遊爺雑記帳

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深い霧の中の予測不能な北東アジア情勢 米国の対中政策次第

2019-04-29 23:47:18 | 中国 全般
 米中の貿易戦争が覇権争いに拡大。核とミサイル開発を掲げ日米韓に挑む北朝鮮と米国の2回目の首脳会談は物別れに終わったまま。北東アジアの平和は先行きが見えなくなっています。
 そこで、米国の立場から、戦略的視点で今後の北東アジア政策を考えた時に、何が重要な要因で、今後どのような優先順位で戦略を組み立てていくことになるかを考察された記事がありました。
 
米国が採る中国政策次第で変わる朝鮮半島の未来 米国から見た東アジア:日本からの景色とは大きな相違(1/6) | JBpress(日本ビジネスプレス) 2019.4.29(月) 松村 五郎

 北東アジアの明日がどうなるのか、その未来は深い霧に覆われている
 それというのも、
米朝関係、米中関係が今後どのように推移するのか、全く予測がつかないからである

 2月末のベトナム・ハノイにおける米国のドナルド・トランプ大統領、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長会談は何らの合意が見られないまま終わったが、米朝交渉自体は継続されており、決裂したわけではない。


<中略>
 
 他方、米中間においては貿易交渉が続いており、当初は3月末にも米中首脳会談で決着するのではないかと思われていたところ、交渉は進展せず、首脳会談もいつ行われるのか定かではなくなっている。

 昨年10月のマイク・ペンス副大統領による対中強硬演説を受けて、「米中新冷戦だ」「米中技術覇権競争だ」と今後の全面対決を予測する論調のコメントもあれば、いやトランプ大統領は意外とあっさり妥協するかもしれないと予想する記事もある。

 しかし、これらの論評を聞いていると、米朝や米中の二国間関係、特にその首脳間の駆け引きを個別に論じるものが大半で、米朝関係と米中関係が相互にどのように影響し合うのかを論じているものはほとんど見受けられない。

 本来この2つの二国間関係は密接に関係しあっており、同時進行しているからには、相互に影響を与え合うのが当然で、米国が今後の対応方針を考える際には、一体のものとして考えざるを得ないはずである。

 そこで本稿では、日本の立場ではなく
米国の立場から、戦略的視点で今後の北東アジア政策を考えた時に、何が重要な要因で、今後どのような優先順位で戦略を組み立てていくことになるかを考察してみたい。
 また併せて、今後の米国の対朝、対中政策を予測するための基準となる軸を提示してみたい。


<中略>

 米朝、米中というそれぞれの二国間関係を個別に見るのではなく、米国にとってのアジア戦略や世界戦略という大局から眺めてみると、一つ明白なことがある
 それは、
今後の米国の戦略にとって、北朝鮮よりも中国の方が圧倒的に重要な要因だということである。

<中略>

 米国が今後の世界戦略を組み立てていくうえで、北朝鮮と中国を比べた場合、第一に考えなくてはならないのは中国との関係であることは自明である。
 合理的な戦略的思考からは、まず今後の米中関係をどのようにマネージしていくのかを定め、それを有利に運ぶための要因の一つとして北朝鮮との関係を考えていくのが筋であろう。
 そのように考えると、
今後米国が中国に対してどのように対応していくかによって、北朝鮮に対する対応方針も変わってくることになる。
 では、
それは具体的にはどういうことになるのだろうか

 ペンス演説で示されたように、中国が違法な手段も含む様々な方法で国家としての科学技術能力を高め、それを背景にIT分野をはじめとする先端産業において世界を凌駕しようとしていることに、
米国が強い危機感を持っていることは間違いない。

 問題は、そのような認識のなか、米国が中国に対してどのような方針で臨むかであるが、
ここでは分かりやすく両極端の2つの対応策を考えてみよう

 すなわち
対中強硬策と対中妥協策である。
 
強硬策は米中間の技術覇権争いに焦点を当てたものであり、この争いにはどちらが勝つかの結末しかなく、米国は断固としてこの戦いに勝利するために、同盟国と連携して、軍事面でも通商面でも中国への圧力をかけ続け、中国が優位に立つのを絶対に許さないというものである。

 これに対して
妥協策は、現在の米中関係は冷戦間の米ロ関係とは比較にならないほど経済的相互依存関係にあるということを認識したうえで、中国の目に余る知的財産侵害がある程度抑制され、貿易不均衡も許容範囲に収まるならば、いわゆるウイン・ウインの共存関係を図っていく方が得策だというものである。

 
実際には、今後の米国の対中政策は、この両極端の間で揺れ動くことになるのであろうが、その揺れに応じて対北朝鮮政策がどのように影響を受けるのかが本稿の主題であるので、以下順番にそれを見ていきたい。

■中国に厳しく出る場合、対北朝鮮では甘くなる?
 まず、
米国が対中強硬策を採る場合である。
 米国は
貿易交渉に強い態度で臨むとともに、軍事面でも南シナ海や台湾周辺などにおいて中国の軍事活動を牽制し、圧力をかけるであろう。

