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茂木健一郎氏の脱税報道に思うこと

 脳の研究者でテレビ・出版共に露出の多い茂木健一郎氏に税金の申告漏れがあったことが発覚した。
 申告漏れは社会人として良くないことなので同情はしないが、茂木氏が追徴税額を既に納めていることでもあり、ここで、私が「怒る」のは余計なお世話というものだろう(彼は鳩山首相のように政治家でもないし)。税金に気が回らない人が「プロフェッショナル 仕事の流儀」(茂木氏がキャスターを務めるNHKの番組)をやっているのは、説得力の点でどうかとも思うが、ごく軽い内容の番組でもあり(昨日久しぶりに見たが、内容は幼稚な「ヨイショ番組」だった)、NHKが社会的な処罰の側に回らずに、番組で茂木氏を使い続ける判断にも反対しない(NHKの番組ホームページに茂木氏のお詫びが載っている)。
 茂木氏の本の出版状況や今回の問題の記事から推察するに、茂木氏の下には、出版、テレビ番組の出演、講演などの依頼が押し寄せていて、それこそ3年間税金のことを考える暇もないくらい多忙だったのだろう。
 今回の報道で些かショックだったのは、茂木氏が申告漏れした所得が3年間で3億数千万円(4億円に満たないと報じられている)しか無かったことだ。茂木氏は雑所得の申告を丸ごとサボっていただけのようで、所得隠しはしていなかったようだ。税務署は、茂木氏の印税、原稿料、テレビ出演、講演謝礼について、ほぼ全額を把握できただろう。だとすると、茂木氏のようにあれだけ次から次へと本が出て、テレビにも出続けて、各種のイベントにも出演している状況で、1年当たりの収入が1億3千万円程度(単純な割り算による推定)というのは案外少ない。
 しかし、テレビ出演は「文化人価格」(注:一般のイメージよりもかなり安いはずだ)なのだろうし、出版の印税が通常の「10%」、売れっ子だから講演料は高いとしても多忙だから案外回数がこなせないということになると、茂木氏並みの売れっ子でも、確かに、この程度の所得にしかならないのだろう(税務署の能力を信頼しよう)。
 だとすると、「文化人ビジネス」は、経済的には何とも夢がない。
 フィクションの作家を除くと、評論・ノンフィクション・実用書などのジャンルで、茂木氏は、控えめに見ても過去3年間のどの年をにも売れっ子ベスト5には入っていただろう。メディアにも出続けていた。この世界では、「一握り」以上の「一つまみ」くらいのレベルの大成功者であるわけだが、それで年間所得1億円少々というのはパッとしない。
 別の世界では、プロ野球の世界では年俸1億円以上のプレーヤーが数十人いるだろうし、時期によって差はあるが外資系の証券会社にも控えめに見ても、東京だけで、数十人単位で存在するだろう。
 「節税には全く興味がない」と茂木氏が言うように、「文化人」の主たるモチベーションは経済的な利益ではないのだろう。あれやこれやと儲ける仕組み作りに熱心な文化人に対して、「浅ましい」感じがするのも事実だ。しかし、「あんなに忙しくて、あんなに本が出ていても、こんなものなのか」という観は否めない。
 一つには「日本」(要は日本語圏)のマーケットが小さいためなのかも知れないし(しかし、日本のプロ野球や芸能人の成功者はそれなりにリッチだ)、もう一つには、文化人が世間の注目を上手に換金するビジネスモデルに疎いのだろう。
 基本的に他人事なので、どうでもいいのだが、ちょっとガッカリしたニュースだった。
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