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これから面接に臨む学生のために

 久しぶりにエントリーを書く。しばらくブログのエントリーを書かなかった理由は、獨協大学の授業の準備に手を取られていたことと、最近始めたTwitter(アカウントはyamagen_jp)の方がブログよりも何となく居心地がいいことが理由だ。

 そのTwitterで、大学生の就職事情が厳しいことについて同情的なツイートを書いたら、ある方から「自分がどうありたいのか、とことん本気かどうか? あがいているか? 」というツイートが返ってきた。私は、これは学生に対するアドバイスあるいは、意見であろうかと解釈して、「自分探しよりも、会社を知ることが大事。自分にではなく、会社・仕事に興味のある人を会社は採る 」と返信した。

 思うに、面接では、自分のあれこれをアピールすることよりも、相手の話を聞くこと、それも有り体に言えば、相手に気分よく話させることの効果の方がずっと大きいような気がする。
 私の得意分野ではないが、恋愛にあっても多分そうなのではなかろうか。「ボクはこんなに凄いのだ!」と自慢するよりも、身の上話を真剣(風)に聞いたり、相手に自慢話をさせるような展開に持ち込んだりする方が遙かに好感を得られやすいような「気がする」。

 さて、受ける側から見た面接の成否は、面接官が、相手に好感を持つかどうかで決まる。人相風体や身体の動きに表れる印象も重要だろうが、会話にあっては、「あなた(=面接官様)の仰っていることを、私はよく理解しました!」という印象を与え続けて、「あなたとあなたの会社に興味と敬意を持っています」という気分を伝えることが、有力な手段になる。
 部活動で活躍した話とか、アルバイトでのエピソードなどは、学生本人にとっては唯一で貴重な経験であっても、面接官にとっては関心の湧かない「みな同じ」に聞こえやすい話だろう。まして、自分が何者であるかについてとことん考えた話など聞きたくもないにちがいない。面接は、体験告白や人生相談の場ではない。
 また、初対面の相手に突然やる気や積極性などをアピールされても鬱陶しいとか、痛々しいと思うだけだろうし、アピールに変な意外性があると(人間は「意外性」を警戒する生き物だ)「使いにくい部下(かも知れない)」だと思うかも知れないし、そう思われると多分それだけで致命傷だ。
 学校名を伏せて面接を行っても、高偏差値の大学の学生が採用されやすい事実は、おそらく言葉のやりとりの的確さにある。そして、その背景に、頭の良し悪し(この場合、主に理解力と論理性)や国語力の違いがあるのではないだろうか。
 採用する側から見ると、どちらかといえば「頭がいい」部下を採りたいだろうが、より直裁には「使いやすい部下」、「役に立つ部下」を採りたいと思っているはずだ。この感情に素速く合わせることができるのが真に頭のいいキャンディデート(候補者)ということになるだろう。

 あまり細かなテクニックを言っても気になるだけかも知れないが、面接では、先ず、「相手の言語」に素速く且つ最大限合わせることに注力すべきだ。
 面接官が使う言葉のスピードや響き、語彙の傾向などを把握して、なるべくこれに合わせようとするだけでも印象が違う。
 これは、一般的なビジネスにもいえることで、たとえば相手が使う外来語の頻度やレベルなどを素速く把握して、相手のボキャブラリー・セットに合わせて話すと効果的だ(たとえば、相手が外国語に興味を持っていないのに、原語の発音風のカタカナ語を会話に混ぜると、「有能すぎるバカ!」だと思われて上手く行かない)。
 そして、最初の二、三分で面接官が得た印象がその後の話によって大きく変わることは稀だから、最初に集中しよう。
 面接官の質問の意味を正確に聞き取って、これに答えることが大切なのはいうまでもないが、面接官にも話をさせるように仕向けるといい。聞き役ばかりを続けているのは、結構疲れるものだから、自分も少しなら話をしたいと思っている面接官は少なくないはずだし、相手に対する興味や敬意を表すには質問が効果的な場合がしばしばある(勿論、次から次へと質問するのは「やり過ぎ」だ)。
 面接官が気持ちよく話すことのできる話題に持ち込むことができればラッキーだが、やりとりのテンポが良ければ、無理をする必要はない。
 最近の就活事情は詳しく知らないが、訪問先の会社については、ホームページで分かる程度の予備知識で十分だと思う。知らないと誠意を疑われるような常識的なことは知らないとまずいが、細かな業務内容や制度については知らなくてもいいだろう。新卒採用の場合、会社側は「素材」を採るという意識のはずであり、細かな知識は求めていないはずだ。
 ほとんどの場合、相手が欲しがるのは「(自分の言うことをよく分かる)感じのいい部下」だ。「僕は感じのいい部下になりそうだから、面接官はきっと気に入るだろう」と自己暗示をかけて、「やっぱりそうだ!」という気分で相手の目を見て、相手のテンポに合わせて話を始めよう。
 面接の時間はあっという間に過ぎる。

