しかし、夏場の需要に対しては供給不足が明らかで、使用量の削減が必要で、計画停電以外のよりダメージの少ない方法についての検討が急がれます。政府は、電力需給緊急対策会議を開き検討を開始しましたが、閣僚がめいめいの案を述べ合う段階で、与謝野氏の案に罷免を持ち出すなど、相変わらずバラバラの口先民主党連立政権ぶりです。
新聞各紙や各所でも対策案を取り上げていますね。遊爺が見られた範囲ですが拾ってみました。
国内の自動車メーカーが、工業用電力の計画停電を回避するため、各社の工場を曜日ごとに輪番で動かす構想を検討することが26日、明らかになった。停電により著しく生産効率が落ちるのを避ける狙いで、電力使用量を抑える代わりに、常時の供給を受けたい考えだ。
近く日本自動車工業会で話し合う見通し。長期化が見込まれる計画停電に苦慮する他産業でも、同様の動きが広がる可能性がある。
自動車業界では、鋳造関連の設備で停電前後の準備と保全に時間がかかり、3時間の停電で9時間の生産停止を招くといい、計画停電中の操業は効率が悪い。また電力が常時供給されないと、自動車に必要な半導体の生産は事実上できないとの見方も出ている。
停電回避には、業界全体としての節電努力が欠かせないため、自動車メーカー各社が協力して工場ごとの稼働日を決め、交代で休業する案が出ている。
東日本大震災で各社の操業は大幅に縮小した。回復の動きも出始めたが、本格的な操業に向けては部品の安定供給と電力確保が大きな課題になっている。
東京電力の販売契約の種類は、一般家庭が使う低圧の電灯契約、主に産業・業務向けの電力契約、さらにこれも主に産業・業務向けとなる特定規模需要の3種類があるのだそうです。そして、電灯契約は34%にとどまり、電力契約が4%、特定規模需要が62%となっていて、産業・業務用が3分の2を占めているのです。
結論からいうと、先ず産業・業務用の規制から着手するのが常道と考えます。オイルショックの時にも実績があり、2003年夏の危機の時もそうでした。2003年夏の時には、使用制限を実施する場合に、優先して規制されることを前提とした契約(「随時調整契約」「計画調整契約」)もあったと記憶しています。
業界も、細切れで不定期に停電するより、輪番で計画的に停電する方法を歓迎し、自動車業界が動き出したのが、上記の記事ですね。
産業界と東電、政府が一体となって、先ず大口の節電を実施すればよいのです。
勿論、それでも解決できないとの想定が必要です。デンマークが、温暖化ガス削減を目標に実施している方法に学べというのが以下。
復興のため、電力消費特別税を導入せよ!:日経ビジネスオンライン
柱は二つで、(1)電力の主な大口需要者と東電が、節電にかかわる自主協定を結ぶ、(2)家計を含む、この自主協定に参加しない需要者に対して課税する。きちんと節電をしたら、税金を還付するというものです。
与謝野氏が、値上げ論を口にしたら、連立政府内で、入閣以来積もっていた不満の腹いせもあるのか、寄ってたかっていじめの様に「罷免」を唱えていますが、選択肢の一つとしては、各紙がとりあげている方策(値上げ分は、復興や補償に充てる)であり、「罷免」と言って大騒ぎする問題ではありません。
課税&還付の方式であれば、値上げ論に反対する理由が薄まると考えます。
海江田氏(経済産業省の提案なのか個人なのか?)は、企業に対して夏休みの延長や分散化、工場の操業時間の短縮や夜間へのシフトを求め、家庭向けには省エネ機器の普及支援策(エコポイントの延長 or 復活)を提案しているのだそうですね。これに対しては、玄葉氏が「産業界に配慮すべきだ」として慎重論を唱えている。
「サマータイム」導入を提案する閣僚もいるのだそうですが、実績では効果が見られなかったのだとか。
毎日新聞は、上記の政府案のほかに、日本経団連などが調整役となっての、企業の自主的な規制値設定いによる「総量規制」と、電気事業法による「使用料制限」取り上げています。
東日本大震災:夏の電力不足、対策を総動員 営業時間短縮、夏休み分散、サマータイム - 毎日jp(毎日新聞)
産経は、海江田案をとりあげたり、与謝野氏がらみのドタバタも取り上げ、オイルパニックでの使用制限の実績も取り上げていますが、主張で、柏崎刈羽原発の停止中の 3基も視野に入れるべきとしている点は、他紙にない特徴です。
