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【エンジニアの生きる道】ビジネスパーソンの「疲れ」の考察

 株式会社VSN様(技術系人材サービス業)のWEBサイトにて、「経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」」というタイトルで、月一回、エンジニアの方に向けたコラムを書いています。

 今月は、「なぜ、オフィスで「疲れた」と言ってはいけないのか ~山崎流・疲れ対策三選~」と題する記事を書きました。

 オフィス・マナーとして、「お疲れ様」は会話でもメールにおいても便利な挨拶です。
 しかし、何も考えずに、朝から晩まで「お疲れ様」と言えばいいと思うのは、心が雑な人間の証拠です。そして、いかにも「こう言っておけば無難なのだ」と安心して挨拶している、心のこもらない様子に対しては、腹立ちさえ覚えます。
 「こんにちは。お元気そうですね」などと言い合う方が、ずっとポジティブで、お互いの励ましになるのではないでしょうか。

 さて、ビジネスにあって、疲れていることは様々な障害をもたらしますが、大きな問題は、頭が十分働かないことと、対人的印象が悪化することの2つでしょう。
 付け加えると、「疲れた人」は本人ばかりでなく、職場の同僚にも良くない影響を及ぼします。

 それでは、不本意ながら疲れた状態で職場に居るあなたはどうしたらよいでしょうか。
 私が考える限り、対策は3つあります。「睡眠」、「リズム」、「〆切り」です。

 思い切って帰宅して十分睡眠を採る、あるいは、椅子に座って目を閉じたままでいるだけでも、休んでからの生産性がその分上がれば、十分モトはとれるはずです。
 また、今日が〆切りで寝る時間がとれない場合には、あらかじめ一日のうち調子の上がる時間帯を見つけておき、パフォーマンスが問われる重要な仕事にその時間を充てて、それ以外の時間は、雑務などで、「流して」仕事をします。こうした自分のリズムを利用することで、幾らか楽に問題を解決できる場合があります。
 これと併用して、小さな「〆切り」を設定するのも有効です。例えば、6時までに仕事を終えたいとスケジュールを決めたら、6時半に出掛けなければ間に合わない予定を入れて、自分で〆切りを設定してしまいます。制限時間があるからこそ、試験中に頭が働くように、人間にとって〆切りの効果は偉大です。

 何れにせよ、疲れていいことはなく、他人に疲れをうつすのは迷惑です。「疲れた」と「忙しい」はオフィスで禁句にしたいものです。
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【現代ビジネス】持ち家が得か、賃貸が得か――この難題に、ひとつの答えを出そう

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に「持ち家が得か、賃貸が得か――この難題に、ひとつの答えを出そう」というタイトルで記事を書きました。


 「持ち家か、賃貸か」は頻繁に取り上げられるテーマです。今回は、主に賃貸派の側から見た不動産について論点をまとめました。

 「持ち家か、賃貸か」は一概に決められません。主として、家賃と不動産価格との間の関係で決まります。この不動産価格の高低を判断する基準は、「自分が払う筈の家賃も含めて収益と見なした時に、リスクに見合うリターンがあるかどうか」です。

 不動産のリスクがどれくらいあるのか、記事本文では、参考となるデータや取引コスト、分割売却出来ないリスクなどを考慮して、個別の不動産物件に対し、15%は見ておくべきではないか、としています。期待できる家賃利回りと合わせて考えると、金融資産への投資の方がリスクとリターンの効率が良いという結論です。

 また、普通の所得と資産しか持たない個人にとって、ローンを組んでの購入は過大なリスク・テイクだと知りましょう。仮に、低金利で借りて将来金利が上昇した場合、負債側では儲かっているような錯覚になりますが、不動産価格は金利上昇によって下落するので、トータルでは儲かっていないことが起こり得ます。
 「いい物件を選ぶと値上がりするマンションはある」という意見については、「全体が下げ相場でも、銘柄を上手に選ぶと儲かる株は必ずある」という証券マンの根拠無き断言に近いと言っておきます。少なくとも、事情通ではない「普通の人」は、自分には無理だと考えておくべきです。

