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「社酒」の決定と会社の紹介

昨日27日の土曜日、神保町に借りたオフィスでひとしきり仕事をして、その後、共同経営者の服部哲也氏と酒盛りをしました。写真は、今、我々のオフィスにあるシングル・モルト・ウィスキーです。今のところ、我が社唯一の福利厚生です。昨日は、6本のうち、ラフロイグ(右から2本目)を除く5本が賞味の対象で、特に目玉は一番左の、ポート・エレンの開栓でした。これは、銀座の信濃屋という酒屋で私が見つけて買ってきたものです。

このポート・エレンは1979-2004の15年物で、ボトラーが樽から詰めたものですが、加水していないので、60度と度数が高く、オーク樽で普通に熟成したものなので、ポート・エレンそのものの味がストレートに出ているのではないかと期待して買って来ました。結果は、期待通りで、何といっても香りが素晴らしく、味も開けたてながらしっかりしたインパクトと深みがあり、数日後が楽しみです(この道の師匠のM氏によると開栓したてよりも、数日後の方がピート香が出るとともに、味が「開く」のでより美味しくなることが多いそうです)。

もともと、私も服部さんもポート・エレンが好きなので、「ポート・エレン」を”社酒”にしようと決定しました。「社歌」とか「社訓」ではなく、社のお酒なので、社酒です。何かいいことがあったら、ポート・エレンを飲もう!という程度の決定ですが、いつでも飲めるように、在庫を切らさないようにしなければなりません。

ところで、我々の会社ですが、社名を「株式会社マイベンチマーク」といい、主に投資教育関係のコンテンツ制作やコンサルティングをやっている小さな会社で、設立1年が経過したところです。投資の世界では、運用成績を測る比較対象をベンチマークと称しますが、お金の事情は人それぞれですから、一人一人の人に自分の投資の基準があってもいいのではないか、という意味で名付けた社名です。

たとえば、FP協会のFP資格をお持ちの方は、FP協会のホームページにある「Myページ」というコーナーに、資産運用実戦知識と毎月の確認テストがあるので、見てみて下さい。我が社が納入しているコンテンツです。この確認テストは、FPの資格更新のポイント稼ぎに使えます(複数科目の出題をしているので、これだけでも資格更新が出来ます)。ポイントが足りなくて焦っておられるFPの方がいらしたら、ネットで簡単に受験できるので、覚えて置いて下さい。

この他にも、テキストを作ったり、講演・セミナーに協力したり、問題作成・採点など、投資教育に関わる仕事をしています。

服部さんも私も、今のところ、この会社に対して、フルタイムの関わりではありませんが、御陰様で、まあまあそれなりに順調です(もちろん黒字で法人税を払っています。税理士には「もったいない」と言われましたが・・)。今年は、1,2名人を増やして、仕事を増やそうかな、とも思っています。
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「サタデーずばっと!」1月28日

B級評論家へのライブドア特需は続き、1月28日早朝のTBS「サタデーずばっと!」に出演してきました。

司会は、かの、みのもんた氏です。

私の出演コーナーはあっという間でしたが、あの、みのもんた式の「シール剥がし方式」のプレゼンは優れていますね。他局は真似を避けるためか、フリップにぺたぺたと駒を貼る「福笑い方式」とでもいうべき、プレゼン方式を多用しますが、比較の点では、「シール剥がし方式」の方が優れているように思えます。

理由は、
(1)シールで隠れている方が隠れているものを見たいという気持ちを喚起する、
(2)駒がふらふら動く「福笑い方式」よりも、内容が印刷されている「シール剥がし方式」の方が結論が動かないように見え、説得力がある、
の二点です。

また、先般出演した「おもいッきりテレビ」のスタッフによると、みのもんた氏の場合、あのフリップが台本の役割を果たしており、彼は、フリップを一通り見ると内容が頭に入るのだそうです。だから、朝と昼の両方に生番組を帯で持てるのだ、とも聞きました。

なるほど、あのフリップは、内容をコントロールしやすい。3時間の生番組「朝ずばっ!」も、みのさんの打ち合わせは1時間で済むのだそうです。そういえば「おもいッきりテレビ」も別に担当ディレクターと話はしていますが、内容と流れの打ち合わせは、フリップをさーっと流して15分くらいでした。

日本では真似しにくいとしても、他国のキャスター連中が真似しないのは不思議ですね。カメラ目線でべらべらしゃべるばかりが能ではないと思いますが。
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(練習問題)フジテレビの選択肢

ライブドア事件に関して、現在、フジテレビの動向が注目されています。同社はライブドアの12.75%の株主で(投資額は440億円)現在の(139円;27日終値)株価でざっと250億円の含み損となっています。マスコミには、会社としてのライブドア或いは堀江容疑者に損害賠償請求をするとか、或いは逆に、ライブドアを買収するのではないか、などといった、憶測記事が出回っています。

考えてみると、この問題は、MBAや社会人の思考トレーニングとしては格好の材料だと思います。取りあえず、以下のような選択肢を設定してみます。(読者も解答を考えてみて下さい)

① ライブドアの株を市場で売却し、損失を確定して、損害賠償請求をする。
② 何もしない。
③ ライブドアの持ち株は維持したまま経営支援を表明する(たとえば役員を送っ  たり、事業提携を強化したりする)
④ ライブドアの株式の過半数を買って子会社化する

いかがでしょうか?

