各種の世論調査で内閣支持率が低下している。
いずれも、内閣支持率30%割れと同じような結果となり、岸田政権はかなり危険水域になっている。
ちなみに、内閣支持率と自民党支持率を合算した数字は「青木率」として知られ、かつては青木率が50%を割ると内閣は倒れるとされていた。
まだ自民党支持率が高いので、それほどの危険水域でないが、自民党支持率が下がるとさらに不味いだろうと、高橋洋一氏。
今年5月の広島サミットまでは岸田政権は「サミット成功」と明確な目標もあり、やりたいことが外からもよく分かった。しかし、サミット後、今となっては何をやりたいのかさっぱりわからないと、高橋氏。
何か手当たり次第に発言しているみたいだ。増税メガネといわれると、かなり気にしているようで、とうとう経済対策で「減税」を口に出すようになった。
その方向性はいいのだが、それまで財務省のいいなりだったために唐突感があった。
そして「減税」をくちにしたことで、財務省に梯子を外される羽目に!
岸田首相は、支持率低下で解散権が縛られている状況だ。解散権のない首相は党内掌握に厳しい状況で、求心力は既にないと、高橋氏。
JNNが11月4,5日実施した世論調査によれば、岸田内閣の支持率が先10月の調査から10.5ポイント下落し。政権発足後、初めて30%を切り、29.1%と過去最低となった。
予想以上の不評なので驚いたとも。
その後、政府与党内からも驚きの発言がでてきた。減税に関する宮沢自民党税調会長の発言「国民への還元ではない」や鈴木財務相の発言「税収増分は使用済み」発言だ。
経済対策を今臨時国会分と来年度予算分に分割する芸当ができ、さらに閣議決定文の詳細を書けるのは財務省である。そのため、今回の宮沢発言や鈴木発言の裏には当然財務省が控えていると考えたほうがいいと、高橋氏。
政治的なレトリックとして、余分にとりすぎた税収は国民還元するのが当然のことだ。
しかし、宮沢発言や鈴木発言は、財務省の減税回避が露骨に出てきたものとみえる。重要なのは、岸田首相の政治的な「ハシゴ外し」ているように見えることで、ある意味岸田政権の倒閣運動にもつながる動きになるかもしれない。
別に国債発行してもいい。宮沢氏がインタビューで「減税をして好循環が生まれることで将来の所得税収や消費税収、法人税収に影響を与える可能性はある」としているがそのとおりだとも。
支持率の低下や所得税減税でのハシゴ外しなどもあり、年内解散を見送った岸田首相だが、今後、支持率回復など逆転の手段はあるのか。結論からいえば、これはかなり難しいと、高橋氏。
現状は年内解散を見送ったというよりも、既に解散権が封じられていると言った方がいいと!
所得税減税について岸田首相は財務省からハシゴを外されていると書いたが、来年度予算回しにされた所得税減税が実施されない可能性すらある。
本年度の税収上振れや外為特会での評価益などで財源は十分にあるのだが、宮沢自民党税調会長や鈴木財務大臣は所得税減税をするのであれば国債発行が必要としている。
これを真に受けて国債発行するくらいなら所得税減税は不要という世論が出てくるのを財務省は待っていると、高橋氏。
政権が弱くなると、弱り目に祟り目というか、不祥事情報がでて、悪循環になってくる。今の岸田政権はそうした事態に陥っているのかもしれない。
税務当局は、神田氏の滞納状況を知っていたはずで、こんな人が自分達の上に来ることが我慢できなかったので、反発分子があえてリークしたという見方もあり得る。もちろんこれは邪推であるとも。
これから岸田政権が行うことは悉く批判されるだろう。折しも、9日こども家庭庁は少子化対策の財源に充当するため創設する、「支援金」制度について、支援金は負担能力に応じ、公的医療保険の保険料に上乗せして徴収するといった案を提示した。
税でもなく保険料でもないので、財界や労働界からも総スカンになっているので、批判されてしかるべきだが、悪いときに悪いことは重なるという典型例だと、高橋氏。
政権に力があれば、こうした案はもっと政権内で練られるが、今はそうした余裕は岸田政権にはないのだろう。そうした政府与党の体たらくは、自民党内部からの崩壊を招くきっかけになる可能性もゼロではないとも。
財務省のハシゴ外しは自民党内のマグマを動かし、政局の大きな動きを誘発するかもしれないと。
# 冒頭の画像は、岸田首相
この花の名前は、ホトトギス
↓よろしかったら、お願いします。
いずれも、内閣支持率30%割れと同じような結果となり、岸田政権はかなり危険水域になっている。