 不動産投資が良いインフレヘッジになるという意見がありますが、賃貸派からいうなら、インフレになる場合は賃金も上昇する筈だから、家賃が払えないということはないでしょう。また、不動産価格の決定原理を考えると、家賃上昇率と金利の上昇率のバランスが問題であり、インフレの場合に、不動産が常に有利な運用資産となるわけではありません。

 現在の金融緩和、円安、さらに今後に控える東京五輪などは、何れも不動産価格を上昇させる要因となりますが、機敏に売り抜けられる不動産のプロ以外の普通の人は、その後の変化のことも考えておくべきであり、全国津々浦々の「普通の人」は、「不動産は持つのが普通だ」と思わない方がいいのではないでしょうか。
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【ダイヤモンドオンライン】米国式「ゴールベース資産管理」を真に受けるな

 ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「金融マンに人生相談するな!顧客を取り込むラップ口座を警戒せよ」と題する記事を書きました。

 米国の対面営業型証券会社の間で、「ゴールベース資産管理」と呼ばれるビジネス・モデルが台頭しています。
 顧客の預かり資産残高から発生するフィーによって収益を稼ぐ「資産管理型営業モデル」であり、顧客に「人生のゴール」を語らせて、その上で資産運用の提案を行い、主にラップ口座を使って顧客の預かり資産の運用から手数料を取る、という流れです。

 この「金融板人生相談」とも言うべきアプローチは、確かに営業手法として効果的でしょう。
 日本においても、対面型証券会社にとっては有望なアプローチでしょうし、そもそも顧客のキャッシュフロー全体を証券会社よりも詳細に把握している日本の銀行にとっても、この種のビジネス・モデルは十分に魅力的です。遅かれ早かれ、日本にも伝播する公算が大きいのではないでしょうか。

 さて、この「資産残高営業モデル」は、顧客の側にとっても望ましいものなのでしょうか。
 野村総研アメリカの金融研究室長である吉永高士氏の記事を読む限り、とてもそうとは思えません。対面証券が資産残高営業に舵を切りつつある環境下、日本の投資家も油断は出来ません。

 第一に警戒すべきは、ラップ口座です。以前、同連載に書いた「ラップ口座が明らかにダメな4つの理由」にその理由は詳しいですが、ラップ口座は、顧客側から見て非常に問題の多い商品です。
 近時の素晴らしい運用環境のおかげで上手く行っているように見えても、運用資産残高の1%以上の手数料を毎年払うようでは「資産運用落第者」と言ってよいでしょう。実際ラップ口座の契約者は、この数倍の手数料を払っている方が珍しくないはずです。

 最後に、顧客側では「ゴールベース資産管理」のアプローチをどう考えたらいいのでしょうか。
 結論は「金融マンに人生相談するのは止めておきなさい」の一言に尽きます。
 そもそも、資産運用の大原則として、商品を購入する相手を、資産運用の相談相手にしてはいけません。彼らが不誠実な手数料稼ぎに走るためには、彼らが悪人である必要はなく、ただ経済合理的なビジネスパーソンであることだけで十分だということを、投資家は知っておくべきです。
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【楽天証券】株式市場の「公平性」について

 楽天証券ホームページでの連載「山崎元のホンネの投資教室」に「株式市場の「公平性」について 」と題する記事が更新されています。

 記事の冒頭で、「市場で値が付いて取引されている株は、大まかにいってどれを買っても売っても、有利・不利は同じだ」と書きました。
 株式市場では、いい会社には高い株価が付き、そうでない会社にはそれなりの安い株価が形成されています。ここに参加する限り、自分が深い事情を知らなくても大きな差はつかないはずです。また、ある銘柄を買うか売るかではっきりとわかる大差があるようでは、そもそもその株価で売買は成立しません。
 市場で形成されている値段に有利・不利が無いことについては、割合信用してもいい事実でしょう。