これは現実の問題であり、回答のための情報が必ずしも十分ではありませんし(しかし、分からないことがある、という前提で問題を解くことも重要です)、スッキリと解答が出る問題ではないかも知れません。

フジテレビの経営者の立場で、それぞれの選択肢のプラス面、マイナス面を並べてみます。
① 
(+)損失拡大のリスクが無くなる。
   ライブドアと縁が切れてサッパリする。
   ある種の評判リスク(たとえばライブドアがヤクザと絡んでいるとか)を負わない
(-)売りと共に株価が下がるので損失が大きくなるかも知れない。
   したがって、投資家(個人株主22万人!)に恨まれる
   損失額を確定するので経営責任を問われやすい
   後からライブドア株が売値よりも高くなると責任を問われる

(+)安値を叩き売ったということになりにくい
   消極的な意味でだが、投資家に恨まれない
   「余計なことをした」と言われる可能性が小さい
(-)株のリスクはそのまま
   いかにも無為無策(に見える)

(+)フジが支援表明すると株価は上がるだろう
   ライブドアの経営が安定すると同社の傘下の事業を高く売りやすい
   (「売るしかない」という状況では買い叩かれる)
   投資家に歓迎される
(-)支援表明したらしばらく株は売れないのでリスクが残る
   (支援のニュースで株価を上げて売り抜けるとフジが罪に問われるかも)
   ライブドアにもっと拙い問題(ヤクザ絡み等)が出てきたときの評判リスク
   ライブドアに少しでも経営関与することの責任が生じる

(+)安く買えると大儲けできるかも
   ネットビジネスに進出したければライブドアは一揃い事業を持っている
   売れる事業(L証券、弥生など)を売却すると儲かる(かも)
   フジの支援の形がより明確なので株価の上げ幅が大きい
   成功するとかなり格好いい!(他局に差を付けることができる)
(-)追加の資金を出すのでますます責任が大きい
   ライブドア・グループのマネジメントがフジに出来るだろうか? 
   もちろん評判リスクも大きく負う

大雑把な列挙ですが、こんな感じです。

それで、私の答えですが、ほぼ③です。但し、ライブドアをそのまま経営するとしても、個々の事業を売却するとしても、フジテレビには荷が重い。まったくの想像に過ぎませんが、たとえば、ソフトバンク、ヤフー、SBIといったパートナー(多少はお金を出して貰って)に参加して貰って、経営とグループ再構築を主導して貰うというのはどうでしょうか。一応前向きだし、損失額の確定は先送りできるし(賠償の権利はそのまま留保できるでしょう)、フジの日枝さんとソフトバンク孫さん、SBIの北尾さんの関係などを考えると、不可能ではないような気もします。この場合、楽天は、TBSが片付いていないので、参加が難しいかも知れません。尚、堀江容疑者の持ち株は、フジ→会社としてのライブドア→堀江容疑者、の損害賠償請求か、株主代表訴訟で、どのみち会社としてのライブドアが没収するような形になるでしょう。

案外、特にライブドアのライバル会社にとっては「絶好球」なのかも知れないし、それとも、ライブドアの闇はもっと深くて、こんなことは出来ない、ということなのかも知れませんし、さて、どうなるのでしょうか。今度は、現実に、注目しましょう。
     


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「とくダネ!」出演が続いた

24日に続き、25日、26日もフジテレビの朝8時、「とくダネ!」への出演が続きました。何れも、ニュースのコーナーのゲスト解説者の立場です。全国ネットで視聴率の高い番組にこんなに続けて出演できるとは思っていなかったので、これはライブドア事件のうれしい副産物です。

「とくダネ!」のように、主婦層も含むかなり広い範囲の視聴者がターゲットの情報番組の場合、自分のこだわりを反映した深い解説や議論、難しい話や、過激な意見は言えませんが、非常に多くの人に、何らかの自分の付加価値がある情報を届けることが出来る機会なので、貴重だと私は思っています。もちろん、「山崎元商店」の広報効果もあるので、その面でも力が入ります(もっとも、肩に力が入ったコメントは今一つになりがちなのですが)。

