移動販売 女子大生が起業 三重県

2013-01-17 17:59:42 | 三重県

三重県紀北町周辺の過疎・高齢化が進む地域を、同町に住む大学生が移動販売車で巡回している。「買い物に行けない人を支えたい」と、販売を始めて2カ月余り。お年寄りを中心に少しずつ常連客が増え、地域に欠かせない存在になりつつある。
 
 移動販売の「店長」は、同町紀伊長島区東長島の、皇学館大学文学部4年東真央さん(21)。軽トラックの移動販売車に、「まおちゃんのおつかい便」の看板を掲げて、山間部から沿岸部まで自ら運転して巡回する。ルートは六つ。週1~3回と立ち寄る場所は、まちまちだが、1人しか要望のない場所も含めれば多い時で1日約30カ所を回る。
 
 昨年10月ごろ、就職活動を始めるに当たり、自分は何の仕事がしたいかを考えた。大学1年からコンビニエンスストアでアルバイトをしていたことから、「楽しい会話ができる商売がしたい」と思い始めた。
 
 一方、祖父母を車に乗せて買い物に連れて行くことも多く、自分の住む町で買い物に行きたくても行けない高齢者が増えている現状を知り、「ボランティアというより、ビジネスとして支えることができれば」と、移動販売を決意した。
 
 移動販売と仕入れに使う中古の軽トラック2台は、父(57)が用意してくれ、2月に母(46)と父の知人に協力を求めて販売を始めた。パンや総菜、菓子など食品を扱うため、講習を受けて食品を扱う食品衛生責任者の許可も取った。
 
 最初は仕入れ先との値段交渉や売り物の値段設定、警戒される客の対応に戸惑ってばかりだった。しかし、ほとんど休まずに巡回を続けるうちに次第に口コミで評判になり、現在は10人以上が来てくれる場所もある。ルート外の地域住民から、「こちらにも来て」と要望が増えると同時に、売り上げが多い地元企業にも立ち寄るようになった。
 
 手が足りないときには、家族や知人が手伝う。今では協力者が4人になった。4年生となり、大学に行くのは週1回程度だが、授業で仕事に行けない日は協力者に回ってもらう。
 
 同区島原で販売場所を提供する在宅ケアサービス管理者の曽我優加利さん(50)は「熱心に来てくれ、入所者たちも助かっています。ずっと続けてほしい」と励ます。

 「今でも仕入れとか難しくて、分からないことだらけ」という東さんだが、「これを始めて自分も変わったと思う。もうけはまだないけれど、待っている人がいると思うと、やりがいを感じる」。夢は法人化。1人を求人し、2台目の移動販売車も準備している。(百合草健二)