ちなみに、内閣支持率と自民党支持率を合算した数字は「青木率」として知られ、かつては青木率が50%を割ると内閣は倒れるとされていた。
まだ自民党支持率が高いので、それほどの危険水域でないが、自民党支持率が下がるとさらに不味いだろうと、高橋洋一氏。
岸田政権の「レームダック化」が止まらない…!支持率低下、習近平にも「相手にされなかった」首相の末路(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社 2023.11.20 髙橋 洋一 (元財務官僚 アベノミクス創案チームメンバー 嘉悦大学教授)
■「危険水域」をたどる岸田政権
各種の世論調査で内閣支持率が低下している。地方選挙でも敗北が目立つなか、党内にポスト岸田をめぐる動きが出てくるのか。
最近の世論調査は以下の通りだ。
共同通信が11月3~5日に実施した世論調査では岸田内閣の支持率は先10月から4.0ポイント下落し28.3%となった。JNNが11月4、5日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から10.5ポイント下落し29.1%となった。
FNNが11、12日に実施した世論調査では内閣支持率は先10月から7.8ポイント下落し27.8%となった。NHKが10~12日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から7ポイント下落し29%であった。
時事通信が10~13日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から5.0ポイント下落し21.3%、毎日新聞が18,19日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月より4ポイント低下し21%となった。
また、読売新聞が17~19日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月より10ポイント低下し24%となった。
いずれも、内閣支持率30%割れと同じような結果となり、岸田政権はかなり危険水域になっている。
ちなみに、内閣支持率と自民党支持率を合算した数字は「青木率」として知られ、かつては青木率が50%を割ると内閣は倒れるとされていた。
NHKの調査では下図のとおりだが、まだ自民党支持率が高いので、それほどの危険水域でないが、自民党支持率が下がるとさらに不味いだろう。一部の世論調査ではその兆候もある。
■財務省がハシゴを外した
昨年7月の参院選は、安倍晋三元首相の非業の死をうけた「弔い選挙」の様相もあり、岸田政権は勝利し、2025年まで国政選挙はない「黄金の3年間」といわれた。
今年5月の広島サミットまでは岸田政権は「サミット成功」と明確な目標もあり、やりたいことが外からもよく分かった。しかし、サミット後、今となっては何をやりたいのかさっぱりわからない。
岸田首相は、やりたいことは何かと問われて「人事」と答えたことがあるくらいで、結局どんな政策をやりたいのか見えにくい人だが、サミット後はその感が特に強い。
何か手当たり次第に発言しているみたいだ。増税メガネといわれると、かなり気にしているようで、とうとう経済対策で「減税」を口に出すようになった。
その方向性はいいのだが、それまで財務省のいいなりだったために唐突感があった。そして前回の本コラム〈岸田首相、打つ手なし…!財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社)〉で指摘したように、やはり財務省にしてやられた。
この状況について、先週土曜日の大阪朝日放送「正義のミカタ」で、「自我が芽生えたので、財務省がハシゴを外した」と表現したら、一同大いに納得したようだ。
岸田首相は年内解散なしと宣言してみたものの、支持率低下で解散権が縛られている状況だ。解散権のない首相は党内掌握に厳しい状況で、求心力は既にない。
■想定よりも「不評」だった
JNNが11月4,5日実施した世論調査によれば、岸田内閣の支持率が先10月の調査から10.5ポイント下落し。政権発足後、初めて30%を切り、29.1%と過去最低となった。
11月2日に政府がまとめた経済対策の直後の調査であったが、今回の経済対策について、期待するが18%、期待しないが72%だった。