「とくダネ!」には明日の金曜日にもコメンテーター役で出演することになっているので、何と4日連続ということになります。

朝起きは相変わらず辛いのですが、これだけ続くと、早起きしても一日を過ごせるのだな、という自信が少しついてきました。ここで、朝型生活への転換を図りたいところですが、次の問題は、お酒を飲む機会とどのように折り合いを付けるか、ということになりそうです。私の場合、どうしても、夜の方が気分が好調なので、飲みに行くと、テレビで言う「押した」(時間がのびた)状態になりがちです。この傾向と、翌日の起床がたぶん、生活改造のポイントなのでしょう。
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ライブドア事件で最も重要なこと

以下は、自分用のメモのような下書きです。

今回のライブドア事件で最も重要なポイントは、上場企業をどのようにコントロールするかという仕組みの問題だろう。

経営者も現在の株主も、とりあえず一時でも株価を上げることが出来れば、立場も安泰だし、儲けることも出来る、という現実の下では、株価を上げたいという誘惑が働く。加えて、株価が企業実態から正当化できるレベルよりも高くなってしまった場合に、経営者は高い株価が正当であるかのように振る舞うことで、過剰な投資や無理なM&Aなどが起こり、果ては、今回のように会計粉飾に至ることもある。

こうした不適切な経営へのインセンティブは、特に、経営陣が同時に大株主であったり、ストックオプションを持っていたりする場合には、さらに増大する可能性がある。

つまり、この問題は、これまでよく取り上げられたコーポレートガバナンスの問題のように、経営者と株主の利害を一致させることでは解決できないので、別の工夫が必要だ。

この問題の解決のためには、①情報の透明性を確保することと、②経営行動を現在の株主だけでなく、将来の株主になるかも知れない市場参加者一般の立場からもフェアにチェックすることが必要であり、かつ③経営者の逸脱的行動に対してブレーキが掛かるような負のインセンティブ(つまり罰則)の再構築が必要だ。

完璧な対策、というものは思いつかないが、当面可能なものとしては、(A)取締役会の改善(例;上場企業は独立な社外取締役が過半数必要とする)、(B)監査法人の契約方法の変更(例;上場会社の監査法人は2年に一度交替するものとする。また、東証は個別の会社に対する契約監査法人を指定することが出来るものとする)、(C)有価証券取引法の罰則を強化する(風説の流布での最大懲役5年は軽すぎる)、といった対策が必要ではないか。

もちろん、今回、有効に機能していたとは言い難い、証券取引等監視委員会の強化や、審査機能の分離を含む東証の再構築も必要だろう。

株式の上場が容易になったこともあり、株式の形での富の獲得が強いインセンティブとして社会の方々で働くようになった。この、言わば、エンジンの強化に対して、十分に(或いは、少しでも)見合った、ブレーキやハンドルの機能を設計することが必要だし、理屈上は、エージェンシーコストの節約を配分することで、制度が改善できるはずだ。
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とくダネ!(1/24)

23日には出演する機会がありませんでしたが、同日夜の堀江社長以下幹部4人の逮捕を受けて、24日の朝8時からのフジテレビ「とくダネ!」の冒頭コーナーのゲストで出演しました。通常は30分くらいのコーナーなのですが、今日は1時間に拡大されました。

私が話す時間はそう長くありませんでしたが、ライブドア社の今後や株式の問題などについて話しました。

キャスターの小倉智昭さんは、テレビで見るといきなり話を振ってくるようなちょっと怖い印象があったのですが、話の筋立てが明快ですし、話を振るタイミングが分かりやすく、私としては話がしやすい(私の話が上手いということではないのですが)ので、助かっています。

小泉首相が、先の選挙で自民党幹部が堀江氏を応援した件について、個人の活動であり、党とは関係ない、というような国会答弁をしたのですが、これに対して、私は、「自分の非を認めない点が、小泉さんと堀江さんは似ている」という趣旨のコメントをしたので、もしかすると、どこかから(自民党から?)文句が出たかも知れません。

「とくダネ!」は、現時点では、今週の金曜日に、コメンテーター側で出演する予定になっています(もちろん、各種の事情によって変更もあり得ますが)。
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ライブドア、週末は進展無し

ライブドア事件は、週末に進展が無かったので、月曜日朝のフジテレビ「とくダネ!」のゲスト出演はキャンセルになりました。米国産牛肉か何か、別の事件がトップになるようです。早起きの覚悟を決めていたのですが、不必要になりました。まあ、相手がニュースですから、こうした事情変更はやむを得ません。

