遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中央アジア産天然ガス、ロシア迂回ルートは後退?

2007-05-13 17:36:05 | my notice
 欧州への資源供給を握っているロシアは、中央アジア諸国の資源もロシア経由で輸送転売することで、大きな利益を得ています。
 ロシア依存に危機感をもつ欧州各国や、旧連邦離れを進める各国では、ロシアを迂回し直接供給出来るルート案を検討しています。
 プーチン大統領は、今回カザフスタン、トルクメニスタンを回りガス輸送ルートの主導権を確保した様です。
 
露、ガス輸送主導権狙う…トルクメンと連携強化確認 (5/12 読売朝刊)

 【モスクワ=瀬口利一】ロシアのプーチン大統領は11日、トルクメニスタンの首都アシガバートで、同国のベルドイムハメドフ大統領と会談し、トルクメンの天然ガス輸送力拡充のため、連携強化をうたった共同声明を発表した。

 トルクメンのガス輸送経路をめぐっては、ロシアが自国を抜ける既存パイプラインの使用を主張しているのに対し、欧米やトルコが、ロシアを迂回(うかい)するパイプライン建設構想を働きかけて競合している。プーチン政権は、旧ソ連・中央アジア諸国が資源外交で「ロシア離れ」を強めていることに警戒感を募らせている。

<中略>
 露側の狙いは、ガス輸送ルートの主導権確保にある。ロシアは、トルクメンから年間500億立方メートルの天然ガスを購入し、より高い価格で欧州に再輸出している。その莫大(ばくだい)な差益が好調な露経済を支える。既存パイプラインは、カスピ海沿岸のカザフスタン領からウクライナを抜けて欧州に向かうが、ロシアは、昨年1月、ウクライナ向け天然ガス供給を一時停止して、ロシアにエネルギーを依存する欧州諸国に衝撃を与えた。
 こうした事態を受け、欧米側はグルジアやアゼルバイジャンを巻き込み、カスピ海を通過してトルコに向かう「ロシア迂回ルート」案を検討。露コメルサント紙によると、欧州連合(EU)は同ルートの事業化調査に170万ユーロの拠出を検討中で、米国務省高官が3月中旬、トルクメンを訪問した際、ベルドイムハメドフ大統領が「米国との協力」に関心を示したという。
 プーチン大統領は今回、6日間かけて資源大国のカザフ、トルクメンを駆け回る異例の強行軍。10日のナザルバエフ・カザフ大統領との会談では、ロシアがブルガリア、ギリシャと建設を計画する欧州向け原油パイプラインをカザフの原油輸送でも利用する言質をとりつけた。

 輸送をロシアに依存している現実があり、カザフ、トルクメン両国は当面の資源政策ではロシア重視を選択したとのことです。
 ただし、カザフは1,000立方メートル当たり100ドルでロシアに売っていた天然ガスを145ドルに値上げすることで原則合意したそうで、トルクメンも同様に値上となる見込みだそうです。値上げ分は、ロシアが被るのか、欧州諸国へ転嫁するのかは未明です。
 また、トルクメンのベルドイムハメドフ大統領は、「カスピ海横断パイプラインなどの検討は続ける」と表明し、輸出ルートの多角化に含みを残しています。 

 また、ロシアへの資源依存を強く警戒するポーランドとウクライナ、グルジア、アゼルバイジャン、リトアニアの5カ国が、ポーランドのクラクフで11日、首脳会議を開き、ウクライナの黒海とポーランドのバルト海を結ぶ石油パイプラインを整備する企業体の創設を決めたのだそうです。
 石油の供給源は、カスピ海の資源国アゼルバイジャンと共にカザフを想定しているとのこと。
  asahi.com:ロシア、中央アジア2国とガス・パイプライン新設で合意 - 国際

 NATOの高官協議が10日、ブリュッセルで開かれました。
 プーチン大統領が先に欧州通常戦力(CFE)条約の一方的な凍結を表明しており、東西冷戦の終結を象徴する同軍縮条約からのロシアの撤退表明は、欧米諸国に強い懸念を呼んでいます。
 豊富なエネルギー資源を背景に、ロシアは今後も欧米に対する強硬姿勢を強めるとみられ、双方の軋轢が深まるのは避けられない見通しのようです。
 
きょうからNATO協議 強硬プーチン、欧米懸念 (5/10 産経朝刊)

<前略>
 NATOとの協議に出席するロシアのバルエフスキー参謀総長は7日、記者団に「ロシア側が2010年までは軍のドクトリンを見直すつもりはない。新しいベルリンの壁もいらない」と述べ、ロシアが西側諸国との新たな東西冷戦と軍拡競争を望んではいないとの姿勢を強調。
 さらに、米国のMDシステムの東欧配備計画にロシアが反発している問題について、「一定の条件」が整えば、譲歩する可能性を示唆した。
 米露両国は、同問題について、外務・防衛担当閣僚による会合「2プラス2」を9月にも開催する予定で、それに向けた駆け引きが始まった。

 ロシアでは、ソ連崩壊後も続く旧ソ連諸国のロシア離脱の動きに多くの国民がいらだちを募らせており、大統領の強硬発言は広く支持されている。外交的にも対欧米強硬姿勢は、核大国ロシアの地位を欧米諸国に再認識させ、国際政治への影響力確保や国家予算への打撃となる軍拡の阻止など、数々の利益があるというわけだ。 
 きょうからNATO協議 強硬プーチン、欧米懸念(産経新聞) - goo ニュース

 ロシアの帝国シンドロームについては、このところテレビでもその指摘をよく見かける様になりましたね。
 その源は、資源の高騰にあることは言うまでもないことなのですが、裏返すとロシアは資源で利益を得なければ、これだけの発展は遂げられないのです。企業や産業構造の改革がなされていないままの現状は、ソ連の崩壊と同じ道を辿ると、ロシア国内でも警鐘を鳴らす人はいるのです。
 
 脱ロシア資源依存は、欧州各国のエネルギー安全保障、脱旧連邦を目指す各国のロシアの搾取からの解放、ひいては世界の平和のために、各国が一致してが進めていくべきことなのです。


 

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2 コメント

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中央アジアの資源ルート開発を (容子)
2007-05-15 23:47:25
遊爺雑記帳さま

ご無沙汰いたしております。
ところで、ロシアのプーチン大統領最近は資源高騰のせいか、ソ連時代を感じさせる強引な政策を感じさせます。

旧支配国は何とかして選択肢を広げようとしているようですが、中央アジア諸国は折角の資源も内陸なるが故に多くの国との協力を得なければ新ルートを持つ事ができず・・・

その点、ロシア、中国等は地理的優位さがあると思いますが・・・日本にとっても大切なこの問題を欧米諸国と協力してこれら2カ国に左右されないルートを持つべきだと思います。
Re: 中央アジアの資源ルート開発を (遊爺)
2007-05-20 18:31:43
容子さん、こちらこそご無沙汰しています。

>ところで、ロシアのプーチン大統領最近は資源高騰のせいか、ソ連時代を感じさせる強引な政策を感じさせます。

最大の標的に据えているのが旧ソ連のバルト3国なのだそうですね。リトアニアでは、ロシアからのパイプライン「ドルージュバ」(友好)による送油が10カ月も停止しているそうですね。
 脱旧ソ連邦を目指すバルト3国とポーランド等は、EUを信じて頑張っています。EUだけでなく、米国や日本も支援をすべきですね。

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