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【現代ビジネス】確定拠出年金の見直しを推進せよ!

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に記事を書きました。
確定拠出年金の見直しを推進せよ!
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 最近、『日本経済新聞』に確定拠出年金に関する記事が2本掲載されました。日経の朝刊一面トップに載る年金関係の記事は、「観測記事」であることが多いため、今回もその類だろうかと心配ではありますが、それにしても、非常に意欲的な内容でした。

 まず1本めは、確定拠出年金の加入対象を拡大するというもので、これまで対象外だった公務員と主婦も加入対象にする点に注目すべきでしょう。また、勤め先の企業に確定給付型又は確定拠出型の企業年金がある場合でも、別個に個人型の確定拠出年金に加入出来るようにする内容も含まれています。

 もう1本は、確定拠出年金の掛け金上限を年収の10%~20%程度に、年収に比例する形で引き上げるというものです。

 この2つの制度改正方針のうち、インパクトが大きく且つ是非とも、そして早く実現して欲しいのは、確定拠出年金の加入対象者の拡大でしょう。
 但し、この実現に際しては、幾つか気になることがあります。

 先ず、確定拠出年金とその運用に関する教育が大規模に必要となるため、この方法と内容を十分に考えておくべきです。
 重要なのは、この段階を絶対に金融業界に丸投げしないことです。せっかくの制度改正を、金融業界にとって好都合な洗脳的情報提供や、運用商品のセールスの場にしてしまうようでは、あまりにお粗末です。

 また、確定拠出年金に関する運用商品の手数料にも気をつける必要があります。
 公務員や主婦に向けた個人型の確定拠出年金の運営者に誰がなるのかにもよりますが、運用商品の選択と、運用商品の手数料水準の交渉には大いに力を入れるべきでしょう。

 最後に、確定拠出年金を利用することで税制上のメリットを得られるということは、その制度改正が、税収と税金に絡む権限の両方に影響するということになります。
 そのため、厚労省がいくら制度改正に前向きになっても、国税当局及び財務省が同意しないと前には進みません。この点が障害になる心配については頭に入れて置きたいところです。
 今回の検討が順調に進み、邪魔が入らないことを切に望みます。
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【夕刊フジ】小学校、40人学級に戻すのは愚か 官僚に望まれる広い視野

 夕刊フジの木曜日号(水曜発売)に「経済快説」という短いコラムを載せています。これは、WEBでもお読み頂けます。
 今週は、「小学校、40人学級に戻すのは愚か 官僚に望まれる広い視野」と題する記事を書きました。
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 公立小学校に導入されている35人学級について、40人学級に戻して予算の削減を図るべきだと、財務省が提案しています。
 35人学級が導入されてから「いじめ」も「不登校」も目立って改善はしていないというのが、彼らが挙げる根拠です。しかし、教師は、いじめと不登校対策のためにだけいるわけではありません。

 また、情報インフラの発達によって、知的能力の差が、そのまま経済的な格差に繋がりがちである現代では、個々の子供にとって、十分な教育指導を受けられるか否かは、ますます重要な問題になっています。加えて、私的な教育で不足分を補えるのは経済的余裕がある家計だけであり、公教育の劣化は格差の拡大にもつながります。

 財務省には、国家百年の大計を考えて、公教育には潤沢に予算を回そうとするくらいの視野の広さと判断力が欲しいところです。
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【ダイヤモンドオンライン】地銀の女性行員相互受け入れ構想に思うこと

 ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「 地銀の女性行員相互受け入れ構想に思うこと 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 今回は、「夫の勤務地に転職、女性行員に導入検討 全国64行」という朝日新聞(10月24日朝刊)のニュースについて書きました。
 具体的には、地銀に勤めていて夫がいる女性行員の夫が転勤した場合に、女性行員が転居する先にある地銀で継続的に働くことが出来る仕組みを、全国の地方銀行64行が検討するという内容です。

 ニュースによると、実現に際して課題は多く、人事評価の引き継ぎや行員の個人情報の管理、賃金などを銀行間でどう引き継ぐか、といった問題があるそうです。
 しかし、人事評価や賃金の引き継ぎが問題になるというのは、些か異様に感じられます。
 普通の採用であれば、採用したら、会社の必要性と本人の適性を考えて仕事を与え、その仕事に払える報酬を払えばよいのであり、賃金を引き継ぐ可能性まで検討するとは、サッカーのレンタル移籍のような仕組みでも考えているのでしょうか。

 銀行の場合、収益への貢献も含めた「評価」は人事の持ち点に積み立てられ、その後の出世・収入・出向先のグレードと条件・退職金・年金などに、「長期間」且つ「広範囲な」影響を与える仕組みになっています。
 こうした、「長期延べ払い」の人事・報酬システムは銀行員を組織に繋ぎ止め、服従させる上で強力に機能しています。いわば「社畜を繋ぐ鎖」です。また、この鎖は、転職を不利にすることで、有能な行員の報酬を低めに抑える点でも機能し、銀行にとっては、社員のメンバーシップの安定、組織への忠誠の強化、そして人件費の抑制に機能してきました。