先週の本コラム〈岸田首相の「減税を含む経済政策」はまったく不十分だ…データで検証してみると(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社〉で、今回の経済対策を不十分と書いたが、予想以上の不評なので驚いた。
その後、政府与党内からも驚きの発言がでてきた。減税に関する宮沢自民党税調会長の発言「国民への還元ではない」や鈴木財務相の発言「税収増分は使用済み」発言だ。その意図や背景は何か。今後の岸田政権の経済運営についての影響はどうか。
7日、宮沢氏は経済紙のインタビューで、岸田首相が「税収増の還元」としたことについて「『還元』とはいっても税収は全部使ったうえで、国債を発行している。それは還元ではない。」と発言した。
8日の衆議院財政金融委員会で、鈴木財務相は、還元策の税収増をついて「すでに使っている」と答弁した。
この両者の発言は完全に連動している。しかも、2日の閣議決定では、
「過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3.5兆円増加する中で、国民負担率の高止まりが続いてきたことも踏まえ、この税収増を納税者である国民に分かりやすく『税』の形で直接還元することとし、令和6年度税制改正として本年末に成案を得て、3兆円台半ばの規模で所得税・個人住民税の定額減税を実施する」
と書かれていたが、これを一週間もたたずにひっくり返した。
そもそも、2日に閣議決定された経済対策が奇妙だ。国の財政支出は17兆円、そのうち今臨時国会で13兆円、残り4兆円は来年通常国会回しとなっている。要するに、年末に行われるのは給付金など13兆円、来年6月以降に実施されるのは所得税減税4兆円。本コラムで指摘してきたように、全部を今臨時国会で処理すればいいものを、来年度予算回しになっているのがおかしい。
■「減税回避」が露骨に出てきた
なお、細かい文章上のことだが、「この税収増」とあるのは、「この税収増相当分」と書くべきであったのに、そうしなかったのは不可解だ。
いずれにしても、経済対策を今臨時国会分と来年度予算分に分割する芸当ができ、さらに閣議決定文の詳細を書けるのは財務省である。そのため、今回の宮沢発言や鈴木発言の裏には当然財務省が控えていると考えたほうがいい。
そもそも過去2年度分の上振れ税収は既に決算処理で国債償還と他の政策経費で使われている。政治的なレトリックとして、余分にとりすぎた税収は国民還元するのが当然のことだ。
もっとも、本コラムでは、そうした政治レトリックではなく、本年度の税収上振れや外為特会評価益を含めて50兆円程度の財源を示しており、過去2年度分の数字はわずかなので本コラムの議論では影響ない。
しかし、閣議決定した今回のものをどうするのか。宮沢発言や鈴木発言は、財務省の減税回避が露骨に出てきたものとみえる。重要なのは、岸田首相の政治的な「ハシゴ外し」ているように見えることで、ある意味岸田政権の倒閣運動にもつながる動きになるかもしれない。
いずれにしても、宮沢発言や鈴木発言のように所得税減税が国債発行につながるのかどうか。今年度の税収上振れや外為特会評価益などを活用すれば、その心配無用だが、これからの国会で大いに与野党で論戦を闘わせてもらいたい。
別に国債発行してもいい。宮沢氏がインタビューで「減税をして好循環が生まれることで将来の所得税収や消費税収、法人税収に影響を与える可能性はある」としているがそのとおりだ。
■「支持率回復」の逆転はあるのか
支持率の低下や所得税減税でのハシゴ外しなどもあり、年内解散を見送った岸田首相だが、今後、支持率回復など逆転の手段はあるのか。結論からいえば、これはかなり難しい。
現状は年内解散を見送ったというよりも、既に解散権が封じられていると言った方がいいだろう。解散権を封じられた首相にパワーはないので、党内政局の動きになる可能性もある。
実際、所得税減税について岸田首相は財務省からハシゴを外されていると書いたが、来年度予算回しにされた所得税減税が実施されない可能性すらある。
本年度の税収上振れや外為特会での評価益などで財源は十分にあるのだが、宮沢自民党税調会長や鈴木財務大臣は所得税減税をするのであれば国債発行が必要としている。
これを真に受けて国債発行するくらいなら所得税減税は不要という世論が出てくるのを財務省は待っているのであろう。
さらにここにきて、岸田政権には災難が降りかかっている。
8日、週刊文春が報じた神田憲次財務副大臣の度重なる税金滞納だ。
■余裕のない岸田政権
