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菅直人首相の賞味期限はどのくらいか?

 参議院選挙が公示されたので、ブログでもツイッターでも政治の話がしにくい。政治家のツイートは今後しばらく激減するのだろう。現状は、選挙期間には政治の議論などせずに、政見放送のように形が決められた情報と大手マスコミの提供する情報だけで判断をせよ、という選挙民愚民化的な制度になっている。
 かつて、浮動票を嫌って、有権者に「寝ていて欲しい」と言って問題になった首相経験者がいたが、これに近い「政治については黙っていなさい」言わんばかりの制度が押しつけられている。
 当ブログについて、管理者は、世間に対する影響など持っていないと思っているが、インターネットのお蔭で誰でも見られるという性質に鑑みて、参院選の候補者には当面直接触れまい。本当は、褒めたり、けなしたりしたい候補者がいたのだが、相撲取りの賭博問題などに気を取られているうちに、時機を逸してしまった。

 しかし、首相についてゆる~く論じるくらいは許されるだろう。
 もちろん、今の段階で確かなことが分かるはずもないが、私は、菅内閣は短命なのではないかという気がしている。

 大まかな構図として、官僚集団は、菅氏を増税に利用して、使い捨てしようとしている、と見る。
 参院選の直前に政権を獲って、菅内閣に人気があるうちに、消費税率引き上げを看板公約に参院選挙に臨ませたことは、官僚側から見ると大成功だ。
 菅氏の近くにいた官僚は、政権交代以来、菅氏の頭脳には過大な負荷が掛かる財政のレクチャーを授けつつ、世論調査で消費税率引き上げに賛成の方が多いデータなどを見せて、「今や、消費税率の引き上げをはっきり言った方が立派な政治家だと世間が思うはずだ」と吹き込んだのだろう。この際に「鳩山政権は遠からず行き詰まるから、下手に関わらない方がいい。次は、誰が見ても、菅さんが首相だ! われわれは菅さんに期待している」と付け加えたのではないかと想像する。
 その結果、国家戦略担当の副首相という重要な立場にありながら、鳩山内閣が潰れるまで、菅氏は政治の舞台から殆ど消えていた。「菅から眠」などと揶揄されたように、寝ていたのだ。
 その間、財政の組み替えに本格的に取り組み予算の作り方を抜本的に変えるはずだった国家戦略局は設立が棚上げされ、民主党の第一の公約だった財政支出のムダ削減は官僚がお膳立てした「事業仕分け」に矮小化され、予算の権限は全面的に財務省に残り、平成22年度予算がさっさと作成されて、通過した。同時に、公務員の天下りは容認の方向に傾き、もちろん、公務員人件費の削減も実行されない。今や、幹部公務員は、役所に残って高収入を得続けることも出来るし、天下りの道も開けている。
 同時に、鳩山内閣は、自ら消費期限を区切ったかのように普天間問題を中心に着々と追い込まれていった。
 そして、今度は菅首相に消費税率引き上げを語らせての参議院選挙だ。
 官僚たちも、こんなに上手く行くとは思っていなかったのではないか。

 官僚機構は便利な男を御輿に乗せた。
 「10%」の根拠を問われて上手く答えられなかったり、就任当初から支持率が10%ほど下がって慌てて実施は先だと言い出したり、毎度おなじみの「首相のブレ」を見せてはいるが、菅氏は意地っ張りであるから、いったん言い出した増税路線を変えないだろう。
 加えて、「増税しても、雇用の増加に使えば、景気は良くなる」という菅理論(小野理論?)は、もともと市民運動家の菅氏の社会主義的な感性にフィットしているのだろうし、官僚たちにとっては、官製の事業を拡大する上で好都合だ。次の予算案の通過くらいまでは、菅首相には利用価値がありそうだ。
 しかし、官僚たちは、調教の済んだ犬のような菅氏を、「この頃、案外かわいいな(≒使いやすいぞ)」というくらいには思っていても、彼のことを全く尊敬していないだろうし、好いてもいないだろう。人気が低下して政権運営が停滞したら、いつでも別の人物に取り替えてもいいと思っているのではないか。かつて、「官僚は大バカだ」と言った菅直人だ。官僚は、自分をバカだけではないと思っている(その点がバカかもしれない)生き物なので、一度でもバカと言われたら一生忘れない。
 菅氏にとって何が致命的な障害になるかはまだ分からないが、来年度の予算の通過にメドが付けば、それが、特定の政策であっても、行政の運営であっても、あるいは政局であっても、官僚集団が菅氏をサポートすることはないのではないか。
 逆風にさらされたときに、菅氏は、ひたすら低姿勢に徹して受け流すのは苦手だろう。対立が先鋭化したり、不人気が極まったりするのは早いのではないかと想像する。

 個人的には、菅直人氏に対する人物評価の根本は「仲間が本当に困っているときに助けなかった男」という点だ。首相として頼むに足らない人物だと思っている。
 昨年の政権交代は重要なイベントだったし、とりわけそのスタートは重要だったはずだ。菅氏自身に割り当てられた「国家戦略担当」の役割を十分果たさなかったことも問題だったし、予算にあっても、普天間問題にあっても、菅氏は副総理の立場にありながら、鳩山内閣をサポートしなかった。就任以来、鳩山首相が潰れるのをひたすら待っていたようにしか見えない。

 人物評価上イメージが被るのは、現衆議院議長の横路孝弘氏だ(私の故郷の北海道一区選出だ。高校は違うが、中学校時代に同じ先生に習ったことがある)。彼は、かつて社会党のプリンスと言われた人物だったが、社会党が存亡の危機にあったとき、期待されながら党首の御輿に乗らなかった。右派左派に分かれた当時の社会党にも大いに問題があったし、彼が党首で選挙に臨んでも、社会党に大きな改善は見込めなかったかも知れないが、以来、私は、彼を「いざという時に役に立たない、頼りにならない男」だと思っている(地元民の一人としてもともと期待していたので、一転して厳しい評価になった面はあるが)。
 菅氏は市民運動のご出身だが、横路氏は、二世議員ではあるものの、確か選挙に於いて「勝手連」に支持された最初の政治家で、若手の頃は清新なイメージだった。昔、フレッシュだった政治家が、いかにも政治家らしいズルい男になっていったプロセスも似ているのではないか。

 また、失礼ながら、菅氏は年齢的な衰えが早いのではないか。氏の若い頃と較べて滑舌が悪くなっているし、人相がたるみがちにアンバランスに崩れていると感じることが多い(脳の衰えの表れではないか)。やりとりの論理性にも疑問を感じることが少なくない。
 加齢の影響の出方には大きな個人差がある。たとえば、小沢一郎氏は、普通に歳を取っているとは思うが、表情や言葉遣いから「脳が衰えた」という感じはしない(首相になって欲しいとはさらさら思わないが、彼は、まだ「生きている」感じがする)。
 何らかの非常事態が起こった場合、菅氏が国のリーダーであるという状況には、不安を感じる(これまでの何人かも同じくらい不安だったが、不安の質が少し違う)。

 菅・民主党は、財政支出のムダ削減を早々に諦め、子ども手当を縮小し、公務員の天下りも大いに許して、消費税率を上げつつ、官製事業の拡大に励むようだ。政策的には、昨年総選挙前の民主党とは全くの別物だと考えるべきだろう。
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