略 : 読売新聞
# 冒頭の画像は、23年 4月の上海モーターショーでの、中国BYDの発表会
この花の名前は、シラヤマギク
↓よろしかったら、お願いします。