事件は、今週、関係者に任意の事情聴取、早ければ今週末くらいに関係者の逮捕、というくらいの進展でしょうか。週末の新聞を読むと、思いの外、内容の解明が早く進んでいる印象です。もちろん、今の時点で、誰それが悪い!、と確かなことは言えないのですが、地検があれだけ大がかりに捜索するのだから、逮捕・起訴できる程度のネタは掴んでいると見る常識的判断からの推定です。

ライブドア/堀江社長側は、たぶん、投資事業組合はライブドアとは独立に運営されており、たまたま利益が環流したが、形式的には違法でもないし、開示も適当だったと強弁する積もりなのでしょうし、加えて、これらに問題があったとしても、堀江社長は知らなかった、というストーリーに賭けるつもりなのでしょう。

しかし、自己資本の資本取引で得たキャッシュを売り上げ・利益にする手口とその情報開示のあり方には、複数の問題があり、また、堀江社長が一連の仕組みについて知らなかったということはないでしょうから、「クロ」は、割合簡単に立証されるだろうと予想します。

もともと、「稼ぐが勝ち」といっていた人物が、実は本業で稼いではいなかったのですから、潔く負けを認めるべきでしょう。これ以上死人をださないためにも、早期に収拾する方がいいと私は思っています。
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今週のテレビ出演と、来週の出演予定

今週は、結局、計6回テレビに出演しました。

・フジテレビ「とくダネ!」、ゲストで2回、コメンテーターで1回の計三回(何れも生)、
・テレビ朝日「スーパーJチャンネル」・・・VTRインタビュー、
・テレビ朝日「報道ステーション」・・・VTRインタビュー、
・日本テレビ「ニュースプラス1」・・・爆論!のコーナーに参加(VTR収録)、
です。

金曜の「とくダネ!」はコメンテーター参加でしたが、それ以外は、何れもライブドア事件の関連でした。

来週は、今のところ、金曜日のフジテレビ「とくダネ!」にコメンテーターでの出演予定が確定、月曜日の同番組に、ライブドア問題の解説で出演予定(未確定)、という状況です。問題の性質上、何か進展があると(新事実の露見とか、堀江社長逮捕とか、株価の大変動とか)呼ばれる、という形で、別の局、別の番組にも出る可能性があります。

テレビに出るのが嬉しい! というようなニュースではありませんが、重要な問題なので、正確に解説したいと思っています。

特に、これを、アメリカ式グロ-バルスタンダードと日本式の二分法で片付けようとするような俗論に嵌らないように気をつけたいと思います。

基本的に、市場やビジネスの問題には、基本的な部分で、米国式、日本式があるのではなく、「嘘つきと、泥棒がいけない」という基本が厳然と存在するというだけのことなのではないでしょうか。特に、日テレの討論をやっていてそう思いました。

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六本木ヒルズのギロチン・ドア

痛ましい事故があった六本木ヒルズ(オフィス棟)の「地獄の回転ドア」は、長らくベニヤ板で閉鎖されていましたが、最近、左右に開閉する自動ドアに入れ替わって、やっとオープンされました。先日のライブドア社家宅捜索の際に東京地検の面々がマスコミを従えて通ったのもこのドアです。

写真は、このドアを、昼休み時のちょっと前くらいの時間に内側から撮ったものです。薄い扉が左右に開閉するだけのシンプルな、はっきり言えば、ビルの外観に対して何とも貧乏くさい殺風景なドアなのですが、ドアをよく見ると、ギロチンの刃を思わせるような鋭角的なデザインが施されています。これが、左右に開いたり閉じたりする様子を眺めると、あまり感じの良いものではありません。

現在、新聞などで報道されているように、ライブドア社(六本木ヒルズ・オフィス棟の38階にあります)の粉飾決算が事実だとすると(起訴できるくらいの見込みがなければ地検は入らなかったでしょうが)、堀江社長が逮捕されるのは、まず間違いないと思いますが、彼は、手錠をかけられてこの扉をくぐることになるのでしょうか。
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ライブドアショックの翌日

前場、日経平均は、310円高。マーケット全体に対するショックは、取り敢えず収まったようです。朝のテレビ(とくダネ!)では、「ライブドア以外の銘柄の業績には関係ないのだから、むしろ買いチャンスです」と証券会社のオッサン(まあ、その通りなのだけど)的なことを言って、自分では少し気が滅入っていたのですが、理屈通りリバウンドしてくれて良かった(市場の反応に「良かった」と感じるのも情けないが)。

それにしても、テレビでも話しましたが、450万件が処理の限界で、300万件に乗っていたのに、対策を取っていなかった東証の責任は重いのではないでしょうか。それなのに、東証の西室社長は「ライブドアへの強制捜査が原因であることは明らか」と責任はないと言いたげな態度でした。彼は東芝出身の民間人トップですが、もう東証の官僚的体質に染まったようです。

