遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

ASEAN外相会議 中国の分断作戦が勝利

2016-07-26 23:58:58 | EEZ 全般
 ラオス・ビエンチャンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議の共同声明で、仲裁裁判決への言及が盛り込まれず、声明は事実上、骨抜きとも言える内容となりましたね。
 中国の王毅外相が早目に乗り込み、南シナ海問題を巡る親中国や中立国に、札束外交を展開し根回しをした成果です。
 日米は、国際法の仲裁裁判所の裁定を掲げ、中国の南シナ海での暴挙を牽制する包囲網を、ASEAN外相会議では構築出来ず、各国の抱き込みでは、中国の札束外交が勝利しました。
 

ASEAN外相会議 中国加盟国切り崩し 南シナ海問題 沈静化へ会談次々 (7/26 読売 スキャナー)

 ラオス・ビエンチャンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議で、中国の王毅外相は、南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判所の判決をASEANが一致して支持することを阻止するため、加盟国の切り崩しに奔走した。"緒戦"は中国が分断工作に成功した形だが、26日に開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)では、判決を受けて国際的な包囲網構築を目指す日米も加わった攻防戦に入る
。(ビエンチャン 竹腰雅彦、向井ゆう子)

骨抜き
 「8割は中国とASEANの協力、
南シナ海問題に割かれたのは2割だけ
だ」
 25日午後、ASEAN10か国との
会議を終えて臨んだ記者会見で、王氏
はやや疲れの残った表情だった。
 
24日午後にラオス入りし、発表されただけでもシンガポール、ブルネイ、ミャンマー、タイ、カンボジアの外相らと立て続けに個別会談し、それは深夜まで及んだ。いずれも南シナ海問題を巡る親中国か、立場が微妙な中立国で、摩擦の大きいフィリピン、ベトナムは含まれなかった。外相会議の共同声明に仲裁裁判決への言及を盛り込ませないための根回し
だったようだ。
 
奔走は結果的に実を結び、声明は事実上、骨抜きとも言える内容となった。王氏は会見で、フィリピンを念頭に「(ASEAN10か国との)会議で仲裁裁判に触れたのは1か国だけ」と指摘。仲裁裁判については「過去の話」との認識を示し、自国の主張を一方的にまくしたててきた判決直後の中国各高官とは異なる手法で、「対立イメージ」を薄めることに腐心
した。

二重の打撃
 ただ、中国政府にとって
判決の衝撃は大きく、今も守勢にあることは変わらない。表向きは受け入れ拒否を強調するが「『二重の打撃』。外交的な風当たりが強まるだけでなく、習近平政権が進めてきた強国戦略を傷つける」
(国際問題専門家)との本音も漏れる。
 判決により、中国による
人工島での施設建設や軍事拠点化を進める法的な根拠は否定された。そして、習政権は、ベトナムなど領有権を争うその他の国の「ドミノ提訴」を最も懸念
する。提訴されれば、再び「敗訴」しかねない。このため、①仲裁裁判の正当性への攻撃②他国には新たな提訴を阻む懐柔策③フィリピンとの交渉による判決の棚上げ、有名無実化━━に外交手段を最大限投入する構えだ。
 
習国家主席は、9月に自国開催する主要20か国・地域(G20)首脳会議で南シナ海問題が焦点とならないよう問題の当面の沈静化を最優先している模様だ。ただ、国内では「中国の領土は一片たりとも譲らない」と習政権が強調してきた大国意識に基づく強硬世論もくすぶる
。仲裁裁判に対する国内の反発は、政権自らに跳ね返って来かねないというジレンマも抱えている。

限界
 共同声明が中国の思惑通り、南シナ海問題について厳しさを欠く内容となったことは、
全会一致を原則とするASEANの限界を露呈
した。カンボジアが中国に不利な文言を盛り込むことに強硬に反対し、交渉が追い込まれたためだ。
 カンボジアは、中国から今後3年間で約570億円の無償資金協力を受ける予定。中国による分断工作に協力する背景に、経済支援があるとの見方が強い。
 加えて、中国の切り崩しを許したのは、
対中強硬の急先鋒だったフィリピンの政権交代も影響したようだ。6月末に就任したドゥテルテ大統領は、アキノ前政権の対中姿勢と一線を画し、中国が日米の介入を排除するために求めている2国間対話に繰り返し言及
してきた。
 フィリピンの
ヤサイ外相は外相会議で「判決は、南シナ海の紛争を解決するための基盤となる」と主張した。だが「中国を潜在的に恐れる以前の姿に戻った。その時点で既に中国の術中にはまったも同然」(フィリピン記者)と、アキノ前政権時のフィリピンの主張と比べると、迫力を欠いていたとの指摘
もある。

日米 巻き返しへ
 ASEAN外相会議が共同声明で仲裁裁判の判決に言及しなかったことについて、日本政府内では失望感が広がっている。
 岸田外相は25日正午過ぎからの日ASEAN外相会議で、「国連海洋法条約を含む国際法に基づき、南シナ海問題の平和的解決を追求すべきだ」と語り、判決に従うよう中国に働きかける必要性をASEAN各国に訴えた。ASEAN側から異論は出ず、岸田氏に同調して判決支持を表明する国もあった。
 だが、共同声明の内容はすでに固まっていたようだ。声明が発表されたのは、会議開始の前後のタイミングだった。一方、米ASEAN外相会議が開かれたのは25日夕。中国によるASEAN分断工作に対し、
日米は後手に回る格好となった

