遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

【続】ポスト習近平は習近平

2017-08-29 23:58:58 | 中国 全般
 秋の党大会に向け最終盤に入った中国共産党の権力闘争の行方を追うとして、産経が始めた『紅い権力闘争』と題した特集のフォローの続きです。
 北載河会議を経て作成されたとみられるものだという、習近平政権2期目のチャイナセブン(共産党中央政治局常務委員)の最新候補者リストを紹介する読売の記事を取り上げていたことを前回紹介させていただいていました。
 そこでのサプライズは、注目の王岐山中央規律検査委員会書記の名前が入っていないことでしたが、産経の連載も今回とりあげています。

 
習政権 次期チャイナセブン案 - 遊爺雑記帳
 
【紅い権力闘争】(中) 「反腐敗」推進、政敵ら数千人“抹殺” (8/29 産経 )

■怨嗟の標的になった盟友
 中国国内で不思議な現象が起きている。
書き込みのある一元札が急増しているのだ。そこには、こう記されている。「王岐山は裸官(腐敗官僚)だ

 インターネットの規制が厳しい中国では中国共産党幹部を批判する書き込みは即座に削除されてしまう。一元札を利用して、党最高指導部メンバー、政治局常務委員の王(69)をおとしめる情報が拡散されているのだ。
 国家主席(党総書記)の習近平(64)が掲げる「反腐敗キャンペーン」を強引に推し進めたのが、
中央規律検査委員会書記の王だった。大物から小物まで、「虎」も「ハエ」もたたいて“恐怖政治”を演出、党内基盤が脆弱(ぜいじゃく)だった習を支えた。序列は6位ながら、実質上の政権ナンバー2
である。

 「習・王連合」とも評される2人の絆の源泉をたどっていくと、およそ半世紀前のある夜につながる。
 陝西省北部、延安市中心部から北東へ20キロ離れた康坪村。1969年、20歳の王は北京からこの寒村に下放された。都会の知識青年を地方に送り、労働教育を受けさせるというものだ。
 当時、陝西省の別の村に下放されていたのが15歳の習だった。一度、康坪村を訪ね、知識青年のリーダー格だった王と会っている。
 2人がどんな話をしたのかは分からない。若い習が日々の農作業の苦労を語り、兄貴分の王が励ましたのかもしれない。習はつらさのあまり北京に一度逃げ帰った経緯がある。習によると、2人はその夜、1枚の布団を分け合って眠った。
 それから四十有余年、2人の人生は再び交錯する。
2012年に権力を握った習は盟友の王に、政敵もターゲットにした反腐敗運動を託した王が汚職などで表舞台から葬り去った人物は、連座した周辺も含めると「数千人」(米ハフィントンポスト)。結果、王は怨嗟(えんさ)の標的となった

 香港誌「動向」によると、12年11月に反腐敗キャンペーンが始まってからの約4年間で、王を狙った暗殺未遂事件が27回起きているという。真偽は不明ながら、武器や車両を使ったものが17回、郵便物に毒物を仕込んだケースが8回、飲料や食事に毒物を混入する手口が2回-などと、事細かに伝えられている。

 
秋の党大会の焦点の一つは、68歳以上を引退とする政治局常務委員の“定年”の慣例が維持されるのか
。そうであれば、王は引退しなければならない。
 「春までは(慣例を無視した)王続投を最優先にしていた習だが、最近は『習近平思想』を党規約に盛り込むのに熱心で、王のことをあまり言わなくなった」と党関係者は証言する。
 
「王を守り続けるのは、独裁体制を目指す政権にとってマイナスだ」。習はそう判断
したのだろうか。
 王が下放された康坪村。広場近くの壁に、当時の集合写真が大きく引き伸ばされて貼り付けられていた。
 作業着姿の10人が並ぶ写真にはある青年の目元と口の一部が刃物のようなものでえぐられた跡があった。比較的、新しい傷である。
 若かりし頃の王だ。
 
政権ナンバー2の地位が揺らいでいた


■独裁体制もくろむ習派 「絶対服従の小役人」力不足の腹心

<中略>


 トウモロコシ畑に囲まれた山間の集落に政治局員、
栗戦書(66)の実家があった。中央弁公庁主任(官房長官に相当)として、国家主席(総書記)の習近平を支えている。
 中央規律検査委員会書記の
王岐山が引退する場合、その後任として有力視される習の腹心中の腹心
だ。
 習と栗の出会いも、習と王のそれに似ている。
 栗は33歳で河北省無極県の書記となったが、隣接する正定県で書記を務めていたのが3つ年下の習だった。習は上司の問題で悩みを抱えていたという。同じ年頃で、同じ役職に就いた2人は往来を重ね、親交を深めていった。