9日、参院財政金融委員会で、2013年以降、固定資産税を滞納して計4回の差し押さえを受けたことを認めて陳謝した。「税金の滞納により市税事務所から差し押さえを受けたことがあるのは事実だ。深く反省している」と述べた。
納期までに正しく税金を納めないとどうなるか。所定の期日までに支払わなかった場合、税務署から督促状が送られてくる。未納の税金に対する延滞税も含めた額が督促対象となる。
督促があっても、なお支払わなかった場合は財産差し押さえなどの滞納処分を受けることがある。税務署によって財産調査が行われ、差し押さえ対象となるのは不動産や預貯金、生命保険などが一般的。差し押さえられた財産は自ら売買することができなくなり、競売にかけられ未払分に充当されることになる。
督促や滞納は、税金を払う意思があるので、脱税とは違う。世の中には、結構ズボラな人は多いので、督促や滞納処分は結構多い。ただし、それらは税務当局は当然知っているが守秘義務があるので、今回のように世間の目に触れることはまずない。
政権が弱くなると、弱り目に祟り目というか、不祥事情報がでて、悪循環になってくる。今の岸田政権はそうした事態に陥っているのかもしれない。
税務当局は、神田氏の滞納状況を知っていたはずで、こんな人が自分達の上に来ることが我慢できなかったので、反発分子があえてリークしたという見方もあり得る。もちろんこれは邪推である。
これから岸田政権が行うことは悉く批判されるだろう。折しも、9日こども家庭庁は少子化対策の財源に充当するため創設する、「支援金」制度について、支援金は負担能力に応じ、公的医療保険の保険料に上乗せして徴収するといった案を提示した。
税でもなく保険料でもないので、財界や労働界からも総スカンになっているので、批判されてしかるべきだが、悪いときに悪いことは重なるという典型例だ。
もう少し政権に力があれば、こうした案はもっと政権内で練られるが、今はそうした余裕は岸田政権にはないのだろう。そうした政府与党の体たらくは、自民党内部からの崩壊を招くきっかけになる可能性もゼロではない。
その萌芽が、自民党参院議員青山繁晴氏の総裁選出馬宣言である。実際問題として選挙人20名の確保は難しいが、何が起こるかはわからない。さらに、自民党内実力者の水面下の動きもある。
いずれにしても、財務省のハシゴ外しは自民党内のマグマを動かし、政局の大きな動きを誘発するかもしれない。
■「危険水域」をたどる岸田政権
各種の世論調査で内閣支持率が低下している。地方選挙でも敗北が目立つなか、党内にポスト岸田をめぐる動きが出てくるのか。
最近の世論調査は以下の通りだ。
共同通信が11月3~5日に実施した世論調査では岸田内閣の支持率は先10月から4.0ポイント下落し28.3%となった。JNNが11月4、5日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から10.5ポイント下落し29.1%となった。
FNNが11、12日に実施した世論調査では内閣支持率は先10月から7.8ポイント下落し27.8%となった。NHKが10~12日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から7ポイント下落し29%であった。
時事通信が10~13日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月から5.0ポイント下落し21.3%、毎日新聞が18,19日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月より4ポイント低下し21%となった。
また、読売新聞が17~19日に実施した世論調査でも、内閣支持率は先10月より10ポイント低下し24%となった。
いずれも、内閣支持率30%割れと同じような結果となり、岸田政権はかなり危険水域になっている。
ちなみに、内閣支持率と自民党支持率を合算した数字は「青木率」として知られ、かつては青木率が50%を割ると内閣は倒れるとされていた。
NHKの調査では下図のとおりだが、まだ自民党支持率が高いので、それほどの危険水域でないが、自民党支持率が下がるとさらに不味いだろう。一部の世論調査ではその兆候もある。
■財務省がハシゴを外した
昨年7月の参院選は、安倍晋三元首相の非業の死をうけた「弔い選挙」の様相もあり、岸田政権は勝利し、2025年まで国政選挙はない「黄金の3年間」といわれた。
今年5月の広島サミットまでは岸田政権は「サミット成功」と明確な目標もあり、やりたいことが外からもよく分かった。しかし、サミット後、今となっては何をやりたいのかさっぱりわからない。
