遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

ロシアの天然ガス 日本企業もロシアも勘違いしている

2012-01-20 23:56:52 | ロシア全般
 天然資源の輸出で経済成長を保っているロシアですが、現在の主力ガス田の枯渇が迫り、北極圏や極東でのガス田の開発を迫られています。加えて、欧州各国がエネルギー安全保障の観点から、脱露を推進していて欧州への販路が減少する方向にあります。
 こうした情勢から、ロシアは日本や中国を主要販売先として、アジアへ販路を求めざるを得ない方向に追い込まれています。
 中国はこの状況をきちんと理解してロシアと対面していますが、日露間ではロシアが売ってあげるとか、開発に参加させてあげるとか、しまいには日本の電力産業への参加をさせろと要求する始末。
 日本も中国同様に、買ってあげるでいいんです。北方領土をかえせば、付き合いで少しなら買ってあげてもいいよ。開発も自国で出来ないのなら、条件次第では手伝ってあげてもいいよ。で、いいんです。
 

変動 2012 東アジアと日本 露資源外交極東に軸足 (1/20 読売朝刊)

 
地球上で最も寒い人類の定住地、ロシア東シベリアのヤクーチア(サバ共和国)。氷点下50度、雪に覆われた針葉樹林タイガに巨大ガス田「チャヤンダ」がある。推定可採埋蔵量1兆2400億立方メートルは、日本の天然ガス総輸入量の13年分に当たる。
 ここから極東ウラジオストクまで総延長3000キロメートルのパイプラインを敷設する事業が今年始まる。工事を担う露国営企業ガスプロム子会社のウラジーミル・ワシリエフ副社長は「これができれば、日本や中国、韓国のどんな需要にも応えられる」と胸を張った。
 シベリアからアジアに向けた本格的ガス輸出を前に、ウラジオストクでは、日露共同の液化天然ガス(LNG)プラント計画が進む。今月中に事業化調査を終え、2020年頃の稼働を目指し基本設計に入る。「日本だけでなくアジア全域へのLNG供給基地にする」(ガスプロム幹部)という。
 東方に延びる大パイプラインは、3月の露大統領選で返り咲きが確実視される
プーチン首相の対アジア戦略を体現する国家事業だ。政権安定に不可欠な経済成長の維持を図るプーチン氏は、外交方針の重心を成長センター・アジアに移す可能性が大きい。その最大の武器が天然資源
だ。
 「面白いアイデアだな」昨年8月、石油ガス業界首脳から、東日本大震災でエネルギー不安が生じた日本と極東サハリンをパイプラインで結ぶ計画を打診されたプーチン氏は、大きな関心を示した。日本側でこの構想に関わる
開発会社社長は「日本が態勢を整えればロシアはやる、という感触を得ている
」と語る。
 プーチン氏はチャヤンダ開発などでも、日本の参加を呼びかけている。
 ロシアは近年、日本のエネルギー市場にじわじわと浸透してきた。
ガス輸入量に占めるロシアの比率は、09年の4・3%が10年に8・6%に倍増
した。同じ年、原油は7%になった。
 プーチン流資源外交が日本に迫る。日本にすれば、資源や権益獲得の機会である反面、
エネルギー安全保障がロシアに左右される危険性もある。北方領土問題で対立するロシアへの依存に、拒否反応は強い

 外交筋によると、日本政府内では、
中東依存脱却のためロシアと協力を拡大すべきだという意見と、「対露依存度は15%を超えてはならない
」といった主張がぶつかり、対処方針は定まっていない。
 モスクワのガスプロム本社に、全パイプラインを中央制御する指令室がある。巨大スクリーンに映し出されたユーラシア大陸地図は、パイプライン網が張り巡らされた欧州側が鮮やかな蛍光色で輝く。対照的に、極東・シベリアは暗いままだ。この地図全面を明るくすることが、プーチン氏の野望だ。

