遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中共 南シナ海の完敗の責任は誰がとるのか

2016-07-21 23:58:58 | EEZ 全般
 南シナ海ネタを続けます。仲裁裁判所の裁定で「九段線」を否定され、根拠を失った大失態の中国共産党。その失政の責任追及に注目していましたが、日経で言及する記事がありました。
 野田政権が突如尖閣国有化に踏み切った時、胡錦濤が野田首相(当時)に暫くの延期を要請したにも関わらず、数日後に公表し、胡錦濤の面目をまる潰ししました。その後の「北戴河会議」で、一時消息不明だった習近平が復権し、胡錦濤は退任後の影響力を奪われてしまいました。江沢民他の長老が、尖閣国有化の日本への胡錦濤の姿勢の責任を問うたことが一因だったと遊爺は考えていました。
 今回の「九段線」否定は、中国にとってはそれ以上の大打撃ですから、来年のチャイナセブンの改選を控える中、中共内の責任追及に注目しているのです。
 

逆境の習近平氏に助け舟? 南シナ海判決、中国の硬軟両様  :日本経済新聞 編集委員 中沢克二 2016/7/20

 
南シナ海への中国の海洋進出を巡ってフィリピンが提訴した裁判でオランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が管轄権の根拠とする「九段線」には国際法上の根拠がないとの判決を下した。南沙(英語名スプラトリー)諸島には排他的経済水域(EEZ)が生じる「島」はないという厳しい判断だ。
 予想を超える中国の完敗だった。国家主席、習近平はさぞかし落ち込んでいるに違いない。誰もがそう想像する。そんな中、数日を経て全く違う声が中国内から聞こえてきた。
 「確かに中国の完全な負けだ。それでも
この完敗は内政上、苦しい立場にあった習近平にとって逆に素晴らしい『助け舟』となった
」。中国の内政、外交をつぶさに観察している中国人の見方だ。
 一見、信じがたい。とはいえ
今回の動きの一側面を言い当てている。中国国内向けには、メディアを通じて対外強硬路線を宣伝し、国民を一つにまとめるのが容易になった矛先は、評判を落としていた習近平にではなく、ひとまず外国に向いている


■結果出る前から習主席が前面に
 
習近平は強気に出ることで正面突破を図った
。12日の判決発表の直前、北京で開かれた欧州連合(EU)との首脳会談で早くも「中国は仲裁判断のいかなる主張も受け入れない」と言い切った。
 結果が出る前にトップが対外的に発言するのは本来、危険だ。例えば1999年、ユーゴスラビアの中国大使館を米軍機が誤爆し、犠牲者が出た際、当時のトップ、江沢民はテレビ画面になかなか登場せず、国家副主席だった胡錦濤がまず前面に立った。世論の推移を見定めてからトップが登場する慎重な手法だった。
 しかし、
今回は習近平自身が旗を振らなければ、重大な結果の糊塗(こと)は難しかった。南シナ海でここまで強硬姿勢をとった原因が、習近平の意向なのだから
。中国は厳しい判決も予想し、早くからダメージコントロールに入らざるをえなかった。
 外交トップである国務委員の楊潔篪、外相の王毅らもすぐに「法律の衣をまとった政治的茶番劇だ」「判決は紙くず」と声をそろえた。

 同じ頃、
共産党中央宣伝部はインターネットを通じて南シナ海の主権を守れという大キャンペーンを展開し始めた

 
中国の一つ(の領土・領海)も欠けてはいけない――。どの中国ニュースサイトを開いても南シナ海の「紅(あか)い舌」を含む派手な中国地図が登場する。習近平の権威の維持が目的
だった。ネット上の宣伝を見た国民はコメント欄に「戦争も辞さない覚悟だ」などと勇ましい書き込みをした。
 
一方、世論が激高しすぎないよう手も打った。12日、北京の大学の党組織は「学生のコントロールを強化するように」との“お触れ”を出した。北京のフィリピン大使館の警備も厳重だった。2012年9月の尖閣問題のように中国各地で大規模デモが発生し、万一、収拾がつかない事態になれば、矛先は習近平自身に向きかねない

 
勇ましさの半面、中国政府が裏で対外的に発したメッセージは違っていた。国際的な立場の悪さを認識し、軟化のサインもにじませた
のだ。習近平の対EU発言の最後の1行にも表れている。そこでは「平和解決」もうたっているのだ。中国の報道は、「西側」と違い、見出しや冒頭の語句は大事ではない。最も言いたい内容は最後にくる。

 12日、中国政府は
このほかにも手を打った。中国首相の李克強のサイドが、首相の安倍晋三と会談する日程の調整に応じる意向を早々と示した。15、16両日、モンゴルで開催するアジア欧州会議(ASEM)の際である。18日からの新外務次官、杉山晋輔の訪中も受け入れ
た。日中の首相会談、外務次官協議が続いたことは、中国側の豹変(ひょうへん)といってよい。

