流体機械設計による近未来に役立つエンジニアリング

流体機械設計をベースとして近未来に役立つエンジニアリングを行う株式会社ターボブレードの社長 林 正基の毎日の活動

宇宙船工学:ロケットエンジン可燃性混合気の燃焼 その1

2021年11月14日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、ロケットエンジンの可燃性混合気の燃焼理論を説明する その1です。

火炎伝播:予め混合されている混合気による予混合火炎と、燃料と酸素が独立に供給される拡散火炎がある。

 未燃ガスと燃焼ガスの間に火炎面が有り、通常火炎面伝播の燃焼波と燃焼衝撃波のデトネーション波がある。

  通常燃焼波の伝播速度は音速よりも小さくなり、デトネーション波の伝播速度は音速を超える。

  燃料の酸素に対する可燃限界は、メタンCH4の場合は燃料体積%において下限が5.1%で上限が61%となる。

 定置火炎と進行火炎:一定の火炎面を保つ定置火炎とガス膨張に伴う進行火炎が存在する。

 火炎速度と燃焼ガス速度:予混合気の火炎速度は未燃混合気に相対的な火炎面移動速度の火炎面法線方向の分速度となる。

 燃焼速度Su, 未燃混合気流速Uu, 燃焼ガス流速Ubの関係を図は示す。

燃焼速度Suと未燃混合器流速Uuの合成速度がStとなり、燃焼ガスの燃焼速度Sb

に火炎面と平行な分速Stを合成した速度が燃焼ガス流速Uuとなる。

 酸素とメタンの燃焼速度は1気圧の燃料モル分率30%で毎秒3.3m程度である。

メタンの燃焼速度は圧力が上がると増加し20気圧では毎秒5m程度になる。

層流火炎の伝播機構:層流予混合火炎は、未燃ガス相、燃焼帯、燃焼ガス相に別れ、燃焼帯厚さは1mm程度である。

 更に燃焼帯は、予熱帯と反応帯に分かれており反応帯発生熱が未燃ガス相に伝播し温度を上昇させる。

 このような未燃混合気側への熱伝導および燃焼反応活性種(OH,H,O,HO2など)の拡散が火炎伝播を促進している。

 予熱帯と反応帯の間の温度が着火温度と考えることが出来る。

 層流火炎伝播機構の境界構成:未燃ガス  |  燃焼帯(予熱帯|反応帯) |  燃焼ガス

燃焼波の理論:ガス質量流量gm, i番目の化学種のエンタルピーhi, εi=化学種iの質量流速/gm, ガス温度T, 熱伝導率λとすると

 エネルギー方程式は、gm*Σ(i=1,N)(hi*εi) – λ*(dT/dx)=const  ここでxは燃焼方向距離

 1次元定常燃焼波の伝播理論として最も簡単な層流火炎伝播理論は、燃焼速度Su, 反応帯の厚みδ, 平均反応速度ω,

 反応開始温度Ti, 燃焼ガス温度Tf, 未燃混合気初期温度Tu、密度ρとすると

  Su = (1/ρ)*√((λ*ω)/定圧比熱Cp)*((Tf-TI)/(Ti-Tu))) となる。


宇宙船工学:ロケットエンジンの燃焼基礎のまとめ

2021年11月13日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、ロケットエンジンの燃焼基礎をまとめてみました。

ロケットエンジン内燃焼の理解が不充分で説明も不足している内容となりました。

1.燃料発熱量と燃焼所要酸化剤量 

        炭化水素CnHm燃焼化学反応式は, CnHm+(n+m/4)*O2=n*CO2+(m/2)*H20

         炭化水素燃料CnHmの燃焼については炭化水素1kgの燃焼に必要な

      理論所要酸素量 Lo = (8*水素質量割合h + (8/3)*炭素質量割合c - 酸素質量割合o) (kg)

      理論所要空気量 La = 4.13*(8*水素質量割合h + (8/3)*炭素質量割合c - 酸素質量割合o) (kg)

2.混合ガスに対する熱力学的諸量  

          N成分からなるガスの i 成分の分圧を Pi=密度ρi*(一般ガス定数gR/i成分分子量molmi)*温度T

   混合ガス1モル当たりエンタルピー H = (i=1,N)Σ(i成分ガスモル割合xi*molmi*i成分ガス単位質量エンタルピーh)

3.反応熱と標準生成エンタルピー

    反応エンタルピー ΔH = 内部エネルギーΔE+反応前後モル数差ΔN*一般ガス定数gR*温度T

           酸素O2とエチルアルコールC2H5OHの反応の場合は、生成熱 ΔH = 52.23 (kcal/kmol)

4.化学熱力学の基礎関係式

    エンタルピー dH = T*エントロピーdS+V*dP+Σ(i=1,N)化学ポテンシャルμi*dN

5.化学平衡と反応標準自由エネルギー

    化学平衡状態では、ヘルムホルツの自由エネルギーの変化率dA=0及びギブスの自由エネルギーの変化率dG=0

          反応標準自由エネルギー ΔGo = Σ(i=1,N)μi*(生成系量論係数μ2 - 反応系量論係数μ1)

