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子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

2025年高校教科書採択 教科書全国集会 激動の韓国 民主主義の闘いに学ぶ

2025-05-24 19:10:52 | 集会案内
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2025年高校教科書採択 教科書全国集会
激動の韓国
民主主義の闘いに学ぶ
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■日時 7月5日(土) 開場13:30 開会14:00
■場所 エルおおさか 708号室
     (地下鉄谷町線・京阪「天満橋駅」下車8分)
■プログラム
Ⅰ部 講演「韓国非常戒厳令・尹大統領罷免・新大統領選挙と、韓国から見た日本の教科書の右傾化」
(イ・シンチョル成均館大学教授、アジアの平和と歴史教育連帯代表)
Ⅱ部 報告① 2025年、高校教科書採択とデジタル教科書の危険性
   報告② 東大阪市の日本教科書道徳採択との闘い
■資料代 800円(学生、しょうがい者無料)
■オンラインでの参加
 7月4日までに添付のQRコードから申し込んでください。
前日までにお申し込みいただいたメールアドレスにZOOMアドレスと
参加費の振込先をお知らせします。
参加費は7月末日までにお振り込みください。


 
■主催「戦争教科書」はいらない!大阪連絡会

■問い合わせ
iga@mue.biglobe.ne.jp

■呼びかけ
激動の韓国民主主義の闘いに学ぶー非常戒厳令・尹大統領罷免・新大統領選挙

 2024年12月3日の夜、韓国の尹大統領は突如として「非常戒厳令」を発し、軍隊に国会を制圧させようとしました。しかし、これを知った市民と国会議員がただちに駆けつけ、軍隊を退けました。このことをイ・シンチョルさん(アジアの平和と歴史教育連帯代表)は、1月の教科書全国集会へのメッセージで、次のように伝えてくれました。
その混乱のなか、韓国社会の新たな希望が見えました。大統領による内乱という恐ろしい歴史の反動を阻止した勢力の中心に、学校で歴史清算の意義と民主主義の大切さを学んだ20代がいたという事実です。彼らは歴史教科書の中にのみあった「非常戒厳令」が、現実に現れたことに対して驚きながらも、それが共同体を解体する虐殺の始まりであり、自分たちの生活を抑圧する言葉であることを知っていたのです。
このような韓国市民の姿は、朝鮮後期以来の民衆的抵抗の歴史にその起源を見出すことができますし、民主主義、人権教育にもう一つの理由を見つけることができると思います。私たち「アジアの平和と歴史教育連帯」とここに集まっている皆さんが、教科書の記述について一緒に悩み、未来に向けた子どもの教育問題に関して、お互いに努力する理由は、まさにここにあるのではないでしょうか。
もしも、韓国の学校現場で、教科書によって民主主義と人権の歴史を教育していなかったら、クーデターの歴史が間違ったことだと教えていなかったら、2024年12月の韓国はどうなっていたのか、2025年を想像することさえできなかったかもしれません。
 私たち大阪の市民は、2001年に「新しい歴史教科書をつくる会」の右派教科書が登場して以来、韓国の「アジアの平和と歴史教育連帯」と共に、侵略戦争も植民地支配も正当化する教科書の採択を許さないために闘ってきました。その結果、昨2024年には育鵬社教科書の採択を0.5%以下にまで追い込むことができました。今回はイ・シンチョルさんをお招きし、韓国民主主義の強さとそれを可能にした闘いを直接詳しくお話していただきます。
 さらにイ・シンチョルさんには日本の文科省による教科書検定への介入・戦後清算に対する日本政府の不誠実な対応についての韓国の人々の怒り、また韓国にもある教科書問題・歴史修正主義との闘いについてもお話していただきます。

2025年は高校教科書採択の年―民主的な主権者育成のための教科書採択を!

文科省は高校教科書検定において、教育図書(公共)の「第二次世界大戦中に、朝鮮半島から日本に連行された朝鮮人」という記述に、「政府の統一的見解にもとづいた記述がなされていない」との検定意見をつけ、教育図書は「連行」を「動員」と修正して合格しました。今回「強制」の文字はなく、単なる「連行」にも文科省は検定意見をつけたのです。しかし、実態は「強制連行」としか呼べないような強引な人集めでした。政府は「戦争をする国」を作るために、過去の歴史を正当化し、若者を「愛国兵士」に仕立て上げようとしているのです。
高校教科書は各高校が選定し府教委が採択します。育鵬社のような右派教科書である明成社(歴史総合)や、競争と能力主義を前提とし人権尊重にいちじるしく欠ける教育図書(公共)のような教科書もあります。高校教科書にもぜひ関心を持ってください。
また、政府は小中高ともにデジタル教科書の使用を急ピッチで進めようとしています。しかし、教育のデジタル化が子どもの心身に及ぼす深刻な影響が世界では問題になっています。スウェーデンは紙の教科書に戻すと決めました。この問題についても報告します。 
7月5日(土)はエルおおさかへ!



