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【ダイヤモンドオンライン】確定拠出年金を効率的に生かせ!

 先週、ある大手家電メーカーの依頼で、この会社の確定拠出年金の有効な使い方について講演した。今週のダイヤモンドオンラインの連載では、このときの「楽しかった」講演の話題とともに、確定拠出年金について、他社の確定拠出年金加入者にも役立ちそうな、具体的なアドバイスを載せてみた。

 確定拠出年金は、爆発的とまではいえないが、着実に普及が進んでいる。先般、NTTグループが9万人の社員が対象となっている規約型企業年金を確定拠出年金に移行することを労働組合に向けて提案したことが報じられた。
 しかし、確定拠出年金の制度だけが普及しても、加入者がそれを有効に活用してくれなければ、将来の加入者の満足度が低かろうし、企業としても従業員に十分有効な形でお金を渡したことにならない。

<年金としての確定拠出年金>
 先ず、加入者の立場で、確定拠出年金の意味を考えておきたい。
 そもそも、「年金」とは何か。老後の備えとなる資金のことだが、制度としての年金の意義は、煎じ詰めると、(1)節税された資金運用手段、であることと、(2)長生きへの保険、の2点だ。但し、日本では後者を担うのはもっぱら公的年金で、確定拠出年金の加入者にとっての意味は「節税された資金運用手段」の方だ。

 加入者にとっては、掛け金が所得控除されることの節税効果が先ずは大きいし、次に運用益が非課税になることの効果も大きい(通常の運用では20%も課税される)。

 先ず、この段階で、少なくとも十分な収入のある人は、確定拠出年金を使わないのは「もったいない!」し、掛け金の大きさを選ぶことができるプランの場合は、自分が使える上限の金額まで使うことが「得!」である場合が多いと説明できる。

<確定給付年金(DB)と確定拠出年金(DC)の違い>
 また、年金には大別して、DB(Defined Benefit)とDC(Defined Contribution)、すなわち確定給付型(DB)と確定拠出型(DC)の年金がある。これは、企業年金の場合でも同様だ。
 従業員の立場に立つと、年金だけを考えるなら、企業側で運用リスクを負って将来の支払いを約束してくれる確定給付型年金の方が有り難いかも知れない。加えて、率直にいって、DBからDCに移行する場合、DCの想定利回りはDBのものよりも相当に低い場合が多く、年金が実質的に減額されていると見ることができる場合が多い。
 しかし、好条件のDB年金に固執すると、企業に過大なリスクとコストを追わせることになり、結局、将来の給与やボーナスが圧迫されたり、経営が傾いたりもする(数年前、金融危機に加えて年金の重みで米国のGMが倒れたことは記憶に新しい)。

 そもそも、確定給付の企業年金は、大半の企業とその株主にとって合理的ではない。筆者が、講演させて貰った会社も、エレクトロニクスの技術はあっても、少なくとも運用会社ではない。株主にしてみると、この会社の技術やビジネスに投資しているつもりなのに、数千億円、あるいは兆円単位の資産運用のリスクが株式に付随することは余計というしかない。

 DBからDCへのトレンドは経営合理的であり、DCの場合、自分の財産の額と受給権がはっきりしているメリットがある。また、転職の際に持って歩くことが出来るので(「ポータビリティ」と呼ぶ)、人材の流動化にも対応できる。

<確定拠出年金の運用原則>
 確定拠出年金の運用選択肢の選択と資金配分は、「好み」や「相場観」からではなく、あらかたを論理的に決めることができる。
 確定拠出年金の運用を原則として述べると以下の通りだ。

(1) 自分の資金全体の運用計画を決めて、確定拠出年金にその一部を割り当てる。
(2) 割り当てにあたって考慮すべきは、第一に「運用益非課税のメリットが生きる期待収益率の高いもの」、第二に「通常の運用商品よりも安い手数料で買える商品があればそのメリット」、の2点。
(3) 1資産1商品でシンプルなものを選ぶ。
(4) 同じリスク内容ならコストの安い商品を選ぶ。

 ちなみに、自分の運用計画の立て方としては、損をした場合の損失額と期待リターンを勘案した上でリスク資産に投資する額を決め、残りを(ほぼ)無リスクな資産で運用することとし、リスク資産は内外の株式インデックス・ファンドに概ね半々に投資する簡便法を紹介した(詳しくは、たとえば拙著「超簡単 お金の運用術」(朝日新書)などをご参照下さい)。

 具体的なプランは、図も交えて連載の方で詳しく紹介しているので、そちらをご覧頂いた方がよいだろう。大まかな流れとしては、自分の資産全体についての運用計画を作成したのち、[新興国株式]→[外国株式]→[国内株式]の順で確定拠出年金に割り当てる。そして、残ったリスク資産投資枠は、別途自分で運用する、といった具合だ。

 「新興国株式」にどれくらいの期待リターンを想定するか、といった辺りで個人差が出る可能性があるが、自分では株式や投資信託を持っているのに、確定拠出年金では元本確保型の商品に資金配分しているというようなちぐはぐな運用は合理的でないと分かると、確定拠出年金の有効利用が進むのではないだろうか。

 これからも、機会があれば、確定拠出年金の具体的な使い方をアドバイスする仕事をしてみたいと思っている。
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