ところで、ライブドアの強制捜査と株価下落がショックとして波及するメカニズムの中で同社株の担保掛け目をゼロにしたマネックス・ビーンズ証券の措置の影響は大きかった。「担保としての価値を認められない」という、会社側の信用リスク管理の感覚は理解できるとしても、顧客にとっては、二重に「想定外」の事態となったわけですから、これはキツかった。顧客の側の予測可能性の問題としてどうだったのか、些か顧客に厳しすぎなかったか、ということは考えさせられました(はっきり「悪い」とまでは言えませんが)。

そういえば、マネックス・ビーンズ・ホールディング社長の松本大さんと本を出していた、眞鍋かをりさんが、「とくダネ!」のコメンテーターでこの日出演していました。何だか、マネックスの人が居るような錯覚を覚えました。

この番組で報道された内容については、「楽天証券の投資評価 A(最高)→E(最低)へ」という字が画面に出たので、これにも触れておきます。本当は出して欲しくなかったのですが、フジテレビが調べてきた事実なので、私としては敢えて削除は求めませんでした。(解説者が報道をねじ曲げてはいけませんから)

これは、楽天証券のアナリストによるものですが、事件の以前に投資評価「A」であった、と出たのは、会社としては正直なところ、何とも格好が悪かった。しかし、アナリストを弁護する訳ではありませんが、財務を分析し、会社訪問を重ねても、粉飾を見抜くのは難しい。会社側に本気でごまかされると、殆どの場合、どうにもなりません。

レポートを書いたアナリストは、外資系証券出身の一流アナリストで、かつて日経金融のアナリストランキングでトップだったこともある人です。私の知る限り、知識アイデア共に豊富ですし、人柄も誠実で、何よりもこの仕事に対して熱心な方です。それでも、ライブドアの粉飾は分からなかった、というのが現実です。

投資家としては、専門家(アナリスト、ストラテジストなど)の判断は、あてにならないものだという現実を前提として強く意識すべきだと思います。もっとも、これは、悪いことばかりではなくて、株式市場では、情報の上でプロとアマの条件は、ほぼ同等なのだということでもあります。これはこれで、象徴的、教育的なケースなので、敢えて書いておきます。
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ライブドア特需2・TV出演予定

1月19日の朝のフジテレビ「とくダネ!」に冒頭の約30分、ライブドア関連で出演することになりました。なお、「とくダネ!」には、翌日20日の金曜日にはコメンテーターとして、通しで(8時~10時)出演します。今週は三回目の出演ということになります。(上手く行けば、これをきっかけに生活サイクルを朝型に変えられるかも知れません!)

1月20日17:20分くらいから放映の日本テレビの「ニュースプラス1」の金曜特集「爆論!言わせてもらうぞ!」にも出演することになりました。伊藤達也衆議院議員、宮崎哲弥さん、荻原博子さん、中村慶一郎さん、河上和雄さん、といったメンバーと討論します。この人数で十分な話ができるのかちょっと不安ですが、面白そうなので、参加することにしました。
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ライブドア特需!

昨日は、朝のフジテレビ「とくダネ!」にライブドア事件の解説で出演、その後、テレ朝の「スーパーJチャンネル」、「報道ステーション」のビデオインタビューを撮りました。一日に3本もテレビに出るというのは初めてです。B級評論家の商売としては、ライブドア特需、です。

昨日朝時点では、情報が不足していて、事件の構図が正確に分からなかったのですが、今日になって、地検の捜査容疑絡みの部分は、大体明らかになったように思います。今回の事件は、ネタ元が官庁ではないので、メディア毎の取材の良し悪しの差が大きく出ている印象です。ここまでの所、オンライン版の記事も含めて、読売が的確な情報を早く掴んでいる印象です。投資ファンドを通じた利益の環流、粉飾決算の指示の事実、などを早いタイミングで、関係者に取材した上で書いています。私としても大いに助かりました。

これに対して、朝日は感覚的に半日分以上遅れている感じです。今回の家宅捜索は、もともと、ライブドアの内部者の通報があって可能になったのでしょうが、ネタ元そのものないしこれに近いところを掴まえることが出来たどうかで、大きな差が付いている感じです。近年、記者の不祥事が多い朝日新聞ですが、取材力自体が落ちているのではないかと少し心配です。

事件の今後ですが、粉飾決算の事実があり、それで利益を取っていることが裏付けられれば(ほぼそうなりそうですが)、実際の関与の軽重に関わりなく、堀江氏がライブドアの社長を続けることは無理だろうと私は思います。一昨日のガサ入れの成果に加えて、ライブドアの将来性が大きく失われたことで、捜査に協力する元社員や現社員が今後出てくるでしょうから、容疑もライブドア本体の問題も含めて拡大する公算が大きいと思います。