中学校教科書採択全国報告集会 戦後80年 戦争へとむかう教科書を許さない!

2025-01-05 10:45:26 | 集会案内
2024年中学校教科書採択の総括集会を実施します。
ぜひ、ご参加ください。

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中学校教科書採択全国報告集会
戦後80年 戦争へとむかう教科書を許さない!

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■日時 1月13日(月・休) 14:00(開場13:30)
■場所 国労会館 3階大会議室
     (JR環状線「天満」、地下鉄堺筋線「扇町」下車)
■プログラム
(1)2024年 中学校教科書採択報告
(2)戦後80年 中学校教科書のリアル
(3)各地からの報告(石川、熊本、泉佐野、東大阪、北摂)
(4)特別報告 23年間の教科書運動と今後 
■参加費 1000円(報告集こみ)
      (学生・障がい者無料)
■現地参加の場合
当日、国労会館までいらしてください。 予約等は必要ありません。
■オンライン参加の場合
下記QRコードか下記アドレスのグーグルフォームからお申し込みください。
前日までにお申込みいただいたメールアドレスに参加のズームアドレスをお知らせします。
集会後、パンフレット「2024中学校教科書採択報告集」をお送りしますので、
同封の振込用紙で1200円 (集会参加費+送料)をお支払いください。



■主催 「戦争教科書」はいらない!大阪連絡会

■集会呼びかけ
育鵬社を全国で追放!
2024年、沖縄県八重山地区 (石垣市、与那国町) 山口県下関市、石川県金沢市、大阪府泉佐野市が育鵬社採択をやめました。これで大阪府では育社はゼロになりました。全国的にも1%を大幅に下回るのは確実です。教科書展示会でのアンケートをはじめ、全国の市民が粘り強く教育委員会に働きかけた成果です。
 ところが、東大阪市が道の右派教科書である「日本教科書 (日科)」 を採択するという暴挙をおこないました。「日科」 は育鵬社と同じく八木秀次氏 (旧安倍政権のプレーン) が作っている道徳教科書です。人権侵害の差別教材がたくさんあると厳しく批判され、全国でも栃木県大田原市や石川県加賀市など、一部の右派首長の地域でしか採択されてきませんでした。今回の東大阪市の「日科」 採択には、教育再生首長会議 (故安倍首相が作った右派首長の回体)の会長である野田市長の、またもや 「政治介入」 があったのではないかと、地元の市民たちは抗議しています。
 ちなみに、 自由社は茨城県常陸大宮市で、公立では15年ぶりに採択されました。 令和書籍 「国史」 は私立の岡山学芸館清秀中学校で採択されました。育腸社は大きく後退しましたが、参政党が支援する自由社や、日本保守党が支援する令和書籍などの極右教科書がじわじわと伸長しています。
新たな戦前 軍拡路線に突き進む石破政権
すでに岸田政権時代に 「敵基地攻撃能力」 と「5年間で防衛費を1.5倍 (43兆円)」は閣議決定されていますが、石破首相はさらに 「アジア版NATO」 やアメリカとの「核共有」まで主張しています。石破政権は衆議院選挙で過半数の議席を取れず不安定化しました。そのため、維新や国民民主党、さらには参政党、日本保守党といった極右政党まで利用して、9条改憲を一挙に進めるかもしれません。そのうえ、台湾有事、南沙諸島有事を口実にアメリカが軍事介入すれば、米軍支援のために日本も自衛隊を戦場に送ることになります。80年間、戦死者を出さなかった日本が、殺し殺される国になるのです。
戦後80年、 子どもたちに「戦争のための愛国」 を刷り込む教科書が増えている!
政府は今後、自衛隊を海外の戦争に派兵しようとしていますが、自衛隊はセクハラ、パワハラが後を絶たず、慢性的に人員不足です。そのため、政府は待遇改善によって、つまり、生活苦にあえぐ若者を勧誘して自衛官の確保をはかろうとしています。 いわゆる 「経済的徴兵制」 です。
 しかしそれだけでは全く足りないので、教科書で自衛隊の災害救助や国際的な平和貢献を強調して自衛隊のイメージアップをはかり、子どもたちを「愛国兵士」に育成しようとしています。育鵬社・自由社・令和書籍の歴史ではアジア太平洋戦争を「アジアを解放するための正義の戦争だった」と侵略戦争を美化し、公民では「国家無くして個人=国民は存在しえない。だから愛する人を守りたいなら、まず国を守らなければならない」 と、国防を最優先すべきと教えています。けれども、過去の戦争では「国家」の名のもとに、天皇を含む権力者が領土拡大の野望のために国民の命を犠牲にしたのでした。戦争末期には若者に「特攻」までやらせ、見事に死んで国民を鼓舞し、子どものお手本となることを強制したのです。
 来年は高校教科書の採択があります。平和的な教科書を採択させましょう。