■李克強首相の“愛想”
 
15日の日中首相会談の形式で中国側は、安倍より後から会談場所にやってきた李克強が先に部屋に入り、安倍を迎えたという演出をするなど、相変わらず体面にこだわった。しかし、李克強は取材する日本の記者団らに“愛想”も振りまいた
<中略>


 ASEM議長声明で
中国は南シナ海問題の明記の阻止に成功した。それでも「国連海洋法条約に従った紛争解決」との表現は盛り込まれた。1年前の表現をほぼ踏襲したとはいえ、判決が下った後の意味は違う。中国への一定の圧力にはなった。

 週明けも動きがあった。
中国軍は、米海軍作戦部長のリチャードソンを北京に招き、その後、北海艦隊と潜水艦学院、空母「遼寧」などの参観にも応じた。リチャードソンと18日に会談した中国海軍司令官の呉勝利は3点を強調
した。
 (1)中国海軍はいかなる軍事挑発も恐れない
 (2)計画通り島礁の建設をやり遂げる
 (3)前線の軍行動を統制し、戦略的に誤った判断を下すのを避け、南シナ海の平和と安定を守る

 
硬軟両様である。軍の責任者が「島」の建設続行を明言したのは大きい。一方で重要なのは、最後の「誤った判断をしない」との発言だ。空母「遼寧」の視察容認と合わせれば、米国との衝突は避けたいとのメッセージになる。当然、中央軍事委員会主席である習近平の明確な指示があったはず
だ。

■責任を取るのは誰か
 
表は強硬、裏では秋波――。中国のしたたかさがみえる。しかし習近平主導の動きは、ひとまず内を固める効果があったとしても、その後の展望はみえない南シナ海での完敗は明らか
だ。今後の中国に不利な情勢が続いた場合、最後に誰かが責任をとるのは世の常である。それが誰になるのか。

 8月には、長老らと現指導部が意見交換する恒例の「北戴河会議」がある。対外的には「一枚岩」を強調する共産党の伝統がある以上、表向き南シナ海問題が権力闘争の材料になることはない。ただし、
南シナ海問題を柱とする外交・安全保障問題への評価は、来年の党大会人事に必ず影響する。(敬称略)

 当然、習近平の責任が問われるものと考えているのですが、「逆境の習近平氏に助け舟?」と言う記事。
 南シナ海での力による強硬な覇権拡大は、習近平の政策なので、裁定への対処は、習近平が前面に立って旗を振ったと、習近平に責任があることは、習近平自身が自覚している様子です。
 ところが、ピンチを好機に転換しているとのタイトル。内政上、苦しい立場にあった習近平にとって逆に素晴らしい『助け舟』となったというのです。苦しい立場の内容への言及はありませんが、チャイナセブン改選を控え、経済成長の減速により、格差社会の弊害が表面化し、社会問題が深刻化していることや、汚職撲滅の旗印で人民の支持を得て政敵のトラを葬ってきたが、ネタが尽きてきて、頼りの支持に陰りが見え始めていることですね。そして、その対抗勢力からの反抗が台頭してきている。

 そこで、今回の裁定への強硬姿勢を示し外敵に立ち向かう構図を産み出すことで国内世論の指向を集約して逸らす。江沢民が政権の支持を維持するために、「反日」を盛り上げて国内の難題から人民の眼を逸らしたのと同様の手法と言えますね。
 そして、国内はそれで凌いで、対外的には、孤立を防ぐ為に柔軟姿勢も臭わせる両面作戦。

したたかに見えますが、記事では、それは一時凌ぎ。「ひとまず内を固める効果があったとしても、その後の展望はみえない。」と指摘し、南シナ海での完敗は明らかで、「最後に誰かが責任をとるのは世の常である。それが誰になるのか。」と指摘されています。
 そして、あの「北戴河会議」を挙げ、来年のチャイナセブンへの反映を述べておられます。
 江沢民の上海閥、胡錦濤の共青団派などが復権を果たすのか。要注目ですね。


 今回の中国の敗北とその後の対応の外交での国際感覚の欠如について、宮家邦彦氏は、中国外交「音痴」と称して、その理由の最大要因に、「中国共産党の政治局常務委員に国際法を理解する者がいないらしいことだ」と指摘しておられます。
 【宮家邦彦のWorld Watch】南シナ海めぐる裁定、国際法の分かる常務委員がいなかった 中国の「音痴」ぶりは悲劇的だ - 産経ニュース



 # 冒頭の画像は、ユンケル欧州委員長と握手する中国の習近平国家主席




  ホソバテンジクメギ


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