 しかし、銀行にとって、この「社畜の鎖」(彼らの人事・報酬システム)は徐々に弊害の方が大きくなっているのではないでしょうか。
 経営の人的柔軟性を考えた場合、「その時の貢献には、その時に報いる」システムの方が、「長期に評価して、報酬は超長期の延べ払いにする」システムよりも、経営的な必要性に対応しやすいはずです。

 さらに言えば、「転籍」を後押しすべきは、女性行員もさることながら、その経営者も含めた銀行自身ではないでしょうか。
 全国地方銀行協会の加盟行数は現在64行もあります。その半分でも多すぎるでしょう。ビジネス基盤と経営体力を考えると、地銀の経営者は、現在よりも強烈な切迫感を持って、自行を含む経営統合の組み合わせを考え、実行に移すべきでしょう。

 そのためにも、地銀の頭取さんが考えるべき事は、現在の銀行の人事システムを温存したまま、地銀間で行員のやり取りが出来るようにすることではなく、まずは、人が出入りしてもフェアに個人を処遇することができ、適材を適時に登用出来る柔軟性を持ったシステムに自行の人事システムを作り変えることではないでしょうか。採用・解雇・給与・ボーナス・人事評価・出向・退職金・年金など全てにわたるシステムの作り替えが急務だと言えます。

 政府が長期見通しで想定するように今後長期金利が上がるなら、日本の地銀の財務・経営の状況はとても盤石とは言い難く、地銀経営者に残された時間は長くはありません。
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後味の悪かった落語のハナシ

 数カ月前に落語を聞いた。チケットを取るのが難しいことで有名な現在脂ののっている落語家さんの独演会の抽選に当たったのだ。ご本人から、客席に向かって「皆さんは○千人から抽選で当たった○百人であり、まさに“選ばれた人”なのです」と注釈があった。
 この独演会は、前半後半に一つずつこの売れている落語家が大きな噺をし、その前にそれぞれ弟子の噺(師匠の噺の半分くらいの時間の)が入る構成だった。
 前半、弟子の噺が終わって、本人が登場した。弟子の噺が今一つウケなかったという印象を持ったらしく、弟子の噺にコメントし始めた。
「うーん。ウケの悪さほど不出来な噺ではなかったと思うんだけどねえ。あの噺は、……の部分がウケなければ、盛り上がりようのない噺なんですよ。……を話し終えてから、あいつの話のスピードのまあ速いこと速いこと…」と解説する。
 確かに素晴らしく上手だとは私も思わなかったのだが、「あれは、それなりに頑張って話していたのだな」という気分で次の噺を聞きたかったので、少なからず興ざめした。
 弟子の噺がウケなかったことが、客に対して不満だったのか、弟子に対して怒っていたのか、人気落語家氏のコメントからは定かではないのだが、彼はしばらく不機嫌で、長々とマクラを振ってから、噺を始めた。
 彼が選んだのは「雛鍔(ひなつば)」(子供がお金のことを「おひな様の刀の鍔」という噺)だった。しかし、話す本人が不機嫌なせいか、私は彼が話すのを聞いていて今一つ噺の中に入ることが出来なかった。子供が話す場面が出て来て、そこが聞かせ所なのだが、隣に座っている小学生の子供が明らかに退屈そうにしている。子供にウケない雛鍔は失敗だろう。

 休憩を挟んで後半に入った。後半も先に弟子が話す。女性の落語家さんで、一所懸命に話していることが伝わる熱演だった。
 その後に師匠が登場する。次は、演題を思い出せないが、お寺を舞台にした暗くて長い噺だった。
 この噺の途中に、お寺の小坊主さん達が食事を摂る場面がある。ものを食べる場面は、落語家としては芸の見せ所だが、彼はそれをやってみせて、客に向かって「さっきの食べ方よりも上手いでしょう。師匠だからねえ」と、再び弟子の芸に対してネガティブに言及した。直前の弟子の噺の中にも食事のシーンがあった。
 この師匠は、(本当に)有名で人気のある落語家さんなので、後半の噺が終わった後には大きな拍手を受けたが、ご本人的には、今一つ調子が出なかったと認識したようだった。
 「今のは暗い噺だったからねえ。明るく笑える噺を聞かないと、お客さん、帰りにくいでしょう」と言って、15分くらいの(たぶん元の噺を縮めた)賑やかな噺をやって、会場を暖めて、お開きとなった。おまけの噺は、なかなか良かったと私も思った。最後にやっと調子を出したか。
 会が終わって、席を立ち出口に向かいながら、抽選に当たって今をときめく○○○○の噺を聞くことが出来たことに対する「お得感」があって良かったと思う気分もあったのだが、何やらスッキリしない心持ちだった。

