2016年7月、ランド研究所が“War with China(Thinking Through the Unthinkable)” [中国との戦争(考えられないことを考え抜く)]を公表したとのことで、その解説をした記事がありました。
前・陸上自衛隊東部方面総監で、ハーバード大学アジアセンター・シニアフェローの渡部悦和氏は、安全保障の本質は、最悪の事態に備えることであり、最悪の事態としての米中戦争を想定し、分析し、最終的には米中戦争をいかに抑止するかを考えることは極めて重要である。大国間の覇権争いの最悪の事態として米中戦争を想定せざるを得ないとのことです。この類のシミュレーションはいろいろな角度からなされるべきで、米国では数多くなされていて、日本でも増えることで研究が進み、国民への銃砲提供・啓蒙がなされ、国民が「戦争法案」などといった低次元のレッテル張りプロパガンダに惑わされない様になることを願います。
中国が現在陥っている経済的危機の深刻さは、巷で聞こえる、「中国が破竹の勢いで国力を増強させ米国を2030年に追い越す」というシナリオが実現しないことを意味していて、あまりにも無理をして富国強軍を目指したために至る所で綻びが目立っていると指摘し、手負いの龍である中国は、手負いの熊のロシアが問題行動を引き起こしている様に、攻撃的な対外政策をとり続ける可能性があると指摘しておられます。全く同感です。
資源輸出で支えられているロシア経済の低迷は、力による現状変更で経済制裁を受け、大きく低迷しています。一方中国は、バブル崩壊の危機を膨らませつつ、経済成長の減速で、他国への覇権拡大を推進していることは、いまさら申し上げるまでもないことです。
そして、米国に太平洋の二分割管理を持ちかけたり、「一帯一路」政策を打ち出しているのですね。
覇権拡大を続ける中国。札束と軍事力の力を背景とした現状変更を推進、そこには、米中戦争を想定せざるを得ない。しかも、その結末は、両国ともに打撃を受けるが、中国側がより大きく、壊滅的な打撃を受けるというものです。
勿論、その為の備えは必須であり、日本にも厳しく、重大な影響がある。
中国共産党の外交戦略には、上層部に外交の専門家が不在で、それは日中戦争・太平洋戦争へと突入していった当時の日本と類似しているとは、宮家氏も指摘しておられる話ですね。
失政つづきの習近平 外交政策はこれからどこへ向かうのか - 遊爺雑記帳
中国の政治的指導者の統制能力やシビリアン・コントロールに期待しているが、これらに期待できないから米中戦争が生起するとのご指摘はその通り。
米中戦争では、中国が壊滅的な損害を被ると説明しても、外交や軍事に優れた人材が上層部に登用されていない中国では、そのことに気づかない。「中華の夢」を求めて暴走する習近平の共産党。この暴走を抑止する策の考察が、米国でも盛んになってきている様子は心強いのですが、欧州をはじめ、アフリカ諸国など、広く世界に知られることが必要です。
# 冒頭の画像は、中国浙江省舟山市の港から尖閣諸島に向かう漁船群 (2012年9月)
この花の名前は、二輪草
↓よろしかったら、お願いします。
前・陸上自衛隊東部方面総監で、ハーバード大学アジアセンター・シニアフェローの渡部悦和氏は、安全保障の本質は、最悪の事態に備えることであり、最悪の事態としての米中戦争を想定し、分析し、最終的には米中戦争をいかに抑止するかを考えることは極めて重要である。大国間の覇権争いの最悪の事態として米中戦争を想定せざるを得ないとのことです。この類のシミュレーションはいろいろな角度からなされるべきで、米国では数多くなされていて、日本でも増えることで研究が進み、国民への銃砲提供・啓蒙がなされ、国民が「戦争法案」などといった低次元のレッテル張りプロパガンダに惑わされない様になることを願います。
中国は壊滅的打撃受け、今までの発展が水の泡に 米中開戦のシミュレーション、ランド研究所が公表 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.8.23(火) 渡部 悦和
中国が現在陥っている経済的危機の深刻さは、「GLOBAL TRENDS 2030」が予想した「中国が破竹の勢いで国力を増強させ米国を2030年に追い越す」というシナリオが実現しないことを意味している。
私の中国に対するイメージは「手負いの龍」であり、あまりにも無理をして富国強軍を目指したために至る所で綻びが目立っている。