岸田首相は、やりたいことは何かと問われて「人事」と答えたことがあるくらいで、結局どんな政策をやりたいのか見えにくい人だが、サミット後はその感が特に強い。
何か手当たり次第に発言しているみたいだ。増税メガネといわれると、かなり気にしているようで、とうとう経済対策で「減税」を口に出すようになった。
その方向性はいいのだが、それまで財務省のいいなりだったために唐突感があった。そして前回の本コラム〈岸田首相、打つ手なし…!財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社)〉で指摘したように、やはり財務省にしてやられた。
この状況について、先週土曜日の大阪朝日放送「正義のミカタ」で、「自我が芽生えたので、財務省がハシゴを外した」と表現したら、一同大いに納得したようだ。
岸田首相は年内解散なしと宣言してみたものの、支持率低下で解散権が縛られている状況だ。解散権のない首相は党内掌握に厳しい状況で、求心力は既にない。
■想定よりも「不評」だった
JNNが11月4,5日実施した世論調査によれば、岸田内閣の支持率が先10月の調査から10.5ポイント下落し。政権発足後、初めて30%を切り、29.1%と過去最低となった。
11月2日に政府がまとめた経済対策の直後の調査であったが、今回の経済対策について、期待するが18%、期待しないが72%だった。
先週の本コラム〈岸田首相の「減税を含む経済政策」はまったく不十分だ…データで検証してみると(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社〉で、今回の経済対策を不十分と書いたが、予想以上の不評なので驚いた。
その後、政府与党内からも驚きの発言がでてきた。減税に関する宮沢自民党税調会長の発言「国民への還元ではない」や鈴木財務相の発言「税収増分は使用済み」発言だ。その意図や背景は何か。今後の岸田政権の経済運営についての影響はどうか。
7日、宮沢氏は経済紙のインタビューで、岸田首相が「税収増の還元」としたことについて「『還元』とはいっても税収は全部使ったうえで、国債を発行している。それは還元ではない。」と発言した。
8日の衆議院財政金融委員会で、鈴木財務相は、還元策の税収増をついて「すでに使っている」と答弁した。
この両者の発言は完全に連動している。しかも、2日の閣議決定では、
「過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3.5兆円増加する中で、国民負担率の高止まりが続いてきたことも踏まえ、この税収増を納税者である国民に分かりやすく『税』の形で直接還元することとし、令和6年度税制改正として本年末に成案を得て、3兆円台半ばの規模で所得税・個人住民税の定額減税を実施する」
と書かれていたが、これを一週間もたたずにひっくり返した。
そもそも、2日に閣議決定された経済対策が奇妙だ。国の財政支出は17兆円、そのうち今臨時国会で13兆円、残り4兆円は来年通常国会回しとなっている。要するに、年末に行われるのは給付金など13兆円、来年6月以降に実施されるのは所得税減税4兆円。本コラムで指摘してきたように、全部を今臨時国会で処理すればいいものを、来年度予算回しになっているのがおかしい。
■「減税回避」が露骨に出てきた
なお、細かい文章上のことだが、「この税収増」とあるのは、「この税収増相当分」と書くべきであったのに、そうしなかったのは不可解だ。
いずれにしても、経済対策を今臨時国会分と来年度予算分に分割する芸当ができ、さらに閣議決定文の詳細を書けるのは財務省である。そのため、今回の宮沢発言や鈴木発言の裏には当然財務省が控えていると考えたほうがいい。
そもそも過去2年度分の上振れ税収は既に決算処理で国債償還と他の政策経費で使われている。政治的なレトリックとして、余分にとりすぎた税収は国民還元するのが当然のことだ。
もっとも、本コラムでは、そうした政治レトリックではなく、本年度の税収上振れや外為特会評価益を含めて50兆円程度の財源を示しており、過去2年度分の数字はわずかなので本コラムの議論では影響ない。
しかし、閣議決定した今回のものをどうするのか。宮沢発言や鈴木発言は、財務省の減税回避が露骨に出てきたものとみえる。重要なのは、岸田首相の政治的な「ハシゴ外し」ているように見えることで、ある意味岸田政権の倒閣運動にもつながる動きになるかもしれない。