 前国家主席、
胡錦濤の側近の令計画が2012年、不正問題で中央弁公庁主任の座から追い落とされると、後任人事に注目が集まった。そのときに抜擢(ばってき)されたのが、貴州省トップの書記などを務めた栗だった。習の意向
とされる。栗は就任すると、秘書らに「習近平主席に絶対の忠誠を誓え」と要求したという。

 もう一人、王の後任として名前がささやかれている人物がいる。政治局員で
党中央組織部長の趙楽際
(60)だ。
 
出身は習と同じ陝西省で同省トップの書記
を務めた。中央政界では無名の存在だったが、2012年に政治局員に突然選ばれた。習の意向が働いたのは想像に難くない。昨年12月、習が出席を控えた「南京虐殺事件」の追悼式典にも、いわば党の代表として出席し、注目された。

                 ■  ■
 若い頃から5歳下の習を知っている王岐山には、“兄貴分”という意識が今なお残っている。
全国人民代表大会(国会)のひな壇で、全国の代表が見つめる中、習の肩をポンとたたけるのは王だけ
である。
 しかし、こうした振る舞いをする王は、少なくとも習の腹心たちには“目の上のたんこぶ”に映る。

 
秋の党大会では(1)習の指導思想・理念を毛沢東思想と並ぶ「習近平思想」として党規約に記載する(2)毛沢東が30年以上、君臨した「党主席」を復活
する-ことを習派はもくろむ。
 つまり、
現在の最高指導部による集団指導体制を捨て去り、習の独裁体制を確立
しようというわけだ。
 
独裁のシステムを導入してしまえば、“ハエたたき”の王の存在は必要ない


 
「習・王連合」から習の独裁へ-そのプロジェクトを推進しているのが、栗や趙ら習の腹心たちである。党大会で政治局常務委員会入りを狙っている

 だが、ある党関係者は「2人とも習の言うことに絶対逆らえない小役人」と吐き捨てるように言った。
 「党内の厳しい戦いを勝ち抜き、自らの力で最高指導部入りを果たした王と比べ、習のカバン持ちとして出世した栗と趙は明らかに力不足だ」。こう指摘する党幹部もいる。
 ナンバー2のポストをめぐる闘いも最終局面を迎えている。(敬称略)

 栗戦書と、趙楽際については、習近平子飼いの部下をさす「之江新軍」ではなく、冒頭の図に示すように、共青団派であったものが、習近平に鞍替えした一連の集団の一員と、遊爺は理解しています。
 
習近平 第二期政権人材を共青団切り崩しで獲得 - 遊爺雑記帳

 政治局常務委員の“定年”の慣例を破り、王岐山のチャイナセブンの座の延長を果たすことは、習近平自身の、3期目への延命の布石であると同時に、毛沢東の暴走で生じた「文化大革命」の反省で鄧小平が打ち立てた集団指導体制を捨て去り、習近平が毛沢東の様に、「党主席」の専制政治の地位につこうという野望を果たす道を拓くものでした。
 しかし、「核心」と呼ばせる体制固めがすすんできている今日、“ハエたたき”の王の存在は必要がなくなっていると同時に、むしろ「王を守り続けるのは、独裁体制を目指す政権にとってマイナスだ」と判断したのだろうかと記事は指摘しています。年上で、全人大のひな壇で、全国の代表が見つめる中、習の肩をポンとたたいて引き留めて話しかける態度は、「党主席」の座を復活させる習近平には目の上の瘤でしかなくなってきているということ。

 胡錦濤から共産党中央委員会総書記の座を引き継ぐにあたり、胡錦濤の目論見を制止て座に就けてくれた江沢民の恩を、江沢民・上海閥のトラ退治で崩壊させ、恩を仇で返した習近平。今度は、それらのトラ退治で、薄弱だった政治基盤を強化し、今日の独裁体制にまで引き上げてくれた恩人の王岐山を切り捨てようというのですね。

 しかし、共青団派の切り崩しは完成出来ていません。
 共青団派3名、習近平派は、孫政才を失脚させて「之江新軍」の"2階級昇進"させた、陳敏一爾を含む3名+習近平という勢力バランスとみられる新体制のチャイナセブン。次に注目されるのが、習近平の2期目が終了する2022年の党大会以降のポスト習近平となり、そこで引退する慣例となっている習近平の動向。
 後継候補として今回チャイナセブン入りが予想されていた、広東省党委書記の胡春華と重慶市党委書記の孫政才の内、孫政才を失脚させ、陳敏一爾を"2階級昇進"させる習近平が、その時、陳敏一爾を傀儡として立てるのか、自らが「党主席」を復活させ君臨するのかが注目されることになりますね。



 # 冒頭の画像は、壇上で習近平を呼び止める王岐山




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