宇宙船工学として、ロケットエンジンの可燃性混合気の燃焼理論を説明する その1です。
火炎伝播:予め混合されている混合気による予混合火炎と、燃料と酸素が独立に供給される拡散火炎がある。
未燃ガスと燃焼ガスの間に火炎面が有り、通常火炎面伝播の燃焼波と燃焼衝撃波のデトネーション波がある。
通常燃焼波の伝播速度は音速よりも小さくなり、デトネーション波の伝播速度は音速を超える。
燃料の酸素に対する可燃限界は、メタンCH4の場合は燃料体積%において下限が5.1%で上限が61%となる。
定置火炎と進行火炎:一定の火炎面を保つ定置火炎とガス膨張に伴う進行火炎が存在する。
火炎速度と燃焼ガス速度:予混合気の火炎速度は未燃混合気に相対的な火炎面移動速度の火炎面法線方向の分速度となる。
燃焼速度Su, 未燃混合気流速Uu, 燃焼ガス流速Ubの関係を図は示す。
燃焼速度Suと未燃混合器流速Uuの合成速度がStとなり、燃焼ガスの燃焼速度Sb
に火炎面と平行な分速Stを合成した速度が燃焼ガス流速Uuとなる。
酸素とメタンの燃焼速度は1気圧の燃料モル分率30%で毎秒3.3m程度である。
メタンの燃焼速度は圧力が上がると増加し20気圧では毎秒5m程度になる。
層流火炎の伝播機構:層流予混合火炎は、未燃ガス相、燃焼帯、燃焼ガス相に別れ、燃焼帯厚さは1mm程度である。
更に燃焼帯は、予熱帯と反応帯に分かれており反応帯発生熱が未燃ガス相に伝播し温度を上昇させる。
このような未燃混合気側への熱伝導および燃焼反応活性種(OH,H,O,HO2など)の拡散が火炎伝播を促進している。
予熱帯と反応帯の間の温度が着火温度と考えることが出来る。
層流火炎伝播機構の境界構成:未燃ガス | 燃焼帯(予熱帯|反応帯) | 燃焼ガス
燃焼波の理論:ガス質量流量gm, i番目の化学種のエンタルピーhi, εi=化学種iの質量流速/gm, ガス温度T, 熱伝導率λとすると
エネルギー方程式は、gm*Σ(i=1,N)(hi*εi) – λ*(dT/dx)=const ここでxは燃焼方向距離
1次元定常燃焼波の伝播理論として最も簡単な層流火炎伝播理論は、燃焼速度Su, 反応帯の厚みδ, 平均反応速度ω,
反応開始温度Ti, 燃焼ガス温度Tf, 未燃混合気初期温度Tu、密度ρとすると
Su = (1/ρ)*√((λ*ω)/定圧比熱Cp)*((Tf-TI)/(Ti-Tu))) となる。