 
日本は米国とともに、法の支配や国際秩序を尊重する各国と連携し、中国に判決尊重を求める国際包囲網を構築しようとしてきた。今後も、仲裁裁判所の判決を追い風に中国への圧力を強めていく方針に変わりはない。ASEAN諸国に日米中などが加わる26日のASEAN地域フォーラム(ARF)では、改めて判決順守を中国に求め、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンやベトナムを後押しする
考えだ。
 9月には中国で主要20か国・地域(G20)首脳会議、11月にはペルーでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催されるなど、秋以降は首脳級の国際会議が続く。日本政府は欧米各国と連携し、引き続き国際法順守や南シナ海の軍事拠点化中止を中国に求める構えだ。  (ビエンチャン 岡田遼介)

 王外相は、「8割は中国とASEANの協力、南シナ海問題に割かれたのは2割だけだ」と、骨吹きにした会議の成果を語ったのですね。
 南シナ海で展開する暴挙の法的根拠を否定した裁定は、習近平の「中華の夢」を追い求める政策の、南シナ海での足場を否定するものであり、国際的な信頼を失うと共に、大失政として、来年のチャイナセブンの改選に向け、政敵からの攻撃の的となる打撃でもあります。なんとしても切り抜けねばならない、苦境です。

 それに対し、札束外交で屈しているASEANの国があることも事実です。カンボジア、ラオスがその最たる国ですが、ラオスが議長国の今回、カンボジアの中国批判への頑強な抵抗とあいまって、王外相の根回しが功を奏した様ですね。
 国際法を無視して、札束と銃での力づくの外交がまかり通るASEANとなってしまいました。原因は、記事が指摘する通りで、全会一致を原則とするASEANの限界と言えます。

 中国の根回しによる抱き込みに敗れた日米。岸田大臣は、王外相と会談し、裁定を守る様申し入れたと言っていますが、王氏からは、「日本は当事国ではない。日本が盛んに介入を続けて、わざとあおるのならば、別のたくらみがあるに違いない。言動を慎み、さらなる間違いを犯さないようご忠告申し上げる」と、完全に上から目線であしらわれていますね。
 
中国外相「さらなる間違い犯さないよう忠告」 | NHKニュース

 以前に訪中した時も、言われ放題であしらわれていますね。
 
【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】なぜ岸田外相は中国・王毅外相の不遜な主張に反論しないのか? 国をあげて歴史捏造に立ち向かわねば - 産経ニュース

 ふがいない、事なかれ主義で国益の損耗を続ける岸田大臣と日本の外務省で、頼りは同盟国の米国となってしまいます...。。
 

米 対中包囲網強化へ ASEAN外相と会談 分断工作立て直し急ぐ (7/26 読売 朝刊)

 【ビエンチャン=大木聖馬、北京=蒔田一彦】米国のケリー国務長官は25日、ラオスで開かれている東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議に合わせ、ASEAN各国の外相と会談した。南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判所判決を節目に、対中包囲網を強化するのが狙いだ。ただ、ASEANに対する中国の切り崩しを許し、態勢の立て直しが急務
となっている。

 「
(ASEANは)『法の支配』をはっきり主張している。解決策を見いだす最良の方法だ

 ケリー氏はASEAN外相との会談の冒頭、南シナ海問題についてこう述べ、一致点をアピールした。中国の分断工作により、ASEAN外相会議の共同声明は仲裁裁判決に言及しなかったが、
ケリー氏は、米国とASEANとの足並みの乱れが露呈しないよう取り繕ってみせた

 欧州を歴訪していたケリー氏がラオスの会場に姿を現したのは25日午後。
中国の王毅外相が24日からASEAN各国との会談を重ねたのに比べ、出遅れた感は否めない

 中国は仲裁裁の判決前後に、スプラトリー諸島の人工島の滑走路で着陸テストを実施したり、スカボロー礁付近に爆撃機を飛ばしたりするなど南シナ海で挑発的な活動を続けている。同礁はフィリピンの米軍拠点から近く、中国が埋め立てを行う兆候があるとして、オバマ大統領らが強く警告してきたが、事態は深刻化しつつある。
 ケリー氏は25日夜、王氏とも会談した。ケリー氏は、中国のこうした活動は「情勢をより複籍化させる」として自重を求めたとみられる。スーザン・ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は25日、訪問先の北京で、習近平国家主席と会談した。ライス氏は習氏との会談で「意思疎通を密接にし、対立点を効果的に管理したい」と呼びかけた。
 もっとも、中国との対話だけで仲裁裁の判決に従わせることは難しい。
 
米政府は中国を翻意させるため、日本、欧州、アジアの国々などと幾重もの包囲網を形成し、圧力を強めたい考えだ。具体的な方策として、フィリピンなど中国と距離を置く国々には、海洋安全保障能力の強化など側面支援
を続ける。21日には、米沿岸警備隊の巡視船1隻を同国に引き渡す式典を開いた。
 中国寄りとも評される豪州のターンブル首相には、バイデン副大統領が足を運び、19日の会談で米豪両軍の共同訓練を強化する方針を確認した。26日に開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)には、日米も参加し巻き返しを図る。
中国も外交攻勢をかける中、米国の主張に賛同する国をどれだけ増やせるかがカギを握りそうだ。

 裁定を無視して、更に人口島の軍事化を進める中国。札束と軍事力の力で、国際法を上回る行動を始めたことは、ASEANの国々を力で服従させる行動であり、国際世論では孤立する道を選択しています。それは、かつての大戦を招いた世界情勢の再来だと説く声も聞こえます。
 日米は、ASEAN諸国の、良識ある国々を支援し、力による中国の暴挙を抑止すると共に、豪、印といった近隣の雄国や、広く世界の法治国家と連携していくことが望まれます。安倍首相のリーダーシップ発揮が待たれます。



 # 冒頭の画像は、ラオスの首都ビエンチャンで会談した、岸田外相と王毅外相
  岸田外相、仲裁判断の順守要求 中国に、尖閣で懸念伝達 - 共同通信 47NEWS




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