【山口県教委】日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版公民教科書の採択に強く抗議する

2024-10-06 17:34:51 | 2024中学校教科書採択
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしまの山口県教育委員会への抗議文です。


日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版公民教科書の採択に強く抗議する

山口県教育委員会が、2025年度から4年間使用する中学校公民教科書に育鵬社版を採択したことにつき、育鵬社版公民教科書の問題点を以下具体的に列挙して、問題の根拠を踏まえて不当採択に抗議する。

1.日本国憲法の基本原則を中心に置かず例外的な内容を大きく取り上げているため、生徒が基本原則の学習に混乱をきたすおそれがあること

(例1)国民主権の原則の説明の場面で、例外的な天皇制を大きく取り上げているために、憲法に即して国民主権を理解正しく理解できない。
(例2)平和主義の原則の説明の場面で、例外的な自衛隊、日米安保条約を大きく取り上げているために、憲法に即して平和主義を正しく理解できない。
(例3)基本的人権の尊重の説明の場面で、例外的な公共の福祉を大きく取り上げているために、憲法に即して基本的人権を正しく理解できない。

2.育鵬社独自の「一面的・一方的」な記述が、学術研究に基づく「多面的・多角的」
な学習内容の理解を妨げるために、生徒の社会認識をゆがめるおそれがあること

(例1)学習指導要領に「核兵器などの脅威に着目させ」とあるが、核兵器の脅威について具体的に記述されていない。
(例2)平和主義を学習する場面で、戦後憲法が果たしてきた役割に触れず、平和維持手段は防衛力だと一面的・一方的な記述をしている。
軍事的緊張を緩和する方法として軍事力の重要性を一面的・一方的に記述しているので、平和主義を多面的・多角的に学ぶことはできない。

3.育鵬社版教科書は日本国憲法が重視している「個人の尊重」を軽視しているので、生徒は日本国憲法に即して「個人の尊重」を正しく理解できないこと

(例1)「個人の尊重」を学ぶ場面で、古代ギリシャのポリス市民が防衛義務を負っていた事例を例外的に大きく取り上げることで、「個人の尊重」を犠牲にして「戦場に行く義務がある」かのような理解に導く記述は日本国憲法13条24条に違反する内容である。


4.育鵬社版教科書では教科書内容の配列が日本国憲法を正しく理解できない構成になっているので、なぜ憲法が3原則を重視しているのかを理解できないこと

(例1) 大日本帝国憲法を高く評価した後に日本国憲法がGHQによって押し付けられた問題があると否定する記述をしているので、生徒は憲法を否定的にとらえる。
(例2) 国民主権を学習するページの冒頭で「国民主権」を「国民としての自覚」と言い換え、天皇を尊重することが重要だとの内容が記述されているので、国民主権の前提が天皇尊重だと誤って理解する危険性がある。
(例3) 人権を学習するページでは、人権を「古くから民を大切にする伝統」と言い換え、人権の意味を誤解する危険性がある。
(例4) 平和主義の説明に自衛隊や安保体制、国防の重要性が大量に記述されているので、平和主義を武力による自衛ととらえる危険性がある。

5.育鵬社版公民教科書は立憲主義の理解を妨げ、意図的に憲法改正に強引に誘導することで、憲法99条で憲法尊重擁護義務を負っている教育公務員に99条違反を強いるおそれがあること

(例1) 育鵬社、自由社以外の公民教科書は「憲法に基づく政治を行うことで権力の濫用を防ぐ考え方を立憲主義という」と適切に説明する。しかし、育鵬社は「憲法にのっとって国を運営することを立憲主義という」説明だけなので、「立憲主義」と「権力の濫用防止」との関係が正しく理解できない不適正な説明である。

(例2) 育鵬社版は各国の改正手続きや厳密さには整合性がないことを説明せずに、憲法を改正しないことが異例だから改正が必要だと強引に憲法改正に導く内容である。

(例3) 単元の終わりに「今後は、各院に設置された憲法審査会で憲法改正原案の審査が行われ、国会の議決を経て、国民投票による改正の是非が諮られる」と記述している。しかし、現実の政治の中では憲法改正原案が提出される見込みはない。育鵬社版の記述は生徒に誤った理解をさせる内容の教科書である。