 
この際、米国にとって、朝鮮半島における緊張が緩和していることは好ましく働く
 もしも北朝鮮との間が険悪であり、場合によっては朝鮮半島において軍事衝突が起きるかもしれないということになれば、この地域の米軍は中国と北朝鮮の両方に対して高度の警戒態勢を取らなくてはならず、いわば
二正面作戦を余儀なくされる

 逆に、
北朝鮮との非核化協議が進展し、南北間の協力関係も進んで、北朝鮮が南侵も念頭に取っていた即応性の高い軍事態勢、例えば「ソウルを火の海にする」ための砲兵の前方展開、が緩和されるならば、在北東アジア米軍はほぼ対中国作戦に集中できることになり、これは中国に対し大きな牽制効果を発揮するだろう。

 北朝鮮による南侵の脅威が取り払われた韓国が、北朝鮮とともに中国寄りの立場をとり米国離れを起こすのではないかとの危惧もあるかもしれない。
 しかし、米中が厳しく対立している環境の中で、旗幟を鮮明にして中国側につくことは、韓国にとってリスクがあまりに大きい選択である。

 
北朝鮮が非核化し、拉致問題も解決した暁には、日本による北朝鮮への経済支援も期待される中にあって、協力関係にある韓国と北朝鮮は、日米両国との溝を大きくすることは避け、むしろ中国と距離を置こうとするのではないだろうか

 このような流れを
全体として眺めた時、米国が対中強硬策を採る場合には、北朝鮮に対して多少条件を甘くしてでも、非核化交渉を前に進めるインセンティブがあると言えるだろう。

■中国と妥協する場合、対北朝鮮では厳しく出る?
 次に、
米国が対中妥協策を採る場合である。

 中国が、知的財産侵害を規制し、貿易問題でも譲歩し、軍事面でも挑発的態度を控えることを期待して、
中国を責任ある大国の方向に誘導していく方針をとった場合ということになる

 この策が功を奏して中国が一定程度その方向に進んだとしても、
米国と中国のライバル関係が根本的に解消するわけではない
 一定のルールの下で、国際経済の中で、また最先端技術をめぐって、
米中の競争が続くことになる。
 その際、北朝鮮との友好関係を進展させることは、米国にとって得策であろうか。

 前項の強硬策の場合とは違って、
米中が競争関係にはあっても、厳しい対立関係にあるのではないという環境下では、韓国や北朝鮮の判断は変わってくる可能性が高い

 
米朝の非核化交渉が進展し、南北間の協力も進んで信頼が高まった場合、韓国にとって米国の軍事的庇護はもはや必要ではなくなる

 そのうえで米中間の関係が、軍事力も背景とした厳しい対立ではなく、国際市場における経済的ライバル関係であるとなれば、
韓国が中国寄りにシフトしていくことに外交・軍事面で大きなリスクはなく、経済面ではむしろ大きなチャンスを生むかもしれない。

 少なくとも
米国の立場からは、それを危惧するであろう。
 また我々日本人の一般的感覚では、まさかあり得ないと思われることではあるが、
遠く離れた米国から見れば、韓国に続いて日本も中国との関係を強め、世界経済を中日韓ブロックが支配することになるという悪夢が頭にチラついてもおかしくない

 
中国に対して妥協策を採ったうえで、北朝鮮の非核化をきっかけに朝鮮半島の緊張緩和が急激に進むということは、米国にとってこのようなリスクを孕むものなのである

 つまり
米国が対中妥協策を採る場合には北朝鮮との非核化交渉を無理に進めることなく、気長に交渉を進める方が得策だということになる

■結局、今後の米朝交渉はどう進むのか?
 ここまで、米国の対中政策と対朝政策の2つの要因に絞ってその関係を見てきた。
 もちろん現実はこのように単純ではなく、これに対して中国がどのようにリアクションするか、韓国・ロシアはどう出るか、米国内政がどう絡むか、などほかにも様々な要因を考慮したうえで、米国の政策方針が定まっていくことになるだろう。
 その際には、もちろんトランプ大統領の頭の中という最も予測困難な要因も絡んでくる。

 だが本稿で整理したように、
米国の戦略という観点から見た場合、米中関係と米朝関係が一種のトレードオフの関係にあるということを押さえておくことは大事である。

 
米国にとって、中国との対決を期するなら北朝鮮との関係を進めた方がよく、中国と妥協するのなら北朝鮮との関係は進めない方がいい

 とは言うものの、2018年6月トランプ大統領が、半年前にはだれも予測していなかった米朝首脳会談をシンガポールで実現し、両国関係改善に前向きの共同声明を発表した際、彼が本稿で指摘したようなトレードオフ関係を意識していたとは思えない。
 むしろ、多くの報道で指摘されてきたように、中間選挙を控えて外交的得点を上げたいという思いが強く、対朝も対中も両方うまくやろうと考えていたのだろう。
 しかしその後、
トランプ大統領自身、あるいは政権を軍事外交面で支える戦略的思考に長けたスタッフたちは、下手をすると朝鮮半島緊張緩和で中国が一人勝ちすることになりかねないと気づいたのではないだろうか。