いずれにしても、宮沢発言や鈴木発言のように所得税減税が国債発行につながるのかどうか。今年度の税収上振れや外為特会評価益などを活用すれば、その心配無用だが、これからの国会で大いに与野党で論戦を闘わせてもらいたい。
別に国債発行してもいい。宮沢氏がインタビューで「減税をして好循環が生まれることで将来の所得税収や消費税収、法人税収に影響を与える可能性はある」としているがそのとおりだ。
■「支持率回復」の逆転はあるのか
支持率の低下や所得税減税でのハシゴ外しなどもあり、年内解散を見送った岸田首相だが、今後、支持率回復など逆転の手段はあるのか。結論からいえば、これはかなり難しい。
現状は年内解散を見送ったというよりも、既に解散権が封じられていると言った方がいいだろう。解散権を封じられた首相にパワーはないので、党内政局の動きになる可能性もある。
実際、所得税減税について岸田首相は財務省からハシゴを外されていると書いたが、来年度予算回しにされた所得税減税が実施されない可能性すらある。
本年度の税収上振れや外為特会での評価益などで財源は十分にあるのだが、宮沢自民党税調会長や鈴木財務大臣は所得税減税をするのであれば国債発行が必要としている。
これを真に受けて国債発行するくらいなら所得税減税は不要という世論が出てくるのを財務省は待っているのであろう。
さらにここにきて、岸田政権には災難が降りかかっている。
8日、週刊文春が報じた神田憲次財務副大臣の度重なる税金滞納だ。
■余裕のない岸田政権
9日、参院財政金融委員会で、2013年以降、固定資産税を滞納して計4回の差し押さえを受けたことを認めて陳謝した。「税金の滞納により市税事務所から差し押さえを受けたことがあるのは事実だ。深く反省している」と述べた。
納期までに正しく税金を納めないとどうなるか。所定の期日までに支払わなかった場合、税務署から督促状が送られてくる。未納の税金に対する延滞税も含めた額が督促対象となる。
督促があっても、なお支払わなかった場合は財産差し押さえなどの滞納処分を受けることがある。税務署によって財産調査が行われ、差し押さえ対象となるのは不動産や預貯金、生命保険などが一般的。差し押さえられた財産は自ら売買することができなくなり、競売にかけられ未払分に充当されることになる。
督促や滞納は、税金を払う意思があるので、脱税とは違う。世の中には、結構ズボラな人は多いので、督促や滞納処分は結構多い。ただし、それらは税務当局は当然知っているが守秘義務があるので、今回のように世間の目に触れることはまずない。
政権が弱くなると、弱り目に祟り目というか、不祥事情報がでて、悪循環になってくる。今の岸田政権はそうした事態に陥っているのかもしれない。
税務当局は、神田氏の滞納状況を知っていたはずで、こんな人が自分達の上に来ることが我慢できなかったので、反発分子があえてリークしたという見方もあり得る。もちろんこれは邪推である。
これから岸田政権が行うことは悉く批判されるだろう。折しも、9日こども家庭庁は少子化対策の財源に充当するため創設する、「支援金」制度について、支援金は負担能力に応じ、公的医療保険の保険料に上乗せして徴収するといった案を提示した。
税でもなく保険料でもないので、財界や労働界からも総スカンになっているので、批判されてしかるべきだが、悪いときに悪いことは重なるという典型例だ。
もう少し政権に力があれば、こうした案はもっと政権内で練られるが、今はそうした余裕は岸田政権にはないのだろう。そうした政府与党の体たらくは、自民党内部からの崩壊を招くきっかけになる可能性もゼロではない。
その萌芽が、自民党参院議員青山繁晴氏の総裁選出馬宣言である。実際問題として選挙人20名の確保は難しいが、何が起こるかはわからない。さらに、自民党内実力者の水面下の動きもある。
いずれにしても、財務省のハシゴ外しは自民党内のマグマを動かし、政局の大きな動きを誘発するかもしれない。
今年5月の広島サミットまでは岸田政権は「サミット成功」と明確な目標もあり、やりたいことが外からもよく分かった。しかし、サミット後、今となっては何をやりたいのかさっぱりわからないと、高橋氏。
何か手当たり次第に発言しているみたいだ。増税メガネといわれると、かなり気にしているようで、とうとう経済対策で「減税」を口に出すようになった。
その方向性はいいのだが、それまで財務省のいいなりだったために唐突感があった。
そして「減税」をくちにしたことで、財務省に梯子を外される羽目に!