今後の同社の経営としては、生き残ることが出来る事業と、それ以外のものを見分けて、踏みとどまることが出来る状態を早く作り、現経営陣が手を引き、別の主体に委ねることが適切であるように思います。

時価総額にこだわりすぎて、「株価を作る」誘惑を堪えきれなかったことが堀江氏の弱点であり、以前にこのブログに書いた、「株価が高過ぎる時の経営者行動」が、違法行為にまでつながったケースです。もちろん、経済学的には、「大きなエージェンシーコストが発生した」ということです。事件については、まだ新しい事実が出てくる可能性がありますが、経済的な問題は、この点に尽きていると思います。

社会的には、投資ソサイエティーがもっと会社や株価を厳しく見るようにならなければダメでしょう。現状では、適切な株価形成を行うより他にこの種の不正とその後のショックを防ぐ本質的な手立てはありません。投資の世界に辛口の情報が少なすぎることが、ライブドアのイケイケどんどんの時価総額拡大につながった側面があります。たとえば、分割株を理論値以上に買い上げることは「バカ!」なのだ、という社会的投資教育が、もっと露骨な軽蔑を通じて行われることが重要でしょう。

何れにしても、2000年に破裂したネットバブルの時と同様、経営思想としての「時価総額経営」の落とし穴が顕在化しました。
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講演

今日は、勤務先の楽天証券の新春講演会で、50分ほど講演した。今年2回目の講演である。会場は、新宿の厚生年金会館で、2千人強入る会場なのだが、一部立ち見が出るような盛況だった。個人投資家の株式投資に対する関心は大変熱い(ご来場の皆様、どうもありがとうございました!)。

講演の一般論としては、聴衆の人と人との間に隙間が無い方が話しやすい。聴衆がまばらに座っているときは、できたら固まって座って貰いましょう、ということが書いてある本があるくらいだ。

それで、私の話が上手く行ったかというと反省点が幾つかある。最大の反省点は、例によって、話の予定を詰め込みすぎて話の最後が忙しくなったことだ。この原因は、大本は、自分の話に対する自信の不足にある。というのは、自信がないから、つい材料をたくさん用意したくなるのであり、時間が余ると嫌だから、話の前半を丁寧にやり過ぎるということなのだ。これは、分かっているのだが、なかなか直らない。


本当は予定時刻の5分前くらいに大体の話を終えて、話を振り返りながらまとめて、余韻を残して去っていく、という案配がいいのだが、なかなかそうはならない。講演の上手下手も、多くは慣れの問題だろうから、そろそろ、時間のコントロールが自在に出来るくらいにならなければいけない。

今年の1月は、私としてはやや講演が多い。今週もあと二件ある。少し工夫を心掛けてみようと思う。



作家や評論家、いわゆる著述業の人は、実際には講演で食べているという方が多いらしい。本を書くか、テレビに出るかで名前を売って、講演で稼ぐ、というのが、こうした職業の典型的な「ビジネスモデル」のようだ。

確かに、10万部以上本が売れるようなベストセラー作家は別として、原稿料を積み上げて稼ぐのは大変だ。テレビの出演料というものも、レギュラー出演者となって個別に交渉するようになればそれなりらしいが、「文化人」がゲストで出ている限りは、たいした金額にはならない。「タレント」の場合は個々にはそれなりの単価となるが、「文化人」(本人が文化的かどうかはともかくとして)の場合はTV各局が大まかに申し合わせている「文化人価格」があるらしい。

これらに対して、講演料はかなり割が良いことが多いのだが、講演は、時間と場所を拘束されるし、それなりに準備も必要だ。結局、評論家でビジネス的に成功するには、同じネタの講演を回数を重ねて「販売」し、講演の準備の時間コストを削って儲ける、というパターンを目指すのが最もオーソドックスのようだ。かつて、同じネタ(つまり前回の準備の手直し程度でいい)で3,4回講演したことがあるが、あの時は確かに「効率」の良さを実感した。

してみると、もっぱら景気見通しだけを商品にしているエコノミストは、「平成○○年の経済と景気(見通し)」といった基本的に似た内容で、新しく変わった部分だけ資料を差し替えながら講演して歩けばいいので、楽で、効率がいいのではないか、などと他人の芝生が青く見える。

しかし、講演で同じ話を何度もするというのは、話す側は退屈なものだ。1回目よりも、2回目、3回目の方が話がうまく行くことが多いのだが、そういうことを自覚するのが、また自分で情けない。

あれやこれやで、その都度話すテーマを考えなければならないレベルのB級経済評論家は(大物は存在だけで聴衆が満足するのでマンネリでもいいらしい・・)、講演のたびに悩んでいる。

