再生エネルギー買い取り制度が、業界要求のコスト丸呑みのままの概要が発表された後、淡々と時間が経過しさしたる議論の無いまま7月1日から実施されます。再生可能エネルギーを普及させることはだれもが望むことですが、だからと言って先行する欧州で破綻していると言うのに、このまま突入していいのでしょうか?
勿論、完璧を待っていてはどのくらい時間がかかるのかは解りませんから、踏ん切りをつけてスタートし、後は走りながら修正か改革をしていくしかないのですが、せっかくの先進事例とそこで方向転換されようとしている事実に目をつぶりすぎでしょう。
原発の安全神話が崩れた。安全基準があいまいなまま原発を再稼働させるな。統括原価方式を廃して電力自由化。等々は、ワイドショーの素人コメンテータに至るまで姦しいのに、再生可能エネルギーの言葉が混じった途端にフリーパスになる現状は、かつての原発安全神話と同じ匂いを感じるのは遊爺だけでしょうか。
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稀にチェックを入れている記事を見ますので、見た都度取り上げさせていただいています。毎度、同じ様な内容をかくことになりますが、世間全体としては希少な主張なのでしつこく繰り返えさせていただきますが、ご容赦ください。
以下は、電力買い取り価格の負担に耐えかね、先進の国々が買い取り価格を下げ始めているという事例をあげ、再生可能エネルギーは、電気料金が高くなるということを書かれた記事です。
太陽光などで発電した再生可能エネルギーを電力会社が固定価格で買い取る制度が7月1日から始まるのに伴い、当初の負担額は、標準的な家庭(毎月の電気料金が7000円)で、全国平均で月87円になる。制度のスタートで、再生可能エネルギーの普及に弾みがつくと期待される一方、各家庭にとっては負担増になるだけに影響も懸念される。
制度は、企業や家庭が、太陽光や風力などで発電した電気を、一定期間、固定価格で買い取ることを電力会社に義務付けるものだ。
今年度の標準世帯当たりの負担額は当初、最も小さい北海道電力で75円、最も大きい九州電力では111円になる。買い取り費用は電気料金に転嫁されるため、再生可能エネルギーが普及すればするほど電気料金は高くなる。原子力発電所の再稼働が遅れ、ただでさえ電気料金が値上げされる公算が大きい中で、家庭にとっては、手放しでは喜べない状況となりそうだ。
2010年度の国内総発電量に占める再生可能エネルギー比率は11%しかなかった。東京電力の原発事故を受けて、政府は今夏に策定する新たなエネルギー基本計画で、2030年度に原発の代替として25~35%まで引き上げる方針だ。
上乗せ分は1年ごとに見直されるが、同様の制度を先行して始めているドイツやスペインでは、国民負担が大きくなり過ぎて、買い取り価格の大幅な引き下げに追い込まれるなど、大きな混乱が生じた。
経済産業省内でも「普及と負担のバランスに目を配り、随時見直しを進める必要がある」との声が強い。
CO2を発生させない再生可能エネルギーの移行は、福島原発事故が発生する以前から唱えられていました。CO2削減を唱えた鳩の民主党は、原発比率の増加を打ち出しました。原発依存は、過去の自民党政権時代より、民主党政権のほうが積極的であったと言っても過言ではありません。トイレの無いマンションと言われていたにも関わらず、です。
何故、再生可能エネルギーへの移行が進まなかったのか。答えはコストと品質(安定供給)でした。
原発事故が発生した時のコストは、今回のチェルノブイリと同じ基準に評価された現実は、無限大と言ってよく、他と比べようがないと言われ、その説を否定するものではありません。しかし、それでは火力発電が発するCO2の汚染を回復させるコストが計算に盛り込まれていませんから、原発についてだけ被災のコストを追求するのは片手落ちの思考でしょう。
記事が指摘する再生可能エネルギーの増大が、固定価格買い取り制度のありようによって電力料金の値上げに繋がることは、事実です。
現状の国内の発電環境で、原発の再稼働を否定するには、節電はもとより、計画停電も辞さない決意が必要なのと同時に、当面は火力で不足分を補う(東電は事故直後から素早く火力発電の増設に動き供給能力増強を図りました。なので、電力料金コストは上昇。関電は火力発電の増設までは動いていません。)ので、設備の増設と、燃料の高騰によるコスト増=電力料金値上げはトレンドとして不可避です。(勿論、コスト削減の企業努力をしていただかねばならないのは当然の話で、わざわざ取り上げるまでもないことです。)
しかし、今回の日本の固定価格買い取り制度の内容は、再生可能エネルギーは高コストと言うことに甘えた、官僚や国会議員(=菅だけ?)と業界の癒着を公認する最悪の制度なのです。
コメ農家保護の食管制度を産んだ農業族、巷で姦しい原子力村族と同じ再生可能エネルギー族を誕生させるものです。
何を指して言っているのかというと、買い取り価格の格差です。
統括原価方式を廃して、電力供給(含発送電分離)の自由化を、その是非があまり討議されないまま、猫も杓子も唱える風が吹きまくっています。それなのに、新たに日本のエネルギーの根幹にすべきと理想を掲げる再生可能エネルギーは、それぞれの方式について、業界が計算するコストを、計算した側も驚く価格で丸呑みしています。
更に、それぞれの方式の競争はなく、高いものは高いまま、安いものは安いまま買い入れるという、完全無競争の制度で、売値にまとめて乗せるというのです。
これでは、価格や品質の競争を度外視した、高コストで不安定な供給力しかない、とても基幹エネルギーとして使用できない、太陽光エネルギー発電等を故意に優遇しているとしか、考えられません。
News Release 再生可能エネルギーの固定価格買取制度について 調達価格および賦課金短歌を含む制度の詳細が決定しました : 経済産業省
太陽光42円(20年)、風力23.1円(20年)、地熱27.3円(15年)等とされている通りで、販売単価(電力料金)が、22円とされるなか、太陽光が、42円と突出しすぎています。
太陽光の普及をしたい(高コストで不安定なものを基幹に据えるのには反対ですが)と言う政策を仮に認めたとすれば、他の方式も同じ42円で買うべきです。42円の中で競争が産まれ、利益が大きい他の方式(含海洋エネルギー)での発電への投資が、更に進みます。ただし、太陽エネルギー族(菅とパフォーマンスをして、地方の組長をたぶらかしている孫や、中国のパネルメーカー等)にも貢ぐことになります。
あるいは、バラバラの価格で調達するのなら、ドイツ他の国々の様に、消費者にバラバラの価格を選択して購入できるようなシステムにすればよいでしょう。
再生可能エネルギーが高コストとは言え、22円で売っているのに、20円代が他にあるのに、42円での購入設定は常識では考えられません。しかも品質は不安定なのです。
このことに対して、変だと言う声が聞こえてきません。何故なのでしょう。
マスコミの存立基盤が広告料収入に依存しているからとの声を聞いたことがありますが、それにしてもどこかで誰かが声をあげそうなものです。
7月から、静かに始まる再生可能エネルギー固定価格買い取り制度は、特定の業界・業者を潤す、過去の食管制度以上の最悪な内容の制度で、再生可能エネルギーが自由競争の中で健全な発展を遂げるためには、速く修正されねばならない制度です。
このことの議論が、高まることを願ってやみませんので、同じ話になりますが、これからもしつこく取り上げていきたいと考えます。
# 冒頭の画像は、「自然エネルギー協議会」設立の記念写真に納まる静岡県・川勝知事、長野県・阿部知事、神奈川県・黒岩知事、ソフトバンク・孫氏
この花は、ミズバショウ 撮影場所;六甲高山植物園
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