経済的苦境にある手負いの熊であるロシアがクリミア併合やシリアでの軍事行動などの問題行動を引き起こしている様に、手負いの龍である中国も攻撃的な対外政策をとり続ける可能性がある。
<中略>
「日米中安全保障関係」をテーマに米国で研究活動を行っていると、大国間の覇権争いの最悪の事態として米中戦争を想定せざるを得ない。
中国の南シナ海や東シナ海における国際法を無視した主張や行動とこれに対する米国特に太平洋軍の対応を見ていると、偶発的事案(例えば米中の航空機同士の衝突など)が米中戦争に発展する可能性や人民解放軍が強調する短期高烈度地域紛争(Short-Duration High Intensity Regional Conflict)の可能性を意識せざるを得ない。
安全保障の本質は、最悪の事態に備えることであり、最悪の事態としての米中戦争を想定し、分析し、最終的には米中戦争をいかに抑止するかを考えることは極めて重要である。
最近(2016年7月)、ランド研究所(Rand Corporation)が“War with China(Thinking Through the Unthinkable)” [中国との戦争(考えられないことを考え抜く)]を公表した。
このランド論文は、米中戦争について4つのケースを列挙・分析し、米中戦争が両国特に中国にいかに甚大な損失を与えるかを定量的に明らかにし、その損害の大きさを強調することによって米中戦争を抑止しようという試みである。
ランド研究所が得意とする米中戦争のシミュレーション結果に基づく興味深い論文であり、「戦争は、両国の経済を傷つけるが、中国経済が被る損害は破滅的で長く続き、その損害は、1年間続く戦争でGDP(国内総生産)の 25~35%の減少になる。一方、米国のGDPは5~10%の減少になる。長期かつ厳しい戦争は、中国経済を弱体化し、苦労して手に入れた経済発展を停止させ、広範囲な苦難と混乱を引き起こす」などの興味深い指摘がある。
このランド論文は、米陸軍の委託を受けて書かれたものであり、論文の大部分は秘に指定されて公表されていないと思われる。しかし、今回公表された部分のみでも示唆するところが大きいので紹介する。
<中略>
●「中国との戦争」の結論
中国の軍事力の向上は、米国の軍事的優位性を低下させ、米中戦争は、激烈で、1年以上継続する、勝者がいない、両国に非常に大きな損失とコストを強いる。そのような戦争が長く続くほど、経済的、国内政治的および国際的な影響が重要になる。
そのような非軍事的な影響が中国を最も激しく打ちのめし、米国の経済を害し、世界的な挑戦(諸問題)に対応する米国の能力を大きく損なう。
米国は、中国との長く激しい戦争を遂行することができるように、賢明な準備をしなければいけない。重要なことは、その計画立案、シビリアン・コントロール、平時・危機時・戦時に中国と意思疎通できる能力により、中国との戦争の規模、激しさ、期間を局限する米国の能力である。
同じように中国にとって、政治的統制、戦時におけるトップレベルの良き意思疎通が不可欠である。
中国の軍事力の向上は、米国に決定的に敗北する危険性を減じているのは事実である。しかし、中国は、短期の戦争を頼ることはできなくて、長期の戦争が中国を弱く、不安定で、不安全で、貧しい状態にするであろう。
米中がお互いを破壊する能力が同等になると、どちらも許容可能な犠牲で勝利する自信を持てなくなる。もしも対立や突発事態が敵対行動にスカレートしたならば、いかに勝利するかではなく、いかにして損害を局限するかを考え抜くべきである。
■ 2「中国との戦争」に対するコメント
ランド論文「中国との戦争」は、示唆するところの多い、意義のある論文であるが、以下のような評価もせざるを得ない。
<中略>
●日本は厳しい状況を覚悟すべし
米軍が紛争の初期段階における犠牲を避けようとすればするほど、米国の同盟国である日本の被害は大きくなる。
米国が「短期、厳しい」ケースを避けたとすると、日本などの同盟国や友好国は「長期、厳しい」ケースに耐えなければならない。この点は、日本にとって重大である。
●米軍に対するA2/AD兵器の推奨
中国のA2/ADに対抗するために、米軍のA2/AD兵器の導入を推奨しているが、あまりに消極的すぎる提案である。