岸田首相は、支持率低下で解散権が縛られている状況だ。解散権のない首相は党内掌握に厳しい状況で、求心力は既にないと、高橋氏。
JNNが11月4,5日実施した世論調査によれば、岸田内閣の支持率が先10月の調査から10.5ポイント下落し。政権発足後、初めて30%を切り、29.1%と過去最低となった。
予想以上の不評なので驚いたとも。
その後、政府与党内からも驚きの発言がでてきた。減税に関する宮沢自民党税調会長の発言「国民への還元ではない」や鈴木財務相の発言「税収増分は使用済み」発言だ。
経済対策を今臨時国会分と来年度予算分に分割する芸当ができ、さらに閣議決定文の詳細を書けるのは財務省である。そのため、今回の宮沢発言や鈴木発言の裏には当然財務省が控えていると考えたほうがいいと、高橋氏。
政治的なレトリックとして、余分にとりすぎた税収は国民還元するのが当然のことだ。
しかし、宮沢発言や鈴木発言は、財務省の減税回避が露骨に出てきたものとみえる。重要なのは、岸田首相の政治的な「ハシゴ外し」ているように見えることで、ある意味岸田政権の倒閣運動にもつながる動きになるかもしれない。
別に国債発行してもいい。宮沢氏がインタビューで「減税をして好循環が生まれることで将来の所得税収や消費税収、法人税収に影響を与える可能性はある」としているがそのとおりだとも。
支持率の低下や所得税減税でのハシゴ外しなどもあり、年内解散を見送った岸田首相だが、今後、支持率回復など逆転の手段はあるのか。結論からいえば、これはかなり難しいと、高橋氏。
現状は年内解散を見送ったというよりも、既に解散権が封じられていると言った方がいいと!
所得税減税について岸田首相は財務省からハシゴを外されていると書いたが、来年度予算回しにされた所得税減税が実施されない可能性すらある。
本年度の税収上振れや外為特会での評価益などで財源は十分にあるのだが、宮沢自民党税調会長や鈴木財務大臣は所得税減税をするのであれば国債発行が必要としている。
これを真に受けて国債発行するくらいなら所得税減税は不要という世論が出てくるのを財務省は待っていると、高橋氏。
政権が弱くなると、弱り目に祟り目というか、不祥事情報がでて、悪循環になってくる。今の岸田政権はそうした事態に陥っているのかもしれない。
税務当局は、神田氏の滞納状況を知っていたはずで、こんな人が自分達の上に来ることが我慢できなかったので、反発分子があえてリークしたという見方もあり得る。もちろんこれは邪推であるとも。
これから岸田政権が行うことは悉く批判されるだろう。折しも、9日こども家庭庁は少子化対策の財源に充当するため創設する、「支援金」制度について、支援金は負担能力に応じ、公的医療保険の保険料に上乗せして徴収するといった案を提示した。
税でもなく保険料でもないので、財界や労働界からも総スカンになっているので、批判されてしかるべきだが、悪いときに悪いことは重なるという典型例だと、高橋氏。
政権に力があれば、こうした案はもっと政権内で練られるが、今はそうした余裕は岸田政権にはないのだろう。そうした政府与党の体たらくは、自民党内部からの崩壊を招くきっかけになる可能性もゼロではないとも。
財務省のハシゴ外しは自民党内のマグマを動かし、政局の大きな動きを誘発するかもしれないと。
# 冒頭の画像は、岸田首相
この花の名前は、ホトトギス
↓よろしかったら、お願いします。