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階級別・景気回復の時間差

さる消費関連業種の社長さんと話していて気がついた。どうやら「階級」によって消費回復には時間差があるのではないか。

昨年の12月には、百貨店・伊勢丹本店の売り上げが史上最高になるなど、景気の回復が消費にも及んでいることを伺わせるニュースがあった。忘年会で街に出て、久しぶりに帰りのタクシーを拾いにくいという経験をされた方も多いだろう。往事をご存知の方は「ああ、バブルの頃のようだ」と思われただろうし、知らない方も、確かに景気は回復したという実感をお持ちになったのではないか。

しかし、昨年の第四四半期、コンビニの既存店売上高は、各社とも対前年比数パーセント悪いのだという。コンビニでは、まだデフレは終わっていない、という感じらしい。確かに、消費者物価がやっとゼロよりプラス(ほぼゼロ)ということは、原油など国際商品市況の影響を受けてプラスになる商品があるのだから、一般消費財はまだデフレから抜け出していないのだろう。

しかし、マクロ的に考えると、企業の収益拡大が個人の所得・雇用環境を改善しているから、消費もプラスなのであり、エコノミストなどの「景気の下支えをすると期待される」という言葉につながっているのではないか。

上記の状況に関して、可能な解釈は、稼ぎ方で見た「階級」によって、個人の景気回復(≒所得拡大)に時間差があるのではないか、ということだ。

階級は、それぞれ主な所得の源泉から見て「給料階級」、「ボーナス階級」、「株式階級」に分かれる。六本木ヒルズでいえば、何れも30歳代前半で、典型的には、IT企業の”働きアリ”社員が年収500万円、外資系証券のセールスがボーナス中心に5千万円、成功した起業家ないしその初期からの取り巻きが年収(フロー所得ではないが、換算すると)5億円超、といった一桁ずつのちがいがある。これに、あえて付け加えると(六本木ヒルズでは見かけないが)ニートの場合は「お小遣い階級」か。

株式階級は、昨年の夏から秋にかけて既に資産を何割も増やしていたし、IPOを通じてこの階級に仲間入りした人もいよう。彼らの景気がいち早く回復していたことは疑うべくもない。

続いて、成果主義の下のボーナス階級は一年の稼ぎが見えてくる昨年の暮れぐらいにはボーナスを貰っている(国内系企業の多く)か否か(外資は1-2月が多い)に関わらず、所得の拡大に自信を持った。

しかるに、給料階級だが、正社員と固定給に懲りた企業側が慎重になっていることもあり、ニッポンの稼ぎ頭トヨタがやっとこの春から賃上げを認めようかという情勢だ。日用品の消費のようなものは、生活給である月例給が伸びないと、消費増加につながりにくい。加えて、この階級は、年金保険料の値上げをはじめとする社会保障費のアップ、遅かれ早かれやってくる消費税率上昇、といったことを考えると、将来に楽観できない。スズメの涙のボーナスがちょっと回復したからといって、大らかに消費など出来ないのだ。まして、「お小遣い階級」には、景気回復の恩恵が回ってくるのは、人手不足になってバイト代が上がるようになってからだ。これらの人々を相手にする消費業種がまだ好況を感じることが出来ないのは無理もない。

以上、良い悪いをいう話ではないが、「階級」によって、景気回復に時間差があることは覚えておこう。今後にも通用する一般的なパターンになる可能性もある。
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ロスバードの自由論

今年の少しまともな読書第一弾としてマリー・ロスバードの「自由の倫理学」(森村進、森村たまき、鳥澤円、訳)を読んだ。彼は(ファーストネームの綴りはMurrayで、男性です。念のため)、リバタリアン(国家の介入に反対する自由主義者のこと)の中でも、徹底的な議論を展開した人として知られている(私は、森村進編著「リバタリアニズム読本」というガイドブックで知ったのだが)。

本文で300ページを超える大著を一読しただけで、専門外の内容のものでもあり、適切に要約することは手に余るが、私が読んだ限りでの特色と要点は以下のようなものだ。(自分にとってのメモのようなものなので、アテにしないで下さい。興味のある人は原著を読んで下さい)