 前座、二つ目の弟子とはいえ、客の前に身を晒すプロだ。師匠が弟子を厳しく指導することは悪くないのだが、客の前で弟子の芸をくさしてはいけないのではないか。
 敢えて付け加えると、その後味の悪さが本人の心の中になにがしかあって、彼のこの日の噺はイマイチの出来だったのではないか。
 後輩、まして多分家族同然の弟子の指導とは難しいものなのだと感じた独演会だった。
 あの日の弟子に対する嫌みな感じを人柄の印象として覚えているので、その後、師匠であるこの人気の落語家さんが、新聞などで、落語の素晴らしさを伝える事に対する使命感を「謙虚風に」語っているのを見ても、表面だけいい人を演じている嫌な人物のような気がして素直に信用出来ずにいる。
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【夕刊フジ】ビジネス界の「逸ノ城、大谷」の育て方 飛び級や二刀流認める社会に

 夕刊フジの木曜日号(水曜発売)に「経済快説」という短いコラムを載せています。これは、WEBでもお読み頂けます。
 今週は、「ビジネス界の「逸ノ城、大谷」の育て方 飛び級や二刀流認める社会に 」と題する記事を書きました。
(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 僅か五場所で新入幕を果たした逸ノ城の活躍で、久しぶりに大相撲に興奮しました。
 逸ノ城の他にも、プロ野球の大谷翔平選手のような天才は、計画的に育成出来るものではなさそうですが、ビジネスや学問の世界等、他の分野でも彼らのような「規格外」の逸材の活躍をより多く見たいものです。
 天才に最大限に活躍して貰うために、記事では以下の3つの提案をしています。

1.小中高大の全ての段階で「飛び級」を認め、天才に得意分野の能力を最大限に伸ばせる環境を与える

2.企業や官庁は、複数の組織で働く兼業や、学生と社員の両立に対して寛容になる

3.社会全体で、何かに突出して優れている人に、嫉妬して欠点を探すのではなく、大らかに賞賛を送る文化を持つ

 こうした環境が整えば、天才は自らの才能を社会のために使いたくなることでしょう。
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【ダイヤモンドオンライン】ゼロから「1」をつくるベンチャー企業経営術とは?

 今週のダイヤモンド・オンライン「山崎元のマルチスコープ 」では、文句なしに「今年最高のビジネス書」と言っていい、ピーター・ティール氏の『ゼロ・トゥ・ワン』(関美和訳、NHK出版)を紹介しています(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります)。
 この本は、主にスタートアップを題材とした経営の本としても読めるし、どのようなベンチャーにどう投資したらいいのかを考える投資の参考書としても読めます。今回は、経営書の側面について紹介してみました

 ティール氏は、ペイパルとパランティア(どちらも上場して巨額の富をもたらした)の共同創業者にして、フェイスブックの最初の外部投資家であり、スタートアップ企業に投資するファンドの運用者でもあります。
 経済学の世界では、全ての人や企業が儲ける方法を体系化することは難しいですが、それでも、儲かっている企業に共通の原則をまとめることならある程度可能でしょう。ティール氏は、これを、主にスタートアップ企業を対象に高いレベルで達成したように見えます。

 本書から、スタートアップを成功に導くコツをいくつか拾いあげてみると、

・チームで働くことが原則で、かつ実際に仕事をやり遂げるにはそれを少人数にとどめる必要がある
・創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない
・CEOへの報酬が少ない方が上手く行く
・社内の平和こそ、生き残りに必要なものだ
・いちばんよくある失敗の原因は、ダメなプロダクトではなく下手な営業である

 など、スタートアップの原則とも言うべき考え方がいくつも出てきますが、最も特徴的なのは、「競争」を徹底的に嫌うことです。ティール氏は「競争は資本主義の対極にある」とまで言い切っています。
 本書においては、競争に巻き込まれることのデメリットを強く意識して、これを忌避し、スタートアップ企業は、小さくても独占的な地位を築くことが出来るマーケットをターゲットとすべきだと強調しています。

 こうしたスタートアップの経営方法は、スタートアップではない大企業の一プロジェクトのマネジメントにも応用可能でしょう。
 社員が安全な大企業の傘の下にいて官僚的に仕事をするのではなく、自分の持ち場をベンチャー企業のように考えて、仕事に取り組んで欲しいと考えている経営者は少なくないはずです。

 記事では、「ビジネスパーソンには、一冊で二度以上美味しいはずだ。読書の秋に真っ先に読むべき一冊だ」(記事から引用)と、まとめています。
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