米国防省の第3次相殺戦略で提案されている長距離の打撃力などの中国に勝利する兵器や技術をどのように評価しているのか、疑問である。国防省は、あくまでも「長期、激しい」戦争に勝利する作戦構想および兵器を保有するという考えであろう。
●中国の指導者やシビリアン・コントロールについての評価
米中戦争の回避に関し、中国の政治的指導者の統制能力やシビリアン・コントロールに期待しているが、これらに期待できないから米中戦争が生起するのであろう。
中国には民主主義国家に見られるようなシビリアン・コントロールは存在しない。人民解放軍を習近平中央軍事委員会主席が本当にコントロールできるか否かが問題なのである。
●米中戦争の抑止
「中国との戦争」は、戦争による損失の大きさを強調することにより、米中戦争を抑止するという観点がある。しかし、損失の大きさは米中戦争抑止の重要な要素にはなるが、それだけでは不十分であり、総合的な抑止の方策が必要である。
中国が現在陥っている経済的危機の深刻さは、「GLOBAL TRENDS 2030」が予想した「中国が破竹の勢いで国力を増強させ米国を2030年に追い越す」というシナリオが実現しないことを意味している。
私の中国に対するイメージは「手負いの龍」であり、あまりにも無理をして富国強軍を目指したために至る所で綻びが目立っている。
経済的苦境にある手負いの熊であるロシアがクリミア併合やシリアでの軍事行動などの問題行動を引き起こしている様に、手負いの龍である中国も攻撃的な対外政策をとり続ける可能性がある。
<中略>
「日米中安全保障関係」をテーマに米国で研究活動を行っていると、大国間の覇権争いの最悪の事態として米中戦争を想定せざるを得ない。
中国の南シナ海や東シナ海における国際法を無視した主張や行動とこれに対する米国特に太平洋軍の対応を見ていると、偶発的事案(例えば米中の航空機同士の衝突など)が米中戦争に発展する可能性や人民解放軍が強調する短期高烈度地域紛争(Short-Duration High Intensity Regional Conflict)の可能性を意識せざるを得ない。
安全保障の本質は、最悪の事態に備えることであり、最悪の事態としての米中戦争を想定し、分析し、最終的には米中戦争をいかに抑止するかを考えることは極めて重要である。
最近(2016年7月)、ランド研究所(Rand Corporation)が“War with China(Thinking Through the Unthinkable)” [中国との戦争(考えられないことを考え抜く)]を公表した。
このランド論文は、米中戦争について4つのケースを列挙・分析し、米中戦争が両国特に中国にいかに甚大な損失を与えるかを定量的に明らかにし、その損害の大きさを強調することによって米中戦争を抑止しようという試みである。
ランド研究所が得意とする米中戦争のシミュレーション結果に基づく興味深い論文であり、「戦争は、両国の経済を傷つけるが、中国経済が被る損害は破滅的で長く続き、その損害は、1年間続く戦争でGDP(国内総生産)の 25~35%の減少になる。一方、米国のGDPは5~10%の減少になる。長期かつ厳しい戦争は、中国経済を弱体化し、苦労して手に入れた経済発展を停止させ、広範囲な苦難と混乱を引き起こす」などの興味深い指摘がある。
このランド論文は、米陸軍の委託を受けて書かれたものであり、論文の大部分は秘に指定されて公表されていないと思われる。しかし、今回公表された部分のみでも示唆するところが大きいので紹介する。
<中略>
●「中国との戦争」の結論
中国の軍事力の向上は、米国の軍事的優位性を低下させ、米中戦争は、激烈で、1年以上継続する、勝者がいない、両国に非常に大きな損失とコストを強いる。そのような戦争が長く続くほど、経済的、国内政治的および国際的な影響が重要になる。
そのような非軍事的な影響が中国を最も激しく打ちのめし、米国の経済を害し、世界的な挑戦(諸問題)に対応する米国の能力を大きく損なう。
米国は、中国との長く激しい戦争を遂行することができるように、賢明な準備をしなければいけない。重要なことは、その計画立案、シビリアン・コントロール、平時・危機時・戦時に中国と意思疎通できる能力により、中国との戦争の規模、激しさ、期間を局限する米国の能力である。
同じように中国にとって、政治的統制、戦時におけるトップレベルの良き意思疎通が不可欠である。