 
米国にとって、中国が態度を改めず、知的財産の侵害を続けて世界的な技術覇権を握ろうとすることは、何としても阻止しなくてはならない

 しかし
だからと言って中国と決定的な対立関係になることは、軍事面でも経済面でも決して望ましいことではない
 米国としては、本稿で述べたような対中強硬策と対中妥協策の間で、中国の出方を睨みながら、これに揺さぶりをかけ、結果として有利な方向に持って行く努力を続けることになろう。

 この時、
対朝関係は対中関係に対し、あくまで主ではなく従の関係である。
 
したがって、北朝鮮との非核化交渉に臨む米国の態度は、その時々の対中政策方針に影響を受け、その先行きの見通しに応じて揺れ動くのが当然だと見るべきではないだろうか。

 そう考えると、
米中交渉の先行きが見えないなか、2019年2月のハノイにおける第2回米朝首脳会談で、トランプ大統領が金正恩委員長に対し、今後の交渉の行方に関して何ら言質を与えることなく、だからといって交渉を打ち切ることもなかったのは、至極当然に思えてくるのである。

 今後、トランプ政権の対中交渉方針が定まり、それに対する中国の反応も見えてきた時になって初めて、北朝鮮との非核化交渉に関する同政権の基本態度も定まっていくのではないだろうか。

 米国の戦略にとって、北朝鮮よりも中国の方が圧倒的に重要とはいわずもがなのことですが、一応検証の一環とされたということでしょう。
 そこで、松村氏が分かりやすくする為と、対中強硬策と対中妥協策の両極端の2つの対応策で考察をすすめられているのは英断。

 米国が対中強硬策を採る場合。
 米軍は中国と北朝鮮の両方に対して高度の警戒態勢を取ることを避けるために、朝鮮半島における緊張が緩和していることが望ましい。
 逆に、北朝鮮との非核化協議が進展し、北朝鮮による米韓日への攻勢懸念が薄まれば、米軍はほぼ対中国作戦に集中できることになり、中国に対し大きな牽制効果を発揮する。

 全体として眺めた時、米国が対中強硬策を採る場合には、北朝鮮に対して多少条件を甘くしてでも、非核化交渉を前に進めるインセンティブがあると言えると松村氏。

 次に、米国が対中妥協策を採る場合。
 この策が功を奏して中国が一定程度その方向に進んだとしても、米国と中国のライバル関係が根本的に解消するわけではなく、米中の競争は続く。
 しかし、米中が競争関係にはあっても、厳しい対立関係にあるのではないという環境下では、韓国や北朝鮮の判断は変わってくる可能性が高いと松村氏。
 韓国が中国寄りにシフトしていくことに外交・軍事面で大きなリスクはなく、経済面ではむしろ大きなチャンスを生むかもしれない。米国の立場からは、それを危惧すると。
 遠く離れた米国から見れば、韓国に続いて日本も中国との関係を強め、世界経済を中日韓ブロックが支配することになるという悪夢が頭にチラついてもおかしくないとも。
 現実として、安倍政権は「一帯一路」に部分協力を表明、米国が欠席した「一帯一路の国際会議」にも二階自民党幹事長が出席して習近平に媚びている。

 米国が対中妥協策を採る場合には、北朝鮮との非核化交渉を無理に進めることなく、気長に交渉を進める方が得策だということになると。

 二極の単純化モデルの検証だが、米国にとって、中国との対決を期するなら北朝鮮との関係を進めた方がよく、中国と妥協するのなら北朝鮮との関係は進めない方がいいという答え。

 この答えに、トランプ大統領自身、あるいは政権を軍事外交面で支える戦略的思考に長けたスタッフたちは、下手をすると朝鮮半島緊張緩和で中国が一人勝ちすることになりかねないと気づいたのではないだろうかと松村氏。
 第2回米朝首脳会談で、トランプ大統領が金正恩委員長に対し、今後の交渉の行方に関して何ら言質を与えることなく、だからといって交渉を打ち切ることもなかったのは、至極当然に思えてくると。

 米国にとって、中国が態度を改めず、知的財産の侵害を続けて世界的な技術覇権を握ろうとすることは、何としても阻止しなくてはならない。
 米朝関係は、米中関係の展開に左右される。トランプ政権の対中政策と、それに対する中国の反応次第ということになる。
 なので、混沌として見通せない現状が暫く続くことになるのですね。

 たまりかねてプーチンに縋った、北朝鮮得意のゆさぶり外交ですが、こちらの評価もまちまちで、経過見物ですね。
 「助けて! プーチン」が袖にされた金正恩の哀れ 具体的提案のない社交辞令に終始した“やる気”のないプーチン(1/5) | JBpress(日本ビジネスプレス)



 # 冒頭の画像は、中国の劉副首相(左)と会談するトランプ米大統領
  トランプ氏「4週間で方向性」 米中貿易協議 (写真=ロイター) :日本経済新聞




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