6.まとめ
 育鵬社版公民教科書は以上指摘した以外にも「基本的人権より義務を重視する」「国民としての自覚を押し付ける」「国民の具体的な権力行使を軽視する」「権利よりも公共の福祉、義務を重視する」「子どもの権利を制限する必要」「家族の役割を押し付ける」「性別役割分担を肯定する」「LGBT、SOGI、性の多様性、性的指向、性自認の説明がない」「外国人に人権がないと誤解しかねない記述」「障害者差別解消法、合理的配慮の説明がない」など、「一面的、一方的」な記述が多く、生徒の「多角的・多面的な」理解を阻害する内容が多数ある。

このように育鵬社版公民教科書は内容が不正確であったり、一方的な考えに基づく一面的な記述であったりして、生徒の学習権を保障する教科書として著しくバランスに欠けている。私たちはこのような不適切な教科書を採択したことに対して強く抗議をし、改めて採択をやり直して、育鵬社版公民教科書を採択しないよう求める。


【岩国市・和木町】日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版歴史教科書の採択に強く抗議する

2024-10-06 17:30:56 | 2024中学校教科書採択
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしまから岩国市・和木町・山口県教育委員会への抗議文です。

日本国憲法と民主主義の理念に反する育鵬社版歴史教科書の採択に強く抗議する
 
岩国市教育委員会が、2025年度から管内市立中学校において4年間使用する中学校歴史教科書に育鵬社版を採択したことにつき、この教科書の問題点を具体的に列挙して根拠を示し、採択に抗議する。とりわけ、近代史についての育鵬社版歴史教科書の問題点を以下に示す。
・忠君愛国の説明がなく教育勅語を肯定している。
・南京事件と記述し、虐殺を否定する記述。   
・戦前のプロパガンダ「大東亜戦争は自存自衛のため」を無批判的に記述している。
・戦時下の植民地支配の説明がわずか2行しかない。
・「天皇の聖断で戦争が終わった」と一方的な見解を押し付けている。
・日本国憲法はGHQの一方的な押し付けと主張する記述となっている。
・沖縄の基地問題の記述がない。
・アジア太平洋戦争に関わるアジア諸国への戦後補償についての記述がない。
以上のように例示しただけでも育鵬社版歴史教科書は、日本国憲法及び民主主義の理念に反する歪んだ歴史認識を育てる教科書であることがわかる。このことを理解している教育委員会なら、育鵬社版歴史教科書を採択できないはずである。教育委員会が生徒に、日本の侵略戦争の事実を否定し、国際問題の平和的な解決を軽視するような教科書による学習を強いることは、生徒に間違った歴史認識を育てるので、生徒にとっても日本の将来にとっても重大な問題である。国際社会から厳しい批判を受けても、その理由を理解できない市民を育てるからである。

私たちは岩国市教育委員会が、教科書採択において生徒の学習権を保障する立場に立ち、このような問題の多い教科書からより適切な教科書に変更することを要望する。
 私たちは、岩国市教育委員会の今回の育鵬社版歴史教科書の採択に対し強く抗議するとともに、改めて採択をやり直し、育鵬社版歴史教科書を採択しないよう求める。





加賀市の育鵬社歴史・公民教科書、日本教科書道徳教科書の再々採択に抗議する

2024-09-28 15:20:57 | 2024中学校教科書採択
いしかわ教育総合研究所所長の抗議声明です。

加賀市の育鵬社歴史・公民教科書、日本教科書道徳教科書の再々採択に抗議する

 加賀市教育長 島谷千春殿
 加賀市教育委員会 委員各位

 いしかわ教育総合研究所は2015年以来加賀市に対し、育鵬社の中学校歴史・公民教科書、日本教科書株式会社の中学校道徳教科書の問題点を指摘し、3教科書の採択停止を求めてきた。しかるに加賀市は2020年度採択において、これら問題3教科書を再採択し、さらに本2024年採択では同3教科書を再々採択した。いしかわ教育総合研究所は加賀市の子どもたちがこれら問題の多い教科書で学ばされている状況を深く憂慮している。