中国の軍事力の向上は、米国に決定的に敗北する危険性を減じているのは事実である。しかし、中国は、短期の戦争を頼ることはできなくて、長期の戦争が中国を弱く、不安定で、不安全で、貧しい状態にするであろう。
米中がお互いを破壊する能力が同等になると、どちらも許容可能な犠牲で勝利する自信を持てなくなる。もしも対立や突発事態が敵対行動にスカレートしたならば、いかに勝利するかではなく、いかにして損害を局限するかを考え抜くべきである。
■ 2「中国との戦争」に対するコメント
ランド論文「中国との戦争」は、示唆するところの多い、意義のある論文であるが、以下のような評価もせざるを得ない。
<中略>
●日本は厳しい状況を覚悟すべし
米軍が紛争の初期段階における犠牲を避けようとすればするほど、米国の同盟国である日本の被害は大きくなる。
米国が「短期、厳しい」ケースを避けたとすると、日本などの同盟国や友好国は「長期、厳しい」ケースに耐えなければならない。この点は、日本にとって重大である。
●米軍に対するA2/AD兵器の推奨
中国のA2/ADに対抗するために、米軍のA2/AD兵器の導入を推奨しているが、あまりに消極的すぎる提案である。
米国防省の第3次相殺戦略で提案されている長距離の打撃力などの中国に勝利する兵器や技術をどのように評価しているのか、疑問である。国防省は、あくまでも「長期、激しい」戦争に勝利する作戦構想および兵器を保有するという考えであろう。
●中国の指導者やシビリアン・コントロールについての評価
米中戦争の回避に関し、中国の政治的指導者の統制能力やシビリアン・コントロールに期待しているが、これらに期待できないから米中戦争が生起するのであろう。
中国には民主主義国家に見られるようなシビリアン・コントロールは存在しない。人民解放軍を習近平中央軍事委員会主席が本当にコントロールできるか否かが問題なのである。
●米中戦争の抑止
「中国との戦争」は、戦争による損失の大きさを強調することにより、米中戦争を抑止するという観点がある。しかし、損失の大きさは米中戦争抑止の重要な要素にはなるが、それだけでは不十分であり、総合的な抑止の方策が必要である。
中国が現在陥っている経済的危機の深刻さは、巷で聞こえる、「中国が破竹の勢いで国力を増強させ米国を2030年に追い越す」というシナリオが実現しないことを意味していて、あまりにも無理をして富国強軍を目指したために至る所で綻びが目立っていると指摘し、手負いの龍である中国は、手負いの熊のロシアが問題行動を引き起こしている様に、攻撃的な対外政策をとり続ける可能性があると指摘しておられます。全く同感です。
資源輸出で支えられているロシア経済の低迷は、力による現状変更で経済制裁を受け、大きく低迷しています。一方中国は、バブル崩壊の危機を膨らませつつ、経済成長の減速で、他国への覇権拡大を推進していることは、いまさら申し上げるまでもないことです。
そして、米国に太平洋の二分割管理を持ちかけたり、「一帯一路」政策を打ち出しているのですね。
覇権拡大を続ける中国。札束と軍事力の力を背景とした現状変更を推進、そこには、米中戦争を想定せざるを得ない。しかも、その結末は、両国ともに打撃を受けるが、中国側がより大きく、壊滅的な打撃を受けるというものです。
勿論、その為の備えは必須であり、日本にも厳しく、重大な影響がある。
中国共産党の外交戦略には、上層部に外交の専門家が不在で、それは日中戦争・太平洋戦争へと突入していった当時の日本と類似しているとは、宮家氏も指摘しておられる話ですね。
失政つづきの習近平 外交政策はこれからどこへ向かうのか - 遊爺雑記帳
中国の政治的指導者の統制能力やシビリアン・コントロールに期待しているが、これらに期待できないから米中戦争が生起するとのご指摘はその通り。
米中戦争では、中国が壊滅的な損害を被ると説明しても、外交や軍事に優れた人材が上層部に登用されていない中国では、そのことに気づかない。「中華の夢」を求めて暴走する習近平の共産党。この暴走を抑止する策の考察が、米国でも盛んになってきている様子は心強いのですが、欧州をはじめ、アフリカ諸国など、広く世界に知られることが必要です。
# 冒頭の画像は、中国浙江省舟山市の港から尖閣諸島に向かう漁船群 (2012年9月)
この花の名前は、二輪草
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