【主張】電力不足長期化 電源確保に知恵と工夫を - MSN産経ニュース
繰り返しになりますが、遊爺は、冒頭に述べた通り、圧倒的使用料を占める産業用、業務用に先ず着手すべきで、しかも産業界でも業界単位で産業活動への影響を抑えながらの節電に向け動き始めているのですから、この方向をきっちり政府が取りまとめることが必要と考えます。
そのうえで不足するものについて、家庭や中小企業対象には、使用料規制や、時限の特別増税(還付付)を追加し、計画停電は、最後の手段とすることを望みますが、いかがでしょう。
東日本大地震で、部品、原材料調達がままならず大幅操業ダウンし疲弊している日本の産業を守りつつ、広域大停電を避けつつこの難局を乗り切るためには、政府が各所の知恵を集約し、素早い決断で実行に移すことが望まれます。内輪で足の引っ張り合いをしている場合ではありません。
電力不足の主因となっている、福島第一原発の電源ぎれによるECCSのダウンについて、以下の記事がありました。
諸兄にはいわすもがなのご見解がおありと存じますので、靴に水が入るのもいとわず、復旧作業を急いで被爆した作業員に代表される、命がけで頑張っていただいている皆様の作業が夜を徹して行われているこの時期でもあり、今は特にコメントはしません。
「東日本大震災で被災した東一京電力の福島第一原子力発電所の深刻なトラブルの原因となった、非常用を含めた電源喪失の事態について、原子力安全・保安院と原子力安全委員会の両トップが過去に、「そうした事態は想定できない」との趣旨の考えを明らかにしていたことが分かった。今後、事故原因などを検証するうえで論議を呼びそうだ。
「地震と津波は自然災害だが、原発事故ははっきり人災と言える」。25日に記者会見をした、吉井英勝衆院議員(共産)はこう話した。
京都大学で原子核工学を学んだ吉井氏は、これまでに原発問題を国会で追及。2006年10月の衆院内閣委員会では原発で非常用電源が失われた場合にどういう事態が起きるのかを質問していた。今回の地震に伴う津波は、福島第一原発で非常用ディーゼル発電機などを破壊し、原子炉などの冷却が出来ない事態に陥った。
当時の鈴木篤之・原子力安全委員長(現・日本原子力研究開発機構理事長)は「日本の(原発の)場合は同じ敷地に複数のプラントがあることが多いので、他のプラントと融通するなど、非常に多角的な対応を事業者に求めている」と説明した。
また、吉井氏が10年5月の経済産業委員会でこの問題を取り上げた際、原子力安全・保安院の寺坂信昭院長は、論理上は炉心溶融もあり得るとしつつ、「そういうことはあり得ないだろうというぐらいまでの安全設計をしている」と述べ、可能性を否定していた。
寺坂氏は現在も、安全を確保する保安院トップとして福島第一原発の事態収束に向けた指揮を執る立場だ。吉井氏は25日の会見で、「炉心溶融の可能性を認めていたのに、何も対応をしなかった責任は重い」と指摘した。
一方、現在の原子力安全委委員長の班目春樹氏は、東京大教授だった当時の07年2月、中部電力の浜岡原発をめぐる訴訟で中電側の証人として出廷。原発内の非常用電源がすべてダウンすることを想定しないのかと問われ、「割り切りだ」と話していた。
この際、「非常用ディーゼル2個の破断も考えましょう、こう考えましょうと言っていると、設計ができなくなっちゃうんですよ」「ちょっと可能性がある、そういうものを全部組み合わせていったら、ものなんて絶対造れません」などと証言していた。
班目氏はさらに続けた。「我々、ある意味では非常に謙虚です。聞く耳を持っております」「ただ、あれも起こって、これも起こって、これも起こって、だから地震だったら大変なことになるんだという、抽象的なことを言われた場合には、お答えのしようがありません」
班目氏は10年4月、国による安全規制についての基本的な考え方を決め、行政機関と電気事業者を指導する原子力安全委委員長に就任。22日に参院の予算委員会で社民党の福島瑞穂党首からこの裁判での証言について問われ、班目氏は「割り切り方が正しくなかった」と答弁している。
23日夜、事故以来最初に開いた記者会見では原発の状態について「非常に懸念している」と語り、「想像よりも、どんどん先にいっちゃっている」と認めた。(中井大助)
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