①人間の自己の身体に対する所有権は根源的な自然権であり、倫理・正義の基礎はこれのみにあると考える(自由は自分の所有する物に対する自由であり、所有という概念に含まれている)。但し、個人の自由と主体性は譲渡できないと考えるので、奴隷契約は無効だ。
②自己所有権と従って自由の尊重は、理性を持つ生物である人間の本性に基づくものだ。人間のこの権利は全ての人間に一貫して適用できるものでなければならない。
③他人の所有権の盗み及び、他人に対する他人の所有権を侵害するような強制は、全て悪である。
④物に対する所有権は、彼が「入植原理」と称する、最初に利用した人(自分の労働を混ぜ込んだ人)にあり、彼が合意にもとづく取引(贈与も含む)によってこれを移転することによってのみ正当に移転できる。但し、所有者が明らかに居なくなった物については、再びこれを最初に利用した人が所有者となる。
⑤所有権を離れた権利というものは存在しない。たとえば、言論の自由は、自分の正当に所有する手段を使って何を主張してもいいということであって、例えば、他人の家に上がり込んで自分の主張を展開する権利など誰も持っていない。
⑥また、自由と能力を混同してはならない。人は、他人の所有する空間以外の空を飛ぶ自由があるが、空を飛ぶ能力があるべきだ、とは言えない。
⑦他人の所有権を犯してまで生存する権利など誰も持っていない。従って、親には子供を養育する絶対的な義務は存在しない。
⑧たとえば、⑦のようなことは「不道徳」かもしれないが「政治的な倫理」としてはこうあらざるを得ない。たとえば、親は自分の生存のための食料を欠いてまで子供を養育すべき絶対的な義務があると強制することは誰にも出来ない。逆に、子供は自立すれば(家出した瞬間に)自由であり、親元に帰ることを強制することは不正義だ。
⑨私が⑦から推測するに、ロスバードは、「(例えば、彼にとって)望ましい道徳的な姿」と「絶対に必要で、一貫性をもって適用することができる、社会的正義の原則」とを区別して、後者を優先的に重要なものと考えている。
⑩国家はそれ自体が犯罪的な存在である。「簡潔に言えば、課税は窃盗である」。
⑪ハイエクやノージックのような自由主義者も、国家を不可欠又は悪くなくあり得る存在と見ている点において、不徹底であり、失敗したリバタリアンである。
⑫効用は基数的には不可測であり他人に関して合計できない。このことに加え、全体的効用の増進のために、不正義(他人に対する不当な強制)を認めるべきではないから、「最大多数の最大幸福」的な功利主義は正しくない。
⑬リバタリアンの目的は国家のような不正義な存在の即時廃止であり、これを見失うべきではないが、この目標を忘れない限りに於いて、漸進的なアプローチはあってよい(たとえば減税はそれ自体で国家の縮小になるなら、いいことだ)。
⑭著者は概してリバタリアンな価値の実現に対して楽観的だ。但し、これは、たぶん、70年代のスタグフレーションとウォーターゲート事件の余韻が残る1982年に本書が書かれたことにも関係しそうだ。

重要な点、面白い点、はまだまだあるが、一読してみた感想を幾つか述べてみる。

・国家というものを倫理的に正しいものとしようとする試みに対するロスバードの批判は、議論としては成功しているように思える。昔の「社会契約」に今の人が縛られるべき根拠はないし、少数の反対を押し切って彼らの所有権を侵害するような社会契約は、少なくとも所有権の侵害が不正義である限り、不正義だろう。従って、プラトン、アリストテレス以来の(ハイエクやノージックにまで影響したバイアスだが)、国家を良き価値実現の主体とする考え方は、倫理的な議論として一貫性を維持できない、というのは議論として正しかろう。
・自己所有権が、絶対的で「自然な権利」だというロスバードの説明には必ずしも説得力を感じない。但し、一貫性のある正義の議論を作ろうとしたときに、これ以上に有力な前提を考案することは難しいかも知れない。
・だが、「現にある」という意味で「自然」を解釈すると、現実に犯されることの多い所有権がなぜ無前提に特別な「権利」なのかは今一つはっきりしない。所有権をこのように認めなければ、集団としての人間は幸せに暮らせない、ということがこの権利の根拠なら、これはロスバードの議論も功利主義的帰結主義に還元されてしまう。
・ロスバードの議論は、たぶん、倫理としての一貫性の観点で今までで最も強力な議論かも知れないが、絶対的な根拠を持っていると確信を持てるかどうかについては少なくとも私は自信がない。
・ロスバードの議論が、現実に「正義」あるいは「倫理」として働いているものの、あるいは働かせることが出来るものの、内容を適切に要約したという意味で最も優れた”理論”であるかどうかという意味では、帰結主義的・功利主義的な議論(現実がインセンティブを持って動き得るという意味で強力だ)や、ロールズなどの個人の所有権も何らかの意味で制限するようなリベラルな議論が、「正義」というコトバの使い方に関してより適切な内容を与えている可能性も否定できない。要は、正義については、もっと勉強してみる価値が大いにありそうだ。
・倫理に関して、一貫性を持った議論としては、ロスバードの議論は、第一級の純度と強度を持っていると思う。議論の一貫性ということに関しては、高くそびえ立つ記念碑的に強力なベンチマークといえるだろう。

100%説得はされないけれども、「うーん、凄い!」という感じがする、癖になりそうな切れ味と迫力のある議論だった。
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