 私は新卒の面接をそうたくさんやったわけではないが、質問のパターンをほぼ決めていた。
(1)学生時代は何を専門に勉強されたのですか?内容を分かりやすく説明して下さい。
(2)当社を志望された理由は何ですか? 他社と比較して当社のことをどう思いますか。
(3)もし当社に入社されたら、どんなことがしたいですか?
基本的な質問内容はこの三つだけだ。

 質問(1)に的確に答えられるかどうかで、採否に必要な情報の8割は分かる。自分が勉強した内容を、分かりやすい言葉で大人に説明できるのはかなり頭のいい学生であり、この意味で頭のいい学生は、問題達成に対する意欲が高いので、有能な社員になり得る。相手が学生といえども、クイズを出題して頭の良し悪しを探る、というのは相手に対して失礼というものだろう。クイズなど出さなくても、話を聞けばビジネスに使う種類の頭の良し悪しは十分分かる。
 質問(2)は、学生の志望動向に関する情報収集(内定を出したら、採用できるだろうか?、どこと競合しているのだろうか?)と、「社会性」のチェックを兼ねている。第二志望だろうが、第三志望だろうが、(嘘が交じっても)破綻のない理由を的確に言うことができるかどうか、を確かめている。
 質問3は、敢えていえば「意欲」のチェック項目だが、学生は、まだ社員として働いたことがないし、会社の中についてよく知らないはずだから、感心するような答えが返ってくることを期待してはいない。こうした無理な質問にどう答えるかで、学生の意欲や工夫の上手下手がある程度分かる。ここで、話を上手にできる学生は、意欲があるのと共に、かなりコミュニケーション能力が高いといえる。
 基本的には、上記の三つの質問のバリエーションでやり取りして、学生を判断していた。

 ちなみに、転職の面接の場合には、「(主に「今の」だが、過去のも重要)会社を辞める理由は何ですか?」が四つ目の(重要な)質問になる。

 ●

 報道されている通り、学生の就職環境は厳しい。現在は、現時点での4年生の学年については、競争力のある学生に対してと一部の業界で内定が出終わって、第二ラウンド、あるいは第三ラウンドに入り始めたところのようだ。
 大学で授業が終わると、学生が一人二人やって来るが、たいていは、就職に関する相談だ。この会社、或いは、この業界はどうか、という質問もあれば、こういう会社には面接でどう話したらいいかという質問もあるし、中には、まだ一年生なのに、何を勉強したら就職に有利かを(たとえば、FPの資格を取ると就職の役に立つか、等)事細かに質問しに来た学生もいた。「就職しなければならない」という圧迫感は、相当のもののようだ。

 以上のような事情なので、就職の面接に役立つと思われるポイントがあれば、コメント欄にアドバイスを頂けると幸いです。役立ちそうだと思ったコメントについては、随時、学生に伝えることにします。
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インデックス投資の本を書くことになりました

 人気の投資ブログ「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」で既に発表されていますが、同ブログの管理人である筆名・水瀬ケンイチさんと私の共著で、インデックス投資の本を書くことになりました。

 出版社は追って発表しますが、インデックス投資の本でもあり、なるべく低価格で、手に馴染みやすいコンパクトな装丁の本にしたいと思っています。
 出版時期も未定ですが、私は、今年度の前半は獨協大学の授業の準備に時間を取られるので、夏休みに仕上げに掛かって、秋に出版というくらいのスケジュールを想定しています。本のセールスのためには、世界の株価が順調であればいいなあ、と思っています。

 水瀬さんは、会社に勤める傍ら、ご自身がインデックス投資家で、内外の株式インデックスに投資されて、着々と資産を形成されています(←エライ!)。私は、「インデックス投資ナイト」でお会いしたり、梅屋敷にお邪魔したりして何度かお会いしていますが、顔写真を公開しないのがもったいない好男子です。
 ブログからお分かり頂けると思いますが、水瀬さんは、投資に対して、正確な知識と共に深い愛情をお持ちで、これが文章にバランス良く表れています。今回は、徹底的に投資家の立場から本を作りたかったので、実際の投資家の視点を本に注入すべく、共著での執筆をお願いしました。水瀬さんなら、単なる自慢話や逆に偏見に固まった恨み節のようなものではない、読者のための投資のガイドブックを書いて下さると確信しています。