6.不均一平衡

        不均一系とは二つないしそれ以上の相で構成されている系となる。

   混合気に対するギブスの自由エネルギーを表す式は、G = Σ(i=1,N)μi*Ni

           モル当たりの蒸発潜熱 L12 = H2/N2 - H1/N1となり

   dP/dT = P*L12/(gR*T^2) となる


宇宙船工学:ロケットエンジン噴射ノズルの簡易設計手法

2021年11月12日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、ロケットエンジン噴射ノズルの簡易的な設計手法をまとめて説明しています。

 

ノズル膨張比εを求める

 ε=ノズル出口断面積Ae/スロート断面積At

     =(2/(比熱比k+1))^(1/(k-1))/

        ((Pe/P0)^(1/k)*√((k+1)/(k-1)*

          (1-(Pe/P0)^((k-1)/k)))

流れる質量流量をfm(flowmass)とすると

 スロート断面積 At=fm/

  (P0*√((k*分子量molm)/(一般ガス定数gR*T0)

    *(2/(k+1))^((k+1)/(k-1))))

  π*Rt^2=Atより Rt=√(At/π)

ノズル出口断面積 Ae=ε*At

π*Re^2=Aeより Re=√(Ae/π)

ノズル出口速度ueは、

  ue=((2*k/(k-1))*(gR/molm)*T0*(1-

              (Pe/P0)^((k-1)/k))

スロート部流れガス速度utとすると

  ut=ue/(((k+1)/(k-1)))*

       (1- (Pe/P0)^((k-1)/k)))

 

ノズル形状パラメーター:

 ノズルスロート半径 Rt=√(At/π)

 ノズルスロート上流部半径 1.5×Rt

 ノズルスロート直後半径 0.382×Rt

 ノズルスロート直後壁面角度 θn 例:膨張比20の時29度

 ノズル出口位置壁面角度 θe 例:膨張比20の時9度

  ノズル出口半径 Re=√(Ae/π)=√ε*Rt

 ノズルスロートからの膨張部長さ Ln 例:膨張比20の時Rt×10倍


宇宙船工学:天体の重力の影響を受ける飛行体の運動する軌道、飛行速度、飛行時間の計算式

2021年11月11日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、天体の重力の影響を受ける飛行体の運動する軌道、飛行速度、飛行時間の計算式の説明をまとめました。

楕円軌道上の飛行体運動の計算式:

m*r^2*(dθ/dt)=const≒hとすると,

一般重力定数Gとして

天体との距離rは、

  r=(h^2/(G*M*m^2))/(1+((h^2/(G*M*m^2*rp)-1)*Cosθ

離心率を e=h^2/(G*M*m^2*rp)-1 とすると

楕円軌道の方程式は、

  r=(1-e^2)*a/(1+e*Cosθ)=(1+e)*rp/(1+e*Cosθ)

  e=(ra-rp)/(ra+rp), b=a*√(1-e^2), r=(e*Sinθ)/(1+e*Cosθ)

飛行速度Vは、

  V=√((2*G*M)/r – G*M/a)

  長径方向分速度 Va=√(2*GM/r)*√((rp/ra)-(ra/(2*a)))

  短径方向分速度 Vb=√(2*GM/r)*√(1-(ra/(2*a)))

θ=0からθ=tまでの飛行時間tは、

   τ=周期=2*π*a^(3/2)/√(G*M)として

    t=(τ/(2*π))*

         (2*Atan(√((1-e)/(1+e))*Tan(θ/2)

           - (e*√(1-e^2)*Sinθ)/(1+e*Cosθ))


4連ノズル型ロケットエンジン( 噴射推力8トン用)の液体酸素ターボポンプ計画図を詳細説明

2021年11月10日 | 宇宙航空産業機械

噴射推力8トンとなる4連ノズル型ロケットエンジンの液体酸素ターボポンプ断面計画図を詳細に説明しました。

耐キャビテーション性能が高く、軸方向スラスト力が無視出来るという特徴を持つ液体酸素ターボポンプです。

主要構成要素は、

・両吸込みケーシング(消失型ラピッド鋳造による製作)ステンレス製

・耐キャビテーションインデューサー(5軸加工による製作)ステンレス製

・両吸込み遠心インペラ(金属3Dプリントによる製作)ステンレス製

・主軸シール用の炭素環シール

遠心インペラが内部に組み込まれるように、ケーシングは軸方向への分離方式に設計しています。


宇宙船工学:ロケットエンジン先細末広ラバールノズルの流れ計算

2021年11月09日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、ロケットエンジンにおける先細末広ラバールノズルでの流れ状態を計算する式をまとめました。

1次元定常断熱流れ:

Cp*T+(1/2)*u^2=Cp*T0   ここで、定圧比熱Cp、ガス温度T、ガス流速u、よどみ点温度T0、ガス圧力P、燃焼室圧力Pc

よどみ点圧力P0=P*(1+(1/2)*(k-1)*M^2)^(k/(k-1))  ここで、ガス圧力P、比熱比k、局所マッハ数M=u/(k*ガス定数R*T)

ノズル内流れ式は、Cp*T+(1/2)*u^2=Cp*Tc+(1/2)*uc^2=Cp*T0 ここで、燃焼室温度Tc、燃焼室速度uc

ノズル内任意位置流速 u=(2*Cp*Tc*(1-(T/Tc)+uc^2)

=(2*Cp*To*(1-(T/T0))   ここで、Cp=(k/(k-1))*RR=gR/molm 更にここで(一般ガス定数gR、ガスの分子量molm

=((2*k/(k-1))*(gR/molm)*Tc*(1-(T/Tc))+uc^2) =((2*k/(k-1))*(gR/molm)*T0*(1-(T/T0)))

=((2*k/(k-1))*(gR/molm)*Tc*(1-(P/Pc)^((k-1)/k))+uc^2) =((2*k/(k-1))*(gR/molm)*T0*(1-(P/P0)^((k-1)/k))

以上の式をノズル出口に適用すると排気速度ueは、ノズル出口圧力Peとして

ue==((2*k/(k-1))*(gR/molm)*Tc*(1-(Pe/Pc)^((k-1)/k))+uc^2) =((2*k/(k-1))*(gR/molm)*T0*(1-(Pe/P0)^((k-1)/k))

ノズル圧力比=Pe/P0となり、理想ロケットエンジンではucが小さいと仮定して

排気速度ue=((2*k/(k-1))*(gR/molm)*Tc*(1-(Pe/Pc)^((k-1)/k))と計算できる

この式より、排気速度は(Pe/Pc)が小さいほど大きくなり、よどみ点温度T0が高いほど大きくなり、ガス分子量が小さいほど大きくなる

出口Peが真空状態であれば最大uemax=((2*k/(k-1))*(gR/molm)*よどみ点温度T0) と計算できる。

無次元排気速度=ue/(gR*Tc/molm) と圧力比(P0/Pe)との関係が比熱比毎に求まる。また比熱比kが小さくなるほど排気速度が大きい。

ノズル局所断面積Aと局所マッハ数Mの関係:

スロート部断面面積Atとすると

A/At=(1/M)*(((1+((k-1)/2)*M^2)/((k+1)/2))^((k+1)/(k-1))) の関係となる。

ノズルの臨界圧力比Pcr、臨界温度Tcr、臨界密度ρcr

よどみ点密度ρ0 として

Pcr=P0*(2/(k+1))^(k/(k-1)))Tcr=T0*(2/(k+1))ρcr=ρ0*((2/(k+1))^(k/(k+1))) となる。


1ターボポンプ4ノズルロケットエンジン設計:両吸込み液体酸素ターボポンプの断面計画図

2021年11月04日 | 宇宙航空産業機械

1ターボポンプ4ノズルロケットエンジン設計の続きです。

今回は、両吸込み液体酸素ターボポンプの断面計画計画図を作りました。

この両吸込み液体酸素遠心ターボポンプの特徴は、

・両吸込み遠心ポンプはインペラ入口絶対速度が小さくなり耐キャビテーション性能が高い

・遠心インペラに働く軸方向のスラスト力を相殺出来て軸受耐久が良く、軸方向の安定運転性を持つ

となり、運転条件の厳しいロケットエンジン用ポンプとして有利に働く特徴を持ちます。


宇宙船設計:1ターボポンプ4ノズルロケットエンジン設計を開始

2021年11月02日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船設計の要素として、1台のターボポンプで4個のノズルに燃料を供給して噴射するロケットエンジン設計を開始しました。

ターボポンプには、両吸込み方式の燃料ポンプと液体酸素ポンプを設計することで、インペラスラスト力を相殺した安定したポンプ運転と耐キャビテーション性能を高くすることが出来ます。

ロケットエンジンの姿勢制御には、4個の小型噴射ノズルを配置して行います。

ロケットエンジンの全体推力は、1ノズル2トン推力×4ノズル=8トンの推力を想定して設計を進めていきます。


宇宙船の太い上部推進部 構想図

2021年10月17日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船の太い上部推進部を構想してみた図です。

直径の大きい幅広の荷物を積むために、直径が大きくて軸方向には短い宇宙航行部を計画してみました。

この宇宙船の推進力は、ターボポンプ加圧液体推進機が3基で推進力を発生します。


宇宙船工学:宇宙船の宇宙航行の基礎についてのまとめ

2021年10月14日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学:宇宙船の宇宙航行の基礎について次のようにまとめました。

・惑星の重力計算と重力定数

・惑星と航行宇宙船の間の力の関係

・推力0で航行している場合の軌道曲線の方程式