 また、上場株式への株式投資は、取引価格とその取得にかかる手数料や税金が明確に分かります。
 店頭取引が中心の社債や仕組み債券、個人年金保険を含む生命保険など、販売会社にどれだけ価格差を抜かれているのかが分からないこれらの商品に比べると、この透明性の高さは、もっと強調されてもいい長所ではないでしょうか。

 市場で取引されている株価に参加することに概ね有利も不利もなく、市場が「公平である」ということは、公平な市場でポートフォリオを運用した場合に、特定の参加者が有利な立場に立ち続けることが難しいことを意味します。つまり、「市場の公平性」は、アクティブ運用が上手く行かないことの原因であると同時に、素人でも或いは情報の乏しい参加者でも案外安心して不利無く株式市場に参加出来ることの拠り所にもなります。

 さて、ここまで述べてきた「市場の公平性」ですが、最近、これを脅かす要因が現れてきました。高速取引(HFT)の登場と台頭です。
 この種の取引は、見かけ上の流動性(と取引所の口銭)を増やしてはいますが、市場価格の情報伝達機能を改善しているわけではありません。HFT業者が存続し収益を得られる機会が安定的にあるとすれば、それは市場が不公平になったということに他なりません。
 今後、取引所がこの問題をどのように考えていくかに注目したいところです。
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【ダイヤモンドオンライン】「学歴フィルター」問題から新しい就活の形を考える

 ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「「学歴フィルター」問題から新しい就活の形を考える」と題する記事を書きました。

 「ゆうちょ銀行」が、就職案内のセミナーの参加希望者に対して、所属大学で差別をしていることが明らかになり、ネット空間で大いに話題になりました。

 違法ではないとしても、学生側から見て不公平感があるのはもちろん、企業の行動としては、社会的にも、また一般的なコンプライアンスの観点からもマイナスでしょう。

 しかし、全てのエントリーを平等に扱って選考を行う事は、多くの大企業、特に就職人気の高い企業にとって膨大な手間とコストの掛かる作業です。何らかの基準でフィルターを設けることは、経済合理的であり、そのフィルターを「学歴」に求める事は「フェアではないが、有効だ」と考えられるのではないでしょうか。

 現状、大学入学時の学力を測る大学の入学試験の結果が、本人のビジネス的問題処理能力と最も相関が高い指標だと考える事は現実的です。また、もともと企業側に優れた人材の評価能力があるわけでもありません。彼らが、大学名を選考に使うのは已むを得ないことだと理解すべきでしょう。

 学歴フィルターの公開を望む声もありますが、会社としては、自社に多くの大学の出身者を抱えていることもあり、世間的な反感を買う可能性も大きく、ビジネス的な判断として難しそうです。

 記事本文では、一つの方法として、応募に際し社員からの推薦状を求めることを提案しています。社員がリスクを取り手間を掛けて推薦状を書くか否かは、人材評価上有力なフィルターになります。学生には、入社したい会社の社員と何らかの「縁」を作ることが求められますが、これは、殆ど全てのビジネスにあって必要な種類の能力です。

 もともと企業の勝手であるはずの学歴フィルターが外に出て問題になるのは、インターネットを通じて大量のエントリーを受け付けることから始まる「雑な採用活動!」をしているからではないでしょうか。一般論として採用にはもっと力をいれるべきですし、選考の時期や方法も含めて、もっと各企業独自の方法があっていいはずです。
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【現代ビジネス】「朝型勤務」の功罪

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に「「ゆう活」の奨励に思う。夜型人間のためにも「労働時間制限付きのフレックス・タイム制」を検討してはどうか。」というタイトルで記事を書きました。

 仕事を早朝に始めて早めに終わらせ、夕方を楽しく活かそうという運動を「ゆう活」と名付け、中央省庁では朝型勤務を実践し、民間や自治体にも奨励するといいます。ポイントは朝にあるのに、「ゆう」と付けた運動名が普及するとも思えませんが、政府は今回、それなりに本気のようです。