 良く知られているように、前回中学校教科書採択2020年において、横浜市や大阪府下諸都市など大手採択区のほとんどが育鵬社教科書の再採択を見送り、同社教科書の約10%あった全国採択率は約1%まで激減した。これは育鵬社教科書の問題点が広く知られるようになった結果と思われる。それにもかかわらず金沢・小松・加賀の石川県3市が育鵬社教科書を再採択した異様さに、全国から不審の眼差しが向けられた。本2024年、育鵬社教科書の凋落はさらに進行し、2011年以来の採択区だった石垣市・与那国町、大阪府下で唯一再採択していた泉佐野市、また金沢市までが採択を停止した。その中で再々採択を断行した小松市と加賀市の突出が、一段と全国の耳目を集めている。

育鵬社歴史教科書の問題点は、執筆者の学識欠如による間違いの多さと、客観的批判に耐えない偏狭な国家主義的叙述にある。前回2020年採択のとき、いしかわ教育総合研究所が加賀市への抗議声明で指摘した、神武天皇を天孫ニニギの3代目(実は4代目)とする過ちなどは今回の新版で直されたが(抗議声明の影響?)、高句麗の3世紀領域図(実は4世紀)やフェノロサと岡倉天心による法隆寺救世観音開扉1884年(実は1886年)とする記事など間違いは他にも多数残っている。また、ネルーや孫文が日露戦争における日本の勝利に喜んだことのみ取り上げ、その後彼らが日本のそれからの動きに失望したことを記さない(他社教科書は記している)など、偏狭な国家主義的叙述は変わっていない。

育鵬社公民教科書の問題点は、偏狭な国家主義的社会観と人権意識の低さにある。前回採択のとき、いしかわ教育総研が加賀市への抗議声明で指摘した曽野綾子氏の冒頭エッセイは今回の新版では削除された(これも抗議声明の影響?)。同エッセイの「地球市民など幻想で国際人になる前に日本人であれ」という主張が、新型コロナ・パンデミック下での医療従事者闘病者支援オンラインコンサートにおけるレディ・ガガさんの「私はアメリカ人であると同時に地球市民」という発言が共感を呼んでいる世界で、いかに時代錯誤なものかを抗議声明は指摘した。しかし時代錯誤のエッセイがはずされても、天皇の専制支配を定めた大日本帝国憲法を美化し、主権在民・男女の平等・基本的人権を初めてもたらした日本国憲法を、「押し付け」のみを強調し貶める記述など、偏狭な国家主義は変わっていない。また人権について云えば、子どもの権利条約の説明に同条約の核心である「子どもの意見表明権」への言及がないなど、その見識の低さは際立っている。

 日本教科書道徳教科書は2020年の旧版において、「差別に抵抗しない勇気」が讃えられ、いじめをしてはいけない理由に法律的・社会的制裁のみが列挙されるといった異様さに、採択区が栃木県大田原市と加賀市のみという散々な状況だった。本2024年も東大阪市がなぜか採択に踏み切ったが、その状況は大して変わっていない。

日本教科書道徳教科書の問題点も、偏狭な国家主義と人権意識の低さにある。2024年度新版では上記の異様な記事は消去され(これも抗議声明の影響?)LGBT問題が取り上げられるなど見かけ上の「現代化」の跡も見られる。しかしアジアへの侵略思想を鼓舞した吉田松陰の讃美に紙幅を費やし、阿賀野川水俣病訴訟で企業の責任を問わずそれを個人と自然の一般論とするなど、本質的なものは何も変わっていない。

今日の教科書問題は、1993年の河野談話、1995年の村山談話に危機感を抱いた国家主義者たちが、1997年「新しい歴史教科書をつくる会」を立ち上げたことに端を発する。「新しい歴史教科書をつくる会」は2006年に分裂し、そのうちの一派が故・安倍晋三氏の口利きで育鵬社を造った。日本教科書株式会社もそういった流れの中にある。その退行的で不毛な動きと今日の日本の閉塞状況は決して無関係ではないであろう。

加賀市の昨今の小中学校教育は、人文社会科目を極小化した職能教育であるSTEAM教育を、学習指導要領との整合性や人的リソースの供給に疑問のもたれるまま標榜するなど、自然体を失しているように感じられる。問題のある3教科書を、全国からの不審の眼差しを無視し再々採択したことにも、同様の感をぬぐいきれない。豊かな自然と文化資産に恵まれ、高名な温泉を多数擁し世界に開かれた観光地でもある加賀市の子どもたちに必要なのは、国際的に通用する歴史認識と、高い人権意識が学べる教科書ではないのか。加賀市採択3教科書がそういう教科書でないことは、3教科書自らが語っているのではないか。

 いしかわ教育総合研究所は以上のような考えにもとづき、育鵬社歴史・公民教科書と日本教科書道徳教科書を再々採択した加賀市に抗議し、その見直しと採択のやり直しを強く求める。

2024年9月26日 いしかわ教育総合研究所所長 半沢英一