 本の内容は構成も含めてまだまだ流動的ですが、たとえば、次のようなものを考えています。
(水瀬さんと、編集者も含めて、一度やり取りしていますが、まだ確定的なものではなく、現在の私の頭の中にある構成のイメージ、という程度のものです)

=================================
<「インデックス投資完全ガイドブック」(仮称)水瀬さん・山崎共著の仮構成案>

● タイトル未定(目下鋭意検討中)

★ 「前書き」:(山崎)
・日本の資産運用の現状とインデックス投資。なぜインデックス投資が一番いいか。
・現実の投資家が投資の本を書く意議。投資家の視点から書くことの宣言。
・本の構成の概要説明。どのような人に、どのように使って欲しいか。

★ コラム:「インデックス投資ナイトの印象」
(A)インデックス投資ナイトに出演してみた印象(山崎)
(B)インデックス投資ナイトを見物してみた印象(水瀬さん)

★ 第一章: 「人はどのようにしてインデックス投資家になるか」(水瀬さん)
・水瀬ケンイチさんの過去の投資遍歴。
・水瀬さんがインデックス投資家になった理由。
・水瀬式インデックス投資の方法(日常生活とインデックス投資)。
・インデックス投資家になって、何が変わったか。
・水瀬さんのインデックス投資、現在の課題。
・こんな人にはこんなインデックス投資を勧めたい!

★ コラム「インデックス投資家列伝 1」(水瀬さん)
     ・インデックス投資家を紹介したいと思います。
     「インデックス投資家列伝 2」(水瀬さん)
     ・同

★ 第二章: 「インデックス投資の理論と実務」
・インデックス投資をお勧めする理由は「市場の効率性」ではない。
・ポートフォリオ理論とインデックス投資の関係。
・株価指数の優劣評価の考え方。
・実務としてのインデックス運用のポイント。
・インデックス運用のパフォーマンス評価の方法(通常の投信と、ETFと)。
・インデックス運用、今後の方向性。
・インデックス投資家のためのアセットアロケーションの方法。
・エクセルを使ったアセット・アロケーション。
・期待リターンの決め方と最適化計算の方法。

★ コラム「インデックス運用者A氏に訊く」(山崎)
     ・ファンドマネジャーにインデックス運用のあれこれを訊きます。

★ 第三章: 「インデックス投資、こうやったら大丈夫!」(水瀬さん)
(個人投資家の目線で、インデックス投資のやり方を完全ガイド)
・インデックス投資を始めるために必要なものは?
・金融機関の選び方。
・口座開設の方法と手順。
・積み立て投資のやり方。
・インデックス投資商品選び方。
・インデックス投資の情報収集。
・リバランスの方法。
・インデックス投資のチェック&レビューの方法

・(対談)インデックス投資の問題解決(水瀬さん、山崎)
     ・インデックス投資の方法論上の問題点を解決。

★ コラム「インデックス投資家列伝 3」(水瀬さん)

★ 第四章: インデックス投資商品ショッピング・ガイド(水瀬さん、山崎)
・インデックス投資商品の評価基準を設定する。
・具体的なインデックス投資商品を評価する。
・リテール投信
・国内ETF
・海外ETF
・カテゴリー別、インデックス投資商品どれを買えばいいか。
・インデックス投資商品、どれを買ってはいけないか。

★ コラム「インデックス投資家列伝 4」(水瀬さん)
     「インデックス投資家列伝 5」(同)
  <第四章の中に織り込む>

★ 「後書き」(水瀬さん)
・この本の成り立ち(執筆経緯など)。
・インデックス投資の今後を展望する。
・インデックス投資に託す夢。
・読者への感謝、など。

以上
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 繰り返しになりますが、この本の内容は構成も含めてまだまだ流動的です。潜在的読者のからのご希望などあれば、これから反映することができるので、当ブログのコメント欄でも、メールででも(yamazaki_hajime@mail.goo.ne.jp)、あるいは梅屋敷の若旦那のブログ「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」(http://randomwalker.blog19.fc2.com/)にでもお寄せ下さい。
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