 夕方早くに帰宅出来るなら、その後の時間を有意義に過ごせるでしょうし、働く側では労働時間の短縮に、給料を払う側からは残業代の圧縮に繋がる可能性があります。社会全体としては、朝夕のラッシュ・アワーの緩和といったメリットが考えられます。
 もっとも、早朝からの勤務に保育園などが対応していない可能性や、学童の子供がいる場合は朝食の用意をどうするかなど、働く母親にとって、朝型へのシフトは不便や負担を増やすことになるかも知れません。

 平均的且つ公平に見るなら、ビジネス・パーソンとしては、やはり朝型の方が有利でしょう(強度の夜型である私には残念なことですが)。
 組織で出世している人の大半は朝型であるように思います。夜型の肩身が狭い世の中はまだまだ続きそうであり、今回の政府による朝型勤務の奨励方針は、その傾向を益々強めそうです。

 自分の経験だけで決めつける訳にはいきませんが、夜型を朝型に矯正することは極めて困難です。そもそも人によって朝型・夜型という固定的なタイプがあるものなのか、あるとして、修正が可能で修正する事が医学的に適切なのでしょうか。

 朝型・夜型が固定的で動かしにくい場合がある事を前提に、政府の目的に叶う制度を考えるなら、「労働時間制限付きのフレックス・タイム制」はどうでしょうか。「時刻」を自由にして「時間」を縛る、制限時間は最低と最長の両方を設定する、といった仕組みです。
 例えば、出社は本人の自由な時間でよく、オフィスに着いたら各自にタイマーを渡し、出社時刻から6時間以上9時間以内にオフィスを離れるよう勤務時間に制限を設けます(必要があれば別途「残業許可申請」の手続きを取ります)。
 人間にとって「締め切り」の効果は絶大です。毎日の勤務時間に締め切りがあることによって、個人単位の能率は改善するでしょう。

 コア・タイムの設定などは必要でしょうが、最も重要なのは顧客の都合です。今回の「ゆう活」にあっても、公務員側の勤務時間の都合で役所を利用する民間人が不便を感じるような勝手な業務時間帯変更を行うとすれば、サービス業として言語道断の愚挙と言う他ありません。
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【ビジネスジャーナル】「ラップ口座」は止める方がいい

 「ビジネスジャーナル」で連載中の『山崎元「耳の痛い話」』に、「 流行の「ラップ口座」は絶対契約するな!愚の骨頂 バカ高い手数料でぼったくり 」と題する記事を書きました。
(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 「ラップ口座」の残高が急伸しています。
 証券界がラップに注力している理由の一つに、徐々に厳しくなっている金融庁の風当たりを避ける意図があります。ラップ口座であれば、「期間当たりの手数料は一定なので、無理な乗り換え勧誘をしていませんよ」、「顧客の事情に合わせたきめ細かな運用サービスを実施しています」と言い逃れることができるからです。
 しかし、投信の頻繁な乗り換え勧誘に乗せられて強盗並みの手数料強奪に遭わない代わりに、泥棒に入られた位の保険料を予め払うようなものがラップの手数料です。

 投資の初心者もベテランも、現在大手金融機関が提供している「ラップ口座」を契約することは全く愚かです。既にかかわってしまった人は、速やかに止めることが経済合理的です。

 理由は4つ挙げられます。

1.総合的に手数料が高い(特にファンド・ラップ)
2.金融機関のラップ担当者に、個々の顧客に応じた運用設計能力などない
3.そもそも金融マンには、上記の「善意」を持つインセンティブなど無い場合が多い
4.運用の意思決定を他人に任せようとする心掛けが間違っている

 少なくとも、総合的な手数料(ラップ口座の手数料+商品の運用管理手数料)の合計が年率1%を切らない限り、ラップ口座は「明確にダメな運用サービス」です。現在のラップには一切関わらないのが得策です。
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