露のガス日本にも照準

 ロシアのプーチン首相は昨年10月、大統領復帰の意向を表明後、初めての外遊で中国を訪れた。「露中関係は、過去最良だ」という言葉とは裏腹に、表情は硬かった。
天然ガス輸出を巡る5年越しの交渉が、またも物別れ
に終わったからだ。
 プーチン氏は大統領時代の2006年、2本のパイプラインを敷き、年間680億立方メートルのガスを売却することで中国の基本合意を取り付けた。ところが、最後の価格決めでつまずいた。巨額商談である分、双方とも簡単に譲れず、首脳が延々と価格交渉する異常な展開となった。
 世界1、2を争う石油・ガス産出国ロシアと、世界最大のエネルギー消費国・中国は、理想的な隣国同士に見える。だが、かつて武力衝突を起こした両国は、互いに根深い警戒感を持つ。
 上海の華東師範大学ロシア研究センターの楊成・副主任は中国紙などで「
中国が買わなければ、ロシアは巨費を投じたガス田開発はできない」「中国は、エネルギー輸入先を(ロシア)一国に頼る戦略を変更し、交渉で有利な立場にある
」と強気の背景を解説した。
 交渉が長引く中、中国はロシアが勢力圏とみなす旧ソ連・トルクメニスタンからパイプラインを引いた。
 そのトルクメニスタンは今、人民元で潤い、首都アシガバートには奇抜な政府庁舎が次々に建つ。教育省は本を開いて立てた外観で、外務省の屋上には巨大な地球儀がある。金色の巨大ドームを頂く大統領宮殿は、総工費2億5000万ドルとされる。日本人商社マンは「ここの高官が話すビジネスの成功例は、全部中国のことだ」と舌を巻く。
 プーチン氏が訪中した翌月、トルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領が北京を訪れ、胡錦濤国家主席と会談、同国産のガス供給量を年間400億立方メートルから650億立方メートルに増やすことで合意した。
 
ロシアは「簡単にガスを増産できるのに、売り先が確保できない」
(業界筋)状況となり、日本などに消費国を拡大し、その経済権益をも得ようとしている。
 ロシアは、今年にも操業開始するガス田
「サハリン3」事業に日本勢の参画を認める場合、交換条件として日本の電力事業への参入を求める
考えとされる。露政府系投資銀行VTBキャピタルのアナリスト、エカテリーナ・ロディナ氏は、「ガスプロムは、日本でのガス販売拡大につながるなら、電力事業に積極参画する」と断言する。
 パイプラインは時に、政治地図にも影響を与える。
 1970年代、西ドイツ(当時)のプラント首相は、ソ連・東欧との関係強化を図る「東方外交」の一環として、ソ連のガス輸入を推進し、東西冷戦終結への流れを作った。そして今、ロシアが進める朝鮮半島縦断ガス・パイプライン計画に韓国が同意した。
 東アジアの資源市場は、相次ぐ新規開発と主要国でのエネルギー政策見直しに、ロシアの東方進出が重なり、空前の変動期を迎えている。

 巨大ガス田「チャヤンダ」からウラジオストクまでのパイプラインが完成すれば、日本や中国、韓国のどんな需要にも応えられると胸を張っても、それはとらぬ狸の皮算用と言うものです。
 華東師範大学ロシア研究センターの楊成・副主任が言う、「中国が買わなければ、ロシアは巨費を投じたガス田開発はできない」「中国は、エネルギー輸入先を(ロシア)一国に頼る戦略を変更し、交渉で有利な立場にある」と言うのが正しい見方です。だから、中露の交渉は、中国の強気の姿勢で、いまだにまとまりません。
 ロシアはますます行き詰まって、本来なら日本に頭を下げて購入や開発支援をお願いに来なくてはならないところに追い込まれているのです。

 にも関わらず日本では、「中東依存脱却のためロシアと協力を拡大すべきだ」などと言う政府内の勢力があったり、日本と極東サハリンをパイプラインで結ぶ計画を提案して自慢そうな社長がいたりしています。
 「資源や権益獲得の機会」といいますが、サハリン1, 2でどれだけ裏切られたか、忘れてしまったのでしょうか!

 欧州各国が脱ロシアを進めるのは、エネルギー安全保障を護るためです。何故日本はそれに逆行するのでしょう。
 LNGは、豪州とも長期安定供給の交渉が進んでいますし、カナダからも売り込みがあります。更に、米国発のシェールガス改革で、米国が輸出国に転じることで、世界の需給地図が大きく変わろうとしています。
 終戦のどさくさで北方領土を不法占拠し、これまでの平和交渉の経緯を反故にし、不法実効支配の強化を急速に拡大しているロシアから、購入しなければならない理由は日本側にはありません。
 繰り返しますが、販路がなくなって追い込まれているのはロシアなのです。

 「死の商人」という死語がありますが、そんな国に開発の売り込みをしたり、購入の提案をしている企業は、武器を売っているわけではないのですが、私利の為に国益に反し、敵国に利する行為をしようとしているのですから、「死の商人」と同罪の売国奴と言えるでしょう。

 政府も、関連企業も、中国の姿勢を見習い、国益の大局に立った行動が求められます。




  この花の名前は、ヤマラッキョウ。  撮影場所=六甲高山植物園

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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)
誰がメドベージェフを不法入国させたのか-国賊たちの北方領土外交






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